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……。
[じゃらり、]
[持ち上げた左手][鳴る鎖の音]
重い、だろうから。
いい。
[ゆるり][首を左右に一度振る]
[緩やかな歩みで][やがて屋敷に辿り着くと]
[室内へと入り][廊下を抜けて][階段を上り]
[流水の獣の案内で、眠る天聖の獣を部屋に寝かせる]
[彼等が話す間も、私は意識を手放したまま身じろぎ一つなく。
胸の上に在りし手も、衣を強く握り締めたまま]
[豊かな毛並みの大きな背に乗せられ、緩やかに運ばれてゆく]
[流水の獣に代わり]
[真白い寝台に力の抜けた身体を横たえる]
[姿は人のものなれど][人とは異なる][耳][尾][そして角]
[それらを傷つけぬよう、彼にしては細心の注意を払って。]
……、
[身を起こそうとして、]
[見慣れぬ角へと右の指先が伸びかける]
[が、]
[横から投げられる][咎めるような視線]
[僅かに白金を掠めて、離れた。]
―二階個室―
[静かに下ろされたは、私の使う部屋。
在るは肩掛の大きな鞄が一つと、洗い干された亜麻色の布のみ]
……
[褥へと横たえられ、吐息が零れる。意識はありやなしや?]
ん、
ごめん。
[目を覚ましていたは定かでない]
[謝罪の言葉は][短く][小さくて]
[起きていたとて届いたかすらも]
[伝わるまで残るべきだったかも知れず]
[けれど傍らに別の存在があったためか]
[開かれたままの扉へと足を向けた。]
[額の角は肉に覆われ、何者をも傷付けぬもの。
なれど良く見れば、その内に抱くは歪な形]
[触れんとする気配を感じたか、僅かに睫毛が揺れる。
ただ、それだけ]
[謝罪は届いたや否や?]
[部屋を出][大地の獣の元へ]
[簡潔な言葉で説明を終えると]
[その傍らに腰を下ろして、ぼんやり巨躯を見上げ]
[*乾いた手を、伸ばした*]
─二階・自室─
……っ!
[唐突な覚醒は、何に寄るものか。
護法天陣──高位の守護陣の展開で疲れ果て、悪夢を伴う眠りに堕ちていた意識が目を覚ます]
…………また…………いつもの、か。
[掠れた呟き。
見守るように見つめていた白梟が、ばさり、と翼を羽ばたかせる]
ああ。悪い、ヴィンター。
[零れるのは、苦笑。魂を分かつ白梟とは、夢をも共有するから。
……だからこそ、丸い瞳には、案ずる光が宿るのだけれど]
……ん、そんなに心配……。
[心配するな、と。笑いかけようとするのと、呪印が痛むのとは、どちらが先か]
やれ、やれ。
これも安定させねぇと。
[傷む呪印のある、胸の辺りをつい、と撫でて立ち上がる。前後するよに目を覚ました従魔は、きょとり、とその姿を見つめて]
「時空竜?」
ちょっとでかけて……ああ、セレスも一緒の方がいいか。
獣態なら、俺に掴まってられるだろ?
[名を呼ぶ従魔に声をかければ、天青石の瞳は一瞬きょとり、とするものの、言葉に従い碧の獣へ。
小さな身体を右肩に掴まらせて]
……いよっと!
[……だから、窓から出るなというのに]
[唐突に降ってわいた姿を見た者は驚くだろうか。
行く先を問われたなら、常と変わらぬ声と表情で、西の森の様子を見てくる、と。
そう言うのと、その姿が『翔けて』消えるのとは、*果たしてどちらが先だったか*]
―広間―
[ふわりと顔を上げ目を開く。
猫達の姿は消えていて。部屋の一部は氷で塞がれていて]
…大丈夫かな。
[近寄り少しだけ触れる。冷たい。でも気持ちがいい。
昨夜は色々失敗してしまったけれど、対が消えたのは自分だけじゃなかったのだ。共に居てくれた白猫もまた。そしてこれを作り出してくれた人も。動揺の仕方は人それぞれだろうけれど]
……大丈夫、だよね。
[引きこまれた二人はどうしているのだろう。
何事もなく、とは難しくても無事でいて欲しいと。
探ろうとした力は無機的で慣れない波動に弾かれた]
ほい、っと…。
[入り口まで運び、屋敷の中へはアーベルとエーリヒに任せて昨日から陣取っている屋敷入り口に腰を下ろす。
アーベルに伸ばされた手が胸元のふわふわの毛を撫でるにはそのままにし。
まったりと目を閉じると、窓からふわりと時の竜の姿。]
単独行動するなって昨日言ったのはあんただぞー?!
[西の森へ、といいつつ掻き消えるその姿に、少し大きめの声をかけ。
あー、とか言いながら苦笑した]
[むぅ、と小さく唸る。
何となく分かってはいたけれど]
ねぇ、どうしてなの?
[呟いた問いは対象を定めたものではなく]
もっと他の場所も見たかったな。
でも一人じゃ危ないよね…。
[その直前、一人で出かけて行っている人がいるとは知らずに。
とりあえず外へと向かう]
―…→屋敷の外―
あーやってどっかいかれると、全然追いつけねーって…。
いや、さっきもリディのお嬢ちゃん見失ったけどさぁ。
[左手の肉球の間につまった土を、右手の爪で器用に取りながら、傍らに座るアーベルに話しかけているのか独り言かわからない呟きは、風の中。]
[入り口に回ればそこには身づくろいしている大きな姿。
傍らの機鋼の青年は我関せずなのだろうか]
何かあった?
