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[時間の感覚は薄かったが、解放された頃、宿の外には、妻を迎えに来た夫の姿が在った。団員から、起きた事実は聞かされているのだろう。室内から零れる灯りに照らされた横顔は、いやに白かった]
こんばんは、フランツ義兄さん。
[昔とは異なる、他人行儀な口調。その表情は暗がりに紛れて読み取り難い。嘲りを含んだ微かな笑みを浮かべていたか、それとも]
――…ノーラ姉は、死にました。
[敢えて口にした言葉は、
冷酷な現実を思い知らせるよう]
貴方は姉を愛すると言い、
神の前でその誓いを捧げた。
……容疑者と聞いて、如何思いましたか。
信じきれなかった、疑う心があった?
もし、彼女が人狼ならば――と、考えた?
いえ、人間であれば、
それは仕方の無い事だと思います。
変わらずにいるなど、出来はしない。
けれど、それなら。
誓いなど、立てなければ良かったのに。
[フランツが何を言ったか、何言おうとしたか。
一呼吸置いて、遮るようにして、続ける]
フランツ兄。
俺はお前が、大嫌いだった。
[内容とは裏腹に、気配は穏やかだった。
幼い頃から知っていた彼とは、傍目には本当の兄弟のようで、相手もそう思っていただろう。
夜の挨拶を告げて、中に入り戸を閉める。
*浮かべた笑みは、柔らかかった*]
[ユーディットの声に刹那混じった寂寥の響きには気づけど、その意は図り知れず。
どちらも本物なら、という言葉には、そうだな、と頷く。
そんなに都合良くは行かないだろう、という思いは出さずに。
その後は作曲に没頭し。
今、連ねた音を旋律に形作る。
……食事の事は危うく忘れかけ、それでもぎりぎりで思い出し。
完食はできなかったが、半分程度は手をつけておいた]
……よし、と。
もう少しだな……だいぶ遅くなっちまってるし、そろそろ仕上げないと……。
[小さく呟きつつ、譜面を整え鍵盤の蓋を閉める。
集中していた時間の長さを物語るよに、空の色は、暗い]
さて、それじゃ……。
[そろそろ人の集まる頃合いだろう、と思い、話を聞きに宿へ向かうべく身支度を整えた直後。
玄関の方から扉を叩く音が聞こえてきた]
……今度はなんだよ。
[呟きつつ、部屋を出る。
銀の短剣は布に包まれ、ごく自然に懐へ。
玄関には既に、ユーディットが応対に出ていたか。
いずれにせよ、今度の来客――自衛団の顔は、余り見たいとは思わなかったのだが]
何か、ありましたか?
[気だるげな口調で、問う。
返してなされる説明――それを聞いた瞬間。
言葉が、失せた]
……ノーラ……が?
[空白の後、口をついたのは、この一言。
伝えられたのは、三人の死。
けれど、特に重たく思えたのは一人の名で]
……なん……でっ!?
[とっさ、走り出そうとする。それを引き止めた自衛団員に向けたのは、鋭い緑]
うるせぇなっ……。
今日は一日家にいて、仕事してたよ!
[どこで、何をしていたかを問う自衛団員に叩きつけるように返答し、走り出す。
滅多に感情を荒げぬ音楽家のその様子は、見る者に何を思わせたか。
そんな事などはお構い無し、と宿へと駆ける。
行ったところで、何もできはしないのは、承知の上だったけれど]
[宿の前まで来て、ふと足を止める。
目に入るのは、立ち尽くす影]
……フランツ……か?
[それがもう一人の幼馴染と気がつくのと、向こうがこちらに気づくのは、ほぼ同時か。
夜闇に紛れたその表情は見てとれず。
それ故にその心情は伺い知れず――言葉を制する事は、叶わなかった]
……なんで……どうして、傍にいてやらなかったんだよ!
俺は……お前なら、って……!
