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― 一階廊下 ―
[書庫とは反対側の廊下の奥。
使われていなかったのだろう部屋の中。
血に濡れたネリーが倒れている姿が見える。
廊下にまで出ていた血は乾きかけているようにも見えた]
……メイドの嬢ちゃんかい……
[苦手そうにしながらも客人への対応をちゃんとこなしていた娘の変わり果てた姿に、そっと黙祷をささげた]
……さァて、伝えたほうがいいだろなァ……
[死体に駆け寄ることも、その場で声を上げることもせず。
とりあえず執事でも呼びにいくか、と廊下へと戻る]
─ 一階廊下 ─
[覚束ない足取りで階段を降り、はあ、と一息。
視界は今の所はっきりしているから、ふらついている理由はそれではない]
……やっばい、かな?
[冷たい風に吹かれすぎたか、と。
過ぎるのはそんな思い。
一度足を止めてしまうと、次の一歩は中々踏み出せず。
しばし、その場で呼吸を整えた]
― 回想・埋葬の後・自室―
[アーヴァインの埋められた場所を見れば、また涙はこぼれた。
ただ、自分の目をこすって、それを止めて。
部屋に戻った後、バスケットの中、小さな小瓶を取り出す。
それはケネスにあげたのと違って、革紐がついているわけでもなく。中に柊の葉と実があるわけでもない。
「わたしたちの血筋の女だけが持つ、大切なお守り」
母から伝え聞いた内容を思い返す。
守りたい人に渡すと、そのお守りが、相手を守ってくれる。何から守ったのかは、それでわかる。
わたしのはあなたにあげる、と。
母は言って、ウェンディにそれを渡した。少女はもちろん双子の兄に。
――人狼が、少女を狙ったのは、そのすぐ後のことだった。
母のお守りが守ってくれたのだと、翌日に喜んで、それから。
そのまた翌日に、両親が、食べられた。瓶の中は空になった。
オードリーが抱きしめてくれた体温を思い出す。ネリーが来てくれて、お話をしてくれたことを思い出す。
そうすれば瓶を見ても、外を見ても、眠れなくなることは、なかった**]
─ 回想・廊下 ─
…おにいちゃん。
うそ、ついたら、ダメ。
[無理はしてないというソフィー>>6を見上げ、小さく呟く。
でも、子供の頃と同じ仕草で頭を撫でられるとそれ以上言葉を紡ぐことはしなかった。
代わりに、頭を撫でてくれた手に自分のそれを添えて。]
私は、生きてる、から。
おにいちゃんといっしょに、悲しめる、から。
[一人で悲しまないで欲しい、と。
言外に、そう、伝えた。]
…うん、そうだね。
ヒューバート様、お待たせ、してるし。
──…おにい、ちゃん?
[戻ろう、と言われると素直に頷いたものの、ソフィーの足取りに気付くと不安げな視線を向ける。
視力が落ちていることを言われると、大丈夫かと案じたけれど今は言わないで欲しいという気持ちもなんとなく解ったから。]
…うん。わかった。
その、代わり。
おにいちゃんって呼んだこと、ヒミツに、してね?
[頷き、困ったような笑顔でそう言うと手を伸ばし。
広間まで、ソフィーと手を繋いで戻っていった。]
─ 回想・広間→庭 ─
ヒューバート、様。
戻りが遅くなってしまって、申し訳ありません。
[ソフィーと共に広間に戻り、待ってくれていた執事に頭を下げる。
執事からは気にしないで良いと言われたかもしれない。
グレンと共に主の埋葬に取り掛かる様子>>7を、悲痛に歪めた顔で見つめていた。
庭に掘られた土の中、埋められていく主に土をかけるか、とグレンから無言で差し出されたシャベル>>46は、最後に受け取って。
土が重いと可哀想だ、と。そっと少なめにかけて、シャベルをグレンへと返し。
その上にグレンが更に土を盛り被せ、簡素な十字架が突き刺されれば立派とは言えぬものの墓標と解る様相になった。]
…おじちゃん。
[献花を、という執事の声>>7に応じて、ソフィーが作った小さな花束>>10を見つめる。
花を束ねる赤いリボンは、ソフィーの髪を結わえていたもの。
金の髪が風に煽られきらきらと光る様が、綺麗、と。
どこか、現実味の無い意識で、思った。
哀しみから目を、背けたかったのかも、しれない。]
あ…、は、い。
承りました。
[どれほど呆としていただろうか。
執事からの声かけ>>15で、意識が現実に戻る。
使用人は自分達以外全員屋敷から出ていってしまったから、その仕事を自分たちがしなければならないのは当然だ。
それに、体を動かしている方が気が紛れるのは経験則で知っているから。
──だから、気付けなかったのだ。
一人になることが、どれだけ危険かということに。]
― 翌日一階廊下 ―
