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……
[影竜の反応は、剣を持つ者とは思えなかった]
暴走、に近いかもしれません。悲しみ、怒り、それに近い感情のようなものを剣の力から感じました。逆流するほどの。
[その逆流が、逆しまの呪に近いものとなって、今己の左腕を腐らせているのだと、感じていた]
……。
[ナターリエが、口に人差し指を添えて―――何故か、妙に艶かしい―――ゆっくりと、エーリッヒのそばへと移動する。
……はたしてそこには、怪しいと思っていた人物ノーラと話しているエーリッヒの姿]
(……どう、とればいいのかしらぁ。
まずは、様子見ねぃ)
[ナターリエの仕草は枯れた老竜にはどう映ったであろうか。ひとまず声を出すなと言うその行動に口を噤み。こそりと覗き込めばそこにはエーリッヒとノーラの姿。
ナターリエが言わんとすることを察し、まずは様子をみることに]
それほど、厭うことがあったんでしょうか。
< 後ろから声をかけたのだから、此方を窺う気配は機鋼の仔竜より悟り易いか。しかしまるで気付いていない素振りで、言葉を続ける >
剣の一は影輝の属を持つ。
そして強き力ほど、揺らげば及ぼす影響も強い。
暴走の前兆が混沌のかけらを変貌させたのかもしれないですね。
この場の均衡は崩れている。
< 後の科白にも、無関係とは思えないというように微か首を振った >
[然程高くもない椅子から飛び降りた仔は、難無く着地を果した。
腰を屈め伸ばされた腕へ常の様に絡みつく。]
…ブリジット、つかれちゃったのかな。
[未だ眠ったままの氷竜殿の顔を覗きこんで、仔は私へと視線を向ける。
かも知れぬ、幼子を抱えたまま果てには昨夜の様子は均衡が失われし所為か
体力の消耗は著しいものに他ならなかったに相違なかろう。]
つかれたら、なんだっけ。
…おみず?
あと、ととさまは、ひなたぼっこでのんびりするといいよって。
[――それは少々翠樹故の影響もあるかも知れぬが。
尤も、雨は上がれども陽が差すには空は程遠い。]
─西殿・廊下─
[御飯の話で一時飛んではいたが。
暴風、完全に静まってはいない訳で。
……ついでに、左手にはまだ『風雷棒』がしっかりと。
そして、相手の体調に気づけるような余裕は、ない]
「よぅ?」じゃあ、ねぇだろーーーーーーーーっ!
[廊下を蹴り、ダッシュで距離を詰める。
エルザは静止しただろうが、文字通り聞く耳持たず。
ジャンプから、頭に向けて振り下ろしの一閃]
―― 廊下 ――
そうでしょうか?
でも、あの時、ダーヴを送った剣には影輝の気配は無かった…
[感じたのは、天聖と流水、そして得体の知れぬ力。或いはそれが揺らすものの力の一部だったのか?]
或いは、対の剣が、揺らされた者に渡ったことで、もう一方の剣もバランスを崩している?
うっわあ…まじでやばそ…
[また怖い考えに至ってしまって、頭を抱える]
[ノーラの言葉に小さく、ザムエルにのみ届く言葉で囁く]
……なるほどねぃ。
昨日の影の如き、混沌のカケラは、貴方のほうの剣の力の暴走ということかしらぁ。
陽光が消え、月が揺らされていることにより、影がバランスを崩した末の結果、ということも考えられるのかしらねぃ。
ただ、私達が聞いているときにそのような話題になったのが出来すぎ、ということが少しだけ気にかかるかしらねぃ。
[少しだけ思案して、後のエーリッヒの言葉を聞けば]
ふむ。
機鋼のは冷静なようですねぃ。
それは、わからないけど。
実を言えば、影輝の気配は感じていました。
……ザムエルさんから。
確証がなく話す機会も逃していたから、手を出せずにいたけど。
どちらにしても暴走の危険性があるのなら、捨て置けません。
ひとまず話を聞いてみましょう。
< 悩むエーリッヒとは対照的に、顔を上げた >
…おみず、とりにいこっか。
リーチェも、のみたい。
[流石に陽に当たるのが難しいとは幼子も理解したか、
氷竜殿に掛けられた毛布を僅かに直し――否、不可抗力とは云え先程より少々落ちているやも知れぬが、幼子が気付いた様子は無い。
前回と同様、氷竜殿を起こさぬ様に忍び足で部屋を抜ける。
幼子の足跡が、前程より育つのは気のせいか。
結果的に萎れるのは同じであるが、些か奇妙に感じた。]
―個室→回廊―
え、ザムエルさんからって…