[無意識、叩きつけた言葉は幼馴染に何を思わせたか。
意を捉えたのであれば、驚きはあったかも知れないが。
ともあれ、彼が名を呼ぶ声に多少の冷静さが戻り。ため息が零れた]
……すまん。
アーベルは、中、かな。
とりあえず、今は、そっとしとくか……慰められて、素直に喜ぶヤツでもなし……。
[独り言めいた言葉に、幼馴染は何か答えたか。
確かめもせずに踵を返してその場を離れる。
それでも、真っ直ぐに帰る気にはなれず――向かったのは、村外れの丘の上。
そこに立つ木に寄りかかり、そのまま、ずるりと座り込む]
ああ。
……結局、間に合わない上に……無駄になっちまったな。
[小さく呟く声は、*風に紛れて、消える*]
[日中はそのまま何事もなく過ぎた。
その夜もたらされた凶報とは裏腹に。]
[夜分遅くに、扉を叩く音。
どんどんどんどん、と、乱暴なその音は、
ユーディットが玄関に出て扉を開けるまで続いた。]
はいはいはい、どちら様でしょうか。
[焦りの垣間見えるノック音に、嫌なものを感じながら扉の鍵を外す。と同時に、自衛団員が大きく扉を開いた。]
わ、びっくりした。
何ですかこんな時間に……。
[むっとしながら応対する。
しかし相手の顔に、怒りと畏れと、それ以外の――ある種の陰鬱さを認めて、その表情を若干変えた。
エーリッヒが出てきて相手をするのを、端に寄って大人しく聞く。]
[重い声で告げられたのは、まず、ミリィの死。
ここ数日姿を見ていなかった彼女が、自分の知らぬ内に、
理由も不明なまま死んでいた、という事実に驚いた。
精一杯前向きな姿勢を見せていた、少女の笑顔を思い出す。
恋する少女。その相手は結局誰だか判らぬままだったけれど。
遣り切れなくなって、俯いた。
しかし団員の報告はまだ終わらない。
次に告げられたのは、エルザとノーラの無残な遺体について。
人狼の仕業に間違いない、という団員の台詞に、顔を強張らせた。
先に動いたのは、エーリッヒ。
自衛団員たちの横をすり抜けて走り出す。]
あ、待ってください、私も……。
[追いかけようとした刹那、団員たちに抑えられる。]
不在証明? そんなのありませんよ。
ええ、私もエーリッヒ様も一日家に居ました、
けどずっと一緒に居たわけじゃありません。
でも……仮に私がエーリッヒ様の不在証明ができたとしたって、
貴方たちは信じないんでしょう?
[無駄なこと聞いてないでそこをどいてください、と、
団員たちを押しのけようとする。
珍しく言葉を荒げた主人の心中の動揺は察せられたし、
何よりアーベルのことが心配だった。
けれど、エーリッヒに逃げられた腹いせだろうか、団員たちはユーディットを離そうとしなかった。]
っ……、そうやって、容疑者を困らせて、楽しいんですか。
何も護れてないくせに、自衛団員が聞いて呆れます!
[苛苛とした表情を、しかし、ふっと緩める。
皮肉っぽく笑った。]
……いえ、合ってるんでしょうか?
あくまで衛るのは自分だけ、ですから。
[言った瞬間、目の前に火花が散った。]
[さすがに言い過ぎた、と反省したのは、落ち着いてからのこと。
殴られて赤くなった頬に氷を当てながら、ダイニングの椅子に腰掛け物思いに耽る。
結局、家に押し込められ、玄関には見張りがついてしまった。]
もうちょっとだけ、大人しいフリ続ければ良かったのに。
馬鹿だな、私。
[自嘲するように笑う。
その笑みはすぐに引っ込められた。]
二人とも、大丈夫、かな……。
[しんとした暗闇の中、*時計の針の音だけが響いていた。*]
-娼館-
[カーテンもせず、窓を開けっぱなしで眠っていて。
風に頬を撫でられ目が覚めた。]
…んー…ぁふ。…ユリアン…?
