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呼び寄せたのは果たして何か。
その意を誰一人知る由もないまま、人々は集い始める。
1人目、自衛団長 ギュンター がやってきました。
召集をかけたものの、まだ集まってはおらぬか……。
とはいえ、どこまで真実かもわからぬ噂、焦る事もなかろうて。 全員集まるまで、ゆっくり待つとするかの。
【舞台説明】
その昔、助けた妖精によって、災厄から救われた…という、妖精伝説のある片田舎の村。
200年前に起きたある騒動から、風の名を持つ守護妖精により、更なる加護を得ています。
海、山、森、川と周辺の自然は豊富で、近くには温泉も湧き出しています。宿は温泉完備、天然の露天風呂もあり。
現在は、年に数回行われる妖精祭(妖精に安全を祈願する祭事)の終了直後で、観光客も多く訪れています。
季節はリアル時間に合わせて下さい。
文明レベルは低め。一般的なライトファンタジー系の世界観、と考えてください。電気や電話、車の類はありません。
村のどこかに、妖精王の力を秘めると言われる虹の水晶細工『レーゲンボーデン』があると言われています。
【虹の水晶細工『レーゲンボーデン』】
守護妖精フェーンが、宝石細工職人ユリアン=フェーダとして最後に作った作品。曇りの無い天然の水晶を削りだした天使像で、満月の光の下で虹色の煌めきを放つ事からこう呼ばれています。
妖精王の眷属としての力を多く込められており、単体でも強い守護の力を発揮できるらしいです。
現在は、村のどこかにひっそりと安置されているが、その場所は不明。
ちなみに、一般的には『どんな願いでも叶えてくれる力がある』という認識がされています。
(捏造・噂の尾ひれはどんとこい、です)
【役職説明】
☆狼側設定
・智狼
村のどこかにある虹の水晶細工『レーゲンボーデン』を探してやって来た妖精、もしくは何らかの理由で妖精の力を扱える人間。邪魔されないように、守護妖精フェーンを封じ込めています。
『子供部屋の妖精』たちを使役して、悪戯を起こしたり可能。
・囁き狂人
天然なのか特殊能力なのか、妖精の言葉が聞こえる人間です。
☆村側設定
・占い師・霊能者
特殊能力を持つ人間か、それとも村に隠れ住む妖精か。ともかく、異質な『妖精の環』の力を探査・感知可能。
・守護者
守護妖精の最後の意地?とでも言うべき力を押し付けられた人間、もしくは隠れ住む妖精。異質な『妖精の環』の力を弾く事ができるが、自分には使えません。
・村人
突然のどたばたに巻き込まれた人たち。文字通り、村の住人でもよし、余所から来た旅人でもよし。勿論、隠れ住む妖精でもOK。
【吊り・襲撃・墓下関係】
・吊り
バファリン>PL視点≧PC視点
妖精王のお節介。守護妖精を封印したモノを捕らえるための無差別爆撃。
一応、『選ばれし(勝手に巻き込んだ)者の念を辿る』という形のようです。
封印したモノを見つけたなら、優先的に捕らえる、と当人は言っています。一応。
※安易な委任は出来る限り避けましょう
・襲撃
PL視点≧PC視点
自分の目的(『レーゲンボーデン』を手に入れる)妨げになりそうな相手を封じ込めます。
封じ込め先は、都合よく綻んでいた空間の隙間(別名・2村の墓下/待)。
・墓下
妖精王の作った隔離空間。現実の場所と重なっており、衣食住の確保はされています。
いつの間にか、古い空間と繋がっていた様子。
【ランダムイベント】
2日目後半以降に起きる悪戯現象。
夜明け後、サマリー一番上の人が、適当なactに混ぜるようにダイス(1d6)を振って、登場する妖精を決定。このダイス振りはコミットアンカーと同じく、一日ごとの交代となります。
後は、被害にあうなり被害者を助けるなり好きなようにしてください。
ちなみに、大怪我をしたり死者が出るような結果にはなりません。
※引っ張り込むふりとか、かじるふりだけしてさっと逃げる感じです。本来の居場所を遠く離れている事と、妖精王の結界内という事で、さほど大きな力を振るえなくなっている、という事で。
登場予定は、以下。詳細は、まとめサイトからのリンクを参照してください。
1. オウド・ゴギー
2. ネリー・ロングアームズ
3. ジェニー・グリーンティース
4. 生首のトミー
5. ボーンレス
6. シェリー・コート
─プロローグ─
……異質な風が吹きぬけた、と。
彼が気づいたのは、祭りの熱を一頻り散らした後のことだった。
何か、奇妙な干渉がされている、と。
そう、認識したのは、果たして良かったのか、悪かったのか。
ともあれ、村の護り手である守護妖精は、その力を感じる場所──森へと赴いた。
そこで、起きる事など気付きもせずに。
森の中で、彼を待っていたのは異様な気配を帯びた『妖精の環』。
強い違和感を感じるそれに、手を伸ばした次の瞬間、鈍い金色に煌めくその環から、光の渦が迸り──。
守護妖精の力は、不意に途絶え。
その事実はすぐさま、『妖精の森』の妖精王の下へと伝えられる。
息子の危機にじっとしておれぬ、といきり立ったか、それとも妻との些細なケンカを有耶無耶にするためか、理由は定かではないものの。
妖精王は森を離れ、彼の地へと赴く。
──守護妖精が封じられたその夜は、祭り明けにしては珍しく荒れ模様。
その荒れた天気ががけ崩れを引き起こし、村に通じる道を塞いだ、との報せが届いたのは夜明けの直後の事だった。
異質な『妖精の環』、消えた守護妖精、突然のがけ崩れ。
200年間続いた平和は、どうやら、一夜にして崩れ去った……らしかった。
2人目、治癒術師 ミリィ がやってきました。
[村の入り口付近。
集まる人だかりの中に、ある意味場違いな暢気な声が響いた。
声の主は、周囲が自分に向ける視線など気にした様子もなく、自衛団長へと問いを投げている]
それで、けが人は?
