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― →客室 ―
[食事の後は、浴室を使って体を温めさせて貰い、
布団に包まれつつ、本を読んで寝た、くらいだ。
朝には雪がやんでいるといいな、と思いながら。*]
―談話室→廊下→客室―
[暫しの時の間に幾らもの会話はあったろう。
名や滞在の目的を問われれば笑みで答えて過ごす時間。
やがて手伝いに出た人も戻って、更に時を越えれば厨房から温かな香りと共に食事が運ばれてくる。
一旦蒼の小鳥を彼に返してから膳を受け。
その後もライヒアルトが仕事の間は願われるなら肩に乗せて]
[使っても良い客室の位置を確認してから部屋へと。
一度浴室に向かい、普段の湯よりは随分と短かな入浴。
上着を両肩にかけるようにして廊下を歩む]
……うーん。やっぱり短いと、冷えるなあ。
[他の人も居るのだからと遠慮しての短時間。
この浴室で使われているのも温泉とは云え、芯まで温まったとは言えなかったらしい。
動かぬ左腕を擦りながら火に温もる客室へと滑り込み。
灯りを落としたのは、随分と早い時間だった*]
― 深夜/客室 ―
[暫く窓の外を眺めた後、特にすることもなかったから、早めに風呂を借りて早めにベッドに入った。
誰か―特に女性が―来た場合を考えるとゆっくりはしていられなかったけれど、幸い、鉢合わせと言う事態は避けられたようだ。
風の音に邪魔されながらまどろみかけた、その体が、むくりと起き上がる]
………小腹減った、なぁ。
[夕食がいつもより早めだったこともあってか、そう呟いて欠伸を一つ]
……んー、パイ、まだあったっけ?
[半ばぼんやりした表情のまま、ふらりと部屋を出る]
― 深夜/談話室 ―
[流石にこの時間、談話室は静かで、灯りは持ってこなかったから手探りで目的の物を探して……
ぱくり もきゅもきゅ ごくん]
……あ、スイートポテトパイだ。
[もしかしたら半分寝てるんじゃないかというくらいにのんびりとパイの種類を判別する]
……ん?
[誰もいないと思っていた廊下から聞こえてきた話し声>>58に、パイを咥えたまま廊下を覗き込む]
(マテウスさん、と……あれ、行商人かな?)
[直接会ったことはなかったが、確かに見覚えのある姿と噂通りの胡散臭い物言いでそう判断する]
(……ありゃ、確かによくない噂が立つの解るわ)
[関わるのは面倒と会話が終わるのを待って部屋に戻った。
……手に、新しいアップルパイを持って*]
─ 翌朝/自室 ─
[横になってからも風の音に気を取られたり、あれこれと考えに耽っていたりしたから、眠りに就いたのがいつかは覚えてはいない。
そんな、いつの間にか落ちていた眠りの中で、夢を見た]
『……どうか……』
『……………て……』
『その………で……』
[誰かわからない声が、何かを訴えかけてくる。
何かを求めて懇願してくる。
けれど、それは──自分とっては、受け入れられぬもの、と。
その認識だけは、何故か、根付いていて]
……いや……だ。
俺は…………もう…………。
[夢現を彷徨いつつ、零れるのは拒絶の言葉]
……俺は……もう……。
……………たく、ない…………。
[掠れた声は、どこか泣きそうな響きも帯びていて。
声に気づいたのか、目を覚ました蒼がピリリ、ピリリ、と甲高く鳴いた。
その声は、夢と現の境界線を破って。
閉じていた天鵞絨が開かれて、数度、瞬く。
はっとしたように身を起こして周囲を見回せば、そこはすっかり見慣れた自分の部屋]
……また……か……。
[今のが夢だった、と改めて認識するや、落ちたのは掠れた声。
額に滲んだ汗を拭い、は、と短くを息を吐いて。
視線を向けるのは、こきゅ、と首を傾いだ蒼の小鳥]
……ありがと、な。
