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じ、い……さ……。
[呼びかけが途切れる。
腕の力が抜け、緩んだそこから滑り落ちた猫が不安げに鳴く]
う、あ……あ……わあああああああっ!
[視界がぼやけたのは、眩暈か、それとも他の要因か。
それを判別する余裕はなく。
誰か呼ばないと、と意識のどこかで思いながら。
開いた口をついたのは、言葉にならない叫び声だけだった**]
― 夜/浴室 ―
[湯船に浸かっていた男が脱衣所に人の気配を察知した時、思い付いたのは、先刻暴露報告に抗議の雄叫び?をあげた青年のことで]
やれやれ、風呂まで追ってくるかね?
[それでも相手してやるか、と立ち上がり、戸口まで出た、所で、目の前の扉が開いた]
ありゃ?
[予想外の小さな人影に、きょとんと立ち尽くした男は、いわゆるすっぽんぽんの仁王立ち状態で……多分免疫なんか有ろう筈も無い少女が、悲鳴くらいあげたとしても無理はない]
[どっちかっていうと、襲われた?のは俺の方なんですが、とか、どうせならナターリエとかブリジットとか、もうちょっとこう妙齢の女性の方が嬉しかったなあとか、一瞬の間に色々過りつつ]
あー、いや、すまん。
[騒ぎに気付いて誰かが来る前に、と、手近にあったバスタオルを彼女の身体に巻き付けるようにかけるという機転が働いたのは、多分、経験の賜物だった]
とりあえず落ち着けって、な?
[でもまあ、無理じゃないかな、落ち着くのは。なにせ男の方は、すっぽんぽんのままだし]
― 朝/二階の部屋 ―
[ベッドの上で、ぽり、と頭を掻いて、男は隻眼をゆるりと細める]
ああ、始まったかあ…
[どこか暢気な呟きを、聞いた者はいないだろう**]
―昨夜:広間―
大丈夫ならいいけど。
[ライヒアルトにはそう返した。
が、心配はもちろんナターリエもクレメンスもするだろうと、予想して、あまり言うことはない。
ブリジットの言葉には笑って、首を横に振る。
話している内容なんてわからないから、のんびりと自分は自分で厨房に戻り、お茶を淹れ、飲むこととした。
飲み終われば、自分は湯は明日の朝で良いかと、先に部屋で休むことにして――そして翌朝。]
―朝:二階個室―
[目を覚ますと、いつものように着替え、それからそっと鏡を覗いた。
髪が隠す首の後ろ、つきりと痛む感覚に、眉を顰める。
それが何を意味するのか――わかっている。
人の肌に浮かぶのはおかしな色の花は、確かにそこにあった。
髪の色とちょうど良い長さで隠れてはいるものの。項から左の肩まで走る蒼は、消えるような気配もない。
小さく乾いた笑みが落ちて、それから、いつもの服装にあわせてストールを羽織る。
白ではあるけれど、隠れれば良い。
悲鳴が届くのは、用意を済ませた後で]
―昨夜・カウンター内―
あぁ、そうだラーイ。
何かお腹に入れといたほうがいい。
林檎なら入るか?