……まだ、何も起きていないのですねぇ。良かった良かった。
でも、それだと旅人さんが出られませんし……あ、御師匠様も往診から戻れませんねぇ……困りました。
[口調だけ聞いてると、全然困ってるように聞こえません]
……とりあえず、ボクは診療所にいますので。
何かあったら、連絡してくださいな。
[にこり、笑ってこう言うと、ぺこりとお辞儀を一つ。
スカートの裾をふわりと翻し、診療所へと戻っていく]
それにしても、いきなり崖崩れなんて。
困ってしまうのですよ、ほんとに。
ねぇ、リーリエ。
[肩にとまらせた白い羽の鳥に向けて言うと、鳥はくるる、と鳴いてこくりと頷いた]
3人目、青年 アーベル がやってきました。
んん、そろそろここも出ないとな。
祭りも終わったし、次どこ行こう?
[とある家の一室で、呟き窓の外を眺める青年、一人。]
気の向くまま、風の噂を頼りにかな。
んんん……だけど外が騒がしい。
一体何があったんだろう?
[それでも手元のメモ帳捲り、付けたペンを動かした。]
[暫く無意味に絵を描いて、騒ぎの元を*見るばかり*]
4人目、研究生 エーリッヒ がやってきました。
[祭りの夜が明け、間もない頃。
木の一つに凭れかかりながら、彼は呟いた。
荒れた天気は収まれど、幹はまだ湿り気を帯び、土は柔らかい。
天高く伸びる枝に付いた葉から落ちた滴が、直ぐ傍を過ぎていった。首筋に微か冷たいものを感じて、身震いする。
急激に下がった気温は秋の到来を告げ、涼しいどころか肌寒い]
まさか、崩れるなんてなぁ……
[押えた右腕の袖は破れ、白い生地にはじわりと朱が滲む。
手当てを受けた方がいいのはわかっていたにも関わらず、人が集う気配に、ついつい逃げ出して来てしまった。さながら、悪戯の見つかった子供の如く。天気の悪いときには近付くなと言われていたのだから、ある意味では正解だが]
5人目、物識り ヨハナ がやってきました。
[荒れた一夜明けての第一声は]
おやまァ、コイツは栗拾い日和だねェ。
虫に食われる前に行かなきゃ、ゴギー婆さんに怒られるわなァ。
ほれ、ツィムト。お前も顔洗ってないで付いといで。
[目付きも態度も可愛くない薄茶猫相手の栗算段]
まあ、仕方ない。
祭り明けじゃないと採れないのもあるし。
[――仕方ない。
誰に訊かれたわけでもないのに言い訳を口にして、一人頷いた。
傷を負った手に、尚も確りと握った袋から、じゃらと硬い物のぶつかり合う音。中には石が詰まっている。怪我の代償の成果物。見合うと見るかは、人次第だ]
……ふぅ。
だいぶ、騒がしくなってきましたねぇ。
[崖崩れの報が広まったためか、村は祭のそれとは違う騒々しさに包まれて]
撤去作業とか、けが人が増えないと良いのですけど……。
と、いうか、ほんとにけが人いないのでしょうか?
自衛団さんは、見ていないといってましたけど……。
[家に帰るか、診療所に行くか。
しかし診療所に行けば当然ながら怪我の原因を訊かれる事になる。それは避けたかった。 のだが]
……、荷物忘れた。
[石の袋だけ持って道具を入れたリュックは置き去りだった。
となると、間違いなく騒ぎの源にあるわけで]
…諦めようかな。
[いかんせん、自衛団長の老爺とは相性が悪かった。持ち主が誰かなど容易に知れるだろうから、無駄な抵抗に近いが、身近な問題からは目を逸らしたい。
現実でも騒ぎの方向からは視線を外して、深い緑へと向けた。
まだ目覚め切らぬ森の中に、気配がある]
しかし崖崩れとは団長さんも大変だァね。
か弱い年寄りにゃ手伝えもせんし、後で差し入れでもするかなァ。
[前足で栗の毬を突付いている猫に話しかけると、やる気の無い鳴き声が返った。それを機に腰を伸ばす]
よいしょ、と。
もうこれ以上はあたしゃ無理だよ。
一度帰るかねェ。
[とことこと大通りを歩いていると、後ろから自衛団員が追いかけてきた。
何事か、と振り返ると、崖崩れの現場の近くに置き去りの荷物があったとか。
けが人がいるかも知れないから、治療の準備はしておいてくれ、と言われ]
……あららぁ。
わかりました、それじゃあ、急いで診療所に戻って支度をしますねぇ。
[一応、真剣なのだけど、緊張感がないのは口調のせい……だと思われる]
……それにしても。
[自衛団員と別れ、診療所へと向かいながら小さく呟く]
……やっぱり、かしら、ねぇ。
ねぇ、リーリエ?
