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[部屋に入ってきたイレーネに挨拶をしていると、血相を変えたミハエルが飛び込んできた。
続いて、オトフリートとエルザが。]
これは…?
[ギュンターから聞いた話と、何か関係があるのかと見比べるも、すぐに切り替えて長いすにクッションを用意する]
オトフリートさん、
ここに寝かせてあげてください。
えーと…
オニオンコンソメスープに薄いパンケーキを浮かべたやつだから…
[何が必要だ?と指折り考えながら、とんとん階段を下りて行った。
そして台所へ。飲み物を求め台所に入ったミハエルを、呆気にとられながら見送る。
食事、料理と言えばいつも、ロゲンブロートにヴルストの二、三本もあれば御の字といった所。
不慣れなユリアンは、ハンスにも負けないほど台所をがたつかせながらそれでも、どうにか材料を探す事くらいは手伝えただろう。
イレーネが手際よくスープを作るのに感心しながら、ほっとする。
作った本人も手をつけずに外に出るのを見て、確かに先ほどから騒がしい外が気になって*台所を出た*]
[その身の軽さとしがみ付く強さのアンバランスにやや驚きつつ。
なるべく揺らさないように、そして早く。それだけを考えて。
夜風のような冷たさの彼女の手を、服を通して感じながら。
広間に入り、イレーネに声を掛けられると漸く状況判断の範囲が広まる]
エルザは庭で…お疲れだったようです。
も、という事は他に誰か倒れたのですね。
うん、おつきさまは、わたしもすき。
きれいだから、すき。
[アーベルの頬へ触れた手は、彼の頭へと移動して。
さらり、その髪をなでる。]
…でも、おつきさまはちょっとさみしそう。
[オトフリートの言葉に]
うん・・・ナターリエが、熱だって・・・昨日の、「くれめんすー」が、神父さん、で、知り合いみたいで、運んでくれたの。
[話し方に焦りが見える。そういえば、キッチンにご丁寧に用意してあったエプロンをつけたままだ]
そう、か。
[撫でる手は、そのままに。
それを振り払わないのは、青年と幻魔の狭間を意識が揺らめくが故か]
……さみしそう……?
[それから。思わぬ言葉に一つ、瞬いて]
──2F・Room A──
ナターリエ、君は覚えていないだろうけれど。
ある日の早朝。教会の前に生まれたばかりの赤ん坊が籠にいれられて置かれていた。当時、まだ教区神父ではなかった私は、当時の教区神父と一緒に君をとりあげた。
私にとって、君は、遠く遠く年が離れた妹であり、愛すべき我が子であり、…家族なんだよ。
[額に冷たいタオルを置いて、もっときちんと布団をかけてやる]
おや…起きてしまったのかい。
[ナターリエの手が伸ばされるままに任せる]
―自室―
[何時間眠っていたのか。気付けば日はとっくに暮れていた。
相変わらず柔らか過ぎるベッドから起き上がって、部屋の扉を開ける。妙に慌ただしい雰囲気が伝わって来るようで。]
[開いた目はようやく焦点が戻ってきている]
ありが、とう。
[自力で起きあがり、ミハイルから飲み物を受け取る。
ごくごくと飲み干そうとして、思いとどまる。
また噎せたりしないように]
[…おそるおそる]
うん。
おつきさまはさみしそう。
くらくて、さむくて、ひとりぼっち。
あべくんもおつきさまのおともだちになってあげて?
[二人の姿と、足元の花を、
夜空の月は静かに照らす。]
[起き上がって飲み物を飲み始めた彼女を見て、ふう、と息を吐く。
ギュンターの話は、ハンスにも聞こえていただろう。ちらりとハンスを見、エルザへと視線を戻す]
・・・外にいたのね、みんな。
[自分の行動はいつも遅いな、と思う。外を見に行っても、無駄なのだろうか]
[何かあったんですかと聞きたい野次馬根性を抑えながら、紅茶を入れなおし、気つけのブランデーを数滴たらすと、水の入ったコップとひきかえに、エルザに渡す]
全部飲んでください。
体があったまりますからね。
―on the bed in my room―
わたくしにとっても、神父様は。大切な、家族です。
brother, dad, …そういう言葉では、はっきり、あらわせない、くらいに。
i love you, father.
…yes。
神父様、もう少し、側にいてくださいますか?
[起き上がり状況に適した言葉を吐くエルザを見れば、ふぅ、と軽く息を吐く。
タオルケットを彼女の近くに置き、その場から少し距離を取る事に。
イレーネに近づきつつ]
ナターリエもですか…
[眉を顰めるが]
クレメンスが神父さんで知り合い?