[アロマスティックの火を消すと、ラーイに尋ねて。
きっと返答がどちらでも了承を返す。
騒動が浴室から起こればそちらの仲裁に入った。
そして、ラーイやナータ、ブリジット達が寝たり、
お風呂にするならそれを見送ってその後に部屋に入り、
眠りについた。]
[ちょうど、窓の方から聞こえた声。窓を開けて下を覗く。
開けると入り込む臭いに、口元を押さえて。
エーリッヒの姿、彼が見る方向。
座り込んでいるような人影]
……っ
[ぎゅっと口元を押さえて、もう片方の手で窓をしめる。
思ったよりも大きな音がしたけれど、気にすることはできなかった。
部屋の中に戻って数呼吸。少し落ち着かせて、ストールを合わせるピンを取る。留めておけば、見える危険はまた減るだろう。手が震えてなかなかできなかったけれど、それを終えれば、階下へと向かう]
―朝 客室→広間―
[目を覚ましてから、広間に行って暖炉に火を入れておく。
その間にエーリッヒが通ったが、
誰かを…おそらく祖父でもある団長を探しているのだろうと思い声をかけずにいた。
悲鳴が外から聞こえれば、足早に聞こえる方向に向かって惨状を見る。]
………っ、エーリ、中に入るぞ。
[完全に『場』も、『人』も、『時』も揃ってしまったことを悟り、
落ち着かせるようにエーリッヒの背を撫でて、
勝手口から宿屋の中へと戻るように促した。
戻るようなら、一度付き添うように広間まで行くかもしれないが。]
[外に出る気はすぐには持てなくて、それでも暖炉の火を見ては、瞬いた。
いつもの調子を戻さなければと、目を閉じて息を吸う。
それから、厨房へと足を向けて、その先、勝手口を開いた。顔を覗かせた先に、人二人の姿――>>162
クレメンスは気付いただろうか。気付いたようなら頭を下げて、厨房に引き返す。
温かい飲み物を、せめて用意しておくつもりだった。
においはないほうが良いだろう、混ざって気持ちが悪くなる。
白湯だけのほうが良いだろうか。
温かいミルクだろうか。
つらつらと考えながら、とりあえず湯を沸かすのだけは確か。
戻ってきたら、エーリッヒではなくクレメンスに、何が良いかと尋ねる*つもり*]
─昨夜/広間─
ああもう……何でこんなとこでばらされなきゃならんのだ……。
[オレは広間の隅でさめざめと泣いていた。
膝を抱えて壁とお友達になっていた。
あのお偉いさん、存外しつこくてしかも上客だったから無碍にも出来なかったんだよな…。
だってオーナーがうるせーんだもん。
……何で男と分かって良い寄って来るのか、オレには理解出来ん……]
[そんな感じでしばらくめそめそしてたんだが、ゲルダにハーブティを渡されたので、壁の傍でちまちま飲んだ。
その後だったかな、浴室で騒ぎになったのは。
何かあったかと思って、カップをテーブルに置くとオレは急いで浴室へと向かう。
で、その先で見たのが]
─昨夜/ →浴室─
────……お前はなにやっとんじゃあああああああ!!
[まぁあれだ。
乗り込まれたのはヴィリーの方だったかもしれないけど、パッと見悪いのはヴィリーにしか見えない>>154>>155。
そんなわけでオレはヴィリーに対し、さっきの暴露も込めて殴りかかったわけだが、まぁ軽く止められるだろうな]
お前服着ろ!服!!
何で人の前ですっぽんぽんのままなんだよ!!
いつぞやの変態か!!!
[……あ、やべ。自分でばらした。
もうやだ……]
─昨夜/ →二階 自室─
[そんな騒ぎの後、残っていたハーブティを飲んで片付けをして。
皆が二階に戻るのと同じようにオレも部屋へと戻る。
あれこれあって精神的に疲れたもんだから、ベッドに横になるとオレの意識は直ぐに闇へと落ちた]
─翌朝/二階 自室─
[オレの目覚めはやっぱり遅い。
でも、夢現に叫び声が聞こえた気がした]
ん〜……?