[問いに、白い鳥はくるる、と鳴いた。
同意してるのかも知れない。
診療所に帰り着いたなら、天気が荒れる前に往診に行ったきり、戻れそうにない師匠に代わり。
治療の準備に*取り掛かる*]
せめて「さん」は付けろと言ってるじゃろに。
[ぴしりと言い置いて、音の鳴る方へ鋭く目を向ける]
取れたかどうか直に見るがいいさねェ。
あたしゃアンタが隠してる物の方が気にかかるよ。
どうせ怒られるような事しでかしたんだろゥが。
そっちのほうが言い慣れたんだから、仕方ない。
[鋭い言動に、浮かべた笑みはあっさり消えた。
隠す仕草は無意味と知れて、石を左手に受け渡すと、観念して右腕を差し出す。足は逆に、一歩引きかけたが。
落ちて来た石のぶつかった腕には、赤い筋が走っていた。
規模を考えれば、それだけで済んだのも幸運だ]
大した事はないって、腕だけだしさ。
悪運だけはいいらしくって。
仕方ないで何でも済ますんじゃないよ、坊。
まァそんな事より、そっちの方が大事さね。
[逃げようとする仕草に火箸で地を叩き、ずかずかと歩み寄る]
確かに悪運だけはあるさねェ。あたしに見付かるんだからなァ。
……ふゥん。
大した事無いなら、栗が焼きあがる前に診療所に行きな。
団長さんの耳に入る前に娘ッ子に手当てしてもらえばいいさね。
[栗が焼き上がれば告げ口するぞと脅して、左手の袋を見る]
で、それはなんだい?
……ヨハナ婆は当分お迎えが来なそうだ。
むしろ、来ても追い返すな。
[自衛団長から逃れて元機織に見つかったのは悪運が良いのか悪いのか、答えは青年の心の中。微妙な表情が物語ってはいたけれど。
降参、とばかりに肩を竦めた]
ああ、これ? 石だよ、石。
この時期には、魔力が篭ったものが採れるんだ。
細工師も欲しがるから、なるべく早くに採ろうと思って――
わっ、
[鳴き声に退いた拍子、締まりきっていなかった袋の口から、薄い青を帯びた石が一つ零れ落ちる]
……なんだよ、ツィムト。
早く行けってこと?
なァに物騒な事言ってんだい。
あたしゃまだまだこの世に未練があるさねェ。
[団長で脅せば言う事を聞くと知ってる婆は、坊の生意気な言葉も鼻で笑って石に興味を向ける]
あァん、もうそんな時期だったかねェ。
この季節は栗に早生りの林檎と忙しいからさね。
おや、お手柄じゃないかツィムト。
[薄い青を帯びた石にじゃれる猫に声を掛けて、石を拾おうと屈む]
そりゃ、失礼。
ヨハナ婆のがなり声が聞けなくなったら物足りないだろうから、うれしいことだね。
[憎まれ口か本心か、笑みを滲ませながら言う。
皺の刻まれた手の内に収められようとする石を見ても咎める素振りなく]
欲しければあげるのに。
研磨して貰って、首飾りにでもしたら?
[そう言いながら、見るのは老婆ではなくて猫の方ではあったが]
[ふっと、眼差しは緑へと逸らされる]
そうか、林檎も、もうすぐ時期か。
シュトゥルーデルが食べたいな。
[声には少し、ねだるような色が篭められた。
視線を手元に戻すと石を詰めた袋の口を結ぶ。断続的な痛みが一瞬強まって、眉を顰める]
…その前に栗が焼きあがるだろうし、行って来っかな。
はァん、アンタも言うようになったねェ。
どうせならその笑顔で村の娘ッ子でも口説きゃァいいのに。
[噂話が増えるのは婆には何よりの楽しみだと笑い返して、手にした石を前掛けのポケットに突っ込む。エーリッヒの視線を受けて、猫が返せと婆の足元に伸び上がった]
おやまァ気前のいいこった。
はいはい、坊はお前にくれるってよ。首飾りじゃなく首輪にするかねェ。
それじゃァ、あたしゃ栗を焼きに行くさ。
診療所の先生に世話になりたくなきゃ、さっさと隠れて手当てしてもらうんだァよ。
言う事聞くいい子にゃぁ菓子を、悪い子にゃ妖精の悪戯さァ。
[ねだる響きに婆は楽しげに口角を上げた]
そうさね、さっさとお行き。
シュトゥルーデルはさ、林檎が手に入ったらなァ。
話の種は他の奴に求めてくれよ。
町に出たがる娘はいても、森に引っ込みたがる娘は、そうそういないんだ。
[芝居がかった溜息をひとつ落とすと、左の指先に紐を引っ掛ける]
はい、はい。
悪戯も面白そうだけど、今は菓子のほうがいいや。
楽しみにしてる。
[手の代わりに振られた火箸と御機嫌そうな猫の尾を見送った後、濡れた草を踏みしめ、人目を避けつつ向かう先は診療所。自衛団長のお叱りを受けることになるか、内密に済まされるかは、*荷物の行く末次第になりそうだった*]
村の設定が変更されました。
[自宅に戻り、籠を前にどっしり構えてナイフで次々と切り目を入れていく。薪で温めた年代物のオーブンの鉄板に転がし、じっくり焼き上げれば甘い香りが漂い出す]
やれやれ、年寄りにゃ重労働差ね。
だがコイツばかりはやめられんなァ。
[また使う道具を片隅においてオーブンの具合を見ながら茶を淹れる。横一文字に口を開けて焼き上がった栗を一つ、ぱかりと割って味見]
どーせあたしゃ猫舌の熱いの好きさね。
[言いながら焼き栗をオーブンから取り出し、また次を焼きだす。揺り椅子に腰掛けて今度は少し慎重に口に入れた]
ぁっちち!
