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そう……だったんだ。
ええ、僕も。
全く。なんと言っていいのか、わからない。
[幼馴染の中でも歳の近い彼女に対しては、口調はやや砕けたものになる。
言葉を続けようとした矢先、一つの単語が引っかかり、目を見開いた]
人、狼?
[ウェンデルの言葉に]
そういえば、そうかここにいるってことはゲルダも容疑者の一人ってことか…。
まったく…、なんでこんなことに……。
[呟いてからウェンデルに軽く手をあげて挨拶をし]
俺が容疑者って言われるのはわかるとして、
まったくもってゲルダもウェンデルもなんで呼ばれたんだろうな。
ああ、そうだゲルダ、俺にも紅茶いれてもらっていいか?
ウェンデルも、飲むよな?
[その様子は先ほどのことをごまかすかのようで、
ゲルダにはその様子がありありと伝わるであろうか?]
反省して。たくさん。
一人暮らしは、それなりに自由で楽しくもあったけど。
[半分は冗談。半分は本気。
そのような態で口調は語る。
傷口を撫でる指先は、言葉よりも雄弁に優しい]
うん。
…何も変わってなかったら驚きだけど。
でも、兄さんは兄さんのまま。あたしにとって。
[躊躇い留まる腕を、翠玉が不思議そうに眺め。
こつん、と額をマテウスの胸元に当てて離した]
きっと皆、根っこが元のままなのね。
あたしは、災難ね、で済ませたけど。
ウェンデルなら…神の試練とか言うかなって。
[相も変わらず、乏しい表情。
本気か冗談かは判りにくく]
…さっきの話しの時居なかったものね。
[自衛団長からの話しをかい摘まんでウェンデルに伝え]
だから暫く此処に居なくちゃみたい。
[視線は自衛団長へと移った。
老人は黙して頷き、声無き問いを肯定する]
……そのようなものが、
[眼を伏せて思考に陥りかけたところで、マテウスの声が届き顔を上げる。
おかげで、彼の不審な挙動には気づかなかった]
あ、はい。いただきます。
今から言っても仕方の無いことだし。
割り切った方が、早い。
――…マテウス兄さんが容疑者な理由も、私たちが容疑者な理由も、きっと似ている気がするけれど。
[じい、と翠玉はごまかそうとするマテウスの態を見て。
それは、どこか諌めるよう。
ポットから紅茶を注ぎ、*差し出す*]
どうぞ。
[ゲルダに図星を突かれ、やましくもないのに言葉に詰まる]
……へこたれては、いられないからね。
[苦笑と共に、遠回しな肯定。
しかしその表情も、彼女の説明を聞くにつれて失せていった]
神学校でも、幾度か聞かされた。
人狼は人間に仇なす者。
昏き闇より生まれ神の意にそぐわぬ者。
その存在を赦してはならないと。
[呟くうちに、言葉は呪詛めく。
睫毛の作る陰のためばかりでなく、その瞳は、くらい]
ああ、反省している。
ただ、これだけは信じてほしい。
皆ことを忘れた日はなかった、
ゲルダのことは気がかりだったんだ。
[胸元にゲルダの重みを感じて、
年月の経過をその重みにたしかなゲルダの存在を感じて]
ありがとう、ゲルダ。
[迷わず抱きしめて]
会いたかった、ずっと。
ずっと戻れるなら戻りたいとも思っていたんだ。
でも今、こうしてようやく会えた。
[少ししてゲルダを離し、
少し気恥ずかしそうにしながら]
ありがとう。
[差し出された紅茶を一口]
そうだな、容疑者の理由。
動機とかそういうのは一切関係無しって感じだったからな。
[ウェンデルの話す説明に顔をしかめながら]
だからってうちらをこんなめにあわせるのは…、
どうなのかね…。
そういえばウェンデルは何か知っていたりしないか?
その、人狼を見つける方法とかな。
[ウェンデルは、二人の様子に構う素振りすらない]
人狼は、滅さねばならない。
[ただ、はっきりと。
その一言を発した後には、極小さく、延々と負の感情の込められた言葉が続く。問いに対する答えとはならずに]
滅ぼす…ねぇ。
それが親しい人でもってことか?
