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― 広間 →
[――暫くして、戻る広間。
ジュースを飲むベアトリーチェと共にスープの温かさを味わっただろう。]
…美味しい。
[優しい味に作り手のローザと用意してくれたユーディットに感謝しつつ、またテーブルに残った摘みも食べる。
そうして空腹が満たされたその後は部屋に戻り、今度はちゃんとベッドにて身を休める心算で。**]
─ 翌朝/個室E ─
[目覚めは最悪だった。
酒による心地良い眠りは、次第に過去の再現と言う悪夢を呼び起こす。
夢での痛みが現実にも現れ、左手首を掴んだ状態で跳ね起きた]
っ───、くそっ!
何でまた今になって…!
[左手は握り締めたまま、余韻のように残る痛みに耐える。
覚えのある痛みに過ぎるのは───拭いようのない不安感だった]
…ふっざけんなよ。
マジでこの面子で『幻燈歌』なぞれってのか?
[かつて巻き込まれたその時のように。
あの時は親しくも無い者達ばかりだったし、生きるためだったから躊躇いなどどこにも無かった。
だが今回は、顔見知りばかりな上に、自分の命よりも大切に思う者達がいる]
………ああくそ。
外の空気吸ってくっか。
[多少なりとも気分転換をしようと、着替えもそこそこに上着を羽織って部屋を出た。
身を切るような空気に触れたなら、寝起きの思考は振り払えるだろうと、そう考えて。
現状よりは冷静に思考出来るようになるはずだ]
─ →集会場外 ─
[昨日より僅かに重い音を鳴らす靴を履き、階段を下りて真っ直ぐ玄関へと向かう。
途中擦れ違う者は居らず、広間を通った時もその時は誰も居なかった。
玄関から外へ出るとそのまま西側に向かい、台所がある方の角へ入ろうとする。
外へ出たついでに煙草を吸う心算だったため、個室のある東側には行かずにおいた]
うー、さみっ。
朝はやっぱ冷え込む……て。
[冷たい空気に身を竦めながら、角へ入ったところで煙草を取り出そうとして。
目に入った光景にその動きが止まった]
────団長!!
[驚愕の混じる呼び声は大きく、近くの部屋にも容易に届いたことだろう。
目の前に倒れ伏していたのは紛れも無く自衛団長。
その身体は赤に塗れ、いくつもの爪痕が残り、腹部に仕舞われていたはずのものが喰い散らかされていた。
良く見れば他にも欠けている部分があったかもしれない。
団長の身体には薄っすらと雪が積もり、惨劇が起きてからの時間の経過が窺い知れる。
地面も赤く染まっている他は、新たに降り積もった雪によりそれ以上の痕跡は消されているようだった]
くっそ、足跡とかは無ぇか。
昨日は荒れるつってたもんな…。
[団長の骸の傍に寄り、残された痕跡が無いか辺りを見回す。
今付けた自分の足跡くらいしか見当たらず、小さく舌打ちを漏らした]
[それから団長の骸に触れ、更に痕跡が無いかを探す。
手が赤に濡れようとも構うことはなかった]
冷てぇ…。
これじゃいつ襲われたのかもはっきりしねぇな。
[触れた赤もべとりと粘着度が高く、時間が経っていることを示している。
左手で触れたため、粘着度の高い赤が掌にべっとりと張り付いた]
ともかく、自衛団に知らせねぇと。
団長が襲われたことと───人狼が居るってことを。
[それまでには声を聞きつけた者達が降りて来たり、窓から顔を覗かせたりしていただろうか。
団長の骸を見て硬直しなかった者には自衛団への連絡を頼んだかもしれない。
村へと繋がる道が塞がれてしまっていることには*気付かないまま*]
─ 前夜/広間→個室I ─
[降りしきる雪を見て物思いに耽ってたのは短い時間。
階下に下りよう、と思ったそもの目的──水を求めて、台所へ行こうとして]
……? 何か。
[視線を感じて振り返った先には、団長がいた。
その表情は物言いたげではあるものの、しかし、その口から言葉が発せられる事はなく]
……何もないなら、行きますよ。
[静かに言い置き、台所へ。
片付けやら何やらの邪魔にならぬようにしながら、水差しを一つ、出して。
冷たい水を満たしたそれを手に二階へと上がり]
なんだ?
