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[その時。
ゲルダは、抵抗らしき抵抗をしなかった。
相手の頬を傷つけたのは驚きや反射に近い反応で、
ただ、カルメンの目を、じっと写して見ていた]
─ 宿屋・食堂 ─
[食堂にたどり着いたのは、ノーラやエーリッヒにやや遅れての事。
エーリッヒのコートに残る血の跡に、微か眉を寄せるものの、それについては何も言わず]
……ブリジット、預けてきた。
できるだけ早く帰してやってくれ、と、念は押しといたよ。
[短く、それだけを告げた]
― →食堂 ―
[頭を振って意識を飛ばして。少し時間を置いた後に食堂へ。
中の人たちに、よぉ、と片手をいつものように上げる]
ライヒアルト、お疲れ。あいつら話聞いてくれたか。
[兎角最初に気になるのは其処だった。
首を傾げて問いかけて。
次いで見たエーリッヒは、僅か心配そうな視線をやった]
[いつしか、廊下に座り込む自分を外から見ていた。
嗚呼、死んだのか、とストンと思えた。
見下ろす自分の死体は、ひどく滑稽に見えて。
笑いさえこみ上げてきそうだった]
…あっけないものね。
まぁ―――誰にも知られずにただ死ぬくらいなら、
誰かの満足の為に死ねた事は悪くないのかもしれないわ。
[フン、と鼻を鳴らして自嘲めいた笑みを浮かべる]
─ 宿屋・食堂 ─
ん。
[名を呼ぶ声>>105に、そちらを振り返る]
ぐだぐだ弱音吐いてたりしたが、最低限は通して来た。
……ったく、いつまで、ってな、こっちの台詞だ……。
[返す言葉は、僅かに苛立ちを交えたもの]
……いや、気にすんな。
俺は……何も、できんかったし。
[感謝の言葉>>106に、ふる、と首を横に振る。
何も、と。
そこには複数の思いが込められ、僅かに翠が翳るが]
……エーリ?
お前、目……どうか、した、のか?
[向けられた瞳は左右で異なる色で。
思わず上げた疑問は、惚けた声]
― 宿食堂 ―
コートはそのままにされるのですか。
[ベストが部屋の隅に置かれるのを見て問いかける。
大丈夫との声に頷きかけ、向けられた二色の瞳に目を瞬いた]
異眸をお持ちでしたのね。
光に弱くて隠していらっしゃったのかしら。
……ほんとにな。
[あいつらが、というのは同意できるから、力を込めて頷いた。
水の話>>108になれば、思案するように眉が寄せられ]
どれだけかかるんだか、な。
……昨日出たついでに、見てくればよかったか……。
人狼に喰われた者は死体を返してもらえるのね。
殺されたものはそうはいかない?
ゾンビのように死者が動くわけでもあるまいし。
って、まぁ私の死体は引き取り手も無いか。
適当にしてもらえればいいのだけれど。
[ここにくる前に住んでいた村はもう無い。
親族ももういない。
ゲルダは透明な体で食堂へと、ふわりと向かう]
いつまでこうして見ていられるのかな。
好き勝手言いやがって。
[文句の口調は苦々しげ。
ライヒアルトの様子に、此処で言っても無駄か、なんて呟きもした]
俺も見忘れてたな。
後で見に行くか。
酷ぇ話だ、本当に。
仕方ない、で済ます気はないが……ま、ここで言っても始まらん。
[直接言っても意味はないだろうが、と思いながらこう言って]
……ああ……まったくだ。
[酷い話>>113、という言葉に同意しつつ、大きく息を吐き出した]
─ 食堂 ─
それでは夜に動かれる方が楽そうですね。
[コートのことは微笑みで誤魔化されてしまったので眉尻を下げ。
何か考えるように、唇を指でなぞった]
[ヨハナにしがみついたまま、どれだけ泣いていたのだろう。
命を無くした体は疲れることを知らないのか、延々と泣き続けることが出来た。
自分の気持ちだけでいっぱいで、誰かの気配を感じるなんてこと出来なくて。
どこで何が起きたかも、気付こうとしなかった。]
あいつらに言って、
何か変わる訳も無ぇ。
何処で言っても結局同じか。
[ライヒアルトの言葉に、ため息を吐いた]
――何か一つでもずれてりゃ
こうはならなかったんだろうな。
―翌朝・ブリジットの部屋―
……どうして、子供ばかり狙うのかな。
それならいっそ、私を襲えばいい。
[その言葉が女を護るライヒアルトの耳に届けば
どのような思いを抱かせるかなど、知らぬまま。
ブリジットの亡骸を前にした女は、吐き棄てるように呟く。
妹のように可愛がっていた少女の死に慟哭するエーリッヒ。
女はゲルダを殺したカルメンを「幼馴染だから」と看過した彼にも、強い不信を抱いている]
――……。
[それでも僅かに痛ましげな視線を遣り
彼の肩越しに少女へ祈りの言葉を向けた*]
― 食堂 ―
[カウンター席で頬杖をついて
女は考え込むように目を伏せる。
話し声は聞こえてはいたが心ここにあらずといった風情]
……はぁ。
[先日意識を失う前にミリィから向けられた言葉と
剥き出しの殺意が、心を落ち着かなくさせる]
[食堂の中を、ふわふわりと舞う。
誰にも触れない。気付かれない。
もどかしいと思う反面、別な感情もあって。
人数も少なくなった人々を、天井近くから見下ろす。]