[心地よかったので、最初は彼が撫でてくれていたのかと思ったが。隣には誰もおらず。
目を擦りながらつくのは微かな溜息。
そんなぼんやりした穏やかな時間は、荒々しい声で破られる。
対応するのは娼館の女将。その様子を窓の影からそっと盗み見る。
鼻息荒く、人狼に殺されたと、告げられた名は宿の姉妹。―末弟だけを残して。
その事実に表情は強張った。
ややあって、叩かれる扉。女将が自分を呼びに来たので、大人しく従い自警団員の前へと進み出た。]
[尋ねられるのは自分の昨日のアリバイ。
丁度というか何というか、ミリィの所に居た為に、そんなもの証明できるはずもない。
団員の凄みに酷く怯えた風に、ぽつりぽつりと語るのは昨夜の出来事。]
はい、ミリィの様子が気になって…丁度家に行ったら、お医者先生…オトフリートさんと会って。
ミリィは…亡くなってて。
二人で暫くそこに居てミリィの死を悼んでました。
ああでも、途中でオトフリートさんとは、一旦診療所に帰って自警団員の人を呼びに行くって、少しの間別々でしたけど。
時間は、ええとたしか。
[団員に告げた時間は、本当にオトフリートと別れた時間より、いくらか遅いものだった。
始めから信じてもらう気など毛頭無いし、向こうも信じないだろう。
だが、下手に疑いを増やす必要も無い。
そんな内心は表には欠片も零さない。]
[青く控えめに怯えたままの事情徴収はすぐに済んだ。
儚そうな少女が自警団員に何かしら強い反応を見せる事は無く、団員の意気込みは止まらなかったが、それがどこかにぶつけられる事はなかった。
これ以上ここに居ても得る物は無いと踏んだのか、アリバイが無い以上、おまえも狼である可能性はあるんだからなと、指差し念押されてから、自警団員が立ち去ろうとした時、ふいにはっとしたように顔をあげた。]
あの、ノーラさん、人狼に殺されたのは確かなんですよね…?
[そう問いかける声には、そうだと短く、忌々しげに返される。
人狼に殺されたという事は、つまりは彼女らが人狼であるはずは無く。]
………どうしよう。
視たの、ノーラさんだったのに…。
[俯き呟く言葉は、自警団員の耳にはどう*届いたか。*]
―昨夜/ミリィの家―
ありがとうございます。
[イレーネの透明な笑みに返すのは静かな微笑。
一人残されると眠るミリィの傍らへ寄る。
だが触れることはしない。触れることが出来よう筈も無かった。
翳した手の爪に残るのは僅かな緋。今しがた腕を染めてきた色。
その色に味に酔ったのは、違うことなき事実]
どうしてこう、中途半端なのでしょうね。
同じ狂うなら貴女と共に逝ければよかったのに。
[小さく呟いたそれは本音。
だが身の内に流れる血が何故かそれを許さない]
全ては私が招いてしまったこと。
[失ったはずの記憶。
否、失った振りをしてきた記憶が紐解かれる]
“彼”を追ってきた私が、恐らく最初の引き金を引いた――。
[始まりは三年前。
人狼と出会って生き延びたという傭兵の話を聞いたことだった]
人の姿を保ったまま、驚異の力を持てる。
伝承の通りなら、その体力もまた然り。
…助けられる人が増えるじゃありませんか。
[冗談ではないと言われた。
人の血肉を求める化け物になりたいのかと]
そりゃ、嫌ですよ。
けれど死にゆく人をただ見ることしかできないのは辛いです。
彼らを調べたら、その仕組みも分かるかもしれない。
[力及ばず失った母と妹。同じように死んでゆく者に手が届かない事に対する悔しさ。
