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[煙草を吸い終えた男は、ゲームが終わったなら玄関が空いているかもと、念の為に腰に鉈を下げ、部屋を出た。
壁に片手を付きながら、なるべく傷に響かない様にそろりと廊下を歩いていれば、血の臭を近くに感じ、顔を顰めた。]
ここ、か……。
[血の臭が漏れている扉をノックする。返事はない。
用心のために鉈を抜いてから扉を開けた。
どす黒く変色した血に染まったシーツが見えた。]
→ ニ階・リディヤの部屋 ―
……誰も、いねぇか。
[鉈を再び鞘に収めてからシーツの傍にゆっくりとしゃがみこみ、僅かにめくる。
左目に最初に激痛が走った時、気遣ってくれた少女が、変わり果てた姿で横たわっていた。]
……お嬢ちゃん、か……すまんな。
[血の変色具合やこぼれた血の固まり具合から、恐らくはベルナルトと戦う前に殺られたのだろう推測できたから。
少女が喰われる前にベルナルトを狩っておれば、とつい侘びの言葉が口を吐いた。]
― ? ―
[眉を下げた彼>>+29に、私は小首を傾げる。
彼が、彼の中にいる誰かが私を殺したのなら違ったかもしれない。生きている人が語りかけてくれるのでも、違うように感じていた気がする。けれど、今ここで、言葉を交わした彼の言葉だから、納得が出来たのだと私は感じていて。
善人か悪人かは、気にしていなかった]
あ。
[ゆれる影>>+30に、聞いてはいけないことを聞いてしまったと、私は手で口を押さえた。
彼の姿が薄らいで、傷だらけの小さな姿が浮かび上がると、私はその手を反射的にその子に向けて伸ばしていた。
けれど触れる前にその子も消えてしまって。私は独り立ち尽くす]
…ごめんなさい。あなた、と、小さなあなた。
[伸ばした手を胸まで引き寄せて、私は闇の向こうへ呟く。
影が忍び寄るように、私の姿も一時薄れた]
― 二階/リディヤの部屋→ ―
[キリル>>7には、「彼女」の方を見ぬまま無言で小さく頷いてみせた。
何処か曖昧に聞こえる響きは、理解しきれていないようだとも漠然と思いはしたが、それでもさらに言葉重ねることもせず。
やがてサーシャに続きアレクセイ>>8の足音が遠ざかるのを聞いた時も、そちらに一瞥を向けるでもなく、ただ黙っていた。
それから幾らかして、メーフィエもまた顔を上げ、立ち上がった。
スカートの膝元にはリディヤの血が染みるも、それに視線をくれることもなかった。
もしこの時キリルが未だ部屋に居たとしても、メーフィエの方から視線を向けたり、何かしらの言葉を残したりすること無く。
ただ無表情を保って、部屋を出て行った。]
─ 一階/大浴場 ─
[オリガの骸を抱き締めたまま、彼女が言っていたことを思い出す]
[── …私の時も、そうして下さいね ──]
[ああ…、と小さく声が漏れた。
腰を折って抱き締めていた状態から起き上がり、自分に凭れさせる形でオリガを抱え上げる。
パシャリと水飛沫を散らしながら、僕は湯船から上がった]
……まだいる……
『鬼』が、まだ 居る
[死んでいない。
ジラントが『鬼』と言ったベルナルトが死んでも、終わらなかった。
何故?]
……ベルナルトさんじゃなかったんだ……
アイツが、嘘ついたんだ
[正しい思考は為されず、顔の左半分のように歪み行く。
憤りは、憎悪は、先刻手当てをした狩人へと向いた]
─ →二階/オリガの部屋 ─
[脱衣所を抜け通路へと出て。
滴る雫はそのままに客室のある二階へとオリガを運ぶ。
左足の痛みなんてもう分からない。
足首は恐らく悲鳴を上げていたのだろうけれど、僕はそれを感じることが出来ないままに階段を上って行った]
……………
[誰かに声を掛けられたとしても足は止めることなく。
醜く捩れた肌を晒したままオリガの部屋の前へ。
一時だけオリガを左腕だけで支えて部屋の扉を開いて、彼女を抱えて部屋の中へと入った。
ベッドに仰向けに横たえて、備え付けられた毛布をオリガにかけてやる。
それを終えて力なく両腕を垂らした後、僕はゆらりとオリガの部屋を出て行った]
……そーいえば。
[ぼんやりと漂いつつ、ふと、気づく]
俺がここにふらついてる、って事は、他の連中も?
