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あっ。
ウチも一緒に行っていいかなぁ。
[そうして音楽家へと同行するべく申し出て、彼らと行動を共にする。
厨房にてなされる話についても、やはり一切口を挟むことはせず、ただ考え込む様子を見せていた**]
さて、一応戻るか。
[ぱりぱりと、頭を掻きながら、男は厨房の中へ入り、
茶白猫は厨房の外で大人しく待っている。
カルルについて問われれば、ありのままを口にする**]
…私は、生ある者を見出す者。
貴方が成すべきを為す指針となるべきなのに、ずっと黙っていたの。
[許せ、などとは言える訳も無く、そして全てはまだ言わぬまま。
己のみの真実を朗々と紡いだ時、神父は居合わせていたかどうか。
少なくとも、音楽家と画商、牧場の主たる娘は女の言葉を一言一句聞き逃すことは無いだろう*]
……いや。
別に、黙っていた事をどうこう言うつもりはないが。
私もすぐには明かさなかった以上、言えた義理ではないからな。
[自分の場合は、力に半信半疑だったから、というのもあるが、それには触れず]
貴女が私の対なる力の主である……と言うならば、問おう。
誰を見定め、何を得たのかを。
……それを出されねば、納得し兼ねる所もあるのでね。
[黙っていた理由までは推し量れない。
だが、それを聞かないまま、受け入れる事はできぬから。
問いを投げる深紫は、先よりも真摯な色を帯びていた。*]
─…っ───
私が視たのは、あなたよ。
ヘルムートさん。
[理由はまだ、言わない。
一番最初に視た、その結果を言わざるを得なくなるから]
あなたは、人間。
…それと、もう、一人。
貴方よりも、先に視た───…
[本当は視たことを真っ先に言うべきだったのだ。
でも、言えなかった。
言わなければいけないと、胸の奥がざわついて、責め立てるのに。
人狼だって人なのに、そう思ってしまったから。
己が視たものを彼に伝えていれば、避けられたはずの悲劇が起きたのは]
…ウェンデル君が、人狼だってことを。
私が先に伝えていれば、貴方がブリジットさんを殺めることは無かったでしょう。
[神父がこの場に居たならば。
これこそが、女の罪だ、と気付かれることはあっただろうか*]
……先に伝えていれば……か。
確かにそうだったかも知れんが……それは、言っても始まるまいよ。
[確かに無為に命を散らす事はなかったかも知れないが]
過ぎた事……で、すます心算は毛頭ないが。
今は、そこに囚われるよりも為すべき事があると、私は思う。
[それが何か、を言葉にはしないものの。
再び開かれた深紫は静かで、そこに揺らぎはなく]
……短慮に走らず、言葉交わすを選んで良かった。
少なくとも、私の進むべきは、はきと定まった、と言える……感謝する、対なる君。
[言葉と共に向けるのは優美な一礼と柔らかな笑み。
それから、青年はくるり、と踵を返す。
どこへ、と問われたなら、一つ息を吐き]
……一度、地下へ。
調整してやりたいヴァイオリンがあったのを、思いだした。
私の道は定まったが、皆には選ぶ時間が必要だろう?
……その時間を、私なりに有意義に使いたいのでね。
[告げる表情に滲むのは。
揺るがぬ決意と、覚悟のそれ。*]
― 寝室 ―
[窓の外の海の色は暗い。見つめる少年の瞳にゆらりと金色の光が浮かんで沈む]
おやすみ、月の子...
おやすみ、愛し子...
[紡がれる歌は、誰も知らぬ、子守唄]
─ 厨房 ─
[身体揺らがせる程の苦痛は、この場に及んでも尚覚悟が決まらない女への苛み。
言うべきだ、何故言わないと胸の奥から責め立てる声。
>>23目の前から差し出された手に支えられ、見上げるその深紫は己の言葉を聞いて、瞼に微か、隠れた]
…言っても始まらないけれど。
言わなければ、形にできない物もあるでしょう。
[女の懺悔に付き合わせて、申し訳ない思いはあるが。
こうして明確にしなければ、それこそ囚われたままになってしまう。
己の視たものを受け止めきれず、自衛団長に判断を委ねようとして。
団長の─朱花の死を目の当たりにしたのに、それでも尚目を背け続けてきた、女の身勝手に]
感謝するのは私の方だわ。
…ありがとう、ヘルムートさん。
[>>25終止符を打ってくれた対たる青年に弱い微笑みを向けた後]
私は、もう少し此処に居るわ。
スープがまだ煮込み足りないから。
[弱火にかけた鍋を指し、厨房に残ると告げる。
画商や牧場主である彼女、神父から話があるならそれに応じるも、音楽家に話した以上の事は答えられなかっただろう。
情報通の少年のことは神父から聞いたからともかく、この場に居ない少年のことは気に掛かったが今は彼の話題に触れることも出来なかった。
それからスープが満足いくまでに煮込めたことを確認すると、消えない程度の細い火を保って部屋へと戻っていった**]
ウェンデル君が人狼、かぁ…。
[ブリジットが人間だと言ったヘルムートの視点で行けば、その判別結果は矛盾がない。
だが都合が良すぎるとも思う]
ねぇ、ヘルガさん。
どうしてウェンデル君を先に視たんだい?
[その後にヘルムートを視たと言うのは、彼らが昨日相対しているのを目の当たりにしたからだろう。
ならばその前に見た理由は。
それを問い、答えを得られたなら、納得の如何は別としてヘルガの抱く理由として受け止める。
そうしてその時は一旦彼らと行動を別にした]
[食事が用意されるなら少しばかり分けてもらい、思考も含めその日も思い思いに過ごす**]
― 寝室 ―
......ヘルガさん、かあ......
[暗い海を眺めながら、少年は呟いた。]
ちょっと、びっくりしたな...
[初めて顔を合わせた時、ウェンデルちゃん、と、小さな子供を呼ぶように少年を呼んだ彼女の声は優しくて、その呼び方に抗議しながらも、どこかで懐かしさのようなものを感じていた]
仕方ないよね。
[金に揺れる瞳の中で、やがて昼の光は薄れ、嵐の名残の雲の間から、月光が海に落ちる]
かあさん...
[「あなたは生きて」......そう言ったひとの声を噛み締めるように、少年は瞳を伏せた*]
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