若くして医師となった彼は、まだ禁忌に触れることの罪深さと恐ろしさを理解していなかった]
[会ってみたい。その思いは一度沸き起こってしまえば止め難く。
それがどれだけ無謀なことかも知らず、彼は暮らしていた街を離れた。
伝承に興味を持っているという触れ込みで各地の話を聞いて歩き。
この村から少し離れた場所で、旅人の死体に行き会ったのが一年前]
獣に襲われている、というにはまた随分と。
今度こそ当たりでしょうか。
[手当たり次第に情報を探った。
人狼は長くその場に留まらないモノも多いという。
だから周囲の村も含めた人々の流れを、隠すこともせずに探って]
ええ、見つけたかもしれません。
確かめに行ってみようと思いますよ。
[隣村の酒場で、何度か出会ったことのある旅人と話した。
今思えば、同じように探すものがいるなど普通ではない。
そう。結社の人間か、領主の放つ間諜か。そうした者達でなければ]
[そして、不用意に近付き過ぎ、殺されかけたあの時]
『死ニタクナケレバ受ケ入レロ』
[絶命する直前に聞こえてきたコエ]
『薄キ血ヲ得タ濃キ血デ補エ』
[自分も遠くその血を引いていたのだとは分からなかった。
だが死にたくなかった。
だから悪魔の囁きかもしれないとは思いつつも、手を伸ばした]
( ――応 )
[承諾の意思を持った瞬間、襲い掛かってきた衝撃に意識は吹き飛ばされた]
[次に目覚めた時、最初に見えたのは少女の顔]
「目を覚ましたよ!」
[明るく元気な声。ああ死ななかったのかと思った。
それから一月の優しく穏やかな生活。
一時的な記憶喪失は後ろめたさから目を背けた結果の産物でもあった。
だがそれも徐々に許されなくなってくる]
…喉が。
[時折やってくる衝動。血肉を求める身体。
それが何であるのか、気付きながらも目を背け続けた。
生き残り手に入れた暖かな暮らし、それを失うことを恐れた。
少女の笑顔、それが見られなくなることを惜しんだ]
……苦シイ。
[耐え切れなくなると動物を襲い、そのまま食らった。
だが一度目覚めた力はそれだけで保つこともできず。
耐えられなくなる間隔が狭まってくるのと合わせるように。
時はその代償を求めて押し寄せた]
[事実の確認。それはゆるやかな絶望で彼を包む。
ギリギリで繋ぎ止めてくれた少女も去ってしまった。
押し寄せる波に耐える強さを、彼は持てなかった]
FNec possum tecum vivere, nec sine te.
[古詩の一節が口をついた。
唇は甘く苦く痺れている。
淡い微笑を浮かべて、彼は立ち上がる。
何時の間にか、夜は明けていた]
[意識に混ざる赤は少しずつ増えていた。
自覚と疲労。両者は天秤を揺らして彼の中の*混沌を深める*]
[外から聞こえる声は遠い。
卓上に頬杖を突く青年の傍らには、白い猫が在った。
何物にも染まっていない毛並みは、穢れない美しさ。されどそれは、つくりものめいていた。
毛の流れに沿って手を滑らせ、猫の肢体を撫ぜれど、あたたかみは無い。
時の流れは早くも緩やかにも感じられて、
窓から射し込む光は次第に移ろいゆく]
……静かだねえ。
[――なぁ。
落とした呟きに、猫が小さく鳴く。
太陽が新しい一日の始まりを告げる頃、
青年の姿は其処に*無い*]
[まだ日が昇らないうちに外に出る。
扉の前には自衛団員が待ち構えていた]
…エルザとノーラが?
