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[ハインリヒの返事を聞けば、苦笑を浮かべて肩を竦める。
エルザを気にしている様子には気づいていたから、目を伏せてため息を吐く様子を見れば、小さく吐息を零した。]
お邪魔なんかじゃないよー。
[ヘルミーネの言葉には、首を傾げて笑顔で応じて。
お茶やスープを運んでくるだろう]
[――が]
…ハイ?
[次の瞬間、思いっきり虚をつかれた表情になった。
フォルカーの証言によって。
暫しフリーズした後、真顔でフォルカーを見て]
…あのなァ。
言っておくが。
あいつに、そんな甲斐性は無いぞ?
[言い種は酷かった]
―広間―
[誰かが階上から降りてきて、廊下を突き進む足音に首を傾げる。
足音の軽さからすれば誰のものかはわかろうというもので]
うわあ、お嬢怒ってんなぁ…
[ひくひくとしながら、肩をすくめ]
さて、怖いから俺はぼちぼち部屋に引き上げるかな。
[そう言って足音が去っていった方向を見た]
フォルカー、
あんまりユリアンの言葉、真に受けない方がいいぞ。
[フォルカーがヘルムートに言う言葉にそう忠告したり。
ハインリヒとローザの様子を目にすると]
なんだかなぁ…。
[天井を仰ぎながらぼんやりと吊り橋効果かとか思ったり]
[廊下を勢いよく歩いていく足音に肩をすくめるハインリヒを一瞥する]
ハインさん、お休み前にちょっとだけ、良い?
[そう声を掛けるのは、ハインリヒが広間を出る前に間に合うだろうか]
―広間―
おじゃまなものか。
[ヘルミーネが言うのには笑いながら答えて。
ただ、ローザの好意に応えられないからか、やや声と表情は暗めだった]
いいか?男は甲斐性のある奴を選んだ方がいいんだぜ?
ほら、こっちのレディもそう言ってるじゃないか。
男の甲斐性って、大事なんだぞ?
[苦笑を見せるローザにそんな風に言葉を向けて、へらりと笑った。
この場にいる学者はどちらも甲斐性なし、ということらしかった]
─浴室─
[浴室に入るとまずはお湯のチェック。誰かが使ったのか、まだ入れるくらいの温かさが残っていた]
よし、冷めないうちに……。
[その後の行動は早かった。服を脱ぐと頭からお湯を被ったり、身体を洗ったり、濡らしたタオルで顔を覆ったり。一人で居ると朝のことが頭を掠めたが、もう泣くことは無かった。思い出す度に、手に力は籠っていたけれど]
[最後にもう一度お湯を被ると、身体の水分を拭き取り持って来た服に着替える。と言っても今までの服とさして変わり映えしないもの。そう言う服ばかり着ているのだ。タオルをしっかり絞ると、それらを持って再び自室へと戻って行く]
[向けられたヘルミーネの真顔に、なんとなく居住まいを正す。
幼なじみが広間を出て行くのは見えたが、先日とは違う勢いに、後を追うことは出来なかった]
……………ないんだ。
[あんまりな言い種>>87に、ちょっぴり同情が混ざった。
仮にも、己の教師たる人物だったが、それでも、混ざった]
そう、なの?