[扉の前に置かれた小箱に、一つ、瞬いた]
[小箱を拾い上げ、添えられたメモ>>60を見る。
僅かな間を置いて、へにゃ、という感じで眉が下がった]
……ったく。
前向きというか、なんというか……。
[口をつくのは、呆れを帯びた声での呟き。けれど、天鵞絨に宿るいろは穏やかで]
……ありがと、な。
[ぽつり、と呟いた後、茶猫とともに部屋に入る。
水差しと小箱はサイドテーブルの上に置いて、ばたり、という感じでベッドに倒れこんだ]
……伝承……『幻燈歌』……再現、か。
[ベッドに寝転び、天井を見上げて小さく呟き、それから]
……神の威光に逆らいし闇の住人、我らが威信にかけて討ち滅ぼさん……。
[教会に、人狼の伝承と共に伝わる言葉を小さく、紡ぐ。
状況が求めているのはそれなのだろう、と、それ自体は至極あっさりと受け入れられている──傍目には、不自然なくらい呆気なく。
ただ、問題なのは]
例え……そうだと、しても。
[傷つけたくない者が多い──多すぎる、と。
そう考えた瞬間、また、締め付けられるような感触が首にまとわりついてきた]
……っ!
[身体を起こし、喉を押さえて数度咳き込む。
茶猫が案ずるように鳴くのに、大丈夫だ、とどうにか声を絞り出しつつ、水差しから注いだ水で喉を湿らせる。
冷たい感触と潤いに、ほんの少しだが、気持ちは落ち着いた]
ほん、と、に……なんなん、だ、これ……。
[これまでなかった異常に、困惑が滲む。
自分がここに呼ばれた理由──それは即ち、老神父の許に預けられた理由なのだが。
それを知らぬが故に、異常の原因に思い至る事はできず。
またそれを知らぬため、自衛団長の物言いたげな視線の意味にも気づく事ができぬまま。
様々な事象によって累積した疲労に導かれるまま、深い眠りに落ち、そして──]
─ 翌朝/個室I ─
……ん……。
[深い眠りの淵、その水面を揺らしたのは、叫び声>>77だった]
なん、だよ、朝っぱら、から……。
[寝起きの悪態は飾りない素の調子。
同じく声に反応したらしい茶猫がなぁぁぁ、と鳴くのをぽふり、と撫で、声が聞こえてきた方──西側の窓を、開けた]
何なんですか、一体……。
[不機嫌さを隠す事無く、窓から顔を出して問いを投げて。見えたものに、ひとつ、瞬いた]
団長……ど、の?
[間を置いて、口をついたのはどこか呆けた声。
高低差はあるが、倒れている団長の状態は見て取れる。
そして、それが何を意味するのか──は。ごく自然に、理解に落ちた]
[窓から身を乗り出して固まっていた時間は、さほど長くはなかった。
我に返ったのはこちらに気づいたクレメンスの呼びかけか、或いは他の誰かの反応のためか。
ともあれ、我に返ると窓を閉めて部屋に引っ込み、黒の外套を羽織ると慌しく駆け出していく]
─ →集会場 外 ─
……望む、望まざるに関わらず。
状況は……伝承をなぞれ、という事……でしょうか。
[間近で団長の亡骸を見て、小さく呟く。
落ち着き払った態度は、逆に異常とも見えるかも知れないが、自覚はなく]
……自衛団に、報せてきます。
[静かな口調でこう言って、村へと続く道へ足を向けた]
─ →村へ続く道 ─
[集会場と村を繋ぐ道には一箇所、崖がせり出して他より道が細くなっている所がある。
その部分は傾斜も急で、冬場は通る時に殊更気をつけるように、と言われ続けている場所だった]
……え?
