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…そっか。
そんなに、すごいけん、なんだね。
[それでは致し方ないやも知れぬ。
仔も始めは危ないと云われていた、地竜殿ですら使いこなせぬと謂うのなれば余程であろう。闇竜殿の困ったような笑みに幼子は同様の表情を浮かべる。]
……いじわるな、けんなの?
けんなのに、つかってもらうの、きらいなのかな。
はやくしないと、…たいへん?
[闇竜殿の言葉と表情にか、幼子が同じように眉を顰める。
その意図は掴めねども尋常で無い事だけは汲み取れたか。]
…うん、わかった。
[怪我をされては悲しいのだと聞いたのは、前は欠片に触れてしまった時か。
其れを思い出したのやも知れぬ、闇竜殿の願いとやらを聞きし幼子は素直に一つ頷くと
忘れぬようにか反芻するの様に一度口の中で繰り返す。
――今では随分と親しくなった影竜殿か、彼の竜の名を知っている者へと。
其処まで思考を巡らせ、仔ははたと思い当たったか一つ瞬いた。]
…オトの、なまえ?
[恐らくにも、皆知っているのでは無いかと驚いたように僅か首を傾いで
しかしその手に撫でられると、仔は闇竜殿を真直ぐに見つめた。
その様な意味では無いと、幼子の理解に到るのはこの後の言葉。]
――ほんとう、の。
[笑みと共に告げられる名を、仔は胸の内に秘め隠す。
それを告げるのは、氷竜殿にもましては常従う黄蛇にも許されておらぬのだと自らに言い*聞かせて*]
内緒ですよ
[幼き子は、真剣に聞いてくれている。
頭をなでて、それから首飾りを戻して、立ち上がった。]
さぁ、ナギ殿もブリジット殿も起きてきてしまいますよ?
戻って、笑ってあげて下さい。
また、後で会いましょうね。
[名残りおしげに、身を起こし。
手を振って、部屋をあとにした。
向かうは、*食堂*]
―東殿/回廊―
[外見は変わらないけれど十分な休息を経て、青年は回廊へと滑り出た。求めるものはただ一つ]
……後で、という事でしたが。
どこにいらっしゃるやら。
[大地の老竜を探し動き出す。そして影輝の姿も]
―食堂―
[スープをかき混ぜながら、老君を待つ。
首飾りに、彼の竜が気づかないわけがない。]
[ため息を吐いて、目を閉じた。]
[回廊に漂うスープの香りに、青年はふと足を止めた]
食事は必要不可欠ではないけれど…集まってくるかな。
[あてもなく動くよりもいいだろうと香りの先である食堂へ向かう]
風は止み、雷は止めども、水は波高くうねり続ける――…
それに――…属するがゆえに、危険。
[その呟きを耳にしたものは――モノは、居ただろうか。
青年は口元の笑みを深めて、食堂の扉を開けた]
―食堂―
[此方のあても外れたらしく、未だ目的の竜の姿は見られない様子だった。
台所の方からかかる声に眼鏡の奥の紫紺を向けて微笑む]
……いえ。
ですが、十分に満ちましたから。
[安らかな眠りで精神の竜は満ち足りていたから、そう告げて中へと入る]
あぁ、もしよろしければお茶をいただきたいかな。
[翠を見た視線は流れて、月闇の竜の手元へ留まる]
茉莉花茶で、よろしいでしょうか?
[微笑みのままに尋ね]
満ちていらっしゃるなら良かったです。
最近、いろいろありましたから……
[熱い湯を注ぎ、やがて香る茉莉花。]
きっと、もうすぐ終わりますよ
[カップを用意して、そっと机に。
食堂には、茶が香る。]
……えぇ、竜郷が壊れる前に決着をつけなくては。
[机に置かれたカップからは優しい花の香りが漂い、花茶を好む竜の眼差しには穏やな色が浮かぶ]
ありがとうございます。
――…美味しい。
[ゆっくりと一口飲んで、口元が綻んだ]
< 風、雷、炎。
三つの属が囚われ、水は一時抑えられたためか、雨は止み、風は弱まり、雷は遠い。しかし暗雲は絶たれた訳ではなく、竜都より広がりつつあるようだった。
気温は低く、他の者であれば凍えていたことだろう。しかし今はむしろ、受けた癒しの力の所為か、灯るいのちが熱くすらある。
胸に手を当て、慣れない波動に眉根を寄せた。
短く吐息が零れる >
本当に。
そんなことにはならないと思いますけれど。
[自分もまた席につき]
お口にあいましたようで、良かったです
[のどを潤わせ、ふわりと微笑んだ]
─東殿─
[剣の共鳴が途切れし後は、それを辿るにも辿れず回廊の真ん中で考え込んでいた。離れた場所での癒しの力には果たして気付けたかどうか。思案に没頭していたためにそちらに意識が向くことはまず無かっただろう。そうした状態のまま歩を進め始め、いつしか己が個室へと戻っていた。