ふゥふ、んまいねェ。これだから焼き栗は堪んないよ。
お前にゃこの味がわかんないかのが残念だなァ。
[膝に上がってポケットに鼻先を突っ込む猫を片手で撫でて、また一つ。甘い焼き栗に匂いにも猫は退屈そうに欠伸をするばかり*]
―エーリッヒの家―
[窓の外を眺めて、暫くしたら立ち上がる。]
ん、ぼーっとしてても仕方ないね。
エーリ君は戻って来ないし、騒がしいのも気になるし、行ってみようかな。
[メモ帳持って、ペンを挿す。]
[軽く伸びをして、家の外、騒ぎの方へと向かった。]
そろそろ発とうと思ってたのに。
うん、ほら、もう一週間になるでしょ。エーリ君にも悪いしさ。お金なんて持ってないのに、泊めてもらっちゃってるわけだから、これでもちょっとは申し訳ないって思ってるんだよ。
[野次馬おばさんと話をしながら、うんうんと頷く。]
そうそう、エーリ君だって女の子を連れ込みたいかもしれないし。
えー、いくら研究馬鹿って言ったって、彼女の一人や二人、いるんじゃないのかなー? 女物の備品があるか見てきてみようか?
うん、まあ二人いたら浮気だね。
……ええ? いないよ。
ほら、根無し草だからね。前、誰かに一緒に行きたいって言われたことはあるけど、目的地もないって言ったら逃げられちゃったんだからね。
不義理とか耳に痛いよ、おばさん。
[どうやら恋人の話に移った様子。]
実際さ、悪いと思うんだ。毎日毎日男の手料理とか、嬉しくないんじゃないかな。
ええ? 食べたい?
うーん、構わないけど……食材もらえる?
[本日の食材ゲット。]
[ほとんど毎日こんな感じで、食費は乗り切っている。]
じゃあ、作ったら持ってくよ。
わかった、シチューね。了解。
――…でも早く補修されてほしいな。
え? ううん、ここは居心地が良いからさ。エーリ君もおばちゃんも優しいし。ただ、旅が生き甲斐だから、離れるのが辛くなっちゃうのは嫌なんだ。
それじゃ、今日の夕食は作らないでいいよ。持っていくからね。あとでエーリ君の家に、食材置いといて。
[ひらひら、手を振った彼は、現場を離れる。]
[大きく伸びをして、ため息、*一つ*]
やっぱり前の一度だけにしておけば良かったかな。余所者だって忘れたくなるじゃないか。
ほゥれ、栗が冷めない内に届けに行こうかなァ。
ツィムトや、お前も来るんだよ。
[一人と一匹が満腹になった所で、焼き栗を籠一杯に詰めて年代物の家を出る。薄茶の猫は丸々とした腹を揺すり、億劫気に後を追う]
しっかし、祭りの後でよかったねェ。
最中に来てたら実行委員さんらが大泣きだったよ、こりゃ。
今は自然の実りで困りゃしないけど、二次災害が出ない程度に復旧頑張ってもらわんといかんなァ。
……団長さんのケツひっぱたいとくかねェ。
―診療所―
[広場経由で横道に入り、しばらく進むと診療所。
小さな門を潜ると、踊る箒がお出迎え]
ご苦労様ですよぉ、ブルーメ。
でも、あんまり目立たないように、ね?
[もの凄くナチュラルに声をかけてから、診療所の中へと入り。
薬品棚やらなにやらをチェックしていく]
あんまり忙しくないといいんですけどぉ。
お散歩するのに、いい季節ですし。
[暢気に言いつつ、用意するのは傷薬に包帯、当て布に打ち身の軟膏]
さて、とりあえず、これで足りるかしら?
[零れた独り言の答えは、本日最初の患者次第?]
崖崩れだってねェ、お疲れさんだよ。
コイツは皆への差し入れの焼き栗さね。
[手近に居た団員に籠を渡して肩をごきりと回し、発破をかけた]
雪が降る前にゃァ、片付けてもらわんと困るからねェ。
しっかり食ってしっかり働きなァ。
ところで団長さんはまだ現場にいるのかい?
あァん、拾い物を届けに行ったってェ。
そりゃまた忙しいんだか暇なんだか。
張り切り爺さんが腰いわす前に、若いお前等が頑張るんだよ。
それじゃァ、またさね。
[忘れ物の届け先をおぼろげに察して心の中で十字を切り、猫を連れて現場に寄り道する]
[森を抜けると、野次馬行き交う道は避けて子供の好みそうな脇道を通る。幸い人と遭遇することはなかったが、滲む血は幾分範囲を広めていた]
……捨てないと駄目かねぇ。
[心配は怪我よりも服のこと。
進むうちに目当ての建物が見えて来る]
ミリィ、居るかー?
[主は往診中の筈と記憶を辿りつつ、周囲を窺ってから入り口に寄り、見習い術師の名を呼んだ。
栗の焼き上がりに間に合っても、待ち受ける運命は変わらないとは、まだ知らず]
─診療所─
[庭で踊りつつ、落ち葉を集める箒は人の気配にぴたり、ととまり。
それが誰かを認識すると、また忙しなく庭掃除。
ちなみにこの箒、全く知らぬものや付き合いの浅いもの相手には普通の箒で通している]
はぁい、おりますよー。
[一方、箒の主は呼びかける声に手にしたカップをかちり、と置いて立ち上がり、扉を開けて、一言]
……御師匠様がいたら、お説教ものですねぇ。
[にっこり笑って言い切った後、診療所の中へと招き入れる。
窓辺の止まり木にいた白い鳥が、挨拶するように羽ばたいた]
骨は、大丈夫なようですけれど。
……これ、タイミングが良かったら、もっと大変だったかもしれませんよぉ?