[さて、執事を探すとしたらやはり厨房のほうだろうかと、廊下を歩きながら考える。
のそりとした足取りで、ネリーの遺体がある、廊下の奥から広間のほうへと向かう。
考えている場所と違うのは、厨房の場所などはっきりとは覚えていないからだった]
─ → 一階廊下 ─
[先ずは広間へと入り、暖炉に火を入れる。
それから厨房で食材や昨日の余りの確認をして。
ふと、違和感に気付いた]
……この時間にネリーが居ないのはおかしいですね。
[彼女も使用人である以上、自分と同じかそれよりも前に起きていることがほとんどだ。
姿を見ないのは、おかしい]
寝込んでいるので無ければ良いのですが…。
[確かめる必要があるかと考え、廊下へと出てネリーの部屋へ向かおうとした]
―個室/翌朝―
さて、人狼が死んだとなると、後は……
[クローバーの栞を片手で弄びながら、思案する。
他の者に伝えるべきか否か。普通なら思考はそちらに向かうのだろうが]
橋さえ復旧すれば帰れるが、いつになるやら。
それにこのままだと完全に無駄足だ。貰えるはずの金はパーだし。
……ああ、そう言えば叔父さんの遺産はどうなるのだろう。
こっちに回ってくる可能性は……
[既に人狼は居ないものと思っているから、思考は他に移る。
叔父に妻子はいなかったはず。あの分なら遺書を残す間もなかっただろう。
そうなると、順当に行くならば]
……彼か。
[そこまで考えて、小さく含むような笑みを浮かべる。
それから立ち上がり、部屋を出た]
― 一階廊下 ―
[廊下を歩いていて先にであったのは執事とソフィーどちらだったろうか。
ソフィーが階段傍から動いていないのなら執事を先に見つけ]
……ああ、いたか……
メイドの嬢ちゃん、やられてたぜ。
[執事の近くに寄りながら、あっさりと見たことをつげる]
─ 屋敷・客室 ─
[屋敷の中に戻ると、執事からの指示通り客人の部屋を整えて回る。
オードリーやウェンディが部屋に戻っていたなら、少しの間会話を交わしただろうか。
オードリーとの会話でアーヴァインのことや母親のことがのぼったなら、少しだけ泣いてしまったかもしれない。
他の方の部屋も、鍵がかけられていない限りは失礼して整えさせて頂いただろう。]
[メイの部屋には声をかけても返事があったかどうか。
入れてもらえたなら、余計なことは言わず部屋の中を整えさせてもらい。
入れてもらえなければ、また後程お邪魔します、と声をかけてその場を後にした。
そうして、客人が使われている部屋を全部回り終えてから、どなたも使われていない客室の掃除を始める。
使っていない部屋でも埃は溜まるから、掃除は毎日欠かすことは出来なかった。]
[遠くに聴こえる音>>42に、耳を澄ます。
すごく綺麗。
でも、悲しい音。
そんなことを思いながら、自分も身体を動かした。]
[黒曜石の眸はメイに向けられた。
執事とその使用人。メイから見れば、一対二。
最初の一撃は、ヒューバートから始まる。]
[微かな動揺。
最初に即座に襲い掛かるとは思っていなかったのだ。
肩を掠めた浅いが鋭い痛みに、メイは怒りの声をあげる。]
………っ…。
[無理やり押し通ろうとしたメイと揉み合いになり、
メイの力任せの一撃を灰の容器で防いだ。
一時的な混戦。ヒューバートに幾らかの傷が出来る。]
くっ、
[灰の容器をメイの身体へ投げ、直後―――]
[扉の開く音が聞こえて、振り向いた。]
ニーナ、様?
[そこに居た人は、こちらに話しかけられただろうか。
どうかなさったのか、と声をかけようとして、出来なかった。]
…… っ ! ?
[首筋が、熱い。
それが痛みだと感じることは、きっと無かった。
深く突き刺さる牙に、叫び声すらあげることは叶わない。
ひゅ、と。
呼吸音が洩れたけれど、血の噴き出る音の方がきっと大きかった。]
ボグゥ
[奇妙な音。息を呑む。
呆然と立ち尽くす。低い青の音。
悲鳴を上げて、背骨を叩き砕かれたメイが地面を転がる。
涙の浮かんだメイの両眼が、
ヒューバートを殺意を籠めて睨んでいた。]
「それではお休みなさいませ───ローレンス様。」
[火掻き棒の一撃で、メイの頭は陥没し、
ぐるりと眸は引っ繰り返り、倒れた。
男はそれを呆然として見ているだけ。
人殺しの経験はないのだ。]
[シーツを求めの侭に持ってくると、
メイの遺体を包み、二人でメイの部屋へと運んだ。
その頃には、人殺しを目撃し震えていた手は止まっている。]
……慣れているんだな。
[問いかけるような呟きを洩らした。
幾つか、その場で会話を交わした後、
ヒューバートは出ていき、遅れて男も出た。]
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