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[演奏会が終われば、黒猫を伴って三階の自室へと戻る]
……なぁ、モリオン。
[ベッドに寝転んで、黒猫を呼ぶ。
月明りの下の猫は、その名の由来となった黒水晶の如く煌めいて見えた]
今日、寒くなりそうだよなぁ。
[なんて呟くと、意を察したのか黒猫は隣に潜り込んでくる。
その温もりに安堵しつつ、氷の音を意識しないようにしながら眠りに落ちて──。*]
[旅の歌い手が月下にうたうは『幻燈歌』。
おとぎばなしのように、その詩をきいたことはあるけれど
綺麗な月がそう思わせるのか
それとも歌い手の見事な歌声がそうさせるのか
重なり消える自然の音色も相俟って
幻想的なその歌に、引き込まれる。]
――……。
[歌声が止んで、しばらく茫としていたが
惜しみない拍手>>160にはっと我に返った。
遅れて、控えめな拍手をして]
見事だった。
[と、歌い手に賛辞をおくる。]
─ 翌朝 ─
[少年の朝は早い。
館に戻っている間は休みの使用人たちの代わりに、家事の一切を取りしきるから仕方ない。
休みなのに休みじゃないなんて理不尽だとは思うが仕方ない、なんて割り切っているのは余談だが]
さて、と。
朝ご飯どーしよっかな……って、さむっ!
あー……まずは、広間の温めからだなぁ。
[なんてぼやきながら着替えを済ませ、黒猫を伴い階下へと下りていく。
いつもならそのまま広間へ向かうのだが、その日は何故か、その前に外を見よう、という気になって]
……ふうっ……昨夜も冷えたから、どーなったかなぁ。
[呟きながら玄関を開けて外に出る。
気になるのはやはり、庭園の薔薇たち。
そちらへ向かうべく歩き出そうとして]
……え?
[何気なく、橋の方を見やった蒼い瞳が見開かれる]
ちょ……なんで?
[村へと続く唯一の道。
それがあったはずの場所に見えたのは冷たい真白の──氷の堤]
え、え?
えーーーーーーっ!?
[何が起きたのかの理解が追い付かなくて。
上がったのは、言葉にならない大声だった。*]
[演奏家であるオトフリートの呟き>>170に、
夜空を仰ぎ、僅かに目を細めた。]
月、綺麗ですね。
[自然の美しさに感嘆するようにぽつと呟く。
ユリアンの落ち着かない様子>>161は
感じ取ってはいたものの、
大丈夫ですか、と案じる言葉をそっと掛けるくらいに止め、
寒さに凍える前に室内へと戻り、
広間で少し暖をとってから、客室で夜を明かす。**]
[朗々と歌い上げられたその声が夜空に溶けて消える。
耳に痛いほどの静寂が戻る前に拍手の音>>160で夢幻から現へ引き上げられた]
見事ですね……
『幻燈歌』をこのように歌い上げるのを聴いたのは初めてです。
[演奏家としてまだ未熟だからこそ、その歌声の素晴らしさが身に沁みた。
自然の美しさと音の調和。同じように感嘆の声を零す青年の呟き>>176に小さく頷いた。
もしも時間があるのならぜひ音楽について語ってみたいものだ、なんて思いながら、惜しみない賛辞を口にする。
そうして、演奏会が終わったなら、ギュンターにどの部屋を使えばいいかと尋ね、返事を得たなら礼を言い、広間に置いた荷物を持って指定された部屋へと向かった]
―二階・客室―
[用意された部屋へと向かい荷物を下ろす。楽器の扱いは特に慎重に。
流石にこの時間では練習をするには少し遅いと、ケースを軽く撫でて]
あの人たちに聴いてもらえたなら、少しは認めてもらえるんですかね?
[などと一人ごちる。
会わずに離れる、と言うわけには行かないだろう。今更引き止められるとも思わないけれど]
明日は、イヴァンが帰るなら一緒にご挨拶にでも行きましょうか。
[と、とりあえずは前向きな予定を立て、寝巻きに着替えてベッドへと入る]
……今日は特に冷えますね……
[呟きながら目を閉じる。
演奏会中に感じていた胸騒ぎにも似た何かを抱えたまま……――*]
―翌朝/二階・客室―
[慣れぬ寝台でもしっかり眠れるのは、性格と言うよりは普段の旅の多い生活のせいだろう。
移動の疲れと、普段会わない人々に会ったという気疲れは、男を程よい眠りへと誘い
それが、唐突に破られた>>175のは、まだ早朝とも言える時間だった]
……何があったんです、こんな早い時間に…
[もそりと起き上がり、声の主を確認しようと窓から外を見て……]
――…え?
[屋敷を取り巻く氷の堤、それがひときわ大きく成長しているのがわかる。
そして]
は?って、え?ちょっとあれ、どういうことです?
[視線をめぐらせた先、その場にあるはずの橋が壊れ、代わりに見えるのは氷の白。
見えているのに答を探すのは、その状況をにわかに受け入れられなかったせいだ。**]
村の設定が変更されました。
8人目、旅人 ゼルギウス がやってきました。
[その男が小島の屋敷に担ぎ込まれたのは、一週間ほど前の事。
橋を渡り切った辺りで倒れていた所を使用人が見つけ、そのまま主の命で保護された。
旅の途中で何かに襲われ、命からがら逃げてきた……という事情の断片は聞きだせたものの、それ以外は錯乱気味のためにわからないまま、落ち着くまでは、と主が面倒を見る事になった]
…………。
[月下の演奏会には、そんな彼の姿も片隅にあった。
主に誘われて出てきたのだが、やはり、どこか落ち着かぬのか。
『幻燈歌』が終わると同時、他者への挨拶もそこそこに宛がわれた客室へと戻っていたのだが]
……つきのうた……。
[演奏会の最中に漏れた小さな呟き、それに気づいたものは果たしていたか]
[男については、身上書という形で、屋敷の主からこんな内容が自衛団に提出されていた。**]
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■名前:ゼルギウス
■年齢:20代半ば
■職業:不明・旅人らしい
■経歴:ギュンターの屋敷の近くで倒れていた所を保護された。
何かに襲われたらしいが、そのために錯乱気味になっており、どこから来たのかなどの詳細は不明。
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