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[大兄に撫でられる小兄に]
[やっぱり心配そうな目を]
ふうれんさま。
……あっ。
[はたと何を思いついたか]
[あわあわと小さな鞄を探り]
[取り出したるは、さくらんぼ]
握り飯ほどおなかにはたまらんよ。
じゃけん、あまいん。
[にこにこと]
[差し出そうとして]
天狗の願いか。ああ、そうだねえ。
あの七色の橋は天狗とて、美しいと思うだろうからねえ。
[ねいろの言葉には、やはり優しげに答えよう。空に虹はまだ消えず]
[撫でられる感触に、ひとつ、まばたいて。
それは、何か思い起こさすのか。
紅緋の不安は──まだまだ残りはするものの。
微かなれど、和らぐか。
それでも、差し出された物には。
ふる、と首を振り、大丈夫だから、と呟くのみで。
注意深く、見たならば。
微かな怯えも読み取れようか]
[様子はやはり違い]
[きょとんとしたまま]
……ほんま、どうなさったん?
[小兄が]
[心配で]
[かなしそうで]
[ただ、見て]
[それはどこにもおかしさなど無い行動]
[似てるかと問われれば首を振り]
いや―何分俺が幼き頃の事なのでな―
[恐らくここで無くとも憶えておらぬよと、寂しき笑みを浮かべ言う]
[ふる、と、また、首を振る]
なんでも……ない、よ?
[繰り返されるのは、その言葉だけ。
それ以外に、術はなく。
ただ、鞠抱く腕に力を入れるのみ。
声にできぬ、言葉にできぬ、不安。
昨日、まどろみの内で見た夢は、ただ無為にそれを募らせて]
だって……。
[わらわん、と言われて。
紅緋は深く伏せられる]
……だめだから。
[そう呼ぶものは、近くに寄せては、と。
こぼれた小さな呟きは、唐突か。
だが、その意を説く術は見つからず]
左様で。
[寂し気に見える男の笑みには、声音も和らごうか]
消えたと言うが神隠しなら、心当たりはございますよ。
俺が以前に、天狗に呼ばれた子供の頃に、他にも二人同じ年頃の子がおりました。
そのうち一人は男の子。名は確か…
[はて、何と言ったかと眉を顰める]
[何が駄目なのか]
[判らずに泣きそうな顔のまま]
おらぁ……
ふうれんさまに、笑ってほしかよ
好きじゃもん……
[駄々をこねるようにか]
[小さな声で]
[泣き出しそうな声で]
―烈琥―
[「以前呼ばれた」―その言を問うのも忘れ呟くその顔は、一種人形の様であるか―]
れく―と。そう―呼んでおった―
[ぐるぐると、ぐるぐると。
言葉が回る、意識の淵で]
……だめなのだよ。
約束、したのだもの、舞弥のにいさまと。
にいさまのほかに、風漣を、さまと呼ぶものは寄せてはだめ、と。
[なくしたから、消してしまったから。
いらぬ子に沿おうとした、やさしいこ。
誰も、同じにしてはならぬから、と。
露草色の若人と、そう、約束したのだから]
[雅詠の紡いだ名に、ああ、と頷き]
そうだ、その名。
子供心に変わった名だと、そう覚えておりましたよ。
あの頃俺には、教えてもらった字も読めず…
大事な御方でしたか?
[静かに、そう尋ねた]
[微かな転寝]
[けれど唇を揺らす強い否定]
やめ、て───!
[自らの声の大きさ故に目を覚ませばぽたりと頬を伝うしずく]
[肩で大きく息を繰り返して]
[その言葉に]
[きょとん]
[首を傾げて]
やくそく?
[何故それが駄目なのか]
[それはわかるわけがなく]
ふうれんさまを、呼んではならんのけ?
なら。
おらぁ、ええと。
ふうれんって、呼ぶけ。
笑って?