[黒の外套を翻しつつ、村へと向かっていた歩みは、その場所の異変を目の当たりにする事で、止まった。
目に入るのは、ただ、白、ひといろ]
なんだよ、これ……。
[その白が何か、何がおきているか。
こちらの理解は、先ほどとは打って変わって酷く遅れた。
認めたくない──という思いが、先に立った可能性は否めない]
雪……雪崩か?
ちっ……なんだって、こんな時に……!
[堆く積み上がり、道を閉ざす白の壁に苛立ちを込めて吐き捨てつつ。
しかし、意識のどこかは冷静にこの状況を──閉ざされた『場』の形成を、それと知らぬままに認識していた。**]
─ 前日・1階 個室B ─
[荷解きといっても、鞄の中身を全部出すわけでもないからそれ程時間はかからない。
肌の手入れ用の化粧品やら鏡やらを出して机の上に置いておこうとして、そこにあった紙とペンに気付き手を止めた。]
…そうだ、父さん達に連絡…
は、しないほうが良いかしらねぇ。
[父も祖父も変なところで過保護だから。
自分がこんなことに巻き込まれたと知ったら即引き返してきかねない。
ただでさえ頑固な祖父が押しかけて師匠も辟易しているだろうに、仕事もせずに帰ってこられては迷惑をかけに行かせたようなものになってしまう。
最も、荒れ始めた天候のせいで自衛団員は集会場から引き上げていたのだからもう手紙を頼むことはできなかったのだが、その場に居合わせていなかった為知らなかった。]
─ 前日・1階 個室B ─
…今から戻ってお茶をって気分でもないわねぇ。
今日はもう寝ちゃおうかしら。
[集会場に来る前、身支度を整えるついでに入浴は済ませてきたから風呂に行く必要はなかった。
広間に戻れば多分酒宴になっているだろう。
酒を飲んでいるのを見て我慢出来ると思えなかったから、やっぱり行くのはやめようと、ベッドに横になった。
そのまま、朝を迎えて──聞こえた喧騒に、起こされることになる。**]
― 夜・広間→個室D ―
[ジュースを飲んでいれば、そのうちに片づけを一通り終えたユーディットや、ブリジット、ベアトリーチェが現れただろうか。
ベアトリーチェがジュースを飲むようなら、その隣で頭を撫でたりしてたかもしれない]
さて、ボクもそろそろ部屋に戻ろうかな。
おやすみなさい。
[ジュースを飲み終えたグラスはユーディットに任せたのだろう。
その場に居る面々にそう告げて、部屋に戻ると。しばらくの間は、届けられた資料に目を通していた。
もっとも、届けられた直後に思った通り、たいして詳しいことは載っていないが]
…………『双花聖痕』、か。
[読み終えた資料を放り出して、ため息を零す。
左手で胸の『蒼花』の上に触れた]
『神の加護の象徴』って言う割りに、生贄扱いもされるって酷いよねぇ。
[女児は必ず『人々の指導者』たる『花』を持ち。さらに男児にも、必ずではないが『守り手』の力を引き継いだ者が現れる事が多い。
そんな血統だからこそ、モルゲンシュテルン家は貴族の中でも強い発言力を持ち。
同時に、そのことを知る貴族たちからは、敬われながらも忌避されてきた。
父の先妻は『花』を持ち、その子である己の異母兄は『守り手』の力を引き継いだ。
それゆえに、自分たちが現場に赴く事を躊躇った父の弟妹たちによって、事情を知らされぬまま、人狼騒動の中に放り込まれ。
母を守ろうとした幼い異母兄も、『人狼への生贄』たる朱花を持っていたその母も、人狼の牙に倒れた。
その前後、外交の任を帯びて家を離れていた父がそれを知った時には、酷く悲しみ。二人を間接的に殺した弟妹たちには相応の『報復』をしたと聞く]
………もし、ここに集められた中に、人狼がいたなら。
ボクは蒼花の責務を果たさなきゃならない。
[呟き、小さなため息を零してから。ベッドに横になった]
― 昨夜の回想・広間 ―
