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あァなるほど。蜂蜜つきパンならそりゃいいさね。
オットーさんのなら尚更だよ。
[しっかり反応した妖精王の様子を見て、エーリッヒにそりゃ失礼と肩を竦めた。笑うまで行かないのは、アーベルから耳打ちされた団長の行方が気になるからだ]
[妖精王を見ている無口な彼は相変わらず無口だが。
「妖精王ってこんなんなのか」という何とも言えない複雑な気持ちが、ありありと表情に浮かんでいる]
[蜂蜜つきのパンをしっかりキャッチした妖精王に鳥が向けるのは、何故か疲れたような視線。
どこか諦めたように見えるのは気のせいか、何か理由があるからかは定かではないものの]
……一応、本物で間違いない……のかしらぁ?
[瓶の中で黄色い声を上げる妖精の姿に、ぽつり、と呟いてみたり]
そこの、環……?
[地を指し示す青年をまじまじと見る。
瞳はゆっくりその指先から柔らかな草へ。]
あ、あー!
これこの間の。なんですか、これ?
[そういえば、遅く帰ったことを咎められたから、この不思議な環のことを母さんには聞いていない。]
おや…あらまァ。
[黄色い声と猫の動きに釣られて振り向いた先、ユリアンの表情に婆はちょっとばかり気の毒そうな目を向けた。名前の由来を考えれば同情の気持ちが湧かずにはいられない]
ふゥむ、妖精が本物って言うなら本物なんだろうねェ。
ちょィとお待ち、坊。
輪っかに放り込んでどっか行っちまったら、村を覆ってる封印ずーっとこのまんまになるさね。
仮にも王の封印ってなら、ちっとやそっとじゃ解けやせんじゃろ。
[王を輪の中に放り込むなんて言葉が聞こえて、抗議の声を上げる妖精さん。
彼女にアレの何処がいいのか、などと聞いたら最後、それこそ小一時間ほど妖精王の魅力とやらについて語り出すだろう。
…結局はその異様に整った顔に収束するのだろうが。
騒ぐ妖精さんとは全く対照的に、彼は妖精の輪に視線を向ける]
え? ……ああ、そうか。
リディアは越して来たばかりだから、詳しくないんだな。
[手をパンに夢中な見た目三歳児の首根っこへと移動させつつ、リディアの問いに、はたと気付いて、ひとり納得したように頷いた]
これは妖精の環って言って、一般には、妖精の宴の跡って言われてる。
小さな妖精たちが、輪になって踊ったんだってね。
今回は、それにしてはどうにもおかしいみたいだが。
あー……。
[止めに入ったヨハナの指摘に、惚けた声を上げる]
ですねぇ、確かに。
まだちゃんと確かめてはいないですけど、結界の構成式はかなり複雑みたいですし。
……かけた本人以外が解くには、相当大きな力が必要になる気がしますねぇ……。
[そちらの方面には、一応特化しているので、そのくらいは読める。らしい]
―― 森のどこかの木の上 ――
[いつの間にやら、人の環から外れて、なにやら弄り倒されている気配の妖精王のことも気にせずに、高い木の枝に座って足をぷらぷら]
ふんふんふん♪
そも、妖精の国は時の流れが違うと言うしなァ。
王の気が向いて戻ってくる頃にゃ、わたしゃもういないさね。
[ぶら下げられた妖精王とぶら下げてる青年を見て、困った溜息]
[威厳の欠片もない妖精王の姿に、生まれて初めて守護妖精に同情の気持ちが沸く彼であった。
それは兎も角。
漸く止んだ黄色い声の元に目を向けると。
瓶詰妖精さんはじぃっと輪を見つめています]
お、おおー。
[まだピンと来ていないような声で首を傾げる。]
これに、この不審人物さんを放り込むと何かあるんですか?
あたしが踏んじゃった時は何もありませんでしたけど……環になって踊ってくれるとか?
……ふむ。
[色々な抗議の声はさっくりと無視するものの、婆の台詞には考え込む様子を見せ]
また、面倒臭いんだな。
それで、妖精王サマは、この事態に対してどうしてくれるわけ?
[やっぱりそっぽを向かれた。
ので、手を離した。
べちゃと地面に落ちる、妖精の国の王]
[思い留まったエーリッヒの様子に、ちょっとばかり安堵の息。
妖精の輪が普通で無いことがよく判らない婆にはリディが輪を踏んだ事に対する驚きは薄く、むしろ落とされた妖精王に驚きを取られて近くに寄った]
ありゃま、大丈夫かね?
しかしまァ、坊や村のもんの気持ちも判っておくれ。
守護妖精がいないだの結界だの…団長さんの行方不明だの、気も立つってもんさ。
それにさね、わざわざ妖精王が村までお出ましになったからには、期待もしたくなるってもんだ。どうにか機嫌を直してもらえんかねェ?