無茶は、ほどほどにしないとです。
[一応、注意しているのだがイマイチそうは聞こえないのは、間延びした口調のせいだろう、多分。
のんびりとした物言いとは対照的に、消毒などの手当ての手つきはきびきびとしていたりする]
裂傷と、軽い打撲、ですねぇ。
少し熱を持ってますから、なるべく安静に、ですよぉ。
[丁寧に包帯を巻き終え、にっこり笑いつつ傷の上をちょい、とつつく。
手当てのおまけは、治癒を促進する簡単なまじない。
治癒術を使わないのは、今後の撤去作業に備えての温存モードだからだったりする]
……ところで、すぐに帰ります?
ボクとしては、気を鎮めるために、香草茶を一杯飲んでいくのをお勧めしたいのですけれど。
[道具を片付けつつ、にこりと笑って問いかける。
勧める理由は言わぬまま、乞われたなら香草茶を用意して]
……それにしても、これからしばらく不便ですねぇ。
[呟く言葉は、やっぱりどこか暢気で人事っぽい響きを帯びていた]
……精が出るなー。
[こちらとしても慣れたもので、独りでに掃除をする箒を見やり、しみじみと呟いた。
扉を開けるなり紡がれた一言に笑みは固まり、内密に、と頼む様子は年下相手には情けない。
招き入れられるまま治療されるまま、声色とは裏腹な動作に毎度の事ながら感心した息が漏れた]
わかった、サンキュ。
いつも悪いな、また薬草いいの見つかったら報せるよ。
別に急ぐ用事はないし、茶自体は好きだからいいけど?
[理由は解せず、しかし承諾の頷きを返す]
暫くかかるんかね、復旧には。
足留め食らう奴も多いんだろうな。
[家にも客人が来ているのに、気にした風もない。
元々、宛てがないなら好きに使え、というだけのものではあったが]
結構、観光客さんもいらっしゃいますしねぇ。
早めに、通れるようになるといいんですけど。
御師匠様が戻れないと、色々と大変ですし。
[まだまだ、留守を完全に預かるには修行不足の身だけに、不安はあるらしい]
それにしても、お祭りの後に天気が荒れたり、崖崩れが起きたり。
今年は、珍しい事もあるものですねぇ?
向こうも心配だろうな。
[言葉に釣られるように、視線は外に向いた。今は鎮まっているが、灰を残した空は、若干、安定を欠いているように思える]
……普通、祭の後って、良い事があるもんなのに。
不況を買うようなことでもあったのかね。
それにしては、石はいつも通りの気もしたが。
[左の人差し指を持ち手に引っかけ、残る指で支えてカップを持ち上げる。吐息は仄かな白に隠れた]
患者さん第一ですからねぇ。
[多分、弟子も心配しているだろうけれど、弟子にその自覚はないらしい]
お祭りも、トラブルなく終わりましたものねぇ。
妖精さんにかかわりがないなら、単なる偶然?
[緩く、首を傾げて呟くように言う。
仕種にあわせて、編んだ紅の髪がゆらりと揺れた]
……どちらにしても、あんまり忙しないのはよくないのですよ。
秋は、のんびりお散歩するのによい季節なのですから。
偶然としても、厭なタイミング。
[心配の種が他にもあるのは察せられたが、口にはしない。他人の事は言えない自覚はあった。
視界の片隅で揺れる紅に眼を動かす]
一気に冷え込んだから、このままだと秋を忘れて、冬に行きそうだ。
散歩どころじゃないかもな?
安全を願ったり、感謝したりした後に、ですものねぇ。
[厭なタイミング、という言葉にこくり、と一つ頷く。
止まり木の白い鳥も、同意するようにくるると鳴いた]
秋を忘れるのはダメですよぉ。
散歩も楽しいし、美味しいものも多いんですからっ!
[言葉の後半は、妙に力が入った]
まあ、何かあったと決まったわけでもないけど……
そういうのって、魔力じゃわからないもん?
[カップに口をつけ、少し上目加減にやけに力の篭った様子を見る。慣れていなかったら、微笑ましさに、つい笑ってしまいそうだった]
だよな。
林檎採れたら、ヨハナ婆もシュトゥルーデル作ってくれるって言ってたし、そんな秋を忘れるなんて、勿体ない。
ううん……ボクは、力の使い方自体、まだまだ勉強中ですしねぇ。
[魔力、という言葉に返すのは、少し困ったような、曖昧な言葉。
ほんの一瞬眉間に皺が寄るものの]
ヨハナの御婆様が?
わぁ、それは絶対に、秋を忘れられたら困りますっ!
[お菓子の話題に、すぐさま違う方向で真剣になっていたりする]
[様子を見て取り、先の台詞には言ってみただけ、と軽く答え、香り立つ茶を飲む。喉を通ってゆく液体が、冷えた身体を温める]
まあ、何かしら原因があるならともかく、今のうちから不安になってても仕方ないし。秋を忘れないように心がけつつ、のんびり行くとしようかな。
森を見回れば、何かわかるかも、だし。
[幾度かに分けて香草茶を飲み干して、カップを置いた]
[軽い答えに、ほんの一瞬むくれたような表情を見せるものの、それはそれ、と置いておく事にしたようで]
ですねぇ、ほんとに単なる偶然かも知れないですし。
秋はのんびりとするのによい季節なのですから、わざわざ忙しなくする事もないですねぇ。
[と言いつつ、実は夏以外はいつも「のんびり」なのだが。
暑いのだけは、苦手らしい]
見回りもよいですけど、傷が塞がるまでは、無理はダメですよぉ?
