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―二階廊下→―
[ライヒアルトに続き、廊下を進み部屋の中へと。
そのままドアの閉まる音を聞きながら]
すみません……、ライヒ兄さん……私……
[震えたまま、うつむいた顔はそのまま]
そのうち私やライヒ兄さんも……なのでしょうか……?
[問う声は震えていたが、先ほどよりも少しはっきりと聞き取れるもので]
― ビチェの部屋 ―
[綺麗にしても、もうこの部屋は使われないかもしれない。それでもそのままには出来なかった。
せっせと血痕を拭って目立たないようにしてから部屋に戻る**]
―井戸―
[少しのチーズで空腹を紛らわせ貯蔵庫を出る。
井戸まで戻り、その傍らで道具を広げた。
桶に汲んだ水を傍に置き、白布を解いた。
山刀の欠けた箇所を指の腹でなぞる。
口許から笑みは消えて、鍛冶場にいる時と同じ貌]
大事に使って貰ってるんだな。
[手入れの跡を見て蒼が細まる。
白銀に包まれた其処で山刀を研ぐ音が響いた]
―個室―
[先にシスターを中に入れ、部屋の扉を閉めてから向き直る。
俯き震える様は、呼び方も相俟って、未だ教会に入る前の彼女を思わせる。
僅かに目を細めた男は]
……死は恐ろしいかね。
[いつもと少し違う、宥めるような調子で言葉を紡ぐ]
ええ、怖いです……ライヒ兄さんは……全部知っているくせに……
私を教会に……それだって……
[俯いたままの様子は変わらずに震えはより一層つよく、左手で右腕を抑えるようにぎゅっと強く握る]
ねぇ、ライヒ兄さん……
ライヒ兄さんは………
[作品と向き合う間は他の事を考えずに済む。
真剣な眼差しで黙々と山刀を砥ぐ手は休みなく動く。
欠けた箇所が分からなくなり新品の如き輝きを取り戻すまで
少しばかり時間が掛かった]
――…は、ぁ。
これでまた暫くもつだろ。
[冷たい水で刃を洗い、水気を拭き取り仕舞う。
道具も全て集め、桶の水を流してからその場を去る]
―個室―
[黙ったまま、男はシスターを見ていた。
異性同士が必要以上に触れ合うのを厭う男は、自身もまた進んで異性に触れようとはしなかった]
それが、君の望む事かね。
[そして今、神に仕える者らしからぬ言葉を向けられても、男に大きな動揺は見られなかった。
一瞬だけ僅かに目をみはったが、それだけだ]
それを本当に、君が望むと言うなら。
……そして、その後も私の教え通りに、前に進むことを誓うならば。
[そして男は、いつもと変わらない真面目な顔で、真っ直ぐな姿勢で、言葉を返す]
私はそれを受け入れよう。
―個室―
[直ぐに持ち主に届けるは躊躇われ
それは自らの部屋で暫し預かることにした]
それにしても、
長剣の鞘は何処にいったんだろう。
ギュンター殿を襲った者が、持ち去った?
[捨てられていなければ良いと思う。
とても見事な装飾だったから無くすは惜しい。
作り手が哀しむ姿はみたくなかった]
………。
[考えるような間を置いて]
ギュンター殿の部屋に行ってみるか。
確か、日記があったんだよな。
[ライヒアルトに飛び掛り左手で首をつかみ壁に押さえつけるように、振り上げた右手はそのままの勢いのまま振り下ろす……、
人には到底無理な速度と力……そして鋭さを持った右手で、
顔のすぐ横の壁に傷をつける]
はぁ…はぁ…
[必死に湧き上がるものを抑えるようにしながら、首を横に振る]
苦しいけど……それだけは……いや……
[衝動よりもわずかに理性が勝り、ぎりぎりのところを掠める]
殺すのも……殺されるのも……
[苦しそうにうめく声でも、その顔が近くにあるライヒアルトには聞き取れるだろうか。
左手を離し、荒い呼吸のままで苦しむ胸を抑える]
―ギュンターの部屋―
[夜の帳がおり、月のいとし子の時間が訪れるまで。
男は自分にできうる限りの事をしようと思い行動する]
日記は、これか。
[ギュンターの残した言葉をじっと見据える]
狼の声――、久しくなかった事。
あの時、……また、って事は以前にも似たような事があったか。
ギュンター殿がその場所に居たのなら……
何処かにその時の記録が残っていないだろうか。
[部屋を見回し、手がかりを探す。
成果を上げられぬまま、陽は落ちて、その場で眠り込んでしまった**]
―個室―
……ッ !