[ライヒアルトも台所に向かえば、広間には自分とギュンターだけになった。
なんとなく居心地が悪かったので、お酒台所に運ばせたのは失敗だったかもしれない、と思いながらも、台所の面々が広間に戻ってくるまでは、無言でジュースを飲んでいた。
ふと。そういえば、子供の頃母の旧友のところで、その弟さんと一緒にぶどうジュースを貰ってのんだなぁ、思い出す。
自分より6つ年上の彼は、よく他の子供たちと一緒に遊びに誘ってくれた。
村でも特に親しくしていた内の一人だったのだが]
………いつからだっけ、あんな風になったの。
[子供の頃は名前で呼ばれていたように思うのだが。
いつの頃からか、貴族様だの子爵様だのという呼び方に変わってしまって。それを真似したものか、他の子たちも同じように呼ぶものが増えていった。
最初の頃は、酷く寂しく思ったのを覚えている。
次第に、その寂しさは『女だって事がバレたんだろうか』という疑問に変わっていったのだが**]
―翌朝 個室M―
[当たり前に続いていた昨日が、今日も続くもんだと思っていた。
そんな望みは、朝から打ち砕かれた。
クレメンスの叫びが小さいながらも鼓膜を震わせ、ライヒアルトが出て行く音に目が覚める。ただ、事態の理解はほど遠く……]
[ガンガンとする頭を抑えながら、簡単に身支度を整えた]
[そして、変わり果てたギュンター爺の姿を目撃する]
→集会場 外
―集会場 外―
[到着したのは、全員の中でも遅い方だろう。部屋が遠いのもあるし]
ギュンター……爺?
[もう血圧の心配をしなくてよくなったんだな、とかつまらないことはさすがにいえないほどの無残な姿だった。
足跡は降りてきたものの数だけ。犯人がどこへいったのかもわからない。
そしてその傷は、刃物や銃などによってつけられたものだとは到底思えず。むしろ、熊やそういう野生の獣の襲われたものを連想させる。
そして、引き出された腸は 散らかされた、というばかりに体を大きく跳ねて飛び散っていたりもした]
うそ、だろ…?
[口を押さえる。すっぱいものがこみ上げてくる。>>78クレメンスが掻き乱して凍結させられた血の臭いもまた鼻について]
[そして、先に到着したものから出る呟きに、地面ばかりを見つめそうだった顔が、はっと上を向く>>91]
――こっから先は、未成年と女はお断りだ。見んナ。
見ちゃだめだ。
[ミハエルと、そしてその場に出てきただろう面々に、そういって。上記の条件だったら来ていいのは、自分、ライヒアルト、クレメンス、そしてゼルギウスくらいになってしまうだろうか]
クレメンス先生……検死とかまでできるんすか
[こういう時素人は現場を荒らさないのが常識だろうのに。
遺体に手を早速触れたクレメンスは、頼りになるとも異様だともどう捉えればいいのかわからない]
ほんと、何だって、こんな時にっ
[雪を殴りつける。ただ冷たかった]
いつ気付いて助けてもらえるか……
下手したら、春までこのままかもな。殺人犯なんて、閉じ込めたまんまがいいもんな……
[この谷底の村では、孤立する民家の住民は冬の間だけ仮住まいに引っ越すということがある。その家開きをするのが、だいたい雪解けを待って、だ]
[空気は湿っているというのに、喉はカラカラにかわいてしまっていた**]
なぞるしかねぇんだろ、こうなっちまったら。
現に被害が出た。
少なくとも、この村に人狼が居るって証拠だ。
[未だ村との繋がりが断たれたことは知らないため、含める範囲が広義になったが、ライヒアルトの呟き>>84には同意の意思を見せる。
集会場に限定しなかったのは、未だ集められた者達の中に人狼が居ることを認めたくなかったからだ]
細かい検死はしたことねぇが、死体を見るのは初めてじゃねぇ。
外傷見て何が原因かくれぇなら、判断出来る。