[いる、と考えるのが妥当だろう。
死によって盤上から取り除かれたとしても、それが解放に繋がるとは思えないから]
……だと、したら。
[ふと、過ぎったのは、自らが手にかけた者。
最後まで、こちらの中に疑問を残してくれた男]
解消した所で、どーにもならんが。
もやっとしてるよりは、マシ、か。
[はっきりしないものを抱えたままでいるのは性にあわぬから。
彼の身に起きている変化も知らぬまま、ふらり、その姿を求めて屋敷内を彷徨い始める]
─ 三階・展望室 ─
[硝子張りの部屋、一人佇む。
外の異変に気付き、確認の為駆け込んだ時と同じく、見上げるのは紅い月。
けれどあの時のように、震えが身体を走りはしない。
身の内にある感情は変わらぬもの、だけれど]
───…?
[ぐ、と。
無意識、握ろうとした掌に走った痛みに気付き。
視線落とすと、ナニかの棘が作ったのだろう、小さな傷から血が滲んでいた]
─ 三階・展望室 ─
[微かな、けれどはっきりと流れ出る赤を見つめる。
命あるものから流れるそれ。
『鬼』が置き去った華と、重なる色。
それに口つけ、嘗め取って]
…やっぱり、不味い。
[小さく声落とす、表情に色は無く*]
― ニ階・リディヤの部屋 ―
[切り裂かれた喉と胸元。
そして、飾られていたのは真紅の薔薇。
女主人の元にも落ちていたもの。
そして、ベルナルトが庭園で触れていたものと同じ。]
随分キザったらしいこった。
手向けのつもりかね?
[皮肉に口元歪めるも、薔薇の花はそのままに、シーツを元に戻す。
少女の素性を知っておれば、故郷に送り届けもできただろうけど、生憎男は知るわけがなく。
もしかしたら、オリガなら、宿帳から調べられるかもしれないと、雨に降られてこの館に来た時のこと>0:110>>0:114を思い出す。]
……あー、なんにせよ、ここを出てから、だな。
― エントランス ―
[がちゃがちゃ、虚しい音が響く。]
……どういうことだ?
[男は玄関に手をかけたまま呟く。
未だ、誰も逃がさないとばかりに閉ざされたまま。]
まさか……
[思い返すのは、リディヤの部屋で感じた違和感。]
―――まだ終わってないって事か?
[だとしたら。
まだ狩りは続くのに。
男の身体は、狩をするにはもうずたぼろで。
ましてや獲物すら見つけてはいない。]
くそったれが。
ただ狩られる側なんざぁ真っ平ごめんだってぇの。
[吐き捨てた。]
[ベルナルトを刺し――「コエ」で、それを聞いた――返り撃たれたのだろう者が誰だったのかは、その時以降に顔を合わせた者たちの顔を思い出せば、その時に見ていなかった者たちの誰かだと解る。
思い描いたのは、名を未だ聞いていなかった、たどたどしい口調の筈だったあの男。
「変化」しているように見えた恐ろしい彼も、この世に居ないのだと思えば。
心に抱かれるのはやはり、安堵の方だった。]
あとどのくらい、『人』が死ねばいいのかな。
[――それは何処まで、本当の「あたし」?
ふっと何処かで迷って、けれど、一先ずはそれ以上の思考を止めた。
「理不尽な」『ゲーム』に、のまれて、受け入れて。
そして――ただそれに勝たねば、と決めるように。]
あたしは、みじめじゃない。
ひとりじゃ、ないん、だから。
一緒に、生きて、勝つんだ。
―――…一緒に。
[「仲間」のひとりのコエが途切れて抱いた哀しみと。
もうひとりの「仲間」の行く先を気に掛ける心。
それさえも、「メーフィエ」ではないものの思考かもしれなくて――。
自分とも自分でないとも付かぬ心を抱えたまま。
けれど確かに「死にたくない」と思った彼女は、鏡の前を離れ、ベッドに一度身を沈めた。]
おうちに帰ったのかな。
[最後の涙をぐいと拭って独り言ちる。
それならいいのに、と思う。
私はまだ帰り道がわからないけど
いたそうだったあの人が帰れたらよいと思っている]
私も、帰りたい。
[父の笑顔が思い出された。
森に入る前にみせる少しだけ心配そうな笑顔]
かえりたいよ。
[少女はぽつと零して、大浴場を出る]
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