[その名が出るのは、意外ではないといえば無いのだが(何しろ剣の所持者候補は限られて来ている)影竜が上げた視線を追って、きょとん]
……いや、暴走と言う暴走はして居らぬ。
力が瞬時に増大した時はあったが、あの後直ぐに抑えておる。
別に要因があるはずじゃ。
促進した部分はあるやもしれぬが、な。
主要因ではないはずじゃ。
[ナターリエから囁かれる言葉に小声で異を唱える]
ノーラは、儂らが居ることに気付いて居るやもしれん。
何せ腕輪──剣があるからの…。
[こそりと、己が左手首に据えられた腕輪を右手で握った。エーリッヒの様子を見れば、状況はそれなりに理解していたようで]
言葉に揺らされはしておらぬな…。
……じゃが何じゃろうか、何かがおかしい……。
[それは近付いたがために気付いた異変。鋼に似た何かが、変化している気配]
あらぁ。
なんとなくは思ってましたが、やっぱりばれていましたかぁ。
[小さくため息。だが其の顔は笑みを浮かべている]
ばれてるなら、此処にいてもしょうがないわねぃ。
[ナターリエが二人の前に姿を現した]
ま。真打ではない私に用は無いのでしょうけども、在籍ぐらいは容赦してよねぃ。
[ティルの言葉にコクリと頷く。
疾風の若竜とは逆に、身体に精神が追いついていない身。
先達の言葉は静かに心に沁みてゆく]
[けれど続いた行動は仔竜のそれにも通じるものがあり。
思わずミリィと顔を見合わせたりしただろうか。
浮かんだ笑みがもう一段深くなる]
置いていかれてしまいますね。
[そうして足早に(小走りだったかもしれない)後を追ったのだが]
どうなさいました?
[唐突に止まった相手は、尋ねている間に、跳躍。
その向こうにいるのは]
あっ、クレ…!
[静止するどころか、見えた相手の名前を呼びきる暇も無く]
[ナターリエに続き姿を現し]
……エーリッヒ、お主何か変調をきたしては居らんか?
[訊ぬは先に感じた異変について。変じた場所を探し視線を彷徨わせ、辿り着くはエーリッヒの左手]
計ったようなタイミングですわねぃ。
< 口調ばかりが流水の竜を真似、笑みを含んだようになる >
いえ、もし悪い想像が当たっているのなら、
人手は一つでも多いほうがいいのだから、
用がないなんてことはないわぁ?
―食堂―
[窓の一つの鍵をあける。]
[それから、少し開く。]
[ベアトリーチェの居場所を、必ずわかるようにしなければ。
雨の降った後でよかった――水の魔法が使える。]
[疾風怒濤、動きの速さで他の追随を許さないのも疾風の由縁。
単純な「速度」だけなら、雷撃や陽光、時空と比較はできないのだが、それはそれ]
っとに!
おっちゃん!
あんた一体、なにやってんだよ!
[床とお友達になったクレメンス、いつものノリなら踏んづける所だが。
ピアがきき、と鳴いて耳を引っ張り、舞い散る粒子を指差す]
……なに、コレ?
[きょと、としつつ呟く。
更に、なんか復活遅いのに違和感があったのか、踏んづけずにおいた。
代わりに、『風雷棒』の先で粒子を突付こうとしてみたり]
[メタルの左腕は、大地の司る鉱物より鍛えられる、そのため地竜には変調を気付かれるかもしれないとは思っていた。だからこそ、逃げ出そうとしたわけだが]
いえ、その、別に、大したことはっ!
[ここで寝違えた、はもう無理ですよね、な感じで、じりじり後退]
[エルザとギュンター、そしてティルの交わす言の葉は黙って聞いていた。
下に下りるか、との話には頷いて]
…ともあれ、どうすべきが最善か考える必要がありますね。
[いっそ暴走させて、というティルの言葉には頷きかけたけれどギュンターの眉間の皺に思わずやめたのだった。
そしていま、風雷棒がめりこむクレメンスを見たけれど、彼自身より周りの琥珀色が気になったのは非道と言われるだろうか。]
…これは?
[そっと手を伸ばし、琥珀の粒子に触れようと。]
―食堂―
[片付けると言う月闇の竜にカップを渡し、青年は暫く目を閉じて記憶の整理をしていた。
やがて窓の方へと歩み寄る月闇の姿をレンズ越しの紺碧が追う]
……そうですね。
[花茶を飲んだ身は温かいが、窓の隙間から入る空気は足元へ流れひやりとさせる]
………。
[窓の外に満ちるのは淡い闇か、薄い影か]
……逃げられぬよう、
きちんとしたところで話そうかの?
< 手出しはしないものの、立ち位置の関係で機鋼の仔竜を挟み込むようになり、退路を断つ位置に佇む >
大したことじゃろうが!