[それでも起きるのが遅いのは、普段の生活サイクルのせい*なのだろう*]
― 夜・広間 ―
[悲鳴にが聞こえれば流石に声の主に気付いて広間を出た。
なるべく急ぐように駆けて浴室まで行っのはエルザよりは少し早かった。なにせ浴室の方に気が行っていたので動くのも少し早かっただろう。]
どうした……って。
[たどり着いた先の状況に、群青は一つ瞬いた]
フォルカーお前
[一度視線は、背の低い少女へと落ちる。]
やっぱ女の子なのネ。
[何処を見たかは押して然るべき。]
― 夜・浴室 ―
[その後でエルザの絶叫と、乱闘にならない騒ぎがあったかどうか。
ヴィリーの対応はエルザに任せて、フォルカーの相手をしたが先の弁にまともに話は聞き入れられたか分からない。]
とりあえず、そっちの小部屋で服きとけ?風邪引くヨ。
[何か言われようが、まず奥にある薪をくべる部屋に服と一緒に押し込むようにするだろう。
とにかくフォルカーが着替える間は、エルザとヴィリーのやりとりを、やんやと野次りながら観察していただろう。
ヴィリーの躯の違和には微かに気付いたのか、野次りながら笑みは少し深まった**]
―前夜―
[広間でお茶を飲んでいれば浴室の方が騒がしくなる>>154>>166
二度三度瞬きをしてブリジットやライヒアルトたちと顔を見合わせた。
何があったのか気になりクレメンス>>160に遅れるかたちで浴室へ。
――行ってから後悔した。
人影でチラとしか見えなかったが男性の裸身>>155があったから。
流石に成人男性の其れは刺激が強すぎた。
目を丸くして、次の瞬間には色白の肌が朱に染まる。
すぐさま顔を背けて廊下で何やら混乱気味の様子。
ややすれば落ち着きを取り戻し手が必要であれば――といっても
主にエーファに関してとなるが――助力は惜しまぬ心算であったが
アーベルが手を貸す様子に其方に任せた方がと思い
一度、エーファへと視線を向けてから一旦浴室から離れた]
―前夜/浴室―
[ばたばたが落ち着く頃、ブリジットを誘い再び浴室へと向かう。
着替えを取りに部屋に戻る際、髪飾りの包みと蜂蜜酒を其方に運び
リネン室でバスタオルを借りてから――
使用中の札を浴室の扉に掛け直しその扉を内側からしっかり閉めた]
……お疲れではないですか?
[気遣うようにブリジットに言葉を掛けヴェールを外す。
人目を気にすることなく衣服を脱ぎ一糸纏わぬ姿となれば
湯の温度を確かめて彼女を手招きする。
左足首には大きな傷跡があるが隠す事も出来ないし隠す心算もなく
彼女に見られてもけろりと昔の怪我と微笑むだろう]
ブリジットさん、お背中流しても構いませんか?
[子供達の背を流す事になれているのか自然と手伝うかたちとなり
彼女が湯につかる間に自らの身体を洗う]
―前夜/浴室―
[一つだけ年上の深窓の令嬢。
華奢にみえるその肢体も肌に見惚れる瞬間が無かったとは言わない。
守りたくなる女性というのは彼女のような人のことかもしれない。
髪を洗い流し湯につかりながらぼんやりと思う]
――…ん。
[何となく沈みかけた。
理由も分からぬから小さく息を吐き]
そういえば……
余り長湯をしてはいけないのでしたっけ。
そろそろあがりましょうか。
[常のように微笑んで湯からあがり身支度を整えて
一度広間を覗いてから誰かが残っているなら
部屋に戻り休む旨を伝え、宛がわれた部屋に戻ることとなる**]
─朝/二階 自室─
[またしばらくベッドの中でごろごろしていたけど、起きなきゃと言う考えが動いて右手をベッドの外に出す。
ごそごそと探るのは、鞄に入れたはずのキルシュヴァッサー。
手に取ったキルシュヴァッサーを手にベッドへと座り、結っていない長く垂れ流したままの髪を振り上げ上を向くと、一滴だけ、口の中へと垂らした。
舌の上にサクランボの風味と強いアルコールの刺激が広がる]
……よし!
[それで目を覚ますと、オレはしっかり着込んで髪は結わないまま部屋を出た]
─朝/広間─
[階下に降りると既に起きている人が居た。
まぁオレが遅いのは当たり前だな。
けど、何かその人らの空気が、重い]
………何かあった?