[エーリッヒの忠告>>89には首を捻る。
少年の短い人生にとっては長い付き合い、その言動のいい加減さに振り回されたことも少なくないのに、未だに素直に信じてしまうことは、たびたびあった]
[ハインリヒが部屋に戻る前に呼び止める事に成功したなら]
酒場で初めて見た時に、一目ぼれしたの。
やめといた方が身のため、なんて言われても諦めないし。
甲斐性云々なんて関係ないから。
……ほかの誰かとくっついた、とかなら諦めるけどね。
[にっこりと良い笑顔でそう告げる。
台詞の後半を言う時には、ちらりとエルザに視線を向けて苦笑を浮かべたかもしれない]
…ん、そうか。
[ハインリヒとローザの様子にやや首を傾げながら、用意された食事に手を伸ばすか]
同意見だな。
[だが深い訳は知らないものの、甲斐性論には頷いていたりした]
怒らせた原因の一人だろうが…。
[ハインリヒの様子にそう呟いてから、
甲斐性の話になれば肩を竦めて]
さて、俺も部屋に戻るかな。
[お茶を飲み終えると席を立ち上がった]
まぁ、その素直さがフォルカーのいいところなんだろうな。
[広間を立ち去る前に、首を捻るフォルカーの頭を優しくぽんぽんと叩いてやりながら]
将来、悪い人にだまされたりすんなよ。
[今はそれ以前の問題もいっぱいだったけども、
そう言うと広間を後にして自室へと戻った]
嗚呼、残念ながら。
いい奴ではあるがな。
[一応フォローのような言葉もつくにはついたが、フォルカーにはきっぱり答えた]
取り敢えず、そんなコトを吹き込む奴は後でお仕置きだね。
[自分が起こした事は棚上げし、上を見上げた。
イイ笑顔だった]
―広間→自室―
――。
[呼び止められて告げられたある種の意思表明にこれは驚いたな、と少し余裕を装い―]
もてる男はつらいねぇ…
[そんな風に冗談を残して広間を後にした。
2階へあがって自室へ入ったなら、薄く笑っていた口元からは笑みがすっと消えた。
そして、後ろ手で閉じた扉にもたれかかった]
…すまん。
[詫びる言葉は、いずこへ向けてのものか]
[見上げていた首を戻してから、広間を去る者は軽い挨拶と共に見送った。
その後は常と変わらぬ量だけの食事を進めて行くが、エルザの姿を見て一度手を止めた]
…話すべき、かな。
[口の中で呟く。
微かな熱を帯びる対の花を、服の上からそうと撫でた。
けれど結局、その機会が訪れることは無く]
……爺さまにも、言われました。
素直なだけじゃ、駄目だ、……って、父さまは言っていた、けれど。
[頭を叩かれて顔を俯かせながら答える。
父のことを思い出して曇りかけた表情を、意識を食事に向けることで消す。
お仕置きされる人物に関しては、頭に入っていなかった]
─二階・自室─
[部屋に戻ると濡れたタオルを干して、着替えた服を荷物の奥へと押し込む。ついでだからと、備え付けの小さな暖炉に火をつけ、部屋を暖めておくことにした。今入れた薪が燃え尽きても、しばらくの間は暖かさが残ることだろう]
…腹減りには逆らえないよね。
[広間に戻るのも気拙かったが、空腹には負けて。若干濡れた髪のまま、また広間へと戻ることにした。部屋へと戻ったハインリヒとは見事に入れ違ったらしく、顔を合わせることは無かった]
―翌朝/自室→エルザの部屋―
[ハインリヒに想いを一方的に告げた後、台所でパンやドーナツ、薄焼きクッキーなどを作って。
明け方に台所から戻ってきて眠りについた時には、まだエルザの息はあったのだろうか。それとも、すでに手遅れだったのだろうか。
ふと。隣の部屋が騒がしい気がして、目を覚ました。
窓の外をみれば、太陽の位置はまだあまり高くない。いつもならまだ眠っている時間だろう。
どうかしたのかな、と眠い頭で首を傾げながら。
簡単に着替えを済ませ、すぐ隣のエルザの部屋へ向かった]
―翌朝/エルザの部屋―
…………え……るざ、さん?
[床に広がる血の朱。
その中に仰向けに倒れているエルザと、エルザの肩を撫でているユリアン。
何が起きたのか、すぐには理解できなくて――否、理解したくなくて。
呆然と呟いて、数度瞬いた]
……ーーーーー!!
