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そうなの?
ゼル兄が隠そうとするんじゃ、イレ姉余計心配しそうだけど。
ゲルダは、そっか…良かった。
それじゃベッティに…って、ライ兄?
[大丈夫かな、と宿屋の方角に視線を向けて。
ゲルダは痛みが引いたと聞けば、少し安心したように表情を緩ませた。
ベッティがまだらしいと思えば早く戻って、と言いかけたものの隣に座ったのを見るとその顔を見てきょとんとした。]
[同じ罪悪感をダーヴィッドに対しても少しは感じているのだけれど、それほど強く思わないのは、いや、思えないのは。
奇行っぷりしか目にしなかったからだろう。
ベッティなどは助かったと言っていたが。
あれも結果オーライだっただけだと思っているし]
え?
[隣に座り湖面を見つめるライヒアルトから言われた言葉に、約束の相手が誰か推測できて。]
…ごめんね。
心配かけたくなくて出てきたのに。
[ライヒアルトが来る前と同じ姿勢に戻って、小さく謝った。]
隠しきれなんてしねぇのにな。
あいつ、すぐ顔とか態度に出るから。
それでも、……心配かけたくないから黙るんだろうな。
[苦い笑みを浮かべクロエに頷く]
え、って、何だよ。
一人飛び出したお前さんをほって帰るほど
薄情な男にみえるか?
[見えるから言われたのかもしれないと思えば
カリカリと後ろ頭を掻いて]
心配の一つや二つ、掛けても誰も文句言わねぇよ。
この村のやつらはほんと甘えるのが下手だねぇ。
[謝る彼女に小さく首を振る]
[イレーネが願いを聴き届けてくれ、厨房に向かったなら、こそっと貰った薬を取り出し粥の上にざっとかけた。
それを、彼女が返ってくる前に、もごもごとかきこんで、ぜぇっと息吐く様は、ゲルダやミハエルが注視していたらバレバレであろうか。]
ゼル兄は真っ直ぐだから。
…うん、そう、だね。イレ姉は、赤ちゃんもいるしね。
[苦笑を浮かべゼルギウスのことを話すライヒアルトに頷きを返して。
薄情に見えるかと言われれば慌てて顔を横に振った。]
ち、違うよそうじゃなくて!
…じゃあ。
甘えるていうか…懺悔、聞いてくれる?
[ライヒアルトの顔を見つめた後、湖へと視線を向けて、ぽつり。]
―――…大丈夫かな
[椅子の隣にはカーテンが掛けてある窓を覗き。
漆黒の闇が広がるのを眺めながら物想う横顔。
視界の端にゼルギウスを収めたまま、唯無言で様子を覗い。
御粥の上の薬は苦いだろうなとも思いながら。]
ン、ダメダメだね
こんな時どうしたら好いんだろ…。
[恐らく強い悔恨の念が、死者として感じ取れるのか。
ユリアンの心の声が彼女へと伝わってくる。
だが、その声を彼女は一笑に付すると、]
ハッ。あいかわらずユリアンは生真面目だな。
…………俺がんなこと気にするわけないだろーが。
朽ちた俺で誰かが救えるなら、そこに悲しみなんてない。
だから、ユーリにぃはきにすることなんてねーんだよ。
[と、自分の口から出た「ユーリにぃ」という呼び方に、くつりと笑うと]
ああ、そういえば「ユーリにぃ」なんて昔は呼んでたのか。
[そうして思い返すは、村を飛び出す前。
ちょうど、粗方の村に残る人狼伝承を読み解き、自分なりの解釈を持ち始めた頃のこと。
年数にして、確か7、8年前くらいの頃だったか。]
ねぇ、ユーリにぃ。この村の人狼伝承って知ってる?
……外には他にもそういう話ってあるものなの?
[そう言って見上げるのは、ここ数年夏に訪れるようになった商人親子の子の方。
歳も近く、ゲルダやベッティ、クロエといった親が商いを行なっていた幼馴染経由で話すようになっていた。
……ああ、そう言えばこの頃、まだ俺も女らしい口調だったな。]
[そうして聞かされた外の伝承は、俺の興味を引くに十分すぎるもので]
そっか、外の世界にもそんなにいっぱい伝承があるんだ。
…………ねぇ、ユーリにぃ。わたしも外の世界に行きたい。
だから連れて行って。わたし、なんでもするから。
[ああ、若さってほんと恐ろしい。
「なんでもする」なんて、外の世界を知った今となっては、とてもじゃないが言えない言葉だ。]
まっすぐだな。
ま、お前さんもまっすぐだと思うけど。
[クロエが慌てる様子にはふっと笑い]
そんなに焦ると図星さしちまったかと思うぞ。
……ま、違うってンなら信じるか。
――…懺悔?
