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[ゆらり、沈んで。
ふわり、浮かんで。
たゆたう意識は、二つの領域の狭間を漂い、揺らぐ]
[泣いているのは誰だろう。
鳴いているのは誰だろう]
[意識にぼんやり浮かぶ、疑問。
けれど、答えはない]
[空白]
[それは不意に、そこに現れる]
……あれ?
[死しても逃れられぬ囚われの領域。
薄い紗に隔たられたその空間に、幼い声が響く]
ここ……どこ。
[現れたのは、死した青年に良く似て。
それよりも、ずっと幼い少年の姿。
両の腕には、青年がいつも連れていた真白の猫とは対照的な、夜闇色の猫が一匹。
同じ翠の瞳を持つ、少年と猫は。
泣いている誰かたちを見つめて、こてり。
不思議そうに、首を傾げた**]
―二階/個室―
[暗い闇。夜]
――っ!!
[痛みに、悲鳴すら出ない。
声の一つも落とせない。
――二度目とはいえ、慣れるわけもない激痛。
発生源を取り除こうと、知らずに指が首の後ろを掻く。
つよくつよく、血が滲んでも止まらない。
痛みが和らぐこともない。
見開かれた目は虚空を捉え、呼吸を求めた口唇はうまく空気を吸い込むことができない。
涙が落ちてゆくけれど、うまく動くこともできずに]
[どれだけの時間が経ったのか。
つい先ほどまでの眠りの中に戻ることはできなかった。
その苦痛が引いた瞬間、ぱた、と動いていた手が落ちる。
体が闇の中に落ちていくような感覚。
そのまま、意識は失われた]
―朝/個室―
[目を覚ますのはいつもよりすこし遅い。
しばらく動く気にはなれず、やがてゆっくりと起き上がって、手を見て溜息を吐いた。
爪の間に血が滲んでいる。
首の後ろを鏡で確かめると、引っかいた痕が無数に残されていた。
その際に顔も見て、涙の痕に苦笑する。
痛みが引いたわけではない。
じんわりと、そこだけが熱を持っているような感覚]
…朱花が死んだ
[そっと呟いた。犠牲者の名はまだ、知らない。
声が震えて、それから、立ち上がった。
身支度を整えて、部屋の外へ。階下へ。
泣く、嘆く、声のほうへ]
―外―
[ライヒアルトとナターリエの様子を見て、死んでいるクレメンスを見て、小さく呼気をもらした]
中、入るよ。
入って。
[声はそっと二人を促す。
動かないようなら、そっと頭を撫でて。
それからもう一度、中に戻って、と告げて]
…彼が朱花だったなんてね。
[その背の模様は見えていないはずなのに、小さく呟いた。
何にせよ、ナターリエとライヒアルトを室内に戻す。ライヒアルトへは浴室も勧めるけれど、動かないならそのままにして。
誰かが来るなら暖炉を任せて、クレメンスの死を告げる。
それは淡々とした態度になっただろうけれど、そのまま、ホットミルクを入れると厨房へと行くのだった**]
― 昨日 ―
[それから厨房に入って、昨日は食事を作った。
食欲の無い物が大半だったが、]
ちゃんと食べなくて、エーリの兄さんみたいになっても知らないヨ?
[そう軽く笑みながら言った。咎められれば謝罪して。
それでも作った分はあまり減らなかったろう。
そして湯をかりて体を洗い、部屋に戻って休んだ。
今日も浅い眠りだった。
ユメは見れない。]
― →翌日 ―
― 翌日・玄関 ―
[早朝目覚め部屋を出ると、人の気配がした。
今日はみんな早いねぇと呟きながら階段を下りると、ゲルダがナターリエとライヒアルトを中まで引っ張ってくる所に遭遇する。
クレメンスの死は、ゲルダから聞いた。>>141]
狼はやる気満々だねぇ…。
[笑みこそ顰められたが、どこか楽しげに、ともすれば皮肉気にも聞こえるように口にして。]
クレの旦那は何処?