[状況がようやく理解できれば、言葉にならない悲鳴を上げた。
最初の犠牲者のときも、ギュンターの時も、話でなら亡くなったその状況も聞いていたけれど。
話に聞くのと、実際に目の当たりにするのとでは、まったく違う。
悲鳴を上げた後、ほかの誰かが来るのが早いか。それとも、許容量を超えた状況に頭の中の安全装置が働くのが早いか。
その状況に耐え切れず、扉に凭れるように、気絶するだろう**]
─ →広間─
[広間へ向かうと、まずハインリヒが居ないことに少しだけ息を吐いた。また何か言われるかと、少し警戒していたために。ご飯が出来ていることを知ると、いつもよりは少なめに、食べやすいスープなどを中心に貰い、腹を満たして行く]
[遅々として食事を進めていると、幼なじみが戻ってきた。
あ、と小さく声を上げ、隙を見て、彼女に小さく問いかける]
……レーネ。
今朝、……………何、言おうとしたの?
[疑問の内容は、己が誓いを口にしたときのこと。
感謝の前、消えた言の葉。
答えが得られようが得られまいが、口数は少なく、食べ終えた後には自分で片づけをして広間を後にする]
[自室に向かう前に自衛団員の一人を捕まえて、父の――村長の真意を問うた。
答えは「村長は自衛団の判断に同意した」と、ただ、それだけだった]
……そう、ですか。
[教えてくれたことには礼を言い、唇を噛み締め、部屋へと戻った]
―二階:自室―
[室内に入ると、先ずは備え付けの暖炉に火を点した。
荷物の中から取り出したナイフは小さく、護身用にすらなるか怪しかったが、鞘に収めたままポケットに入れ込む]
……………、
[上着を脱いだだけで眠る支度はしない。
寝台の上に腰を落ち着けると、首元から外したブローチを両の手で握り込んだ]
……エーファ、今度こそは、
[祈るにも似た姿勢で呟き、*視界を閉ざした*]
―自室―
[その日はそのまま自室に戻りベッドに横になる]
何事もなく、ずっといけるのが一番なんだけどな…。
[呟く声、その願いはかなわないことだと、すぐに思い知らされるのだが]
―翌朝・自室―
[翌朝目覚めると、ぼさぼさの頭をかく。
すっきりとしない、目覚めの悪い朝]
はぁ……。
[ため息を付きながら身支度を整え、部屋をでると開けられた扉にもたれかかるようにローザが倒れていた。]
どうした?
[嫌な予感がしてそちらに駆け寄る。]
―翌朝・エルザの部屋前―
[近くによると鼻に付く匂い、部屋の中を見ると]
……っ…。
[エルザにすがるユリアンの姿、部屋いっぱいに広がる赤い……、
その状況からエルザがもうこの世にいないことは見て分かった]
ユリアン…。
[気遣わしげにそっと声を*かけた。*]
─広間─
[もぐ、もぐ、と食べるペースは遅い。不意にフォルカーから訊ねられると、ぇ、と小さく声を漏らした]
……………。
[しばらくの間、言うかどうかを迷う。長めの沈黙の後、口にしたのは]
……前に言った”絶対”が、出来なくなりそうな、気がして……。
あれだけ大口叩いたのに、出来ないってなったら、フォルに嘘ついたことになっちゃうから。
それで……。
[言おうとして言えなかったのだと、そう告げる。それはあの時言おうとしていたことの半分だけ。残りの半分はまだ、隠したまま。答えた後はお互い口数少なく、黙々と料理を口にする。フォルカーが広間を出た頃に食事を終え、使った食器を片付けた]
―翌朝―
[いつの間にか、少年は意識を失っていたらしかった。
気怠さを覚えながら身を起こし、手のうちのブローチに目を落とす。変わらずにある赤色に漏らしかけた安堵の息は、咳に取って代わる。幾度か繰り返したあと、胸を押さえながら寝台を下りた]
だい、じょうぶ――… 今日は、でも、
[蘇るのは自衛団から下された通達。
見つけないと。
呟き、若干ふらつきながら廊下へと出て行き、]
……………?