[紡がれた言葉は彼女の印象と重ならず
僅かに首を傾ぎながらも一つ頷き]
それでお前さんの心が少しでも軽くなるなら
いくらでも聞くよ。
―翌日 早朝―
[起きるのが夫より早かったのは、
昨日のように目覚めて傍に居ない不安のないようにという想いから。
目の前で寝息を立てる人にほっと息をついて、唇に軽く口吻けを落としてから
腕から抜け出しベットを降り、起き抜けに水を貰おうかと思い、部屋を出た。]
…………。
[廊下に出れば、微かに鼻に届く鉄の匂い。
それに眉を潜めながらも、
その元を知ろうとしてか、引き寄せられるように足が向いた。
たどり着いたのは一つの部屋の前。
それが誰の部屋かは宿主でない自身は知らない。
だがその扉に手をかけた。
鍵はあいていたのか、それとも何度も回しているうちに古い鍵は解けてしまったのか
ともあれ、扉は開かれて――――]
―翌日 早朝―
……ユリアン、さん。
[扉を大きく開けたまま――その為、血の匂いはより濃く廊下に広がる事になるか。
床の上に仰向けに転がる死体は、人の大切な部分が欠落しており
投げ出された四肢はまるで未完成な人形のよう。
――口元を抑えながらも、視線を逸らすことなくじっと見つめていた。
それは呆然と、立ち尽くすようにも見えるか。
誰かが来て声をかけるまで、母になりかけの女はその場から動く事はなかった。
顔色は悪く、微か震えて、
瑠璃の瞳はじわと湧く涙に濡れたか、*鮮やかな濃い色をしていた。*]
[ライヒアルトの返答を聞けば、ありがとう、と泣きそうな表情で笑んだものの。
すぐにその笑みは消え、ただ真っ直ぐに水面を見詰め。
小さな声で、話し始めた。]
昨夜ね。
自衛団の人に連れてかれて、あの男の人のこと見たの。
あの赤い髪の、ベッティのこと助けてくれた人。
私、あそこで横たわってたのがあの人だって気付いた時…
良かったって、思っちゃったの。
[そこで一旦言葉を切ると、視線が下に下がり。
少し、声が震えた。]
ゲルダやベッティ達じゃなくて良かった、って。
そんなこと、思っちゃった。
人が死んだことが、殺されたことが、良い訳ないのに。
だから、ね?
今日、ブリジットが、殺されたの、もしかして。
私がそんな事思ったから、罰が当たったんじゃないかって。
私のせいでブリジットが襲われたんじゃないかって。
そう、考えたら、止まらなくて。
ブリジットが聞いてたら、きっと怒るって、そんなことあるわけないって言うだろうって思うけど、それでも。
それでも、私、自分が、許せなく、て…っ
ねぇ、ライ兄。
なんで私の目は、死んだ人のことしか視えないのかな。
生きてる人のこと視れたら、ブリジットは死なずに済んだんじゃないかな。
あの男の人だって、私の目がもっと役に立てるものなら、死なずに済んだんじゃないかって…
─夕刻/宿屋・カルメンの部屋の前─
[アーベルに場所を聞いたか、カルメンの部屋の前で扉をノックする。
応じたカルメンはミハエルの姿を見てどんな表情をしただろうか。
扉の隙間から、人形作りをしていた様子が窺えた]
作業中に済まない。
やっぱり、人形がどうなってるか見たくて。
見せて貰っても構わないか?
[人形を見せて欲しいと頼む。
現状が現状だけに、最初は部屋の中に入れるのを渋られたかもしれない。
それでも懇願するように頼み込んで、ようやく中へと入れて貰った]
─夕刻/宿屋・カルメンの部屋─
これが完成予定図か?