[ウェンデルの様子にまじめな表情で聞き]紅茶を一口そちらをじっと見つめて答えを待つ]
……それが使命ならば、
[淡々と紡ぐ口調とは裏腹に、僅かな躊躇い。
瞬間、何処かが軋むような痛みに、口を噤み眉根を寄せた]
そうか、使命なら…か。
[と、応えてすぐにウェンデルが苦しむ様子に]
おいっ、大丈夫か?
無理はするなよ?
[心配そうに覗き込み]
今日はもう休んだほうがいいんじゃないのか?
……ぁ、はい。
[覗き込んでくる眼に、はたはたと幾度か瞬く。
夢から覚めたような面持ち]
無理を、しているつもりはないんですが。
心配をされるようでは、いけませんね。
お言葉通り、休むことにします。
[それから、一言を付け加える。
終わりには珍しく、冗談めいたものを*混ぜて*]
ああ、紅茶を頂いてからにします。
兄さんばかりに飲ませるのは、勿体ないですから。
おう、飲んで落ち着いたらゆっくり休むといい。
俺は、積もる話もあるんでな。
[ゲルダを示しながら]
突然変なこと聞いて悪かったな。
容疑者のほとんどは俺の親しい間柄の人物がおおいもんでな。
[その後紅茶を飲み終わり自室へと戻ったウェンデルを見送り、
紅茶を飲みながらゲルダとナターリエを交えて昔話やこれまでのことなどを話した。
夜もふかまり次第に眠気を覚え始めたころにそれぞれの個室へ*戻っていった*]
[降り注いでいた白銀は、今は止み。
雲の薄くなった向こうに霞んで見える紅色]
変な符丁、合わせるなよな。
[吹き上げた煙でその色を隠す。
再び流れてきた雲も、霞む月を押し隠した]
村を守りたい、か。
まあ俺だって…守りたいとは思うけどさ。
どうせ初めてなんかじゃない。
やれというならやる、けど。
[深い溜息が落ちた]
[手元まで降りてきた熱を握り潰す。
右手に走る、小さな痛み]
……止めた。キリがない。
[窓を閉める。部屋の中ですら吐く息が白くなっていた。
それでも広間に戻る気はまだ起きなかった。
そこに残っているかもしれない者のことを思うと]
明日、謝ればいいよな。
それと。ライに……。
[途切れる声。衣擦れの音。そして*静寂*]
[兄と慕うマテウスの謝辞。
うん、と短い返事で抱擁を受け入れた。
人狼の話しがウェンデルに向き、翠玉を移せば、何処か印象を異にした相手が見える]
…気を張ってる?
[抑揚に欠ける口調よりは、差し出した紅茶に入った砂糖とミルクの甘さ、温かさが労りを告げて。
部屋へと皆が戻り出した頃、厨房で食事の仕込みをして、それから自身もまた個室へ*戻った*]
(回想)
[ヨハナの後にくっついていった後、ライヒアルトやマテウスたちの後に一応くっついていったものの人手は足りている様子。何かできることはないかとその当たりをうろうろしているときに聞いた、ギュンターの声]
人狼……?だと
[ギュンターに食ってかかるゼルギウス。その様子をぼんやりと見つめて]
[皆がぞろぞろ引き上げ、もしくは広間で話しているのを横目で見ながら、むっつりと黙り込んだギュンターと言葉を交わす]
……そうか、そんなに村が殺気立っているのか。
このままここに火をかけて、俺たち全員を焼き殺してしまえ、そんな意見まで出るほどに……成る程な。
隔離することで俺たちを守る、そういう意味もあるんだな……
もう遅いな。あす、ヨハナばっちゃんに色々聞いておく。
お目付役としてここに押し込まれたのは、要はあんたも容疑者なんだろ?
