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おまえたちを鏖(みなごろし)にすれば、この世界は閉じて終焉を迎える。
俺が死ねばおまえたちの悪夢は終わる。
簡単なゲームだ。
――いや。
此処から出て、記憶を取り戻した時、
おまえたちの悪夢ははじまる、のかもな?
[ギルバートの腐り落ちた左目を見詰め、嘲弄するように]
[男は*呵呵大笑した。*]
邪魔――?
本気で言っているのかしら。
[首を傾けて、青い色を見ました。
わたしの眼には、形は捉えられません。
作られる表情も、その心臓のある場所も。]
…終焉の使者なんて言うから、期待したけれど。
もう、どうでもいいわ。
[ただ一つ、手許の灯は、ゆらゆらと頼りなげに揺れていました。]
君と俺との違いを教えてあげるよ、お兄さん。
俺は、人殺しをした後に、そんな風に笑うことは、無いよ……
何故だろうね。人なんて殺したことは無いのにね。
でも、それだけは確実に分かる。
君のように、血に染まるとを悦びと変えることは――…ありえない。
たとえ、俺の中で悪夢が始まろうともね。
[血塗れになった男に、再びナイフの先を*向けた*]
終焉なんて望まないもの。
貴女が終焉を望むと言うのなら、それは阻止させてもらうわ。
終焉の使者を殺し──え?
[どうでも良い、と彼女は言った。階上へと向けていた滅紫をニーナへと戻す]
…何を考えているの?
[虚無感すら感じるような物言いに、更なる警戒心が募った]
[蒼氷を一つ、ゆる、と瞬かせ。
視線を、紅蛇へと落とす]
そういえば。
[呟きに、仰ぎ見る、闇色の眼]
お前、はどうなるんだ?
[短い問い。
知らぬ。
返る答えは簡素]
……いい加減だな。
ま、もっとも。
この場から、解放される保障もないわけだが。
[呟き、蒼氷を再び城へ。
落ち着かぬ様子で揺れる紅蛇の尾は、何かを感じ取っているかの如く。
それが、自らの始まりとなったものと同属の死によるものか、他に理由があるのかは、定かではなく。
そして、それへの興味は薄く。
蒼氷はただ、静かに緋の内に]
そう。
世界はこんなにも、醜いのに。
[表情は見えません。
わたしの嫌いなこの世界を、それを望む者など、見たくはないから。
そして、疑問にも答えません。
今はまだ。]
…まだ、元気はあるようだから。
少しは期待してもいいのかしらね。
[眼を背けた先は、階上。
笑う男の形が、ちらと見えた気がしました。]
醜い?
綺麗なものばかりを望むなら、夢にでも逃げ込んでなさい。
綺麗なものも、醜いものも、全てあるから世界なのよ。
貴女が何を嫌悪してるのかは知らないけれど。
望むことが違うのは間違いないようね。
期待なんて、打ち砕いてあげるわ。
[問いに答えぬニーナ。答えを得られぬならば聞く意味も無いと滅紫は再び階上へと向かう。いつでも動ける体勢。けれどタイミングを図り、未だ動くことは無い]
[緊迫した空気に包まれる城。
それを緋花の中から見るのは死者]
天上の花。
あなたはだれにしゅくふくを?
[二相の境が崩れ始め。
落ち着いた声と幼い声が交差する]
緋色の湖。
あなたはなにをまっているの?
こたえをさがす?
[翠が揺れて蒼氷と交わる]
花も天も。
いまだこたえをしらないと?
終焉の形が示されようとしている今となっても。
最初から、決められていた結末。
ここが、それだけのためにある世界だというなら違うかも知れないが。
[揺れる翠を、蒼氷は静かに見やる]
そうでないなら、誰も、何も、答えは知らない。
……誰が死んで、誰が生きるか。
その先に何があるかは、な。
…違うわね。
醜いものと、綺麗ごと。
この世界にはそれだけ。
[今度こそ、口許で笑みを作りました。
青い少女がそれを見たか――そもそもこの声を聞いたかさえ分かりませんが、それもどうだっていいことです。]
やれるなら、やってみなさいな。
[眼は階上に向けたまま、動く気配のない少女にもう一言。]
そうだね。俺は人間さ。
――…だからどうした?
[――ゆらり。
獣の動きを、緩やかな動作で避けようと動く。]
そして、君は獣――…
[振り下ろされた鉤爪が、肩に触れる。
ほんの少し触れただけにも関わらず、コートは爪の軌道に沿って裂け、肩口からは血が滲む。]
でもね、違いは「種族」の問題じゃない――…
[姿勢を正し、フェッテの要領で、ナサニエルの脇腹目掛けて回し蹴りを放った。]
さだめがかえられぬものでないのなら。
人も獣も抗い生きてゆくのが世界ならば。
[揺れる翠は少しずつ色を取り戻す]
だれも、なにも、こたえはしらない。
終焉を迎えたその先に、何があるのかは。
誰が何を掴むのかは、誰も知らない。
知らないからこそ…。
[光宿した硬玉は一度、黒い門の向こうへと流れる]
…手を伸ばす?
