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別に見たくて見たわけじゃな――――。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
[ウェンデルに反論するように言いかけて、流石にそれは言いすぎというか、見たくない体って失礼だろうと思い至れたのでヘルミーネに謝った。とっても謝った。
当の本人の反応は――怖くて見てなかったが。
変態がふたつ、さくさくっと刺さったところで、虚を突いたように問いかけられて。]
へ?ああ。グラーツ殿は狼じゃな――――
[素直、と言わんばかりにこっくり頷いたら―――もう一個カップが後頭部に飛んできて、意識は数瞬*飛んでいった。*]
─二階・フォルカーの部屋─
[視線を落したまま、もう一度カップに口をつけた。渇きそうになる喉を湿らせる]
…人狼を捜しての、行動、だったんだね。
実際は、どうだったのかな───。
[そう紡ぐ声は、少し硬かった。誰でも良かった、と聞くと視線はフォルカーへと戻って。机にカップを置くとフォルカーの傍へと寄った]
───喩え、ライさんが人狼では無かったとしても。
ボクは、フォルを責めないよ。
やらなきゃいけないことを、人狼を捜そうとしたんでしょ?
捜さなきゃ、みんな食べられちゃうから……。
[ベッドに座るフォルカーの隣に座り、近い方の相手の手を両手で包もうと手を伸ばす]
誰なのか分からないなら、取れる手段は限られるもの。
[ぎこちなく孔雀色を向けた先、ヘルミーネは心此処に在らずの様子。彼女は花宿す者の役割を知っているということだろうか]
ああ…。
[深い溜息が毀れる。
もう笑みを失わずにいようと思ったのに。
あまり成功できている気が*しなかった*]
―2階・自室―
[部屋に戻るとまっすぐ机に向かう。
大き目の封筒を、持ってきた資料の束の中から抜き出し、恩師の名を宛先として記した。
それから自分が書いた報告書を取り出して、化石の欠片の入った小瓶と一緒に封筒へ。
『もし、俺に何かあったら、これを投函して欲しい。
この村の、廃坑調査についての報告書だ』
レポート用の紙を破いたものに書いたのは、誰かへ向けての伝言だった]
俺も、いつやられちまうかわかったものじゃないからな。
[呟きながらも、死ぬわけにはいかないと強く思っていた。
今迄ならば人狼に食われてしまったとしても、死ぬことで空の向こうで
待っている人に会えるならと受け入れてしまうのだろうが、今は違う。
その笑顔を護りたいと思う人がいたから。
だから、死ぬわけにはいかない、と]
―二階:自室―
たぶん、違ったんじゃないか、とは、思ってる。
夜が更けて、明けて、朝になったら――分かるかな。
[爪先でカップの表面を擦る。かり、と微かに音がした。
片手が、自らの体の上に滑り落ちる。
分かるとすれば、それは、人狼による襲撃の有無によって。]
……レーネ、
[落ちた手を取られて、視線が少女の方を向いた。
頭は上下ではなく左右に振られた]
そう、そう――……だけど、そう、じゃない。
みんなの中に、人狼なんていなければいいと、思っている。
でも、否定しようとすると、苦しくなる。人狼を捜そうと思うと、気分が落ち着く。
ううん、むしろ、
[高揚するのだとは、言えなかった。声は途切れる]
早く、終われば、いい。
[誤魔化すよう、別の言葉を継いだ。手にしていたカップの中身を飲み干して、傍らに置き、少女の手に自分の手を重ねる]
エルザ…お前は許してくれるだろうか。
いや、許して欲しい。
[机の上に両の肘をつき、祈るような姿勢で呟いた。
あの時失われてしまった命は、二つ。恋人と、そして、恋人に宿った、新たな命。
それからずっと、心の奥底では罪の意識に苛まれ、誰をも受け入れることが出来ぬまま、
好意を持ってくれた女性を傷つけてしまうこともあった]
あの子は、傷つけたくないんだ。
[その想いは、偽りのない強いもの。
明日、すべてを話して、それでも頷いてくれたなら…]
嫁に行く日になるかもしれんな。
[誰もいないのに冗談ぽくなるのは気恥ずかしかったからか。
その晩はまるで遠足を前にした時のような高揚感を覚えながら、*眠りについた*]
─二階・フォルカーの部屋─
分かる…のかな。
[言葉は曖昧に落ちた]
否定しようとすると、苦しくなる───?