……つっても、原因なんざ一目瞭然だがな、これじゃあ。
[エーリッヒ>>95からの問いには短く息を吐きながら答える。
どのように見られたかまで気にする余裕は無かった]
自衛団が来るまではこのままになるかね…。
皆中に入っとけ。
見て気分が良いものでも無ぇ。
[とは言え、目に触れやすいままにするわけにも行かず。
かと言ってシーツかけてしまうと、確認しに来た誰かが知らず踏みつけてしまう可能性が頭を擡げて、仕方無しに自分の上着を目隠し程度に団長へとかけた。
上着なしの寒々しい姿になってから、外へと集まって来た者を集会場の中へと促す。
全員が中に入るのを確認してから、クレメンスも中へと入って行った]
[思わず呟いた後、制止する2人の声>>95>>100には、小さく吐息を零して。
顔色はあまりよくないだろうが、それでもゆっくりと首を左右に振った]
ボクは、大丈夫です。
亡くなった方を見るのは初めてじゃありませんから。
[若手貴族として、表向きは男ということになっているので、一応騎士団にも所属していたりする。
実戦経験はないが、斬り殺された遺体なら見た事は幾度かある]
さすがに、ここまで酷いのは見たことありませんでしたが……それでも。
ボクは立場上、こういう事から逃げ出す訳にいきません。
[他の女性や若い者が来たなら、さすがにとめようとするが。
自分は平気だと、そう言い張る。
ライヒアルトとエーリッヒが村へと向かう背には、「よろしくお願いします」と声をかけ。
上着をギュンターの遺体へかけるクレメンス>>103には、同意して集会場の中へ]
ユーちゃん。
わるいけど、温かいお茶でもみんなに用意してもらえるかな?
[ユーディットが起きてきているなら、彼に声をかけただろう。
なお、さきほどのエーリッヒの「未成年と『女』はお断り」という台詞に、(やっぱり、女ってバレてたんだな)と勘違いしたのはお約束というやつだろう**]
─ →広間 ─
……あー、手ぇ洗ってこねぇと。
いっそ風呂入った方が良いか。
[遺体に触れ、近くにも居たせいで血の匂いが移ってしまっている。
そのままでは他の者の気分を害してしまうだろう]
茶ぁでも淹れてやりたいところだが…仕方ねぇ。
[他に茶を淹れてくれる者が居るなら頼み任せて。
呼び止められなければ湯を浴びて来ようと歩き*始めた*]
[幼い頃の記憶、赤に沈む両親の姿。
その時住んでいた村の大人達は、仔細を教えてくれなかった。近付く事も許されなかった。それは子供に対する配慮だった、のだろうが。]
[当の子供がこうだったから、孤児院に預けた大人は、保父にも何も伝えなかっただろう。両親が亡くなった娘だと唯それだけ。]
[大人は怖いと思う気持ちが薄らと残った。教えてくれない、触れされてくれない、置いて行く。
開院当初、クレメンスに懐かなかったのは幼心にその感情が理由だった筈。自分の他にも4人程の子供>>0を抱えていた彼がようよう皆を寝かし付けようとしても、一人眠たくないと駄々を捏ね、放って置いて、と部屋を抜け出した事も良く有った。]
[それが変わったのは半年程経った頃だっただろうか。懲りずにこっそり部屋を抜け出した自分は、近くの森まで足を延ばして、案の定迷子に成ったのだ。]
[道を失えば途端に一人取り残された気に成った。怖くて怖くて堪らなくて――その時、クレメンスの声が聞こえたのだ。
迎えに来てくれたのだと気付いた時には泣いていた。クレメンスは如何したのだったか。兎に角、酷く、怒られたが。唯、それが保父としての責任感が理由であれ、とても嬉しかったことを覚えている。]
[その翌朝、クレメンスを父と呼んで固まらせたのだった。]
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