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― 朝 ―
[男の朝は早い。
嵐が過ぎた事を確認し、風除け等を外す。
畜舎の鶏から卵を集め、厨房へと届ける。
ありきたりの朝。
違うのは、邸内の仕事を頼まれている為、
朝に外回りの仕事を終えた後は、
昨晩のように身なりを整えたこと。]
橋が燃えた。良くは見えなかったけれど多分、やったのは此処の使用人たち。
そして先程から貴方が“此処”に居る。
[言いながら顔を顰めたのは、目の奥から来る疼くような痛みの所為。目覚めてすぐに動けなかったのもこれが原因だった。
細い為に分かり辛いものの、よく見ればその瞳は、元の色から薄く紫掛かっていた]
やっぱり痛む……ということは、貴方は死んでいるんだ。……叔父さん。
─ 深夜 ─
[夜。
風の音は強く、毛布を深く被っても遮ることはできなかった。
一人でいる寂しさと不安を我慢しながら、ふとウェンディや他の客人は大丈夫だろうか、と心配になった。
外の菜園や花壇の保護もされているだろうかと思い、一度部屋を出てまず外を覗く。
風避けがされているのが見えると、手伝わなくて申し訳なかったな、と思いながらもほっとした。
次に、自分が案内したウェンディの部屋や、オードリーの部屋を見に回った。]
夜分遅くに失礼します、起きていらっしゃいますか?
[起きていればかろうじて聴こえる程度のノックと声かけをして、返事があれば何か不自由は無いかと問いかける。
所望されることがあれば、それに応じる。
その後は自室に戻り、普段の起床時間までぐっすりと眠った。
この間の移動中誰にも会うことはなく、何かの物音があったとしても風の音に消されて気付くことはなかっただろう。]
[幼い頃から近くで人が死ぬ度に見てきた“それ”が本物の霊魂なのか、単なる幻なのか、彼が知り得ることはない]
……やっぱり喋れはしないか。
[暫く後に溜息を吐いて、もういい、と呟けば、叔父の姿は掻き消えて映らなくなる。
首を鳴らして、頭を掻き、緩慢な動作でベッドから降りた]
自分で確かめる他ないか。仕方ない。
ああまったく、最悪な目覚めだな今日は。
[仮にも血縁者を亡くしたにも関わらず、声から悲しみなどという感情は微塵も感じられない]
この分だと約束の金も貰えないだろうし。本当、最悪だ。
― 廊下→広間 ―
んじゃ、とりあえず、広間にいくかァ。
[素直に頷くソフィーと、ウェンディを抱えたオードリーに頷きをかえして歩き出す。
アーヴァインの部屋にくるまでのざわめきは今はなく。
あったとしてもハーヴェイやニーナたちといった客人の声だけで。
使用人の声はほとんどなく]
……静か、だな……なァんか、あったのか……
[いぶかしげに眉根をよせて周囲を見る。
今はとりあえず広間を目指しているから、窓の外まで見ることはなくて。
それに気づくのはきっと、他の誰かの声によって、だった]
─ 朝 自室 ─
……朝、だ。
[少女の朝は早い。
見習いといえど、否、見習いだからこそいつも他の者より早く起きて仕事を始めるから。
窓の外に視線を向けると、夜に荒れていたのが嘘のように静まっていた。
一晩で収まってよかったとほっとした息を小さく零して、身支度を済ませ外に出ていく。
朝はいつも屋敷周りの掃除をして、それから湯船の掃除ついでに昨日の残り湯を頂いて新しい湯を張る。
だから今日も、いつものように真っ直ぐ外に出て、掃除を始めた。
屋敷の中で何が起きているかも知らないままで。]
…あれ?