[作業を続けるカルメンの横で完成予定図を覗き込む。
綺麗にデザインされたそれをしばし眺め、作成途中の人形へと視線を移す]
──カルメンは凄いな。
これを立体に作り上げて行くんだから。
[素直な感想。
裏表の無い賛辞にカルメンはどう思っただろうか。
ふと思い出して、右胸の内ポケットからカエルのパペットを取り出し。
左手に嵌めてカルメンの顔の横でパクパクと口を動かした]
こ、これの礼を言って無かったな。
……ありがとう、大事に、する。
[あの時は礼を欠いていたからと、恥ずかしそうにしながらも感謝を口にし。
照れた顔を見られないよう、後ろ向きでカルメンの後ろへと隠れた。
その様子にカルメンは笑っただろうか。
後ろ姿を見たなら、耳まで赤い事は見てとれたことだろう。
左手のパペットは未だパクパクと口を動かしている]
(……大事にするよ。
でもね)
[ちらりと後ろを窺うと、カルメンは再び作業を開始したようで。
そのままの状態で、今度は左胸の内ポケットから大振りの銀の十字架を取り出す]
(カルメン、君は───)
[そしてカルメンの後ろ姿へと向き直り]
(──僕の中では一番「最後」なんだ)
[その後頭部目掛けて十字架の角を思い切り───降り下ろした]
[カルメンからの悲鳴は上がっただろうか。
すかさず十字架の上の部分を引き抜くと、中から刃渡り20cm程の銀に光る突剣が現れた。
持ち手を握ると、振り向いたカルメンの喉を目掛けて一突きする。
その時の反動なのか、カルメンが狙ったのかは分からないが、裁断用の鋏が跳ねてミハエルの左腕を裂いて行った]
っ──!!
[一瞬怯みはしたが、構うことなく。
強引にカルメンを床に引きずり倒すと、重なり倒れるようにして左胸へと突剣を突き立てる。
そのまま一度突剣を抉るように動かし、馬乗りの体勢になると、何度も突剣を左胸へと突き立てる。
その間カルメンが暴れても、自分の肌に傷がついても、構うことなく行動を繰り返した]
[カルメンが動かなくなると、返り血を浴びた状態のまま未完成の人形へと近付き]
──ごめんね、Мама。
人形完成させてあげられなくなっちゃった。
[腕に抱えて部屋の隅に座り込む。
傍には血濡れた突剣と、その鞘である銀の十字架。
事を成す時は必死だったミハエルの表情は感情が抜け落ちたようになり。
それを隠すように顔を抱えた人形に埋めるの*だった*]
人狼伝承?
あー、この村にもそんなのがあるのか。
何か各地にあるらしいけど。
あんなのに興味持つって、ジットちゃんは変わってんな。
[>>+14呆れたように言いながらも、聞き齧った話を教えたりした。
同い年の子らには笑われそうなものだったし、他の年少の子達には怖がるだろうから出来ない類の話だった]
人狼ばかりじゃないんだよ。
占われるとこう、どろどろって溶けちゃう奴とかさ。
[怖がらせればもう聞かれないかと思ったのに。
逆に外の世界に憧れられて焦ったりもしたものだ。
そんな約束できないからと逃げ回って、村を出てから父親に言ったら思いっきり叱られた。
今なら当然だなと思う。面白可笑しく話していいようなものではなかったのだから]
[クロエと同じく湖畔へと視線を向け彼女の声を聞く。
赤毛の男の事を言われれば微かに目を瞠り。
彼女の告白を聞けば、小さく息を吐く
ゆる、とクロエの方へと深緑が向けられる]
同じ状況なら私も同じように思う。
アーベルじゃなくて良かった。
イレーネじゃなくて良かった。
お前さんでもなくて良かった。
村の者でなくて、良かった、ってな。
良い訳ないが、そう思っちまうよ。
修道士失格だね。
[声の震えに気付きながらも今はゆると目を細めるのみ]
[ライヒアルトの溜息に、びくりと身体を竦める。
続いた言葉にも顔は上げられぬまま、それでもそんなことないと小さく頭を振った。
こちらに視線が向いているかどうかは知らぬまま。]
――…クロエ。
ブリジットが襲われたのはお前さんのせいじゃねぇよ。
悪いのは、人狼。
だから、そんなに自分を責めるな。
ブリジットだって怒るかもしれねぇが……
それはお前さんが心配だからだって、分かるだろ?
[視る力など無い青年に
クロエの苦しみを本当に理解する事は出来ない。
けれど――]
生きてる人を視れたら、か。
そんな力があれば、と思う事もあるけど、な。
……ブリジットが死んだのもあの赤毛の男が死んだのも
お前さんが悪いんじゃねぇよ。
自分を許してやれ。
――…な。
如何しても自分が許せないなら、さ。
俺がお前さんを許すよ。
[気休めにしかならぬだろうが
そんな言葉を青年はクロエに紡ぐ。
――私、でなく、俺。
それは青年にとって一番しっくりとくる一人称だった]
[ライヒアルトから貰った薬は苦くて、わざと苦くしてるのではなかろうかとゼルギウスは訝しむ。
水を頼んだ妻の帰りは思うより遅く、けんけんっと薬の苦さによる咳を何度か。]
ん……―――。
祈るだけでも、違うんじゃないかな?