……治療の腕は確かなんだし、拗ねる事ないと思うけどなぁ。
[対応は多少なりとも機嫌を損ねてしまったようで、苦笑した]
はい、肝に銘じておきます、と。
香草茶、ごちそうさま。
長居してもなんだし、そろそろ失礼するよ。
また……
まあ、今度は、単なるお茶会ででも。
[カップに代わり卓上に置いていた袋を取り立ち上がると、包帯の巻かれた右手を挙げて、苦笑混じりに言う。赤く染まった袖は隠しようはなかったが、来た時に比べれば大分マシだった。
止まり木で羽を休める白の鳥や、働き者の箒にも同じように挨拶をして、診療所の門を潜る。
体内に残る仄かな温もりに安堵を覚えていられるのも、*今のうち*]
別に、拗ねている訳じゃあないのですよ。
[じゃあなんだ、と言われても答えようはないのだが、一応こう返して]
はぁい、今度は、怪我抜きで、ですねぇ。
お大事に…………色々と。
[付け加えた言葉は、多分届かないが。
挨拶された鳥と箒はそれぞれが挨拶を返して、青年を見送った]
さぁて、と。
今の所は、何もないようですし……少し、外を歩きましょうか、リーリエ?
[問いかけに、白い鳥はばささ、と羽ばたきくるる、と鳴いた]
だねェ、林檎の森番さんはいい男だったよ。
まったく神様もいいところから連れてっちま――っえっくしょい!
…なァんか冷えたのかねェ、急にくしゃみが出るなんざ。
また面白い話が入ったら教えとくれよゥ。
[若者の恋話から村のいい男談義(故人)に花を咲かせていたら、大きなくしゃみが一つ。診療所での噂が原因と知らず、長すぎた寄り道に終止符を打って歩き出す。
数歩進んだ所で付いてこない猫に文句を投げた]
ほれ、ツィムト。寝てないで行くよ。
―雑貨屋―
んん、そのペン。そうそう、それかっこいいなって。
……お金かせいできまーす。
[そこらへんで出会った雑貨屋の主人にあしらわれ、しょんぼり。]
[対価が無いのだ、仕方ない。]
んん、誰に買ってもらおう。
[外に出て、あたりを見回す。]
[行き交う人と目が合うと、にっこりと笑ったりもした。]
[白の尾羽と紅の髪。
対照的な二色を揺らしてのんびりと通りを歩く。
通りはまあ、それなりに騒々しい訳だが、あまり危機感っぽいものがないのは、村の特色……かも知れない]
やっぱり、旅人さんも足止めされているみたいですねぇ。
お宿の人たちも大変です。
[祭りが終われば、立ち寄る旅人は湯治客程度。
本来なら一段落、というタイミングでの崖崩れは、色々と予想外を引き起こしているらしい]
[体が冷えたなら無理は禁物と、えっちらおっちら道を行く。
村の中心の広場まで歩き、辺りの店を見回した]
そういや、坊に頼まれてたっけねェ。
バターをちょいと買い足しとかないと。
…お前は現金だねェ、ツィムト。誰に似たんだか。
やっぱエーリ君かな。
[一応、たかる相手は考えている。]
……ま、いいや。
おじさん、それちゃんと取っておいてね。
ちゃんとお金かせいでくるから。
[雑貨屋の主人に願うと、雑踏の中へと。]
[同じ様な立場の旅人、たくさん。]
んん、困ったもんだよね、本当に。
そっちも気をつけてね。
[先立って歩き出す薄茶色を追って歩いていくと、雑貨屋の近くに見覚えのある青い髪が見えた。誰かと話している様子に、話が途切れたあたりで声を掛ける]
ちょィと、坊ん所の宿借りさんや。
暇なら一仕事せんかね?
うん、まあまた後でね
[旅人Aに、手をひらひら]
……って、うわ、びっくりした。
ヨハナおばあちゃん、買い物? うん、手伝いくらいならいくらでもするよ。
でも宿借りじゃなくて、アーベルだよ。
[とことこと、雑踏すり抜け広場方面へと。
当人の気にしている小柄さは、こういう時にはわりと役に立つ]
そういえば、御師匠様がいつ戻られるかわからないから、加減して買い物しないといけないんですねぇ……。
[ふと思い出したように呟いた時、肩の上の鳥がばさり、と一つ羽ばたいた]
リーリエ?
[突然の事にきょと、と白を見、その視線の先を辿る。
そこに見えたのは、薄茶色の猫]
うーん。
やっぱり、冷えたかなー……
[老婆の噂をした主が、別の人物に噂されていた、なんてことは、それこそ神でもなければ預かり知らぬ事。眉を寄せつつ、鼻の下を擦る。
風邪でも引いたのか、と何処からともなく、来る問いかけ]
どうだろう、朝早くから外いたしなぁ。
そんなやわじゃないつもりだけど、
……。
[何処から?
はたと気付いて、油の切れた機械人形の如くぎこちなく振り返る]
あァそうだったねェ、アーベルアーベルと。
そうさな、買い物は合ってるが頼みたいのは荷物持ちじゃァないよ。林檎を森から採ってきて欲しいのさ。
アンタんとこの宿主にシュトゥルーデルをねだられてねェ。
林檎の礼は坊がするだろうさ。
もちろんアンタの分も焼き立てを渡すが、それでいいかい?
――本日はお日柄も好く。
[口から出たのは訳の分からない台詞。
寡黙な祖父に代わり青年の叱り役だった自衛団長の老爺は、友が逝ってからは尚の事、彼の動向には目を光らせていた。一種、過保護な程に。
笑みの裏に隠された恐怖の源は、それはもう、よく知っている]
エーリ君に?
そうなんだ。好きなんだ。聞いてなかったや。好きなら好きって言ったらいいのにね。
森から林檎だけでいいんだね?
