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悪くないんだ。
許されないなんてことは、絶対にない。
[抵抗はなく、腕の中に小さな身体を抱きこめて。
弟妹達を落ち着かせる時のように、そっと頭を背中を撫でながら何度も繰り返した。
これもまた、ナータが教えてくれたものだ]
俺もいつまでもナータの味方だから。
何があっても諦めないから。
ねえ、信じて。お願い。
[片手を胸元まで引き戻して。縋るような指の上から重ねた]
[まるで子供に言い聞かせるようなライヒアルトの声。
背をなでるその手からはそのひとの優しさが伝わるかのよう。
味方だと紡ぐ彼が誰であるか私は知っている。
信じてという何処か切実な願いの後、重なる其の手。
おずおずと彼の指に自らの指を絡める頃には
其の手は少女のものではなく、生前と変わらぬくらいの大きさか。
ライヒアルトの手よりも少しだけ小さく細い指先に力が籠もる]
――…また、私を甘やかす。
[朧であった記憶は既に元に戻っていて]
ラーイの事、私はずっと信じてる。
[そろりと顔をあげれば焦がれた深緑が菫に映りこむ。
会いたいと思っていた彼に微笑む姿はいつもと変わらぬもの]
守れなくて、ごめんね。
[六歳の頃の姿になったのはその時が一番養父に甘えられたから。
怪我の痛みに苛まれても歩く事さえ儘ならずとも
忙しいのに時間を割いてくれた養父の愛情を感じられたから。
寂しがりで甘えたなナターリエはそれがとても嬉しかった。
罪を犯したと知りながら見捨てなかった養父――。
痛みから逃げての後退であったのに
痛みを知った頃に戻ったのは皮肉なものだったけど。
ライヒアルトやクレメンスに会えないと思っていた。
顔向けできぬと思っていたから知らず残る存在へと意識が向いただけ。
忘れたいと思ったわけではないけど、何処かで逃げていたのも事実]
―灯台傍―
[声が届いた。
花が疼く。それは、矢張り痛みを伝える。
――逃がしたいと思うから。
だけれど、そんなことが言えるはずもなく、ゆっくり顔を上げた]
うん、居るよ。大丈夫。
…? そういえばエルはどうしてここに?
[落ちたり、気絶したり。
そんなことするわけないよ、なんて言えるのは、時が経ったから。
墓参りにも頷いたけれど、なんでここにいるのだろうと今更思って聞いた。
答えを聞いて、アーベルは後で真剣にどうにかしようと思ったのは仕方のない話]
いきなり、何言って
[隣に座るエルゼリートに顔を向ける。
言いかけた言葉は、蒼花と言葉にされて、喉の奥でとどまる。
選ぶべきは何か。
ずきずきと痛む花に、思考が乱れる。
悲しませたのだろうか。
だけれど、そうだ、一番良いのは――
選ぶのは弁明ではなく、罪悪感など感じさせないようにする言葉。
口にするたびに、痛みが襲う。食われるなと、殺せと、叫ぶように]
ばれちゃったのか。
だって、僕は死にたくなかったし。
言わなければ他の人が死ぬと思ってたんだよ。
エルがどうかなんて知らないけど、…そうだね、疑ってたのかな。
[聞いていないのかもしれないけれど、なんでもないことのように、言ってみせる。
少しの震えはあったかもしれないけれど――]
[だけれど、体が倒されて。
力の差はわかりきっていた。
抵抗などはするつもりもなかったのに、体はそうしろと望む。
ナイフを置いてきてよかったと、思った。
我慢出来ない。
告げられた言葉に、表情に、息を呑む。
あぁ、本当に人狼だったのだ。
そう理解して、"殺さなければいけない存在"だとはっきり認識して。
衝動に抗っていなくてよかったと、わずかに残った、自分の意識が考えた]
[手が押しのけようとしたけれど、それは遅い。
刃の入る痛みではない、喉に歯が食い込むその痛みに、声ならぬ悲鳴があがる。
息が荒い。
止められない。
痣の与える痛みと、獣の牙が与える痛みに挟まれて、意識が休息に薄れてゆく。
もう、抵抗していると自分で認識することも出来なかった。
自分を食べている、大切な友の声が聞こえる。
何を言っているのかはわからないけれど、苦しんでいるようではなかったから、少しほっとした。
身体はなすがままに動き、抵抗の力は失われてゆく。
少しずつ痣が削られるからか、意識は少し戻ってゆく。
痛い、痛い。
それしか感じられなかったけれど、名前を呼ぼうと口を開こうとした。
だけれどそれは、気付かれることも、空気を震えさせることもない。感情も曖昧なままに、命が潰えた。
あとはただ人形のように、貪られながらあたたかさを失ってゆくだけ]
ナータ?