…ああ、やはり彼でしたか。
ありがとう、いい匂い。
[飲み終わったグラスを、ハンスに取り替えてもらって、感謝の微笑み]
[ミハイルに目を向けるが、まだ顔を合わせづらいようだ]
[少女の言葉に、す、と夜空の月へ蒼の瞳を向ける]
くらくて、さむくて、ひとりぼっち……ね。
[まるで、いつかの俺だな、と。
呟く声は、心の奥底。
少女の表す月は、生きるため、望む望まざるに関わらず、幻魔となる事を余儀なくされた頃の自分のようで]
……なれるなら……な。
[それでも、曖昧な返事しか返せないのは。
自らの行く末を思ってか、それとも他に理由があるのか]
[イレーネの視線に気づくと、
困った顔で笑い、肩をすくめる。
何をフォローすれば良いというのか。
おそらく彼女の部屋にだって、
彼女の為に誂えられたかのような武器が
用意されているのに違いないのに。]
[小さく響いたくしゃみを聞きとめて、外を見ると、
背の高い男と金の髪の少女の、
それはなんて幻想的で、背筋の寒い一枚絵。
声をかけるのが恐ろしくて、
けれども声をかけて、
何かの序幕のような光景に、
強引に幕を下ろしてしまいたかった。]
ベアトリーチェ、アーベル、
そこは冷えませんか?
中に入るといいですよ。
もうすぐご飯もできるみたいです!
[邪気のない微笑を浮かべて、つとめてにこやかに]
そういえば、ギュンターさんに話は聞いたかい?
[聞いた話をナターリエに話す]
[ギュンターがしきりに恐れている事。即ち、人狼に食べられようとしているという事、そのギュンターの運命は逃れ得ない事。人狼は人を食べるという事。武器をとり、誰かを殺せという事。人狼の血が、今甦っているという事……ギュンターの言葉は、まるで誰かに操られているかのように、何処か恐怖に満ち同じ反応を返していた。]
神がつくった箱庭の中、甦っているのは太古に語られた人狼…だという。神がこの箱庭を創ったのだとしたら、私達はきっと試練を課され、試されているのだろうね。
…あ…泥が…。ごめんなさい。
[素足で外に出ていたものだから、足が泥まみれなのに気づく]
[長椅子や、オトフリートの服を汚しはしなかったか]
[きょろきょろして]
[二人も急に倒れるとは…と呟くと少し視線を遠くに、考える顔付きになったが]
外は、寒いです。あまりお勧めはしませんね。
それより――
[イレーネのエプロンを見て]
今日は料理という名の魔法を?
[オトフリートの言葉に、彼もまたクレメンスの知り合いなのだと思い]
外に・・・行こう、かな。あたしも。
[ハンスに肩をすくめられても、どうしていいか分からなかった。
さっきの話は・・・どうせみんなに伝わるだろう。ギュンターからも他からも。もしかしたらもう既に。
ハンスが声をかけて、初めてアーベルとベアトリーチェに気が付く。月光が2人を照らしていた]
もう、出来てる、の。ごはん。パンケーキを、多めに作ったから・・・。
…聞いていません。
わたくしたちに神が試練をお与えになったならば、神はわたくしたちをedenへとつれていってくれるのでしょうか。
人を殺めろ、など。
神が…おっしゃるのでしょうか…?
人狼など、御伽噺では、ないのですか…?
[fatherへと問いかける。
その言葉は熱に浮かされるように]
外・・・寒いの?
[そういえばここは、いつでも不思議なくらい温暖な、丁度良い気候だ。
オトフリートの視線で、エプロンに気付き外す。今の自分には本当に落ち着きがないのだと考えながら]
・・・あたし料理、下手よ。作るのは早いけど。
[落ち着いてきたらしいエルザの様子にホッとするものの。
先程の遣り取りはまだ...の中でもグルグルと渦巻いていて。
どうしても真っ直ぐに彼女の方を見れない。
軽く俯き、視線は床へと落ちたまま]
[次々と聞こえてくる声にも、顔を上げることが出来なかった]
―広間―
[僕の嫌いな厄介事の気配がその喧騒から予想できたにも関わらず、広間へと向かったのは空腹の所為に他ならなかった。思えばここ二日程殆ど何か口にした記憶が無い。]
今晩和。
・・・・や、如何なされました?
[広間の扉を開け、何時ものように浮かべた笑みは、長椅子に横たわるかつての歌姫とそれを囲むように集まる人々を前に気遣うような表情へと移る。]
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