[青年とは反対側から顔の前へと回り、小さく首を傾げた]
よ。
んや、アーベルがナターリェとエーリヒを電気でバリバリした、くらいか?
敵っぽいのは殆ど見てないなぁ。
[少女の姿を認め、大きく首を巡らせて目を合わせる。
首の周りの毛が波打ち、ゆらりと鬣が揺れた。]
電気でバリバリって、なんでアーベルさんが。
[きょとんとして聞き返す。
反対側の青年の様子を窺いつつ、揺れる鬣に何となく手を伸ばし]
それってナターリェさんとエーリヒさんも大丈夫だったの?
…ナターリェさんは、確か天聖の人。…エーリヒ?
[問い返してから改めて首を傾げる。
未だに名前と一致していなかったらしい]
[一階に下りて来て、台所から適当な果物を見繕って懐に入れると玄関に。
するとそこには数人の姿。]
やっほぅ。おでかけ?
[手を上げて挨拶。]
一応大丈夫みたいだが…ナターリェは何度も倒れている気がするから。
限界が近そうで心配、だな。弱ってないといいが。
あぁ、えぇとエーリヒは白い猫、羽根の生えたヤツな。
[言いながら、鬣に手を伸ばす彼女が背伸びをしなくて良いように(そのまま背伸びをしてこけるのではないかと心配したとかそんな)、そっと身を屈めた。]
よ。
や、おでかけじゃなくて俺は見張り。
どっか行くならボディガードするか?
[ミリィの姿を認め、手を上げた。
彼女が強いという事なんて知らないからでた言葉。]
あっ、こんにちは。
お出かけはしたいけれど…どうしようかなって。
[ミリィに声を掛けられれば手を振り返してそう答え]
何度も…大丈夫なのかしら。
何かできることないのかな…?
[心配そうにそう言って。続いた言葉にはああ!と]
猫さんの名前。エーリヒさんと言ったのね。
やだ、まだちゃんと憶えてなかった。
[照れくさそうにしながら鬣を掴んだ。くるくると指に絡めたり。
身を屈めてくれたので倒れずに済んだようです]
ん?でかけたいのなら俺ついていこうか?
肉の盾くらいにはなる。
[鬣を撫でられるなら目を細め、引っ張られれば「いて」と言葉を発し、ブリジットの方を向いて首を傾けた]
あっ、ごめんなさい。
[引っ張るつもりは無かったけれど、ちょっと絡めすぎちゃったり]
まだ、見れて無い場所もあったから。
火山とか…多分大丈夫だとは思うのだけれど。
[自分でも見てみたかったというのと、昨日目の前で居なくなってしまった人の影響と。少しだけ気になっていて]
ミリィさんは?
どこかに行く所だったの?
火山か。
うん、必要なら行く。単独行動危ないしな。
っつって、さっきオトフリートが単独で力いっぱい西の森とか行ったが。
[ブリジットがミリィにたずねた言葉の返答を、ミリィの方に顔を向けて待つ。
撫で撫でには更に目細め。]
―自室―
……どうしよう。
[開いた窓から、足を外に放り出すようにして座る。風が気持ち良い。
二階だから、普通の人なら少し危ないけど、オレは飛べるし、平気。
行儀悪いって、アルが居たら怒られるんだろうけど――いないし。
両手にもったリンゴを、ひょいっと軽く投げた。キャッチ。
……食べたいなー。アル、早く戻ってこないかな。]
本当に、そうなのかなぁ。
[一度、二度。
私は睫毛を揺らし、瞼を持ち上げる。
淡い菫色の瞳に映るのは、天井か、心配そうなあおの瞳か。
痺れの残る指先を持ち上げ額へと当てようとして――感じる違和感]
……わたく…し………嗚呼…
[内へと戻そうと幾度か集中を試みるも、果たせずに]
――ううん、お姉さんの「声」に混じってたのは本当。
だから、それは間違いないんだけど。
[ふる、と。中から聞こえてきた声に首を振る。
聞こえたのは確かだから、…きっとそうなんだ。でも、]
…どうして協力、…協力?してるのか、聞こえなかったの。
[全然、判んない。っていうか…「声」って協力?するのかなぁ。
でも、翠樹の声になじみにくい筈の声が、反発してなかったから
これが、一番しっくり来る言い方。
メーアには「何言ってるか抽象的過ぎ」って言われるけど
でも、本当にそんな感じなんだ。]
[側に付いていてくれた彼の猫に、優しく止められて。
私は細い肩を落として、その言葉を受け入れる]
そう…いたしまする。
今、無理をしても…また姿を抑えられなくやるかも知れませぬ故…。
[素直に頷けば、彼の猫は安堵の気配を滲ませて。
私は心優しき恩人にまた心配を掛けてしまった事を申し訳なく思う]
[ふと触れし手が、ずぶ濡れのままであるを見て。
私は亜麻色の布を彼の猫へと掛け、温もってくれるようにと願う]
このままでは、病を召してしまいまする。
私は…此処で大人しくしておりますゆえ、どうか…
[愁いを帯びた瞳で見つめれば、彼の猫は暖を取りに向かおうか]
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