[壁に強く押し付けられて、苦しげに顔を歪める。
だがそれだけだった。急な攻撃への戸惑いも、殺される事への恐怖も、その表情には浮かばない。
振り上がった腕が壁を傷つけた時にも少しばかり身を竦めたが、それもまたそれだけで終わる]
……苦しそうだな。
[やがて手が離れたなら、僅かに咳き込んだ後で、男は再び彼女を見た。
僅かに眉を寄せ、哀れむように]
だが、よく耐えた。
ライヒ……兄さんは……
いつもそう……
[それでも、同世代の者達と、仲が悪いわけではないが、皆に比べれば仲がいいとはいえない自分にとって、もっとも親しい人。
そして一番……]
ずるい……本当に……
[泣きそうな表情で、哀れむ様子を涙をこぼしながら見る]
ごめんなさい……
癒して……くる……
[涙をぬぐいながら部屋を去ろうとする、言葉の意味することは……語るまでもなく伝わったことだろう]
―個室―
……そうか。
[想いには気付くか否か、言葉を発したのは、癒してくると伝えたそれに対してのみ。
眉を寄せたが、止めることはしない。
気を付けろと言葉を掛けることもしない]
君は人だと、他には伝えた。信じたか否かは解らないが。
……最後まで諦めてはならない。
神は努力を尽くした者にのみ、与えてくださるのだ。
[見出す者を騙ったのだと、それだけで伝わるか。
出て行こうとする背に投げかけたのは、通常の教会とは少しばかり異なる教え。
そう説き続けてきた年下のシスターに対して、しかし男は彼の知る真実までは明かしたことはない]
─ 昨日/三階 ─
[ギュンターの遺体に比べれば、ハンスの遺体は恐ろしいものではなかった。
周りの話を聞くに、ベアトリーチェを無理矢理連れて逃げようとしたらしい。]
人質なんて取っても、意味がないでしょうに……。
どうやって逃げるおつもりだったんでしょう。
[一人呟く。悲鳴や銃声を聞いたからか、彼が外の人間だったからか、人質以外の発想は浮かばなかった。
その後は、部屋や廊下の掃除を手伝い。
ベアトリーチェがあのベッドカバーを使ってくれていることに気づいて、こんな時だが少し嬉しく感じたりもしつつ。
料理や屋敷の掃除などして夜まで過ごしたのだった。]
─ 翌朝/個室 ─
[眠っとる間もクロエさんやミリィが様子見に来てくれたかもしれんけど、うちは目ぇ覚ますことは無かってん。
何度か魘されとったかもしれんけど、溺れた夢見とるわけでは無ぅて。
喉元に残る息苦しさと、目ん前で人死ぬん見た精神的なもんやったと思う。
そないな風に早ぅに寝とったさかい、朝に目ぇ覚ますんはいつもより早かった]
………まだ苦し。
[ベッドん上に横向きに寝転がって、右手で喉元押さえる。
じわじわ締め付けるような感覚が残っとって、居心地悪ぅて眉根寄せた]
ミリィ起きとるやろか……まだ早ぅか。
後でもっかい薬もらお…。
[窓ん外見たら、陽ぃ昇り始めみとぉな雰囲気やった。
あんま早ぅ訪ねてもあかんやろ思て、薬貰いに行くんは後回しにしてん]
……………………。
[橋落ちてからうちに起きとる異変。
それがなんなんか、原因が見えて来ぃへん。
そもそも”人狼”てどういうことやねん。
何でうち、ハンスさんが人狼ちゃうて判んねや。
ホンマ解らんことだらけやで…。
今、なにが起きてんねん]
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