[似ていると思った。自分の内なるものに。けれどそれは口に出さないようにして]
フォルは、捜す使命を負ってる、のかな……。
[代わりに零れたのはそんな呟きだった。少し考え込んでいると、包み込んだ手に相手のもう片方の手が重なった]
…うん、早く終われば、良い。
もう、こんな悲しみばかりの状態は、嫌だ。
[それはまごうこと無き本心。きゅ、と握っていた手に力を込めた]
―広間―
[暫く、談笑をしたりしながら、体が程よく暖まったところで]
今日はそろそろ寝る。
皆、おやすみ。
[手をひらひらと振りながら、広間を出て自室へと戻っていった]
―二階:自室―
[曖昧ないらえには、少年は何も返さなかった。
ただ、少女と同じよう、手を握る力が篭る]
捜す――……のは、どう、だろう。
僕は、……………ただ、長の子だから。
[否定も肯定も、しきれなかった。
己の力を他者に明かすことは、禁じられていることだから]
悲しくても、どんなに、失っても。
イレーネの、“絶対”だけは、ぜったいに。
[昨晩の遣り取りを思い出してか、言葉の終わりに、少女の目を見つめた。常のよう、寄せた眉の下にある蘇芳色の双眸には、意志の光がある。ただ、そのいろは何処か、暗かったが]
……………何か食べて、休もうか。
レーネは、どうする?
[長く沈黙を置いたあと、話題を変えて問いかける。
何をするにも、*少女の望むままに*]
―自室―
[夢を見ていた、小さい頃の夢。
夢の中の自分は足枷を付けられていて、粗末な服に身を包み、
主人である商人の荷物を荷車に載せて何人かで引いている。
本当は馬を使えば効率的なのだが、
自分のいた地方では奴隷を以下に多く持ち、それをみせつけるかが権力の象徴みたいにもなっていた。]
はぁ…はぁ……。
[文句を言う事も許されず、目的地につけば僅かな水と一切れの硬くなったパンだけをもらい、
それを口にしながら、主人が商談を進めている様子を眺めている。
商談が終わればまた荷車を押し…、日が落ちる頃に屋敷に戻ると、狭い部屋に押し込められる。
硬い石の上に同じような境遇の子供達と横になり……]
―自室―
むなくそ悪い…。ウェンに話したせいか…。
[呟き目を覚ます。気分は最悪だった。
窓の外はまだ暗く、気分転換をと思い部屋から出る。
勝手口から外にでて西側の方は、渓谷に面していてローザの姿をみかけた]
どうしたんだ?こんな夜遅くに出歩いたりして。無用心だな。
俺?俺は寝付けなくて散歩だ。
[向こうから同じ趣旨の返答が返る。向けたのは猜疑的な目だったかしれない。]
ローザ?お前が人狼なのか?
[唐突の質問、その名前は呼び捨てだった。
向こうは笑いながら何言ってるのというようにいつもの調子で話しかけてくる。
今はその態度に、感情の抑えが効かなくなった。]
[ナイフを懐から取り出しつきつける。]
答えろよ?どっちなんだよ?
[こちらの様子と、ナイフを突きつけられてることから、向こうは恐怖で声がでないだけなのかもしれない。]
なんで答えられないんだ?なぁ?