何だよ。怒るなよ。身に覚えのないことで疑われて腹立たしいのはこちらも同じだ。
[ギュンターに手を振って*余った寝室へ*]」
― 翌日:集会所二階・個室 ―
……ない、か。
[夢より覚め、身支度を整え、祈りを捧げ。
平時とは異なる状況で平時と同じく日課を済ませたウェンデルは、荷を漁る手を止めて呟いた]
防寒用すら、忘れていたくらいだものな。
[ゲルダの淹れてくれた紅茶のおかげか、訪れた眠りは快く。昨晩、胸にあった違和感も今は消え、規則正しく生命の音を刻んでいる。
ゆえに安堵を覚えたものだった、のだが]
ふわぁ...
[ベッドの上で伸びをして、部屋を見回す。]
ふゃ…あれ?えーと…
[おばあちゃんの家じゃない。一拍して、昨日ここへ連れてこられた事を思い出した。]
あー…。
[立ち上がり、窓の外を見る。
落ち着きのない自衛団員。
硝子越しにも、緊張の空気が伝わってくる]
……頼んでみるか。
[鞄から取り出した紙とペンに文字を書き付け、部屋を出ていく。他者を起こさぬようと心がけても、古い床板は、歩みに合わせて悲鳴をあげた]
はー…。
[ため息。一晩眠ったせいか、怖がる気持ちがなりを潜めてる。]
[大人は仕方ないなぁ…。][そんな思いさえ、ため息にはこもっていた。]
[そのとき。]
[廊下で、床板のきしむ音がする。]
[足音は階下へ行ってしまい、やがて扉を開く音が続いた。]
[わたしは、みんな起きてるのかな、と、部屋を出てみることにする。]
― 集会所・外 ―
すみません。
お手数をおかけしますが、お願いします。
[書き付けを渡された男は、渋い顔をしながらも頷く。
大地を覆う白銀は、無数の足跡に乱されていた。
そこにまた一つ、村へと向かう跡が加わる。近いはずの距離は、随分と遠く見えた]
ああ、寒い。
[段を取ろうと手を擦り合わせる。
黒い袖を引き、指先ばかりを覗かせて]
[広間は、家の中なのに、吐く息が白くなるんじゃないかというほど寒かった。]
暖炉の火が消えかかってるんだ…。
[わたしは手近な薪を何個か放り込んで、火掻き箸でつつく。]
[寒さに凍える両手を口許に当てて、はー、と暖めながら。]
…あ。
おかえりなさい。
[青年…というにはまだ幼さの残る顔立ちの、男の人が入ってきた。]
[わたしは微笑んで挨拶する。]
[なんだか、この理不尽な状況を一緒に耐える人だから、初対面なのに親しみが持てた。]
― 集会所一階・広間 ―
[広間に入ると、暖炉の傍に金髪の少女の姿が見えた]
おはようございます、
ええと、
[名を呼ぼうとして、聞いていない事に気づき口ごもる。
かと思えば、彼女から向けられた挨拶にきょとりとして]
……ただいま、というのも奇妙な感じですね。
初めまして。
私は、ウェンデル=ニコライと言います。
―厨房―
[規則正しい包丁の音。
煮立つ鍋。魚の焼ける香り]
12人分。団長様を含めて…13人。
普段よりは少ないかな。
[葱のスープ。ザワークラフト。川魚のソテーとソースを数種類。
パンやじゃがいもなども用意して。
メモを書く]
お腹が空いたら食べて下さい、と。
わたし、ベアトリーチェ エアハルトっていいます。
初めまして。
[もう一度微笑みかける。]
お外で何をしていたの?
─二階・個室─
[閉じていた目が開く。数度、瞬き]
……ぁー……。
[一瞬、捉え損ねる自分の居場所。
それでもすぐに、意識は戻り]
……そう、か……。
[嘆息の後、起き上がる。眠る前に感じた頭痛は、今は鎮まっていた]
痛みを感じる、という事は、つまり。
……嫌な話だ。
[小さな呟き。目覚めた猫が案ずるような視線を向けるのに、頭を撫でる事で応え、窓辺に寄った]
― 二階 ―
[子供は唐突にぱちりと目を開けた。ゆっくりと頭を巡らせ、座ったまま眠っている老婆に視線を止めると、少しだけ眉を寄せる]
ヨハナ………
[昨夜聞かされた名を小さく口にするのは、呼ぶためではなく確かめるためのようだった]
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