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[教会に着いた二人は牧師が戻らないまま弔いの支度をはじめます。
ドミニクの話ではルイの亡骸はまだ川べりに置いてあるというので牧師はそちらに行っているのかもしれません。
ドミニクは連日となった棺の準備をしに奥に入ります。]
せめてドロテアが居ればもう少し勝手がわかるのだけど。
[あまり立派な教会ではありませんがそれでも中はそれなりに広くて、いざものを探すとなると大変なのでした。]
[暗い暗い、森の中。
牧師は、少女の様子を見つめています。
夜は、もうじき。獣の時間が近づいています]
……どうか、されましたか?
[牧師は何かを見つけた様子の少女に、一歩。
仔羊の鳴く声が、牧師には大合唱にも聞こえました]
おや、本当に一つに戻ったんだな。
[消えた小鳥と、現れたルイの姿に、ふわふわと浮かんだまま、アルベリヒは目を丸くしました]
だめなの?
お兄ちゃんやアルベリヒさんみたいに、
食べられてしまったのではないのに。
なくしたからだは、ここに、きちんとあるのに。
〔ベリエスに聞き返すけれど、アナの視線はよそへと行っている。
川のそば、草の陰。
旅人の落としてしまった短剣のきらめきに。〕
……とにかく、一度戻りましょうか。
亡くなった方が出たなら、忙しくなりますし。
……勤めは、果たさないと、いけません。
[自分自身に言い聞かせるように呟いて。
教会へ向けて、歩くのです。]
本当に、面白いことを言う子ですね。
[アナの持つ、揺らめいて消えたランタンの炎。
牧師はふと、ホラントさんのことを思い出しました]
繋がらないんじゃよ。
病気で死んでしまった人とおんなじじゃ。
からだが残っていても、切り離された魂は二度と元には戻らん。
[それがアナのいう"欠片"のことなのか、おじいさんにはわかりませんでしたけれど。
ただ、どこかに行ったアナの視線を追い掛けて、そこにきらめきを見付けたのでした]
そうだな、かわいらしかったけど、あんまり便利には見えないな。
[ルイの言葉に相づちをうちながら、アルベリヒは心配そうにアナに視線を向けました。きらり光る銀の色]
[ゼルマは棺の準備を終えたドミニクとともにアルベリヒを棺に納めます。
昨日と同じく、すきまの多く残る棺でした。]
ドミニク、あたしの知っている話もしておくわ。
人に化ける獣の話はホラントが噂話を出すよりもずっと昔、まだ先代の牧師様の時代にも流れたことがあったの。
神罰で人が獣の姿に変えられてしまうことがあった。その者たちの一部が悪魔にそそのかされて道を踏み外した。昼間は人間の姿に戻ることができるけど夜になると元の獣の姿にやはり戻ってしまったのだと。
もし、あたしに何かあればこの話は役にたつかもしれないわ。
[ドミニクはそう付け加えるのでした。]
そっか。
〔ベリエスの言うことを理解したのか、アナの眉が下がって悲しそうになる。〕
それじゃ、それじゃ――どうしたら、いいのかな。
[そんなことを話すゼルマをドミニクはどうおもったことでしょう。
ヴァイスはどんなことを思ったでしょう。
それは神のみぞ知ることなのかも知れません。]
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