部屋に運んどくヨ。そのまんまだと障りがあるでショ。
[そう言いながらもゲルダの方は見ない。
手早く暖炉の火を点け、薪を放り込んでから返事を聞き、リネン室に一度言ってからシーツを持って外へと。]
― 翌日・外 ―
おーお……こりゃ。
[死体を見るのは初めてではないが、人狼に殺されたものの死体を見るのは初めてだった。
手を当てて口元を覆う。
その下にある、深い笑みを隠す為。]
ほんとに、いるんだネ。
人狼。
[ぽつりと、呟いた。
それからクレメンスの遺体にシーツをかけ包み、もう一人誰かが来るまで少し待った。
一人でも運べなくはないが、クレメンスは体格が良いうえ遺体が傷んでいるので、無理すると余計に傷口が裂けかねない。
もっとも千切れる事はあまり意に介していないので、誰も来なければ、一人で背に抱えてでも運ぶだろうが**]
[行き交うひとの姿を、少年と猫は首を傾げたまま見つめる。
彼らが自分に気づかない事に、疑問を抱いた様子はなかった。
そういうものだから、と。
そんな割りきりめいたものが、その内にはあるから]
……いたいね。
いたそうだね。
[ぽつり、とこぼれた呟きはどこに向いたのか。
抱えた猫が、にぃ、と鳴く**]
─回想/広間─
そりゃどーゆーいみだ。
[しゃあしゃあと答えられて>>137、オレはじと目になった]
オレだって男なんだぞ。
[何でそんなに女々しく思われてんだ。
……すいませんね、ガキで女々しくて。
結局、オレの表情は一旦拗ね顔に近いものになった。
それがダメなんだろうと思いつつも、直ぐに直せるものでもない]
…ん、んー。
お茶、頼む。
[オレは待ってるとの言葉に一瞬迷って悩む素振りを見せたけど、茶を頼み、片付けと風呂に行って来ることにした(>>117へ)]
─昨夜/ →浴室→広間─
[浴室に入るのはゼルギウスが出て来てからになるかな。
仮に一緒でも、と言われてもオレは辞退した。
一人で居る時間必要なんじゃないかな、と思ったから。
一緒に入った方が良いとか言われたなら、入ったかも知れないけど。
ともあれオレは風呂でさっぱりしてから広間に戻ることになる]
[広間で茶を用意していたゲルダと合流し、茶を貰って中からも身体を温める。
…妙に落ち着いた気はする。
でも食欲は出なくて、アーベルの用意した食事>>142には手を付けなかった。
手を付けられなかった]
─昨夜/ →自室─
[ゲルダが部屋に戻る時は、何かあったらダメだからと、オレは一緒に行くことを申し出る。
頼りないとか言われたかもしれないけど、オレは頑として譲らなかった。
ゲルダがさっさと二階に上ったとしても、オレもその後に続き、部屋に入るのを確認してから、オレも隣の自室へと入って行く。
何も起こらなければ良いと思いながら、何かが起こる確信めいたものが胸中にあった。
それを胸に、オレは眠りへと落ちて行く。
夜中に隣でゲルダが苦しんでても、悲しいことにオレは気付くことが出来なかった]
─翌朝/自室─
[染み付いた生活サイクルはどんな時でも崩れる様子は無く。
オレが目を覚ましたのはやっぱり他より少し遅い。
今回は劈くような叫び声も無かったから、特に目覚めは遅かった]
ふ、ぁ。
[欠伸をして目を擦り、鏡無しで髪を櫛で梳く。
仕草だけなら女性に思われるだろうが、残念ながらオレは男だ。
昨日と同じようにキルシュヴァッサーの刺激で目を覚まし、支度を整えて部屋を出た]
─ →広間─
[広間は既に人の気配と暖炉の温かみがあった。
けれど昨日以上に空気が重い気がする]
……まさかと、思うけど……?
[状況は昨日の朝と似ていた。
昨日はエーリッヒだったけど、今回はナターリエとライヒアルト。
対象が誰なのか、容易に想像出来た]
…なぁ、どこ?