何故すぐにいらっしゃらなかったのですか。
[思わず不思議そうな声になった。
どうしても入れなかったと言われ、小さな苦笑が浮かんだ]
ああ、不謹慎ですよね。すみません。
けれどおかげで休むことが出来ましたよ、ありがとう。
…そのままにしてあるのでしょうか。それは流石に偲びありませんね。すぐに向かいます。
[自衛団員が畏怖しているのは分かった。ただ自分にではないと感じた。ミリィの作品にかもしれないし、立て続けの遺体発見のせいかもしれなかった]
………。
[遺体そのものは安置所に動かされた後だった。
アーベルが居るかとも思われたが、その姿は無く。
二つの遺体を前に黙祷を捧げる。神への祈りは出てこなかった]
-娼館前・夜-
[殆どの団員が帰路につく中、何やら話しこんでいる自衛団員と女将をぼんやり見て、会話が終わるのを待っていた。
ばさばさと布が舞う音がする。風が強いように思って、ふと自分の部屋を見上げると、自室のカーテンが揺られていた。
見慣れた無地のカーテンに、見慣れない染みが見える。
何か零したっけと思ったが、次第に月明かりに照らされ見えたその色に、ぞくりと背筋が凍った。]
…赤い…。
[その呟きは女将と自衛団員にも聞こえ。慌てた様子で二階の自分の部屋へと駆け上がっていく。
部屋の入り口をあけ、彼らの足は止まった。
中は、ついさっきまで自分が居た時とは全く違うものになっていた。
赤い海、転がる死体。鼻につく血の匂い。
それらはつい最近、ギュンターのそれを見たときよりももっと近く、そして強く感じ――その場にぺたりと座り込み何度も咽た。]
『貴様…!!』
[部屋の持ち主である自分に、自警団員が胸倉を掴んで乱暴に問いただす。お前が殺ったんだろうと。]
ち、がい、ます。
さっき、女将さんが呼びに来てくれた時には、
何もなかった…!
[怯えた目で女将を縋るように見上げると、女将がそれを同じように青ざめながらだが肯定してくれたので心底ほっとした。
同時に、下りてから自衛団員らと一緒だった事が身の保障をたて。
ちっと、舌打ちした団員に、床に叩きつけるように手を離され、ごほごほと咳き込んだ。]
そうです、これを焚いてください。
[最初に鞄から取り出したのは薄紫の乾燥花]
もっと早くに気付くべきだったのですが。
幾ら必要とはいえ、貴方達も血の臭いに囲まれて張番するのはお嫌でしょう?
私も慣れてはおりますが、気分良いとは言えませんので。
…少しでも彼女らの安らぎになれたなら、更に良いですし。
[団員たちが受け取り支度をする間に、作業も進める。
フワリとした芳香が漂い始める頃には全てを終えていた]
それでは、失礼します。
[監視の目がついてくるのは分かった。
だが頓着せずに歩き始める。探し求めるのはユーディット。
この先を推し量るのに、恐らく最良と思われる相手]
[それから数刻後、再び何人かの自衛団員らが娼館へ来て、死体―自分より8つ上のまだ若い姉さんだった―をつれていく。
自身にも酷い追求があったが、結局女将と団員とが身の潔白を証明してくれていたのが功を奏し、未だ容疑者のままでいられたのは幸いだったか。
だがというか、とうとうというか。
暫く後、女将からは娼館を出て行くように言われた。
最後は目も合わせては貰えなかった。
仕方なく俯いたまま、少ない荷物をまとめて娼館を後にする。
女将は厳しく、仕事に容赦の無い人だったが、母よりはずっと優しい人だった。
だから好きだと、思っていたのに。
仕方ないと分かってはいるものの、見捨てられたように思いながら街へと歩く。
一人は危険だといわれてはいたが、これから何処にいけばいいのか。
アーベルの宿にでも行くべきだろうかと思いながら、もう夜が明けかけてきた空を見上げていた。]
─村外れの丘─
[ふ、と、途切れていた意識が繋がる。
辺りは静かで、空気が冷たい。
どこか、身体が重たい感覚に違和感を覚えて目を開いたなら、飛び込んでくるのは、緑の丘]
あ……あれ?
[数度瞬き、視界をはっきりとさせる。
何故、自分はここにいるのか、としばし思い悩み]
あー……そっか。昨夜。
[もたらされた報せに飛び出し、そして、感情を抑止しきれず。
家に帰る気にもなれずやって来たここで一夜を明かしたのだと]
……また、怒らせるなぁ……。
[ぽつり、零れたのはそんな日常的な懸念]
[まずは妥当にメルクーア家へ向かおうとしたのだが。
ふと足を止めると方向を違えた。
村外れ、丘となっている場所へと]
おはようございます、エーリッヒ。
[道を歩きながら、声が届くかどうかの位置で挨拶を投げた]
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