[背後のエーリッヒを振り向き首を傾げる。]
ええと。
あたしにはみんな何を言ってるのかよく分からないです。
[高くて良く聞き取れない妖精の言葉も、言語は分かるけれど、意味のよく取れない不審人物の言葉も。]
大丈夫かと聞かれれば、この通りお腹が減った以外は元気ですが。
[べちゃり、と落ちた妖精王の姿に、あららぁ、と声をあげ。
妖精の環を踏んだ、というリディをまじまじ、と見やる]
……触れても、何もない……と、いう事なのかしらぁ?
あ、ええと。
無闇やたらと触らない方が良いと思うのですよ。
気がつかない影響とかも、あるかも知れませんし。
[茸をつつくリディの様子に、ちょっとわたわたとして]
……でも、ほんとに何ともないのですかぁ?
[ないならないで、それに越した事はないのだけれど。
やっぱり、ちょっと気になるらしい]
……まあ。
わざわざ実験せずに済んだ、ってことになるかな。
本当に影響がないのかは、わからないが。
[お腹が減ったという少女に、残りのパンを、要る?と差し出した]
[そこはそれ、年の功というやつで妖精王をおだてて機嫌を取り、なんとかしてもらえないだろうかと水を向ける。
さんざん蹴られたり突付かれたりぶら下げられたりした後ではそれなりに効果はあったらしく、妖精王はふんぞり返って偉そうに口を開いた。周りに蜂蜜が残ってるのが、いまいち決まっていない]
……なァるほどねェ。
怪しそうなんを別の結界に放り込んでもらえるんじゃな。
で、その怪しそうなのはどこにいるのかさね?
[返事が無い。
なんだか無闇に整った妖精王の顔が引き攣ってる気がする]
帰りが遅くなって母さんに怒られた以外は何もありませんでした。
あとは……えーとえーと。
[リディに重ねて問われると頭を抱えて考え込む。
エーリッヒにパンを差し出されると顔を上げ、少しだけ困った顔で首を傾げた。
パンはしっかりと受け取る。]
……それは、怒られますよぉ。
女の子が一人で遅くまで出歩けば、心配されるものです。
[かくいう自分の事は棚に上げていたりするのだが]
あららぁ、ええと、そんなに悩まなくてもよいのですよぉ?
落ち着いて、ゆっくりと。
後からでも良いのですから、ね?
[頭を抱えるリディの様子にそちらに歩み寄り、宥めるように肩を叩く。
ついでに、気持ちを鎮めるごく弱いまじないもかけてみたり]
[矢継ぎ早に問いかけたのは拙かったかと、少女の事はミリアムに任せ一歩引く。
妖精王はと言えば、老婆の飴が効いているようだから、其方も置いておくことにした。別の意味で、芳しくない気はしたが。
腕を組んで口許に手を当て、周囲を眺める]
[肩にあたたかな温もりを感じると、小さくそちらに寄った。
ぐるぐると迷う瞳はひとつに落ち着き。
肩に触れる少女に笑顔を見せる。]
はい。難しいことは考えないで後回しにします。
宿題と一緒のコツですね!
[余り自慢にならないことを爽やかに言った。]
[向けられた笑顔に、落ち着きを察してこちらもにこり、と微笑む]
そうですねぇ、考えすぎてもわからない事は、ちょっと置いて置く方が良さそうです。
……でも、宿題では、そのままにしちゃダメですよぉ?
[爽やかな例えには、やんわり突っ込み]
[ついに一筋の汗がたらりと伝った所で、妖精王は逆切れの如くお前達も探せばいいとか言い出した。ちゃんと見つけたならそちら優先で結界に放り込んでくれるらしい。
あまり苛めてまた拗ねられても困るので、そこら辺で追及を緩め]
あァ、わかったよゥ。
ただの婆に何か出来るとも思えんが、探すだけは探してみるさね。
お前さんも王なら王らしく、しっかり頑張っておくれさねェ。
[猫を降ろして前掛けから布を取り出し、妖精王の口元を拭う。
ついでに頭を撫でる様は妖精王にお願いと言うより、孫扱いっぽい]
リディちゃんが平気なら、おれも踏んでみよっかな。
[だけども、現状保持を求めているのを聞いて、やめた。]
[それからヨハナが聞き出したことを、頭の中で整理する。]
[流石にちっちゃい声で呟いた。]
王様が一番怪しい気がするけど。
……あ、エーリ君、おれもパンが欲しい。
[とりあえず見上げた。]
[頷いてパンを食べるリディの様子に、こちらは大丈夫かな、と思いつつ。
ちら、と視線を向けるのはヨハナと妖精王。
ちなみに、白い鳥は飛び出さないようにと片腕でしっかりと抱え込んでいる]
はぁ……。
探すにしても、手がかりとか。
せめて、何のためにか、でもわかればいいんですけどねぇ。
[その辺りの情報を、妖精王に求めるのは無理かしら、と。
思っていても、一応、口には出さない]
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