[ローザが後ずさり、柵にぶつかるとそれ以上後ろには下がれなく、こちらはお構い無しにそちらに近寄っていく。
何かを言っていたかもしれないが、もうその声は聞こえていない]
いいよもう、死ねよ…。
[冷たく言い放ち、ナイフを胸に突き刺す。
後ろによろめいたローザはそのまま柵を越えて渓谷の下に、少し時間を置いてどさりと音が聞こえる]
─二階・フォルカーの部屋─
長の子……そうだね、次期村長、だもんね。
[それを口にした時の表情は、どこか寂しげなもの。離れて行ってしまうような、そんな感じがした]
ボクの、”絶対”…。
ありがとう、フォル。
そう思ってもらえるだけで、嬉しいよ。
[そう言って微笑む。握り返してくれる手が温かい。見つめてくれる意思の光を宿した瞳が愛おしい。けれど、見つめ返す縹色には僅かに悲しみが見え隠れした]
あ、クッキーなら少し持って来たけど……。
[変えられた話題に机に置いたトレイに視線を向けた。小皿に盛りつけたクッキーを持って来て、それを摘みながら再び紅茶を傾けたりした。足りないようならパンか何かを持って来て、それを食してからそれぞれ休息を取ることに。イレーネはティーセットを乗せたトレイを手に、隣の自室へと戻って*行った*]
[崖下を覗くとそこはテーブル状に張り出していて、その上に横たわるローザはもう動かない。
ローザを中心に朱が広がり彩られている]
死んだだろうな…さすがに…。
[罪悪感も何もなく、その場を*後にした*]
―二階・個室―
[その夜はなかなか眠りにつけず、幾度か寝返りを打った。
浅い眠りを繰り返し、何度目かに目覚めて、何気なく窓の外を眺めた。
紅い月が昇っていた。
ともすれば血を思わせるそれは不気味で、けれど同時に強く魅きつけるものも感じさせた]
…そうだ。
[眺めているうちに、ふと広間で聞いた話を思い出した。
明日にすれば良かったのに、何故その時向かおうと思ったのか。
今となっては、分からない]
―外―
[真白な息を吐いて、雪の中を歩いて行く。
疎らな針葉樹の中、それはあった]
此処か。
[いつもはユリアンの頭にあった筈のバンダナを見て、一人頷く。
喪われた朱の聖花を求めるように、蒼が疼く]
…ごめんな。
[零れた謝罪は何に対してのものだったか。
暫くの間はそのまま、雪の中に佇んで、それから
…
…
紅 ]
[女は父の顔を知らない。
病弱だった母は、かつては街でシスターをしていたのだと言う。
辞めた理由は、ついぞ教えてくれなかった。
ただ、朱蒼の聖花――絵本に描かれたそれを目にする度に、哀しそうな顔をしていた]
[その理由が分かったのは、つい先日のこと。
そして同時に、なんとなく予感もしていた。
あの時――部屋を出る時、昔馴染に返事をしなかったのは ]
[最期に過ぎったのは、謝罪]
[何度も名前を呼ばれた。
そんな呼び方をする奴なんて、昔から1人しかいない。
けれど今、その名を口にする見知った筈の男は、
今まで見たことのない表情をしていた]
…ッ、
フリー…
[猫が啼いている。
女もまた、今までならば絶対に見せなかった表情をしていた。
見せないと、そう決めていた]
ごめん。
…ごめん、なさい。
[雪の上零れ落ちる雫も、消え入りそうな声も、
何一つ*届くことはない*]
―広間―
[食事を終えて、紅茶を淹れたり片付けたりしてたところで、ハインリヒから声をかけられれば、ハインリヒを振り返る。
明日な、と言葉を濁す様子を見れば不思議そうに首を傾げて。
「いまじゃだめなの?」と問いかけるが、部屋に戻られてしまった]
……なんだったのかなー?
[例によって、夜中に寝付けなくて。
何か作ろうか…と台所に向かいながら、夕食後の事を思い出して首を傾げた。
まあ、明日になれば教えてくれるだろうから、別にいいか――と食料庫を見る]
んーー……ちょっと小麦粉使いすぎた?
[お菓子やらパスタやらパンやらと、小麦粉を使うものばかり続けて大量作成してしまったためだろう。
かなりの量がストックされていたはずの小麦粉が、いつの間にやら当初の半分以下にまで減っていた。
それでも量はまだまだある。これ以上使いすぎなければ、この人数でもまだ何日か保つだろう。
あくまでも、使いすぎなければ、だが。]
………まだ昨日作ったパンも十分残ってるし、今日はやめとこうかな。
[この季節だから、1日や2日では腐る心配もないし――と。
苦笑を零して、食料庫を離れて。
手持ち無沙汰だし、水でも汲んでおこうかと、勝手口から外に出る。]
さすがに、寒いなぁ。
あ。でも、きれいな星空ー。
[外に出れば、寒さに身を縮こまらせて。
けれど雲ひとつない星空を見上げれば、ちょっとだけ散歩してみようかと、桶をその場に残して西側へ足を向けた。
「どうしたんだ?」
[声を掛けられて、振り返る。
星明りの下でも、相手が誰かはすぐにわかった。
やっぱり美人さんだなー…などと考えながら、首を傾げる]
眠れないから、ちょっとだけ散歩してたの。
エリちゃんこそ、こんな時間にどうしたのー?