[見つめてくる円らな瞳に、微かな笑みを写して手を伸ばす。
小鳥は厭う様子もなく、自然とその手にふわり、止まった]
─ 翌朝/自室 ─
[あの夢が何を意味しているのかは、わからない。
恐らくは、記憶の欠落部分に関わるものなのだろうが]
……まったく。厄介、な。
[夢自体は酷く厭わしいのに、それを払う術がない。
何故、それを見るのか自体が掴めないから。
それでも、ここ二年ほどは夢を見る頻度は落ちていたのだけれど]
なんで、今になって……ったく。
[苛立たしげに吐き捨てた後、ベッドから降りて身支度を整える。
荒れ狂っていた風の音は、遠い]
……外、見てこないとな。
[気持ちを切り替えるように、そう呟いて。
外は冷えるだろうから、と蒼は部屋に置いて、足早に外へと向かった]
─ 聖堂・外 ─
[どこから外に出るかと考えて、選んだのは厨房の勝手口。
正面玄関の重い扉は、雪の積もり方によっては開くだけで一苦労だから、と比較的開け易い方を選んでいた]
……随分、荒れたな。
[小さく呟き、は、と一つ息を零す。
荒れた風の齎した猛威はそこかしこに。
薪小屋と山羊小屋の無事を確かめると、村へと続く坂へ足を向け]
……予想通り、か。
[埋もれた道に、浮かぶのは苦笑い。
一先ず、皆にこの事を知らせよう、と踵を返して、何気なく空を見上げて]
……?
[異変に、気づいた]
……なん、だ、あれ。
[聖堂の上に掲げられた十字架に、何かが引っかかっている。
遠目の印象は、そんな感じで。
けれど、それにしては何か色々と、不自然な気がして。
嫌な予感を抱えつつ、よく見える位置まで歩みを進める。
進むにつれて、空気に何か混ざるような、そんな違和感があって。
それが歩みを鈍らせる、けれど]
……っ!?
[それでもたどり着いた、聖堂の下。
見上げた十字架に貫かれているのは、人のカタチの──]
なんっ……。
[声が詰まる。
なんだこれは、認めたくない、認められない。
そんな思考がぐるり、巡って。
立ち尽くしていたのは──僅かな、時間]
……誰、かっ!
[とっさ、口をついたのはこんな叫び]
誰か、来て、くれっ!
ひと……人が、しんでるっ!
[誰が、と口に出来なかったのは、感情の抵抗。
認めたくない、認められない。
そんな想いが、名を口にさせない。
荒れた感情で酷く乱れてはいても、歌を紡ぎ慣れた澄んだ声は冷えた空気を伝わり、広がって。
閉ざされた地にある者の元に僅かなりとも響いていくか。*]
―翌朝/客室―
[火に温まったとは云え、壁向こうから忍び寄る冷気と吹き荒れる風の音に眠りは浅くなるかと、思ったのに。
目覚めは妙にすっきりしていて、鉄紺色が緩やかに瞬いた]
……よ、っと。
[左腕を下にするように寝返りを打ち、右肘で上体を押し上げる。
傾斜に負けた布団がずるりと背を滑り落ちて。
ふ、と]
…………あったか、い?
[胸元を抑える。脈拍を伝える其処よりもう少し左。
正確にはその、裏側]
[違和感に寝台の上で暫し動きを止めて]
─ 翌朝 ─
[目覚めて直ぐ行うは就寝部屋の暖炉への火入れ。
外は晴れていたが、その分冷え込み。
夜中のうちに暖炉の火も消えているため、部屋は寒々としていた。
部屋を温めながら身支度をして、1つ薪を入れてから客室を出る。
真っ直ぐと向かうのは聖堂の地下。
昨日と同じように鉄製のスコップを取りに行く]
先ずは薪小屋までの道作り、かな。
[暖炉もさることながら、厨房でも薪を使う。
減った分の補充は優先して然るべきことがらだった]
─ 外 ─
おい、何があった!
[人がしんでるとは聞こえた。
けれど外に出ただけではその痕跡も見当たらず、その場に居たライヒアルトに状況を問う]
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