[気がつけば、手の下の指の感触が変わっていた。>>+53
回した腕の位置もずれている。自分も良く覚えているナータの姿]
……甘やかされてきた分は甘やかし返さないと。
こんなんじゃ、全然足りないよ。
信じてくれてありがとう。
[菫色の微笑を見て、泣き笑いの表情で背中を抱く腕に力を込めた]
ううん。俺こそ。
苦しめるばかりでごめん。
こうなるまで何もできなくて、ごめんなさい……。
―そして今―
[食われてゆく己の身体を、食べているエルゼリートの姿を、見下ろす。見下ろすということは自分は立っているということで。
先ほどまで聞こえていた言葉が今になって、しっかりと理解できてくる。
といっても、美味しいとかそういうものだったけれど]
そりゃ僕まだ20代だからさ…。いくらなんでも朱花よりは美味しいと思うよ。失礼じゃないかい、エル。
[聞こえはしないのだろうし、聞かせるつもりもないけれど、そんな事を呟いた。
寧ろ自分がクレメンスに対して失礼なことを言っている**]
私はラーイほど甘やかしてないもの。
[拗ねたような口調になってしまうのは照れ隠しに他ならない。
けれど其れも直ぐに消えて嬉しそうな笑みが浮かぶ]
十分過ぎるくらい甘やかされてるよ。
……あの、ね。
[抱きしめられるままに身体を寄せて内緒話をするかのように
ライヒアルト>>+59の耳朶へとくちびるを寄せる]
迎えにきてくれて嬉しかった。
ありがとう、ラーイ。
[何となく恥ずかしいから顔は見ないで
その代わりに絡めたその手をぎゅっと握る]
ラーイは悪くないよ。
だから、謝らないで……。
[ナータの心が、砕けてしまっていたのでなければ。
今はそれで満足しておかなければと思った]
[蒼花を喰らうもう一人の感情も流れ込んできてはいる。
自分だけのものだと、誰にも譲らないと、笑っている。
誰よりも大切だったから、そうするのだというのが分かった。
黒い獣は、リートは、そうは望めなかったけれど。
もう一人自身もそうと気づけていなくても。共感できた。
彼は、誰が止めてくれるのだろう……]
そうかなぁ。
[拗ねたような口調に涙のない笑いを誘われた。>>+61
耳朶に唇が近づくと、伝わる衝動のせいではなく胸がドキリとした]
俺の、我儘でもある、から。
感謝されるような、ことじゃ。
分かった。もう言わない。
けどそれなら、ナータも謝らないで。……お願い。
[絡んだ手をぎゅっと握り返して。
耳朶ではなく、伏せられたままの菫色の隣に唇を寄せ返す]
……あんまり待たせると、クレム兄も拗ねる、かも。
行こう?
[少しの時間が過ぎた後、少し赤い顔でそう*言った*]
そうよ。
[笑う気配>>+63に少しだけほっとする]
ラーイが我が儘なんて珍しい。
それでもね、嬉しかったから。
[目覚めて最初に会ったのがライヒアルトだったから
女は今この姿を取り戻した。
クレメンスであったなら多分ちいさなままだっただろう]
それなら、私も言わないようにする。
[彼のお願いに弱いからこくと頷きを向ける。
握り返される手が嬉しくてくちびるは笑みを形作っていた。
目許へと触れるのは何であったか。
伏せた睫毛が微かに震える]
[そろと目を開けライヒアルトへと視線を向ければ
彼の肌を染める色が見えて]
――…ええ。
おにいさまを待たせてはいけないわね。
[上擦るような音が混じるのは照れの証か。
女の目許には仄かに朱が刷かれている。
行こう、という彼に頷いて繋いだ手はそのままに]
ねぇ、ラーイ。
……これからも一緒にいて、いいのかな。
[そろと立ち上がり問う声は控えめなもの。
過ぎた依存――甘えが彼にとって邪魔にはならないかと
案じて向けたものだけど如何響くかは分からない**]
[二人についていきながら、エルゼリートがゲルダを食べている姿が見えた。
ブリジットがエルゼリートに問いかけていた。
自分は、懐からタオルにくるんだ包丁を手にして]
エルゼさんがエーファを食べたの?