[違和感を覚えた。
歩んでいくと、階段のすぐ傍、開いた扉の一つに気付く。内へと向けた眼差しが捉えるのは、兄のように慕う青年の姿と、周りを彩る、異質な色彩]
ユリにい――……………
[か細く名を呼び、室内に一歩、足を踏み入れる。蹲る青年の影に隠れ、よく見えなかった、色彩――生命の赤の持ち主が誰であるかは、そのときに知れた。
命を奪われた女の名を象ろうと唇が動くが、音にならない]
――……………っ、
[元鉱山夫の時も、自衛団長の時も、死を、しっかりと目にしたことはなかった。
凄惨な光景に息を飲み、口許を押さえる。
咄嗟に振り返った先には流れの修道士が居て、彼にぶつかりかけた。
そのとき、ライヒアルトがどんな反応を示したか、少年は覚えていない。
遠かった]
人、狼、
……………れても、……さなきゃ、意味な……
[自衛団を呼ぼうとしてか、階下に向かおうとした黒衣の背を見つめ、無意識に呟きを漏らす。聞きつけ、足を止めた彼へと、足は動き、手は伸びていた。
普段の少年からは考えられない力で持って突き飛ばす]
[その直ぐ先は、階段だった]
[ゆっくりと、一段一段、下っていく。
まだ、息はあった。
しかし表情の失った少年は地に伏す男を見下ろし、
その手でもって、生命の炎を掻き消した。
喉へと付きたてられたナイフ。
引き抜くと、想像以上に多い血が溢れ出て、
少年の衣服を、顔を、床板を赤く染めていく]
[悲鳴はあがらない。
物音に、目を覚ました人物はいたかもしれない。
呼吸が途絶えたことを悟ると、少年は修道士の傍を離れて、玄関の外へと出る。以前より遠巻きに集会所を見張る、自衛団の姿が見えた]
……新たに、犠牲者が出ました。
それとは別に、容疑者の一人の処分を。人狼かは、判明していませんが。
遺体の検分と処置を、望みます。
[まだ幼さを残す、なのに淡々とした声が紡がれていく。
犠牲者は機織りの女性、容疑者は流れの修道士。死者の情報を口にする少年の普段との違いにたじろぐ彼らを見据える瞳は、血の赤よりもずっと、深かった]
――次期村長、フォルカー・アルトマンとして命じます。
早急な、処置を。
[有無を言わせぬ気迫を持って言い渡し、フォルカーは集会所の内へと戻る。
浴室で「汚れ」を洗い落とす少年の目に、*涙はなかった*]
─ →二階・自室─
[部屋に戻ると、先につけて行った暖炉の暖かみがまだ残っていて。その中に薪を放り込むと再び煌々と燃え上がる]
………言えるわけないじゃないか。
[暖炉の火を見ながらの呟きは、壁を隔てた隣には届くこと無く。パチリと弾ける薪の音に紛れて消えて*行った*]
―翌朝―
[結局寝付いたのはいつごろだろう。空がずいぶん白んでからの気がした。
一気に深い眠りに落ちた体は感覚すら麻痺したように微動だにしなかったが、
声にならぬ悲鳴に深淵から引きずり上げられ、何かが転げる物音で目を覚ました。
…なん、だ?
どうした?
[寝ぼけ眼で部屋を出て、ざわざわした気配を感じる方へ。
エルザの部屋に入って血の匂いに顔をしかめ…広がる朱に口元を手で覆った。
『エルザ』が、死んだ。
記憶の中の朱と、現実に見ている朱が重なる]
どうして、また、俺を、置いて…。
[違うとわかっているのに重なる姿。意識が混乱する。
とにかくエルザの肩を撫で続けているユリアンをどかそうとして、予想以上の力で振り払われた。
そこで体の向きが変わり、意識を失っているローザに気付いてはっとして駆け寄った]
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