[子供ながらの考えか]
[さまがだめならと]
[そう尋ね]
[浮かびし表情は悲しみと安堵―]
―ああ、大切な―
―大切な存在だった―
[烈琥が居なければ今頃自分はここにおらなかったのだと―]
[名で呼べばよいかと。
問われても、答えようはなく。
それは、なくしたものと同じ言葉で。
だから、答えられずに。
ふる、と首を振って俯くのみ。
仔うさぎ、いつか草を食むのを止めて。
なだめるよに、その足元に擦り寄るか]
……風漣は……ねいろの御霊など、みたくはないよ……。
[そのぬくもりに、心やや鎮まりてか。
間を置いて、零れたのは、掠れた呟き]
ならば、旦那がここへ来たのは、そのせいなのかもしれませんねえ。
旦那が、れくを探したなら、いや、思い起こしてでもいたのなら、鈴の音に呼ばれたとしても不思議はない。
[得心がいったという風に頷いて]
なんとなれば、あの日、俺は戻って、あの子は去った。天狗の里へと現世を逃れて。
[ぽたり]
[ぽたり、と───]
………、…っ……ぅ…
[ぽたぽたと、それは雨粒のように]
[海藍の袴の上にまあるい水跡がひとつ、ふたつ──]
[小さな声にこたえるは]
[小さな声]
[呟く言葉に首を傾げて]
みたま?
みたま……?
[首を傾げて]
[だけれどはっきりしているのは]
おらぁ、ふうれんを、悲しませるようなこと、せんよ。
絶対せんよ。
ふうれんに笑ってほしいんよ
[にこにこと]
[笑って]
じゃって、好きじゃもん
そう―かもしれぬな―
[頷き返しまつりの時を思い出さんと―しかし次の言葉に顔を上げる]
それは、本当なのか―!
[浮かびしは―困惑]
ほんまよ。
おらぁ、好きじゃ
[にこにこと]
好きってすごいんよ
ぜったい悲しくさせんって思うん
だから笑ってぇ?
わらうかどにはふくきたる
って
かかさまがいうとったもん
…わからぬ。
我にも、わからぬ。
[ほろほろと落ちる涙をそのままに微かにつぶやく]
ただ……さびしい。ひどく、さびしい──
[ほつりとつぶやいて蜜色は瞼の裏へ。
伸ばされた手を遮る様子はなく]
…あ、め…?
そんな―そのような―
[なにやらぶつぶつ呟いていたがやがて―]
俺は―
[ふらり、視線は虚空を彷徨い、肉体の方も彷徨わんと―]
[ふる、と首を振る。
言葉は既に、届くかどうかも怪しきか。
力抜けたよにその場に座り込み。
ぎゅ、と唇をかみ締める。
紅緋が見つめるは不安げな、小さき獣の円らな瞳]
わからぬか。
わからぬ事は多きものよの。
[白き指は頬へと触れて、伝う涙を掬い取る]
ひとりはさみし、ふたりはこいし。
なれば如何すれば好いものか。
[続いて落ちる言の葉は、独り言ちるようで]
雨は空の流す涙、海は涙の流れ着きし場所。
そう言うたのは其方だったと覚えているよ。
けれども、雨が時には恵みであるように、
涙にもうれしきはあるね。
其方の流す涙がそれであれば好いと思う。
[座り込んでしまったのにあわて]
[自分もあわててしゃがんで]
ふうれん、ふうれん
なんも心配なんてなかよ!
こわいのあらんって
ふうれんが教えてくれたんじゃよ!
わからぬ──わからぬよ。
何ゆえに涙が止まらぬのか。
何ゆえ、我はさみしいのか。
[頬に沿う指の温かさ、微かなそれでも安堵を覚えてほろりほろりとまだ涙は落ちよう]
…ああ、言った。
我は確かにそう言った。
けれど…我に空でも海でもある資格はないのだよ。
我は──ただの日知り。
[嬉しい涙などながれようもないと首を横にふる]
ぁ――――
[肩に伝わる感触に振り向きし顔は呆然としておるだけでなく―
そう、まるであどけない幼子の如く―]
―からす?
[それだけを呟きてふっ―と*崩れ落ちた*]
こわいのではない……よ。
[ようやくこぼれた声は小さくて]
ただ……嫌なだけだから。
[何が、とは言わず。
紅緋は頑な。
踏み込むのは許さぬと、そう、言わんばかりに。
思わぬ言葉が呼び起こせし遠い刻は、その頃の。
実父にいらぬと言われた頃の、頑なさまで呼び起こしてか]
いずこにても、みえぬはこころ。
己にても、他にても、それは然り。
[隣に腰を下ろせば紫黒は蜜色を覗こうと]
空の君。
それは人の世にての話だろう。
ここは天狗の隠れ里、現世の理は通じぬよ。
其方が望むがままにあれば好い。
空でありしも、
海でありしも、
如何様にも在れよう。
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