その後、そのまま思案に没頭していたのか、今後に備えて休息をとったかは定かではない]
[しばしの時間の流れ。いつしか閉じられていた瞳が見開かれた]
……現れた。
[呟かれたそれはもちろん、剣の共鳴に対して。共鳴が断続的に起きている事象から考え得ることは一つ]
結界内を行き来出来る可能性、か。
他を押し込めることが出来るのならば、それが出来てもおかしくはない。
[己の中で点が線へと繋がる。何かを決意するように短く息を吐くと、椅子から立ち上がり個室の外へ。向かうは剣の共鳴の下]
―― 私室 ――
[唐突にぱちりと目を開ける。枕元に止まっていた機械竜が飛び降りて来ようとするのを、右手で制した]
…近付くな、ユル。
[ゆっくりと起き上がり、手袋に覆われた左手に目を落とす]
これ、が、剣の力…
[エネルギーの逆流を受けたメタルの腕は、ショート直前で全ての機能を落としたおかげで、自己修復により動きを取り戻している。しかし…]
確かに、危険だな。
[手袋を外し、指先を軽く握るように動かすと、酸に溶かされたかのように腐食した欠片が、ぼろぼろとシーツの上に零れ落ちた]
止めないと……誰が持っているにしても。
[手袋を戻し、立ち上がる]
[再びカップに口をつけていたから、返事の代わりに目で頷いて]
とても美味しいですよ。
それに…温かい。
[暗雲による気温の低下は、静かに建物の中にも伝わっていく。
カップを両手で包んだ青年は、余る指先を組む様にして遊ばせた]
大地殿はどちらにいらっしゃるのでしょう。
窺いたい事があるのですが。私も、影輝殿も。
― 東殿・回廊 ―
< 海に触れる前の記憶を遡り、大地の竜が仔竜を運んだ場所を思い起こしながら進む。
所々に空いた小さな穴、嵐の過ぎた痕に焔の軌跡、大小差はあれど惨劇としか言い様のない傷跡を残す宮殿。
天聖のものが見れば嘆きたくなるだろう。残された彼らは、それでも忠実に職務をこなしているようだった >
―― 私室 ――
[近付こうとする機械竜に、また右手を振る]
だめだ、お前は…
[機械竜は構わずその肩に止まった。青い瞳が明滅する。まだ焔の色のルビーを額に飾ったままのその頭を軽く撫でて苦笑]
ダーヴの気性まで移ったんじゃないか?お前の役目は子守りじゃないだろうに。
[言いながらも、無理に退けようとはせず、そのまま部屋を出た]
さて…どこから当たるかな…
[ゆっくりと歩き出す。手袋の下のメタルの腕は、今も少しずつ、腐食を進めている**]
アーベル殿のいれてくださったものの方が、美味しかったと思いますけれど。
[不思議そうに首を傾げ]
老君ですか?
そのうちお見えになるのでは……?
……まだ。
少し痛むかしらねぃ。
[ゆっくりと。
ナターリエが寝床から起き上がった]
でも、いつまでも寝ているわけにはいかないかな。
昨日のこと、布に水が染み込むが如く、少しずつ、思い出してきたからぁ。
[鋭い目で。
ナターリエが扉を開ける]
けど。『力ある剣』を所持しているもの。
私一人では、到底対処できない。
ならば、もう一つの『力ある剣』を所持している、大地の元へ。
[回廊に出て左右を見渡し、そして、ザムエルの姿を求めて歩き出した]
─東殿・回廊─
[本来の持ち主─仮契約ではあるが─であるエルザの下から離れた剣の共鳴は以前より弱く感じられ。それを漏らすことなく辿れるよう、右手で左手首の腕輪を握り、強く念ず。気配を辿る様相は彷徨っているようにも見えたか]
……問題は、誰が持って居るか、じゃな。
[片割れの剣を持ちし者。現状、その者が干渉されし者の可能性が高い。こちらの残る面々の誰が持ち得るのか。己の剣について探っていたものであれば一人心当たりがある。しかし奴が持っているとも限らない。剣の気配を辿りながら、誰が持ち得るのか考えながら、その足は回廊を進む]
……。
[いつものナターリエらしくもない、真剣な表情で回廊を歩く。
探知と言うほど正確な探知を出来るわけではないが、先日暴走した末に、通路いっぱいに水を撒き散らしたことが功を奏して、大地の居場所はなんとなく掴むことが出来た。
やがて―――]
―――大地の。
[ナターリエの目はザムエルの姿を捉えることになった]
[声をかけられ、ハッとした表情となる。声のする方を見れば己と同じように真剣な表情をしたナターリエの姿]
……如何した。
先日の暴走からは解き放たれたようじゃな。
[瞳を細めナターリエを見つめる。流水の気配はするが、天聖の気配はしない。剣の持ち主ではないことだけは理解した]
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