おはようございます、どうか…
[屋敷から出てきた料理長の姿に、目を丸くする。
いつもならこの時間は厨房で下ごしらえをしているはずで、こんな所にいるのはおかしい。
だから、何かあったのか、と声をかけたのだけれど。]
きゃ…っ
[邪魔だ、と胸を押されて突き飛ばされる。
尻餅をついた自分に構わず、料理長や続いて出てきた使用人達も慌てて駆けて行く。
何が起きたのか解らなくて呆然としていたら、少し遅れてヒューバートも出てきて通り過ぎていって。
流石に何かがおかしいと思い、何があったのか聞こうと自分もヒューバートの後を追った。]
─ →吊り橋前 ─
あ、の、ヒューバート、様。
何か、あったん…
[何かあったのかと問いかけた声は、最後まで紡ぐことはできなかった。
昨夜の風のような音を立てながら燃え上がる吊り橋を見て、何が起きたのか理解が出来ず呆然とする。
どれだけそうしていたか、ヒューバートはまだこの場に残っていただろうか。]
…どう、して。
[何故こんなことになったのか解らないまま、小さく呟いた。]
[開け放たれた扉に手を付き、
目に飛び込む室内の惨劇。
赤黒く変色した血液は絨毯を濡らし
奇怪な意匠を描いている。]
……………。
[脇目も振らずに、アーヴァインの元に近寄り、
膝をついた。周囲には誰が居ただろうか。]
……、
[唇が開いたが、言葉は出なかった。
金魚のように、数度、何かを言うように開閉しただけだった。]
だっ……、
[ゆさ、と、アーヴァインの腕に手を触れ、
体を揺さぶる。重い体に、死を感覚的に知った。
如何したら良いのか、咄嗟に分からないように、
アーヴァインの上半身を抱えるようにして、揺さぶる。]
アーヴァイン…
[アーヴァインの焦点の合っていない眸を見つめた。
濁った眸の中に、自分の顔が見えた。あの日のように。]
─ 吊り橋前 ─
あ、は、はい。
[ヒューバートに肩を叩かれ>>67、ようやく我に返ったように頷く。
屋敷へと戻る執事の後を慌てて追いかけて、あの、と声をかける。]
あの、一体何が、起きてるんです、か?
どうして、皆、こんな…
[使用人達が逃げていった理由も、まして吊り橋まで落とされる理由も解らなくて、上手くまとまらないままに問いかけた。]
[視界の端に、空へと立ち昇る一条の黒煙が見えた。
男は、アーヴァインを揺さぶるのを、止める。
抱きかかえたまま、窓の黒煙を一度見つめ、
再度、変色したアーヴァインの顔を見た。
誰かが訪れるまで、呆とそうしているだろう。]
─ →屋敷内─
……私にも良く分かりません。
彼らがこのようなことをする、何かがあったとしか。
[使用人達が口走っていた言葉は重なりすぎて何が何だか分からなかった。
そのため、ネリー>>70にはそのように答え、屋敷内への足を速める]
私は旦那様のところへ行って来ます。
ネリー、貴方はお客様に吊り橋が落ちてしまったことを伝えてください。
恐らく、麓の方々が気付いてくれるまで、ここから出ることが出来ません…。
幸い、備蓄はありますので、ここでしばらく過ごすことは問題ないと言うことも。
[そう指示を出して、自分は主の部屋へと急いだ。
何かがあったのであれば、事態の把握と解決を図らねばならない。
先ずは把握を図るために、最初に悲鳴が上がった場所へと向かった]
─ 広間 ─
[グレンとすれ違った事には、余裕のなさから気づけていなくて。
広間につくと、ソファの空いている空間に、ぺた、と座り込んだ。
紅い色が周囲に移るのまで、気にする余裕は今の所なくて]
……わけ、わかんない、よ。
なん、なん、だよ、これって……。
[ふと、自分の手に視線を落とす。
絡み付いているのは、紅黒い、色。
それが何かを思い出すと、ぎゅ、と一度強く目を瞑った]
― 広間 ―
[オードリーが抱えていたウェンディを受け取って、ソフィーが座ったのとは別のソファにウェンディを寝かせる]
……ろくでもないことが起こったのに、違いはねェなァ……
[ふう、と一つため息をついて、ソファに寝かせた少女から離れた]
─ →屋敷内 ─
何か、が…です、か?
[執事の返答>>73に、彼も事情は解らないと察して表情がより不安に染まる。
けれど、吊り橋が落ちたことを客人達に伝えるように指示を受けると、使用人としての自分を思い出して頷いた。]
はい、承りました。
[一礼をすると、指示を受けたことをこなそうとヒューバートと分かれる。
まずは広間を見てから各人の客室に声を掛けに行こうと思い、広間に向かった。]
─ →広間 ─
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