[逃げようとするエーリッヒの腕──左腕を掴み上げる。その掴んだ感触からして普段とは違うものと変貌していた]
──……ボロボロではないか。
何をしてこのようなことに…。
[己が左手でエーリッヒの左腕を持ち上げ、労わるように右手で擦る。そして感じる微かな剣の気配。訝しげに首を捻る]
…何ゆえ剣の気配が…。
ともかく、食い止めねば。
[構成する鉱物へと働きかけ、その崩れを抑えようと試みる。エーリッヒの腕を持ち上げる左腕から覗く黒き腕輪。それは何かを中和するが如く鈍く光った。どれ程効果があったかは定かではないが]
だ、大丈夫ですか!?
[思いっきり潰れたクレメンスに、思わず出そうになった悲鳴を飲み込んで。慌てて傍に寄った。
いつもなら即座にむくりと起き上がってきそうなものなのに、そうならなかったのが心配だった。
けれどその懸念も10秒で消えたりするわけだが]
この琥珀は…?
[不思議そうに手を伸ばしたのは他二人と同じか]
[幼子はぐるりと回廊を遠回りしながら、食堂へと向かう。
逆の方へと進めば遥かに食堂へと近い筈であるが、前回幼子が食堂へ到った道は確かに此れと同様。
はてまさかと思ったが幼子は食堂へと続く道程を知らぬのやも知れぬ。
帰路は心竜殿に部屋へと送って貰った筈であるが成る程、帰路を逆に辿るには風景が些か異なる。慣れぬ場所を幼子が歩くには、目指す場所が決まっている今冒険をするには不向きであるのやも知れぬ。
たっぷりと時間を掛けて、漸く幼子は食堂へと到る。
他の個室とは異質とも言えるその扉を押し開けて、仔はおずと顔を覗かせた。]
― →食堂―
[影の言葉に、ナターリエも微笑む]
まさしく。
人手は多ければ多いほどいいですぁ。
[そう言って、右手の人差し指を、左手の上でとんとんと叩き、思考を進める]
……そうねぃ。
貴方を疑っている点はただ一つ。それを私は解消してほしいところ。
先日の、「影」の如き、混沌のカケラの大量発生。
それについて、お話を、嘘偽り無く聞かせてほしいですわぁ。
[穏やかに。だが、限りなく鋭い視線でノーラを見つめる。
彼女が影のように相手の姿を映すように、ナターリエもまた、水鏡のように相手の姿を映し出す]
…つっ!
[メタルの腕にも神経は通っている。それは無機の生命と有機の生命を併せ持つ機鋼故の特性。痛みに顔を顰めながら、中和を働きかけるザムエルの行動に、目を見張った]
ザムエルさん…やっぱり、本当にあなたが…?
[対なる剣の力は、確かにいくらか浸食を食い止めた。が、元凶である剣の悲しみ、或いは怒りの深さ故か、完治には至らない]
[琥珀の光の舞。
自身からも零れるそれに、きょとり、としつつ]
あにすんのよ、じゃねぇよっつーか、そりゃこっちの言い分っつーか!
何、は。
何から何まで全部。
は、めんどーだから、ここで何やってんのかと、コレが何かについて。
[言いながら、『風雷棒』でまた琥珀をつつき]
―食堂―
[大きな音をたてたのを聞き、目を離す。]
[何かを言おうとし、それから扉の開く音にそちらをみた。]
ベアトリーチェ殿
[先も会った子に微笑みを]
―食堂―
ごちそうさまでした。
[ゆっくりと歩いて扉に手をかける頃、硝子の割れる音が響いた。
それとは別に感じた違和感は、大地竜の黒い腕輪だろう。青年の口元に笑みが浮かぶ]
おや、いらっしゃい。
[触れた扉は力を入れる前に薄く開き、覗いた仔竜に微笑みかける]
どうぞ、中に。
[そして入れ違うように廊下へと出た]
[ノーラと話しながらも、エーリッヒの言葉には困ったように笑み]
おバカさぁん。
何があったのかは知らないけれど、もし、大地のが貴方の敵になっているならば、貴方を癒すはず無いでしょう?
[そこまで言うと、―――くん。と鼻をひくつかせて]
流……水。
何故、貴方から流水の気配が?
…?
――オト!
[大きな音は幼子の耳にも届いたか、不思議そに一度周囲を見回し
しかし中に居た人物に仔の意識は即座に其方へと向けられた。
先日ほどの賑やかさは無いが、良く見れば心竜殿も中に見られる様子。
もう僅か扉を押し開け、幼子は顔を綻ばせる。]
…あのね、おみず。
のみにきたの。
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