[何となく漠然と、そんな気がして疑問を口に*出していた*]
―厨房―
わかった。
[ミルクを頼まれれば、頷いて。エーリッヒの頭へと一度は手を伸ばす。
嫌がられるかもしれないけれど、撫でるだけはしようかと。払われたら仕方がないけれど。
言葉はかけない。
広間の暖炉の傍へとつれていく様子を眺めると、食料庫から牛乳を取り出して、鍋に移す。ことことと静かに温めながら、ゆるく息を吐き出した。
シーツをもって出て行くクレメンスを見送り、そして戻ってきたところに声をかける]
人狼が、出たんだよね。場が出来たから。
[確認のような言葉。何にせよとりあえずはエーリッヒについててと言って、少し笑って。
それからホットミルクにはほんの少し、蜂蜜を落として仕上げる。
そのまま広間にもっていき、エーリッヒの手に持たせようと、差し出した]
―前夜―
[エーリッヒの疲れたような視線には笑いを消さず。>>148
ただ少しだけ同情のような色も含まれてはいたかもしれない]
甘やかしてなんかないよ。
俺を甘やかしてるのはナータとかクレム兄の方だ。
[弟離れできなければというナータには曖昧な笑みを向けた。>>146
そのクレムから勧められた林檎は辞退して。>>160
一連の騒ぎは、来るなと示されたので遠巻きに見て、呼ばれたら手伝うだけだった。少女であるフォルカーのためにも年長者の判断は正しかったのだと思う]
うん、眠くなったらね。
[結局眠くならなかったからと、騒ぎが終ってブリジットとナータが戻ってくるまでしっかり残っていたりもして。
それでも真夜中を過ぎる頃にはちゃんと部屋に戻った]
―朝/二階個室―
[霧のような眠りの中に叫び声が飛び込んでくる。
ベッドから起き出せば深緑に映る窓の外は風の音もなく明るい。
また寝過ごした、なんて寝ぼけたようにぼんやりと考えて。
騒がしくなった外の気配に窓の傍でギクリと固まった]
な、に。
誰が、どうしたって。
[叫び声が夢の中で響いたものではないのだと気づく。
誰がどうなったのか。確認にいかなければと思いながら。
着替えの手は震えて、下に降りるまで時間が掛かって*しまった*]
―広間―
[受け取ってもらえないなら、その傍に置くことにしようか。
何にせよ、器は二つ。もちろんもう一つは、クレメンスへと渡した]
僕は、ちょっと湯を浴びてきたいから、飲んでて。
ミルクも悪くなってしまう前に飲まないとね。
[そんなことを言って、厨房にお盆を置きに戻ろうとする。
ちょうどエルゼリートが降りてきての問いには、叫び声でも起きなかったんだなぁ、なんてなんとも言えない目をしたかもしれない。
が、エーリッヒに言わせるのも駄目だ。クレメンスはエーリッヒについていてほしい、と思えば、とりあえず階段の方へと近づいて、声を落として告げた]
団長さんが、死んだ。……殺されたんだろう。
[声は抑えたとはいえ、室内ならば届いてしまうだろう。一度エーリッヒの方を気にした。
それ以上にエルゼリートが気にするようなら、「僕の部屋の真下だよ」と、それだけは告げることだろう*
それから、自分は厨房へと盆を片付けに戻ることにする。片付けを終えたら、そのまま浴室へと向かうつもりで**]
―夜/一階・浴室―
[服を脱ぎ終えて、戸口の前に立つ姿にも気づかず扉を開けて]
……
[突然のことに一度固まり、向こうは何一つ身に纏わない状態ですべて見てしまった。
逆に向こうにもすべて見られたことになるのだが]
いやぁぁぁっ!