[尋ねかえせば、同じような返答が返ってくる。
その後に問われた言葉には、きょとんと幾度か瞬いて。ころころと、いつものように笑った]
やだなぁ、そんな風に見えるー?
[こんな状況で、集められた中に人狼がいるらしいとわかっていても。
誰のことも疑いたくなくて、誰のことも疑えなかった。
誰が人狼でも、あたしには関係ない――と。どこか他人事のような気がしていた。エルザの遺体を見ても、まだ実感がなかった]
………エリ、ちゃ…?
[だから。
エーリッヒにナイフを向けられて、恐怖より何よりもまず『なんで?』という思いがあった。
数歩、後ろに退く]
ちが…うよ。あ、あたしは、人狼じゃない、よ……?
[そう言ったつもりだったが、エーリッヒには聞こえなかったのだろうか。
いいよもう、死ねよ…と。冷たい声が聞こえて。
胸に痛みが走って、立っていられなくなって後ろによろめけば、柵を乗り越えて後ろに倒れこむように落ちていった。]
………ハインリヒ…さ……
[最期に頭をよぎったのは、酒場で初めて会ったときに一目ぼれをした、年上のひと。
いつもからかわれてばかりで…だけど、話せば話すほど好きになっていたひと。
困らせるとわかっていても、想いを告げてしまったひと。
何か言いかけたのに、明日な…と言って立ち去ってしまったひと。
何の話、だったんだろー……
最期に、そんな事を考えていたけれど。
テーブル状に張り出した崖下に到達した時には、もう意識はなくなっていた**]
―朝・自室→台所―
[自然と目が覚める。静かな朝だった。
昨晩抱いた期待は、不安と共に裡に残ったまま。
髪をくしゃりと手櫛で整えながら階下へと向かう。
足は広間ではなくその向こうの台所へ]
おろ?ローザ?
[そこにいるかと思った人はいなくて、調子の外れた声がもれた。
足は台所の中を抜けて勝手口へ。
寒さにを震わせながら煙草に火を付けて当たりを見回す、が、人影はない]
……まさ、か?
[胸を過ぎる不安に顔をしかめた。
それをかき消すためにその場を歩いて探すことにした]
―勝手口から外―
[足跡が、ぽつぽつと集会所から西の渓谷へ向かっている。
昨晩は雪が降らなかったのか、それとも薄く積もって風で飛ばされたのか。
いずれにしても足跡に違和感を覚えて、それを辿った。
辿った足跡は渓谷の柵の際でぐちゃぐちゃに踏み荒らされている。
なにがあったんだ?と軽く柵から下を見下ろし―]
―っ!!
[絶句した。
柵の下、棚状に伸びた上に広がる朱色。
その真ん中には、見覚えのある、まさに自分が探していた人の、姿]
ロ、ローザ…、ローザ!!!!!
[名前を叫んだなら、そこから思考が真っ白になった。
ただ、彼女の胸刺さった短剣に―事故ではないことだけは理解していた]
―西側の渓谷―
俺が、俺が…。
[そばにいればよかった。もっと早く、受け入れていたならこんなことには―。
柵に手をかけて悔恨の念に潰されそうになる身体を支えた。
毎日人が殺されていく。今まではどこか他人事だったのかもしれない。
どうにもならない憤りも早く解決してしまえばなくなると、そう思っていた。
だが、護りたいと思っていた笑顔を奪われたとき、憤りは強い憎しみへと姿を変えた。
人狼さえ現れなかったら、不要な疑いをかけられたりしなければ…]
殺してやる。
[柵を強く握り締め、呟く声は低く、唸るようでもあり。
それからは何とかそこへ降りる方法はないかとそのあたりを探っているのだろう。
もう一人の犠牲者の存在は、まだ知る由も*なかった*]
―二階:個室―
[更けゆく夜は、少年にとっては安息の時ではない。
幼なじみに「お休み」と挨拶を言い別れた後にも、眠ることはなかった。さりとて周囲に意識を向けもしない。赤石を手に、願うのは唯一つだった]
……ん、
[朝が訪れて、少年は現に意識を呼び戻す。
ゆっくり拳を握ったり開いたりを繰り返してから、身支度を整え、廊下へと出た。
窓から外を見る。朝日が眩しい。
遠目ながら、まなこに映る色彩は、胸を騒がせるものだった]
―外―
[近づくにつれて色彩は鮮明になり、その場に佇む人物の姿も、地に転がるものの正体も知れた。隠されていても、誰かは容易に分かる。