[返答がどうでも、殺すつもりだったけども]
ブリジットさん、ごめん、なさい…
無理だよ、誰かに、なんて…
[エーファにより近いしゃべり方で謝罪の言葉を。
タオルにくるんだままの包丁を手に、ゆっくりエルゼリートの方に*近づいていった*]
― →岬へ ―
[フォルカーが離れない程度の速度で――一人だけ舞台に置いていく気は更々無い――走る最中、前を向いたままフォルカーに問いかけた。]
なぁフォルカー、お前は俺の事信じてる?
[問いかけにフォルカーはどう答えたか。困惑したまま返事が無くとも。]
もし信じてるなら…俺が言った事、細かい所まで全部思い出すんだヨ。
狩りの事、ナイフの扱い……
お前にはほとんど全部、教えたつもりだから。
[フォルカーの方は見ずに、そう言った。
前を向いたまま、常の笑みを浮かべたまま。]
だけど信じられないと思ったら、俺の事をちゃあんと、殺すんだヨ。
[より深い笑みを浮かべてそう告げると、岬へと辿りついた。]
― 灯台 ―
[辺りには鉄錆の匂いが漂っている。
声のする方、灯台のあたりに行けば、青ざめた主の姿が見えた。
顔色が悪い、震えてもいるだろうか。
発作が起きないよう、到着したことを告げるように肩に手を置きながら、群青はその先に居るだろうモノを期待しながら見た。]
……ああ、やっと見れたなァ。
[生きて食事をする狼が。
教えてよかったナ、と内心で密やかに歓喜しながら。]
なぁ兄さん、ゲルダの姉さんの味はどう?
蒼い花は美味しいかい?
[そう笑って、問いかけた**]
[獣を助け]
[獣を殺し]
[全てを闇に]
[結局、彼は、自分の役目を完全に継いだことになりそうだ。…そんなことは、本人の与り知らぬ事だろうが…]
まあ、食われなきゃ、だけどな。
[にぃ。ににぃ。
不意に、夜闇の猫が高く、鳴く。
黒の中の翠は、岬の方へと向いていた]
……いたい。
……いたそう。
[少年も、ぽつり、呟いて同じ方を見る]
いたくないのが、きっと、一番、いいのに、ね……。
[それは理想でしかない、と。
理解してる夜闇の猫は、にぃ、とないた**]
[自分の肉体が少しずつ食べられ、消えてゆくのを見ていたら、生きている人達がやってくるのがわかる]
エル。エルゼリート。
逃げないと殺されるよ。
[狼の感情はわからない。
ただ、死んでしまったからか、自分の肉体に執着もなく、それを食べているために彼が殺されるのは、避けたいと思う。
もちろん願ったところで聞こえやしないので、そっと手を伸ばして、青い髪にふれようとする。でも、触れられない。
ブリジットの様子に眉を寄せるのは、彼女の体力を心配して。
後ろからアーベルとフォルカーもやってくる]
……アーベルは生きてたら、殴ってやれたのになぁ。
[もちろん、*本気です*]
―少し前―
[前を歩くアーベルからかかる声に、迷いなく]
信じてるよ。
助けてもらったし。
[答えて、続いた言葉]
俺に、アーベルは、殺せないよ……
[答えるのは普段よくみせる、フォルカーのものだった]
次はちゃんとやるよ。
持ってきてるから。
[ナイフではなかったので、扱いは変わるのだろうけど**]
─灯台傍─
[オレはゲルダの後ろ首部分に顔を伏せて、丁寧に丁寧に花の咲く部分を削り取る。
クレメンスの時のように花の部分を残したりはしない。
全て余すことなく削り取り、胃の中へと納めた]
ふ、ぅん……。
……───ああ、見つかっちゃったか。
[恍惚の表情で赤の垂れたゲルダの首筋を舐め上げた時、オレは問う声に気付いて視線だけを向けた。
何事もなければ睦事にも見えたかもしれないその光景も、滴る赤のために惨事にしか見えない]
ゲルダ、おいしいよ?