[思わず悲鳴を上げて、多分ここにきてから一番女らしい姿だったかもしれない。
そのまま一方後ろに下がり、そこで固まって動けなくなっていた。
バスタオルをかけられて、辛うじて要所は隠れたり隠れなかったり、よく見ればまぁ見れたかもしれない。
赤くなって震えていて]
あ……あの……
[羞恥とか申し訳なさとかいろいろ混じって、震えてしまい声が続かない]
―夜/一階・浴室―
[少しして自分の悲鳴を聞きつけたアーベルがやってきて、なんじっくりと見られてしまった。
そしてかけられた言葉に、赤くなって俯いて完全に何も言えなくなった]
え……ああ………
[続いてやってきたエルゼリートがヴィリーに怒る様子に、誤解を解くべきは自分だったのだろうけど先のショック状態のままで声が続かず、
そのままアーベルに押し込まれるように隣の部屋に]
う、うん……ごめん…
[礼より謝罪の言葉が先に出ていて、その様子は妹と瓜二つだっただろうか。
その日はそのまま結局お風呂には入り損ねて、自分が落ち着いた頃エルゼリートとアーベル二人に事情を説明した。
ヴィリーにも謝った後は、アーベルに連れられるようにして部屋に戻ることになった]
―夜/→二階・双子部屋―
[部屋に向かう途中、大人しく俯いてアーベルの横を歩いていると不意に頭を撫でられて]
アーベル……
[ぎゅっとそのまま横からすがりつくようにして、普段の様子は完全になかった]
ごめん……それと、ありがとう……
[それだけぽつりと、今はこうしているのがとっても安心できたから。
そのまま部屋に送ってもらうと、先に寝ていたエーファをぎゅっと抱きしめて、二人仲良く同じような寝姿で寝ていた]
―朝/二階・双子部屋―
[目を覚ますとエーファとは並んで寝ていたか、下の方で騒ぎが起きてるような気がしたけども]
エーファ、おはよう…
[その頬をつんと突付く、そっと指をそのまま顎までなぞる様に滑らせ首筋へ、
服の上からそのまま鎖骨、肩へとその形をなぞる様に。
自分と同じ、変わらないラインをなぞりながら]
ごめん、昨日、見られた……。
[別にエーファの裸を見られたわけじゃないのだが、なんだか謝らなきゃいけない気がした。
それから、エーファが寝ている隙に少しだけ甘えるように胸元にすがり付いてみた。
もし二人の役割が逆だったなら、日常にありえたかもしれない光景。
そのまま気づくと二度寝を*してしまっていた*]
―朝/自室―
[疲れていたのか寝不足のせいか酒精の力を借りることなく
寝台に横たわりぐっすりと眠ることが出来た。
目が覚めるのは何時もと同じ時間。
夜が明けるか否かの頃、寝台から起き出して身支度を済ませる。
神への祈りを捧げてから、胸元に掛かる十字架を両の手で握り締めた]
双花支えしは見出す者たち。
神より授かりし力持て。
闇に潜みし、月のいとし子たちを見出さん。
[菫の眸は閉じられて謡うように紡がれる言の葉。
神の見せる其れが女の瞼の裏に映る]
――…っ
[ぴくり肩が揺れた。
心は神の見せる其れを拒絶するのに身体は歓喜に打ち震える]
―朝/自室―
[気だるさを感じながら重い瞼を持ち上げた。
菫色はぼんやりと手許の十字架へと注がれる]
…………神は私に何をお望みなのでしょう。
[紡がれる声から感情は感じられない。
――長い長い沈黙。
考えることにも疲れ果ててしまった]
私は、何も、視なかった。
[其れが誰であれ告げる事で齎される結果を知るからこそ
女は其れを誰かに言うことが出来なくなる。
思い悩んだ末に出した結論を口にして
それを一人抱えることを選んだ]
[女はヴェールを被らずにゲルダから贈られた銀の細い髪留めをつける。
鏡の中に映る己の耳の上の方には銀と真珠で出来た花が咲く。
ゲルダは似合うと言ってくれたけれど
やはり自分には過分なものに感じられる。
綺麗で可愛らしい花の贈り物があるだけで鏡の中の自分が別人に見えて
気恥ずかしさを感じながらもヴェールを纏おうとはしなかった。
やがて聞こえくるのは叫び声>>153
何かがあったらしい事が知れるけれど直ぐに動く事は出来ない。
それでもずっと此処に居続けようとも思わず
女は遅れて階段を下り広間へと足を運んだ。
其処で知れるのは自衛団長の訃報――。
柳眉を寄せて震える両の手は知らず銀の十字架を握り締めていた**]
― 自室 ―
あいて…!
[すぐに外の様子を覗く事はせずに、ベッドから降り、夜の間に伸びた髭を剃ろうかと剃刀を当てた所で、顎の痛みに声が漏れた]
あーあ、痣になってるな、こりゃ。
[壁面にかけられた鏡を覗き込んで苦笑する。昨夜、浴室で殴り掛かって来たエルザを、最初の内は躱したのだが「変態」の話が彼の口から出た時にまた思い出してしまったのだ]
『あー、そういや、酔って素っ裸でお前を押し倒した、にーちゃんも居たっけな』
[ぽん、と手を叩いて言った途端に、前より勢いのある拳が飛んで来て、一発、顎にヒットした、というわけ]
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