良いよ、ヨハナおばあちゃん。
とってくるね。
焼きたてがもらえるなら、頑張っておいしそうなのを取ってくるよ。
エーリ君には林檎のお礼に、さっきのペンを買ってもらうことにするから、問題ないと思う。
[とりあえず、鳥が見ていたのは猫だったようだが。
こちらの視界には、それ以外の姿も入っている訳で]
あら、ヨハナ御婆様なのです。
[猫の舌なめずりは、気にしていないらしく、暢気にそちらに歩み寄り]
こんにちわ、なのです。
ヨハナ御婆様、お買い物ですかぁ?
[猫は明らかに『美味しそう』という目で白い鳥を見た。瞳孔が開いて前足もわきわきと微妙に力と爪を出し入れしている。
いつもなら一応止めに入る飼い主の婆は話に夢中だ。
小柄な少女の肩の高さなら届く、と狙いを定めて尻尾が揺れる]
[猫の様子に、白の鳥、ちょっと慌てたようにばささ、と羽ばたく。
何せ、相方ときたら猫の様子には頓着していない。
さすがに、危機感を感じているようで、長い白の尾羽が揺れた。
……飛んで逃げる、という思考には、今の所至っていないようだ]
なんてったって林檎の森番、の坊だからねェ。
[苗字をもじって林檎好きを仄めかし、勝手に決められていく報酬に笑う。婆にとっては亡きエーリッヒの祖父が森番であり、後を継いだ青年は未だに坊扱い]
あァ、下の枝は採るんじゃないよ。子供達のオヤツだからねェ。
梯子も籠も貸すから、高めの所から硬く実の締まったのを――ん、診療所の娘ッ子じゃないか。
そうさね、買い物と頼みごとさ。
[揺れる長い尾羽に猫の姿勢が低くなる。
次の瞬間、爪を出した猫がお下げの横の小鳥に飛びかかった。
飛んで逃げられるとか、外した場合どうなるかは猫も考えてない]
……あー。
[納得した様子で、手を、ぽん。]
[それから近付いてきたミリィを見て、少し首を捻った。]
んんん?
うん、頼まれごとだね。
[名前を思い出せずに、なかったことにした。]
はしごとか、いらないよ。
籠はきっと、エーリ君が持ってる。
ちゃんと、高い場所だね。わかった。
[猫と鳥との攻防に、青い目が向く。]
[きょとんとした。]
……なかよし?
じゃないみたいだね。
ええと、診療所の人だ。
前に、会っていたっけ? さすがに前すぎるかな。
あ、でもとりあえず早くしないと、ずっと待っててくれないかもだから、いってくるよ。
ちゃんと林檎とってくるから安心してね。
おや、娘ッ子と宿…アーベルはまだ知り合いじゃなかったっけねェ。坊がてっきり紹介してると思ったんだが。
[首を捻る様子に助け舟を出すが、名前を言ってないので意味は無い。薬草の売買的な意味での言葉がどう受け止められるかは知らないが、とりあえず自己紹介すればと目で促す]
そうかい、そりゃ身軽でいいねェ。
じゃが天辺は鳥達の分だから残してやるんだよ。
お目当てのペンの値段がどれ程かは知らないが文句言われないだけの量を期待しとくさね。
お買い物と……頼み事、ですかぁ。
[きょと、と紅の瞳が瞬く。
視線は自然、老婆と語らう青の髪の青年へ]
はい、診療所の人ですよ?
前に……ですかぁ?
[問われた言葉に、きょとり、と瞬く。
さすがにというか、とっさには思い出せないらしい]
[薄茶色の動きに、白の動きがぴたり、と止まった。
ぴぃぃぃぃ、という甲高い声と共に、白の翼が羽ばたき]
……ひゃうっ!?
[舞い上がる白、跳んで来る薄茶色。
その入れ代わりに、思わず裏返った声を上げて座り込んだ]
エーリ君はそんなに、ええと、生真面目じゃないよ。
[ちょっと違った気がしたが、良いことにした。]
わかった。
鳥が食べるためだね。
[それからミリィににこりと笑って]
気のせいかもしれないし、ちゃんと覚えてるわけじゃないから。
それじゃあ、いってきます。
ひゅんじー、ほーは、いはいです。
[その頃、話題の当人は頬を引っ張られていた。
ようやっと解放されて赤くなった頬を押さえる]
そういうのは、女の子がやると可愛いと思うんだ……
拳骨よりマシだけど。ギュンター爺の鉄拳痛すぎる。
え? いや、ないない。
じっちゃいなくなったからって女の子連れ込む程がっついてない、ない。
あの、青いの? あれは連れ込んだわけじゃなくて宿貸しただけ。
……なんの心配してるんだ。
[恐らくは後継者の心配ではあるのだろうけど、思わず半眼になる]
仲良しになりたきゃ、それ相応の――…ツィムト!
[微妙な誤解は青い目の向いた方を追って理解に達した。
飼い主の叱咤に空中で明らかに『チッ』みたいな目をして猫が身を翻す。
だが、それより早く飛び立った鳥と座り込んだ娘に、後足の爪がお下げを掠めた]
…ありゃまぁ。猫も坊も仕様が無いねェ。
それじゃァよろしく頼んだよ。
[森へ向かうアーベルに手を振り、やれやれと肩を竦めて嘆息]
そりゃ、じっちゃには及ばないけどさ。
育てられた恩くらいは、きちんと返すよ。
[押しつけられたリュックを受け取り、跡取りの未熟さを心配する老爺に応じる。青年の物言いにまだ言い足りないことはあったようだが、仕事に戻ると去っていく後姿を見送った]
[来たときと同じよう、そこらの人に挨拶しながら]
―森近辺―
[近付いてきた森に、目を細めた。]
[おじいさんがどこかへ行く。頭を下げた。]
[まさか噂されていたなんて気付くわけもなく、その先に金の頭を見つける。]
あ、エーリ君、丁度良いところにいたね。
籠貸して?