花だからっていうのもあるけど………ゲルダだから。
[ブリジットの問いかけには答えず>>27、アーベルの問いかけに>>30に返事をした。
背は壁に預けたまま、オレは長い髪を揺らし顔を三人へと向ける。
二つの翡翠は本紫へと変わっていて、笑う口許には牙が見え隠れし。
紡ぐ声と表情は、聞く者に異性を思わせるものだった]
エーファ?
ああ、うん。オレが喰ったよ。
エーファも柔らかくておいしかった。
他の人とは少し味が違ったよ。
[フォルカーの問い>>28にも返すのは緩やかな笑み。
その間もゲルダを腕の中から離そうとはせず、しっかりと腹部に手を回していて。
扇情的な表情で垂れる赤を舐め上げたり、ちゅ、と音を立てて吸ったりしていた]
それで、みんなはオレを殺しに来たワケ?
[オレは近づいて来るフォルカーの気配を感じながら、三人を見ぬままに問う。
その声に恐れるような感情は全く含まれて*いなかった*]
― 少し前 ―
[フォルカーの返事に、少し振り返ると頭をぽんと撫でた。
さて本当に正しく思い出せるだろうかは分らない。
エルザ次第では、その必要もないのだろうが。
どう転んでも、自分はさして問題ないかと胸中で思いながら、そして岬にたどり着いて。]
─ 灯台傍 ─
おーお、アイだねぇ。悲しくはないんだ?
[ゲルダを美味いと言い、貪る様>>33に軽く肩を竦める。異様な光景を笑いながら見つめていた。]
どうしようかなーって思ってるんだけどネ。
フォルカーは殺したそうね。
お嬢は?姉さんはどうしたい?
[少しずつエルザへと近づこうとするフォルカーを止めずに、今はこちら側に立ちながら主の傍で言う。
さっきと同じく、違和感感じるエルザを、兄さん、とは呼ばなかった。]
俺たちみんな食って、村に下りて村人も皆食っちまう?
それとも、ここから逃げる?
見る者二人が死んで、人狼が一人死んで、双花も喰われた。
守る者は誰だったか分んないケド…。
これだけ死んだんだ。今なら、ひょっとしたら場が崩れてて逃げられるかもしれないよ。
[満月から、どれくらい経っただろう。月の影響もひょっとしたら薄くなってきたかもしれない。実際はどうだか知る由も無いが。]
殺し合いがしたい、ってんなら俺が相手してもいいよ。
姉さんのお相手が勤まる様に、頑張らせてもらうケド。
[物騒な事も軽く言いながら、腰にいつも下げているナイフの留め金を外し、取り出しやすいようにした。
ヴィリーに言いそびれた事があった。人狼を殺せるかという問いの返事。
因子を与えられながら花開かなかった自分は、何の制約も受けられず。
だからYesと、苦もなく言えるのだが。]
……俺のお願い聞いてくれるなら、俺が誰かを殺してもいいよ。
ああ、お願いは先払いで、内容は秘密ネ。
[狂い損ねてより暗がりに堕ちてい男は、常の笑みを浮かべながら、そんな事も口にした**]
[岬の方を振り返る。
何か言いたげな何処か寂しげな色が一瞬浮かぶ。
ふるり、首を振るい視線を外す。
私を殺した者があちらにいる。
イヤ、だから、私は見ないふりをする]
ミーレは無事かしら。
おなか空かせてないかしら。
ごはん、あげそびれちゃったな。
[最期に触れたあたたかさは白猫のものだった。
エーリッヒはミーレの事を心配しているだろうか]
おにいさまも居るって言ってたけど……
他の人たちも、居る?