作られたばかりの墓に目をやり、色の源に移した]
せんせい、が―――――
[声は、オトフリートへと視線を向けたことで、止まる。その目に宿る光を見たがゆえに]
……。
ごめんなさい。
僕は、……護、らなかった。
[少年の呟きは薄く積もった雪に吸い込まれる。
口にした途端に覚えた息苦しさを、唾液を嚥下してやり過ごす。
上着を脱ぐと、オトフリートに押し付けた。少年の背丈には大きいカーディガンは、多少なりとも彼の体温を守る助けになるだろう]
体、冷やすと、……叱られます。
でも、せんせいは、ここに。
[一方的に言って、踵を返す。
集会所の方角に戻り、己の見たことを報せようと、人を探す。
自衛団が巡回にやって来るのは、*もう少し先の事だろう*]
―自室―
[静かな音を発しながら一つ一つナイフが突き立てられる。
突き立てられているのは机の上の紙。縦線が数本と横線が二本入っただけの紙。
見たところで何かはわからぬだろうが、それは集会所の個々の部屋割り]
…ま、ここは確定だよな
[静かに、また一つナイフを突き立てる。
既に刺さっている場所は一つは奥の右側。一つは手前左側。
新たに突きたてたのは手前より一つ奥の左側。
それからゆるりと指をくるくると回し考えるように首をかしげつつ、あたりをつけるのは三箇所にナイフは自分の納まる地を探すように宙を動き、新たにナイフを刺した場所と向かいの場所に突き立てる]
双花は散り、お話は次の段階へ………ぁァッ
[いらついたようにザクリザクリを一つ二つ三つと更に突きたてていき。いくつかの突き立たずに済む場所を置いて、最後に自分の部屋の位置に突き立てて終わる]
[荒く息を吐き終えると、自嘲的な笑みを浮かべ、ナイフを抜き、紙を破り捨てて暖炉へとほうり捨てる]
…降りるか。
今日はオト兄の飯は食えないんだろうなぁ
[ダーヴがあれだけ痣のことをいったのだから既に誰がどうなったのかわかってしまう。
昨日食べておいてよかったと思いながら廊下に出て、響かぬ感覚に確かめることさえせず一階まで降りた]
ん?フォルカー早起きだな。ってかまた寒い格好して
[カーディガンをオトフリートに渡したなど知らぬ...はそんな感想を漏らしながら、フォルカーが見聞きしたことを耳にして]
そっか…ヘル姉が…ちょっと、いってくる
[雰囲気が変わったフォルカーを問うことはせずに、外へと向かった]
―外―
[真新しい足跡を辿るように向かえば、見たかろうが見たくなかろうが視界に勝手に入ってくる。
質素に作られたエルザの墓。お供え物は既に新しい雪に埋まったのか見えない。主を心配するように傍にいるユエ。
フォルカーのカーディガンを上に羽織っているオトフリート。
そして見たくなくて事実から逸らす様にしても目立って見えるヘルミーナの遺体]
……ヘル姉…
[生前と変わらぬように呼びかけながら静かに空を仰いだ。こんな空のように、ヘル姉に宿った花も蒼かったのだろうか]
─翌日/二階・自室─
[ティーセットのトレイが置かれたままの部屋。窓辺に立ち、外を眺める]
…ごめんなさい、ごめんなさい───。
[口を突いて出る謝罪。カーテンの端を両手で握り締める。泣きそうに表情を歪めるが、涙は出て来てくれない]
人が、親しい人が、どんどん死んで行く…。
───ボクは、何を憎めばいいの───?
[自分を、誰かを、この状況そのものを。表層へ現れた意識は嘆き、深層に隠れた意識は嘲笑う]
こんなことならいっそ───っつ…!
[言いかけた言葉は胸の痛みに遮られる。余計なことは考えるなと言わんばかりの痛み。考えるのを止めると、徐々に痛みは引いて行く]
[悲しさがあるかないかと聞かれればあるのだろう。
だが哀しむのは目の前の男がしてくれる。
だからただ静かに黙祷する。
なんていわれてるかといわれれば、耳は傾けたくはない気がするけれど]
ねぇ…オト兄…オト兄は
[こんなときだからこそ集会場に入れというべきか言わぬべきかわからない]
ヘル姉のこと好きだった?
[静かに呟くように問いかけた]
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