そうだろうな。
[蒼氷もまた刹那、門の向こうへ視線を投げ]
どうなるかわからないからこそ、自分の望むものを、望む終わりを引き寄せ、掴むために抗う。
……望みに向けて手を伸ばすのを止めたら、生きてたって死んでるのとかわらんだろ。
[それは一時の自身にも当てはまるが。
それは詮無い事と、触れはせずに]
[放たれた回し蹴りを、咄嗟に肘を曲げた腕でブロックするが、]
く、
[踊り手の鍛えられた脚力は伊達ではない。]
[回転の乗った、鋭く重い一撃が、受け止めた腕を痺れさせた。]
[振り上げた足を下ろし、ナイフを振りかざす。]
俺達「所詮人間」と、君達「人狼」の違い……
それはね。
自分の血を隠れ蓑にして、泣き寝入りするか否かの違いさ……
君達がどんな不幸な半生を送ってきたか、俺は知らない。
けれどね……如何にも自分が不幸だという顔をして、自分が生きやすくなるように「周りを説得する」ことすらせず――人間を逆恨みして、人間よりかずっと凶暴な牙と爪を無暗に振りかざしているのが、俺は我慢ならないんだよ!!
[翳したナイフを、ナサニエルの肩目掛けて一気に振り下ろした。]
逃げてるだけじゃ、何も変わらないのよ。
[ニーナの笑みは見ない。視線は階上に向けたまま、それだけを紡いだ]
[階上では二人の男性が切り交わしていた。もしギルバートが押し負けるようなことがあれば、すぐさま駈け上がれるよう足に力を込める]
[痺れた腕では、振り下ろされるナイフを払い切れない]
[だから、]
[間合いが充分でないのを承知で、ギルバートに向かって膝蹴りを放った。]
[身体に捻りが加わったお陰で、刺さる軌跡がずれ、腕が大きく裂ける。]
[ナサニエルの言葉>>44が、届く]
[男は左手を右腕に触れさせる]
[金属の音がして、黒を破いて銀があらわれる]
それはお前の望みだろう
ラッセルの――お前にとっては"フィン"か?
あいつの望みは、何だったんだ
[問いかけではない]
[続く言葉の波にそれは沈む]
[それは、男が考えることでも、他の誰が考えることでもない]
[ナサニエルが考えれば良いことだと、男は思っているのだから、答えは望まなかった]
[血が壁や床に飛び散り、奇妙な紋様を描く]
ハ、ハ!
知った風な口を叩くな!
[憤りではない、]
俺たちとおまえらは決して相容れない、
共に在ることもあり得ない、
殺し合いに理屈を捏ねるな!
[ナイフが皮膚を裂き、肉を削いでゆく。ギルバートはそれを、右の掌から肩の筋肉に掛けて、電気のようにビリビリと走る感覚として知覚した。]
[彼の視界に、スローモーションで血飛沫が舞う。
ナイフが「当たった」場所は、狙った場所とは違う、ナサニエルの腕。それでも当たらないよりはマシと判断した彼は――]
………ぐっ………はァ
[真正面から腹に膝蹴りを食らい、胃から逆流してきた液体を撒き散らして、その場に崩れた。]
[ギルバートが崩折れた]
[タン、と床を蹴る。軽やかに、滑らかな軌跡を描き階段を駆け上がり、ナサニエルへと肉薄し]
そうね、殺し合いに理屈なんて要らない。
やるかやられるか、それだけ!
[体勢を低く、滑るように移動し。狙うは膝蹴りのために持ち上げられた足の腱。ケープの中から己が牙を抜き放った]
[引き裂かれた腕はだらりと垂れている。]
[その指先からは絶え間なく血が滴り]
[異様な光を放つ双眸は青玉の色、]
[日の沈む前は回復の速度も常より遅く、苦痛も和らぐことなく、]
[蒼白の顔に玉のような汗が浮かんだ。]
甘えるな
[男の声はただただ告げる]
終焉を望むのは勝手だが、自分の選ぶものを他のせいにするな
世界が悪い、他人が悪い
お前はその中で何をした?
……うるせえ。
黙れ、クソボケが。
[崩れ落ちた場所から、よろよろという動きで、ナサニエルの真下の位置を避けようと移動する。]
何が「終焉」だ。
てめぇは、カッコつけて御託並べて、現実から逃げてるだけじゃねぇか……!
そんなにあいつが大事なら、鍵付き冷蔵庫にでも放り込んでりゃ良かったんだよ。外に出すからロクなことにならねぇんだよ……
寝言垂れるのも大概にしろ……ヘタレ種族が。
[たとえギルバートを目の前にしていても]
[階段を駆け上がる娘の気配に気付かぬ筈もなく]
ッ――ちょろちょろするな!
[上げた足をそのまま娘へと蹴り下ろした。]
ふ。
[そんなことかと、口角を釣り上げます。]
そう簡単に世界は変わらないわ。
失くしたものも戻って来ない。
――だったら、初めからやり直すほうが早いでしょう?
[反撃が来るのは覚悟の上。今の自分の避けるほどの俊敏さは無い。だから]
他人に任せて結果を待つほど、私は大人しくないのよ!
[蹴り下ろされる足に対し左腕を掲げる。体勢が低いのはそのまま膝をつき、蹴りを受け切るため]
……っ!
[重力をも伴った蹴りは重く、かなりの衝撃を伴う。けれどその威力を受けながらも、右手に握った牙で相手の脹脛付近を思い切り切り払った]
望むものを引き寄せるために、手を伸ばす。
ああ。
そんなことさえ忘れていた。
[詳細な記憶はいまだ取り戻せず。
それでも抱いていた思いの欠片は胸に戻り]
私はいきたかった。
少しでも月に近い場所へ。
僅かでも光の注ぐ場所で。
そう。
彼らも望むものの為に。
最期まで手を伸ばすのですね。
[死者の手はもう届かない。
だから硬玉は僅かに悲しみの光を宿して]
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