[こてんと首を傾げてライヒアルトを見上げた**]
ああ、エーファはたぶん違うからね。
[エルゼリートの答えに、素直に思ったことを口にした。
それはおそらく二人が生まれたときに現れた決定的な違い。別に確信があったわけではないけども]
俺は殺しにきたよ。
[問いかけに答え、その心は、エーファが死んでから初めて満たされた気がする。憎悪と怒りと、敵意を隠す気の無い目を向けていた]
[アーベルの返答には驚くようなことはしない。
どこまでが本心かはわからないけど、そのように話すことは不思議なことではなかったし、何より教えたことをと、強調されたそれは彼が自分達を殺す可能性があることをいっているのだと思ったから、だから理解はしていた。*理解だけは*]
[ヴィリーとの不毛なやり取りを終える。それをエーファがどういう思いで見てたかはしらないが、岬のほうへ見にいくヴィリーを軽く手を振って見送る。
途中元宿屋から岬へと向かっていくものたちの姿が見えて一度空を見上げ、そして顔を顰めた]
……ゆるされるなら。
[せめても、と願ったことは叶ったけれど。
最初に願ったことは叶わなくて、求めれば全てが与えられるわけではないとも知ったから。
握ったままの手に少し力を混めて、そう言った。>>+65]
………。
[>>+72ミーレの事は、虚脱の中で確認し損なっていて。
最後に見た時、もう一人の腕に爪を立てていたのを思い出す。
岬の方を振り返り、一瞬眸を金に染めた。
場の開放がどちらによって起きたとしても、きっと心が晴れることはない。鉄紺のようにはなれなかったから]
エーリはいたよ。前とは違う姿だけど。
[ナータの所に行くまでは自分も似たものだったのは伏せておいた。
クレムと会えばあっさりバラされる可能性は高そうだけれど]
他の人もいるみたい。
でも俺は会えてない。
[深緑に戻った眸でナータを見下ろし答える。>>+72
声は聞こえた気がする人達を思い浮かべて、軽く睫を伏せた。
そのまま進めば、夜闇の猫と少年はまだクレムの膝の上にいただろうか。ほら、と促し手の力を緩めて足を止め]
ありがとう。
[行けといってくれた夜闇の翠に向けて、そっと頭を下げた]
[エーリと話し確認していなかったら。送り出してくれたあの一声がなかったら、躊躇が残ってしまっていたと思う。
クレムが連れて来いと言ってくれなかったら。
名を呼ぶより先に、無力な絶望感に負けてしまったかもしれない。
そうしたら今もまだ半端な姿でいただろう。
深緑は敬意と感謝を乗せて、揺れる黒尾にもう一度目礼し、先程まで彼らが見ていた方へと視線を動かす]
……ル。
[意識を岬の方に向け小さく囁く。
コエとして届くことはなく、聲も返って来ない。
もう一人が本当は何を望んでいるのか、獣だった者にも分からない]
[ライヒアルトの応え>>+74に一瞬目を瞠り
そうしてふっと綻ぶような笑みを見せた]
私はね、誰かのゆるしが欲しいんじゃない。
ラーイのゆるしが欲しかったの。
だからね、あなたがゆるしてくれるなら……
[繋いだ手を離さぬようしっかり握り返す。
岬を眺める深緑が金へと変わる。
ゼルギウスと彼の争いの中、垣間見たのと同じ色]
ラーイ……?
[呼びかけるのは彼が遠くへ行ってしまいそうな気がしたからか。
見慣れぬ色を持つ彼は自分の知る彼と同じか否か。
確かめる前にその色は元に戻っていた]
……そう。
エーリッヒさんが、……え、違う姿、って?
[不思議そうに瞬くのは自分も似たものだったという自覚が無いから。
ライヒアルト>>+75の隠し事にも気付かぬまま歩みを進める]
ラーイは他の人に会わなくていいの?
会いたい人が居るなら会った方が良いと思う。
[辿りついた先で緩む手に躊躇いの色。
此方も手を緩めればそれはやがて離れてしまい]
あに離れもおとうと離れも未だ出来ないなんて
こどもたちに笑われてしまうわね。
[似たようなことを言われこどもたちにからかわれた事がある。
それから時折考えるようになったけど――]
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