[想像した人物と最後に別れたのは多分オレだったろうから、どこで起きたのかが気になった。
問いに答えたのは誰だったか。
運ぶと言う話を聞いたなら、微力ながらも手は貸すことに*なるだろう*]
[女の嗚咽が届く範囲に自衛団員は居ない。
今、心を占めるのは獣に喰らわれ命を落したクレメンスの事だけ。
だから自衛団員が撤退している事に女が気付くのはもう少し後の事。
ゲルダ>>141に声を掛けられるまで、彼女の存在にも気付けなかった。
優しく撫でる彼女の手が、義兄の其れを思い出させる。
手の大きさも撫で方も違うのにささやかな相似だけで重ねてしまう。
顔を上げて滲んだ視界に彼女をみた]
……ゲルダさ、ん。
[中へと誘う声がして、義兄へと向けられる名残惜しげな眼差し。
こく、と頷いて力なく立ち上がる]
ラーイ……。
[おとうとが何を抱えているかは知れども
昨夜何があったか知らぬ女はただ名を呼んで]
[ゲルダから朱花という言葉が聞こえれば
やり切れぬような吐息が零れた]
――…はい、おにいさまは、朱花、でした。
[花の模様も色さえも分からぬ無残な遺体。
双花ではなく朱花と言った彼女の言葉。
何処かでひっかかりを覚えるけれど
このときはまだそのひっかかりを明確にすることも
彼女に問い掛けることも出来ぬまま
ゲルダとと共に広間へと行き暖炉の傍の席に座った]
[玄関でクレメンスが居る場所を聞いたアーベル。
部屋に運ぶと聞こえたけれど
彼の姿をみればまた取り乱してしまいそうで手伝うとは言えなかった。
広間で暖炉の火をぼんやりと見詰める。
心此処に在らずというった態。
けれどエルゼリート声が聞こえればピクと反応を示し]
……玄関を、出て、右手の方に。
[何があったか察しているだろう気配と問いに
ポツ、と義兄の眠る場所を返した**]
―昨夜回想/広間―
[エルゼリートの拗ねる顔には、楽しげに笑って「はいはい」なんて言葉で流しておいた。
お茶をと言われると頷いて、レモングラスだけの葉を、いつもより少なめに入れる。
匂いが混ざって危険なことにならないように、という、匂いを薄くする配慮。
他にも人がいたら、そっと差し出すくらいはした。
食事は明日食べるつもりで部屋に戻ろうとするが]
一緒に?
大丈夫だよ、すぐそこまでの距離だし。
[しかし結局のところ、こちらが折れる形となった]
変なところで心配性だね、エルは。
まぁ。ありがとう。…おやすみ。
[ひらりと手を振って、昨日の夜は、部屋に戻ったのだった]
― 朝/外→広間 ―
[ナターリエが立ち上がり、ライヒアルトを呼ぶ。
玄関の扉へと向かい、その扉を開いて二人を待った。
朱花だったという言葉に、頷く。
自分が言ったことが、どういうことか、頭の中ではまだ理解できていなかった。
アーベルに玄関で尋ねられれば、表情も言葉も淡々とした調子でクレメンスの死、そして遺体の場所を伝える。
皮肉げな言葉には、かすかな笑みさえ浮かべた。]
そうだね、生きてるんだし。
[それからアーベルが動いてくれるのを見て、ナターリエたちをソファへと誘導する。
そのまますぐに、厨房に向かった。エルゼリートが来たのは、そのあとだろう]
― →厨房→広間 ―
[昨日と同じように、食料庫からとって来た牛乳を温める。
使い終わってしまったほうが良いだろうか、なんて考えているうちに、少し多めの量が鍋に入った。
そこまできて漸く、朱花が死んだ、ということと、クレメンスが死んだ、ということが結びついた。
昨日、エーリッヒへとミルクをすすめた司祭は、もう居ない]
……参っちゃ駄目だろ、僕が。
[熱を持っているような蒼い痣は、どこかだるいように思える。
はやく人狼を殺さなければと逸る心、本能を押さえつけようとすると、それは余計に増したけれど、軽く頭を振って、ちょうど良くなったホットミルクをカップへと移す。
広間に持ってゆくと、それをそっと、手渡すのだった**]
―回想 昨夜広間―
あのなぁ、アーベル。
ブリジット任せながらお前掃除なんてできんだろ。
大丈夫とは言えんが、これでも薬師の見習いでもやってりゃ人が死んでいく姿ってのは見てしまうもんだからな…