……生まれつき。
それでずっと、隠してたのか。
[返された答え>>114に、翠を瞬く。
説明を受ければ、一先ず納得して。
今までずっと隠していたそれを晒している状態に、意識が回らぬほどに動揺していたのか、と。
先の様子を思い返して、思案を一つ、積み上げる]
…死者同士は見えて触れられるのかな。
[重力から開放されたらしき自分の身体は
自分には触れられたから。
ポツリと呟いて、辺りも見渡した]
[ゲルダに触れなかったことやブリジット達が私を見てくれなかったことがすごく悲しくて。
どうしてそうなってしまったのか解らないから、泣いた。
普通に考えたら解ることだけど、私はそれを拒んで。
だから、解らないまま。
ヨハナが自ら選んだ結末も、意識から外して。]
……何か一つでも、ずれてれば、か。
[ウェンデルの言葉>>118に、翠を僅かに伏せる]
……そーだな。
今まで、何もなくて。
これからも、そうだと思ってた。
……なんでまた、こんなに色々が重なっちまったのかね……。
雨が降らなければ。
道が塞がらなければ。
[たらればは意味がないと分かりつつ、
男は言葉を重ねる]
人狼が居なければ。
結社とやらが居なければ。
――運が悪かったのかもなぁ
それはそうかもしれませんわね。
[仕事などで特別な理由がなければそれが普通。
隠れてゆく右目をなんとなく見つめながら、エーリッヒにゆるく微笑み返した]
災難だ、としか言えないのが歯痒いですわ。
[何かがずれていれば。運が悪かった。
何度も重ねてきた溜息が、また零れる]
運ね、運。
そう言ってしまえるのは、強いね。
[天井近くで足を組みそこに頬杖ついて。
ウェンデルの言葉に、ポツリとつぶやき落とす]
―食堂―
[皆より遅れて食堂に入った女は
エーリッヒの異相の眸に気付いて小さく目を瞠るが、言葉にはせず。
カウンター席で頬杖を付くカルメンに近付き]
どうして、ゲルダさんを殺したのかな。
彼女が人狼だって証拠、あったの?
それとも――
君が人狼か、そうでなければ
あいつらに与する裏切り者なのかな。
[視線を据えて、問う]
[無意識に右手の薬指に触れる左手。
指先に求めたものが触れる事はない。
微苦笑を漏らして女は手をはなす。
ポケットの中を探り取り出すのはキャンディ一つ。
包みを丁寧に解き、キャンディを指でつまむと
それにそっとくちびるを寄せた。
舌で転がせば、甘さが口腔へと広がる。
疲れた女に、そのキャンディが
少しだけ力を分け与えてくれるようだった]
ま、それは確かにあるな。
[奇異の目>>124という言葉に、こちらも浮かべるのは微苦笑。
異国からの旅人だった父は、ここに馴染む以前は大分奇異の目を向けられていて。
それは、その子である自分にも等しく向けられていた。
それもあって、自分がそれを他者に向けることはできる限りすまい、と戒めていた]
[ロミをずっとあやし続ける。
時間はどれだけ流れても、特に気にならないのは死者だからだろうか。
地上の出来事への感心もどこか緩慢で。
無関心とはいかないまでも、積極的に見に行こうとはしなかった。
なにより泣く子を置いてはいけなかったのも、ある。]
運が悪かった、では。
……済ませたくはないけどな。
[ウェンデルの言葉>>125に小さく呟いて、翠を伏せる。
それだけで、この状況を片付けたくない、とは。
今の、偽らざる、心情]
[ぐす、と鼻を鳴らす。
その音が妙に耳について、ふと、今は何時何だろうと思った。
私はどれだけの時間泣いていたのだろう──、泣いているのだろう。
そんな疑問が胸に湧く。
ヨハナを見上げた。]
[カルメンに詰め寄るミリィの姿に、目尻を下げる。
困った風に顔を歪めてから、首を傾けた]
嗚呼。
私はやはり、真っ直ぐに歪んでいるわ。
[まぶしそうに目を、細めた]
…ああ。
[ふと、どこかで感じる人の気配。
いや、死者の気配と言うべきか。
それを感じ、背を撫でていたロミに語りかけるように。]
ロミちゃん、誰か来たみたいよ。
[ちょうど、彼女が顔を上げた時と同じ頃合だったろうか。]
行って見る?
[ポケットから柔らかな手織りのハンカチを取り出して、彼女に差し出しながら尋ねた。]
[ミリィに声を掛けられ女ははたと瞬いた。
ゆっくりと声のした方を向き]
私は、ゲルダが人狼だと思ったから。
与する裏切り者――…
ああ、昨日言ってたあれがそうなのかしら。
[ことと首を傾げる。
疑問だった一つが解けたよう]
[死者には生者に語る言葉もない、もちろん何かをする体も干渉する能力も無い。
死者を見極める力…それは本来持つべき力とは違うが……その力を行使できた自分でも、生者に干渉はできない。
ただ行く末を見守るのみ。
過去のことを振り返る時間もあるが、今は目の前のことを見ていた]
だいぶ向こうの人も少なくなったわね。
[その姿はいつもの黒ローブを羽織らない少女の姿のもの。
その声は生前と同じだがやはり外見にあった声質。
気づかなければ見知らぬ少女がいると思われたかもしれない]
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