帰って来た時に、唯、お帰りって笑顔で
受け入れてあげれるのが一番だと思うけれど。
[物想うゲルダの横顔に、咳が収まってからポツリと向ける言葉。
そうこうするうちに、イレーネが水を持って帰ってくるだろうか。
謂ったことを体現するように、微笑んで、お帰りの代わりにありがとうと告げる。食事を終えていたこともあり、きっと妻は安心してくれるはずで。
ほらね?とゲルダに得意そうに微笑みを向けて、きっとやがて妻と二人部屋へと*戻るのだろう*]
……でも。人狼は、あの中にいるんでしょう?
[ライヒアルトの言葉を黙ったまま聞いていたが。
顔を伏せたまま、そう小さな声で問い。]
皆、私の目のこと知っても嫌わないでくれた。
あそこにいる皆が、大切なの。
ギュン爺ちゃんやブリジットを襲った人狼だとしても。
…私の目が、生きている人からみつけられる目だったら。
こんなことになる前に、止められたかもしれない。
そしたら、誰も辛い思いなんかしなくて済んだ。
無いものねだりだって解ってる。
それでも私、悔しい。
私の好きな人たちが、私の好きな人の命を奪ってしまうことが。
それを止められない自分が。
悔しくてたまらない…!
[顔を伏せたまま、止められない後悔が口から飛び出していく。
それに対して言われた、ライヒアルトの言葉。
俺が許すというその言葉に、肩を震わせた。]
……っ…ふ…うぅ……っ…
[返事は返せぬもの。
顔を伏せたまま声を押し殺して泣く声が、その代わりになるだろうか。]
――…あの中に居るらしいな。
見当もつかねぇが………。
[クロエの問いには肯定の頷き]
大切、か……。
そうだな………。
[ゆるく相槌を打ち]
もし、その目を持っていたとして
――…見つけて如何する?
止める為に話しに言ったとして、
お前さんが食われちまうかもしれねぇぞ?
悔しいのは分かるが、無茶はやらかすなよ。
[案じるように声を紡ぐ青年の眸は彼女に向けられたまま]
[微かな嗚咽を零すクロエを見詰めていた眸が彷徨う。
僅かに迷うような間があった。
震える華奢な娘の肩が深緑に映り込み]
――…我慢するな。
俺は見てねぇし、聞いてねぇ。
だから………
[彼女の背に手を遣り撫でんとする]
見つけたら…止めに行くよ。
話して、わかってもらえるならそれで。
もしも私が食べられたとしても、それで最後にしてくれるなら構わない。
…目のこと話すって決めた時に、覚悟はしてあるもの。
[伝承や昔話からではなく、祖父から言われていた事。
この目を人ならざる者に知られたら、命を狙われると。
だからこそ、皆に伝えたのだ。
嫌われても、皆の盾代わりになることは出来るからと。]
[そうして、それから数年。
俺は、幼馴染連中の家の手伝いやら、内職やらで村の外での活動資金を貯め、そしてある程度の資金の貯まった夏の終わり。]
おまたせ、おっちゃん、ユーリにぃ。
[村の入り口のところで待っていた二人に駆け寄る。
その手には大きめの旅行鞄。中には最低限の身の回りの物と村の皆からの激励の品々、そしてこれまで貯めた活動資金。
これからどうするかと聞かれれば]
とりあえず、麓の町に拠点を置こうと思います。
そこまで、お願いしてもいいでしょうか?
あ、もちろん相応のお代は払わせてもらいます。そこは意地でも。
[そう答えたっけか。]
[背を撫でる手に気付けば、その温もりに涙腺が余計緩み。
ふ、と息を吸って掠れた声で呟いた。]
ライ兄…ありがと。
ごめん、ね。甘えて。
[そう、小さく礼を言うも語尾は泣き声に歪み。
顔を伏せ、泣き顔は見せぬまましばらくそうしているも。
気がつけば、泣き疲れたか*眠ってしまった。*]
――…覚悟はわかった。
でも、さ。
自衛団長殿は止める為に寄越したんだろ。
あの、銀の短剣。
話し合うより、自分の命を大事にしろよ。
[クロエの言葉を聞けば
僅かに困ったように青年の眸が伏せられる]
…うん、好いのかな、僕…
[何処か迷う素振りの娘は、未だ戻らぬ二人を想って紡がれる。]
そう、だね…お祈りしておこうかな
クロエとライヒ君になにも無かったら好い…
[そっと両手を重ねて指をからめて祈る仕種。
如何か好きな人たちが無事でありますようにと囁かれる。
ゼルギウスに有難うと伝えて微笑み。
そうして、二人が部屋に戻るなら御休みなさいと手を振って。]
…ちゃんと帰ってきて呉れると好い、な
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