[とアーベル>>68に答える。ブリジットの眼差し>>63には返事をしたときに気づいたが、発作がおきそうにない様子にひそりと安堵する]
ありがと、エルゼさん。
そうですね。固まると取り辛いので溜まりのほうを優先で
[そして掃除を続行のところで、自然とエルゼ>>73に手伝ってもらうことに感謝の言葉等を口にしながらしばらく考え事をするように。
そして随分と進んだところでか、先にエルゼに浴室へと促される言葉に甘えて浴室に向かうのと、ゲルダがエルゼへと話しかけるのはすれ違ったか。なにはともあれ、エルゼとともになどということもなく一度着替えをもってくるため部屋へと戻った後浴室へと向かった。]
―回想 夜の浴室―
ぁー…全く…いい加減に…
[自衛団長が、エーリッヒが湯に映ってる。
真実は如何なるものであれ、今この目で映し出されてるのは、恨みがましくこちらを見詰める四つの眼]
無力だなぁ…
[悲しさとやるせなさとをいり交えた声はぽつり。吐露された感情はその一瞬でありその後に風呂から上がり着替えると部屋へと戻っていった]
―二階 自室―
[なぜだか、ほんの少しの喪失感を覚えて目が覚めた。
それは...は知らぬことが、支えるべき花の一つを失ったためか]
人狼…か
[見つけてそして…そう考えたとき一際大きく心臓がどくんとなり、そこよりなぜだか甘美な響きが広がっていって、眉を顰める]
[そして、寝台の横の机に置いてある水差しを見る。
意識してそれを眺めることはしない。
でも、悲鳴が上がることはなかった朝であってもきっと誰か亡くなっているだろう。
そんな妙な確信を抱きながらしばし布団の暖気に*身を任せていた*]
[自死はいけないことだと、父親からも、神の家でも教わった。
本能もまたそれを肯定するから、逆らってまで命を絶つことは出来なかった。
>>24ヴィリーの話は聞いていなかったけれど。
金眸の獣にも当て嵌めるなら、唯一の例外を除けば、正しい]
―朝/玄関外―
[背後からナータの嘆きが聞こえても動かなかった。>>135
震えも止まり、ただ虚を隠そうとするように抱いていただけ。
>>141ゲルダに呼ばれて。触れられると嫌がるように首を振る。
甘い香りを感じるのは、固まってしまっても血の残る躯を抱いているせいだろうかと思う。ああ、このままでいたら。また]
……分かった。
でも。クレム、このままは。
[無表情に言うが一人では引き摺ってしまう。
ナータに名を呼ばれて、このまま運ぶのは諦めた。
一度その場に横たえ直し、ケープを外すと顔から胸に掛けて。
促されるままに歩き出す]
―朝/広間―
[アーベルの声がして顔を上げた。>>143
深緑は無表情に、皮肉気な言葉を放つ青年を見つめる。
ああ、でもこれではいけないか。
食って掛かるほうが、らしかったかもしれない]
外。
[間を置いて答えようとした所に、エルゼリートの声も増えた。>>149
途切れた間に、ナータの方が詳しい場所を答えていた。>>152
手伝うと言っても断られるのが普通かもしれない。
一言でも止められれば、ついていこうとはしなかった]
―朝/浴室―
ああ。このままじゃ良くないですね。
女の子達を怖がらせてしまう。
[ゲルダに風呂を勧められると、それにもまた静かに従った。>>141
匂いを消せるのも良いことだった。
湯は沸いていただろうか。けれど今度もまた使おうとはしない。
髪に残っていた血痕を流し、顔を洗い、腕を口を何度も擦る。
頭から水を被ると背中に鋭い痛みが走った。
斜めに走る剣傷は初めての時に受けたもの。
深くはないのに、髪から落ちる水が流れる毎にもピリピリとする]
クッ。
[両手で髪を前へと回す。今度は顔の上を幾筋も流れた。
その全てをタオルで拭って、血の匂いのする黒衣をまた纏った。
これも着替えなければと思いながら広間へ戻る。
ホットミルクが差し出されるなら、ありがとうと受け取る*はず*]
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