林檎とってくる。
[森へ向かう青年に返事をする余裕は、当然の如くなく]
……はぅぅ……猫さん、痛いですってばぁ。
[じたばたする薄茶色への不平申し立ての方が重要事項らしい。
白の鳥はちょっと高い所を落ち着きなく旋回しつつ、ぴぃぴぃ、と鳴いている]
丁度良いところにいたのか、俺は。
[先の話題に出たばかりの青い髪を見下ろす。体重の割には背丈のある青年は、ひょろりとした印象を他者に与える]
林檎? ……なんで、また。
籠は小屋にあるけど。
[少し身体を傾けるのは、右腕を隠すため]
うん、丁度良い。探さなくて良かったし。
林檎は、エーリ君がヨハナおばあちゃんに頼んだんだろう?
材料は取ってくることになったんだ。
その代わり、エーリ君は、ペン買って頂戴。
[右腕をあえて隠すような動きに、首を傾げた。]
エーリ君、何かあったの?
こら、そんなに暴れるんじゃないよ。
ツィムト(シナモン)たっぷりのシュトゥルーデルにされたいかい?
[ぴたりと動きの止まった猫を片手でむんずと掴み、反対の手で絡んだ爪を解く]
すまなかったねェ、ちゃんと餌はやってるんじゃが。
お前さんにもお裾分けするから勘弁しとくれ。
そりゃ、頼みはしたけど。
ペンくらい、家にあるのに。
[なんでもない、と左手を振ろうにも、袋とリュックを手にしていては出来ず、右手は動かせない]
……説教しなかったら素直に言う。
[大分、懲り懲りらしい]
[爪が解かれると、ほっと一息。
白の鳥も、猫が離れたのを見計らって、ふわりと定位置に戻ってきた]
はあ……びっくりしたのです。
猫さんは、大丈夫ですかぁ?
[擦り寄る鳥を撫でてやりつつ、問いかけて。
お裾分け、という言葉に、目がきらきらしたのは、傍目にもわかる。きっとはっきりわかる]
ほんとですかぁっ!?
[声のトーンもきっちり弾んでいた。
自分でも料理や菓子作りはするけれど、やはり、年季の違いは大きいというのはある訳で]
ダメ、あれがいい。
綺麗なね、石がついてるんだ。
……説教されるようなことをしたエーリ君が悪いと思うよ。
されたくないなら、しないから、何やったの? 手、出して?
なんだ、その拘り。
うちは貧乏なんだから余分なお金はありません。
それなら自分で採る。
[あまり現金の遣り取りはしないため、それは事実ではあるのだが、駄々っ子に言い聞かせる親のような態があった]
……研究のためには仕方ないのに。
ちょっと怪我しただけだ、手当ては済ませたから平気。
なァに、どっこもぶつけてやしないんだ。大丈夫さね。
[鳥を撫でる仕草を見て、皺の寄った手も猫を撫でる。頭を包むようにグリグリやるのは、お仕置きだから仕方ない]
嘘なんざ言いやしないよ。
さすがに今日作れってのは無理だがねェ。
それじゃァ、あたしゃ買い物の続きに戻るさね。
先生が居ないんだから戸締りにゃァ気をつけるんだよ。
[どうも頼りなく見える若い娘へ一応の忠告をして、猫を片手に歩き出した*]
そんなに高くないよ、エーリ君。
ダメ、だめだめ。
取るように頼まれたの、おれだから。
おれがもらえなくなっちゃうし。
[小屋へ向かう後をついてゆく。]
仕方ないからって、怪我したらダメだよ。
みんな心配するよ。
……本当に手当てしたの? したならなんで隠してるの?
[猫は大丈夫、との言葉にほっとしたよに息を吐き]
あ、はい、わかってます、ちゃんと待つのですっ!
[にこにこしながらこくこくこく、と頷いた。
それから、はた、と周囲の視線に気付いて立ち上がり]
……戸締り。
御師匠様がいなくても、大丈夫だと思うのですけど……。
[最後に向けられた言葉に、小さく呟く。
その根拠は箒のブルーメなのだが、それ以前に色々と自覚が欠けているのかも知れない]
さぁて、と。
ボクたちも行きましょうか、リーリエ?
[ともあれ、ぱたぱたと土埃を払い落とした後、*のんびりと歩き出し*]
[気付くのは、遅れた。
触れた瞬間に動きは止まり、赤い染みの残る袖と、破れた隙間から覗く包帯は容易に見て取れる]
あー、ったく、したって。本当に。
[元々は隠そうとしたのが悪い、と理解はしているが。嘆息]
……いたそう。
[じーっと、その包帯を眺めて、ぽつり。]
ちゃんと、全部治してもらったんじゃないの?
そんなに血がいっぱいで。
じゃあ、エーリ君。
治してあげるから、あのペン買って。
そう簡単には治らないものだから、仕方ない。
[呟くさまに言いやって、再び歩み出す。
申し出には、一度、緑の瞳を瞬かせてアーベルを見たものの]
……お断り。
[きっぱり言い切った。
滴を零す草を踏みしめて歩み小屋まで辿り着くと、右手を些か乱雑に動かして扉を開き、中へと入る]
なおるのに。
なおせるのに。
[中に入るので追いかけて]
エーリ君の意地悪。
でも怪我は治す。それは絶対。
あ、診療所の人には内緒だよ。面倒だから。
それで、もしお礼がしたくなったら、買って?
お前が林檎採りに行くのは別に構わないし、ペン買うのも考えないことはないけど、それはお断り。
[互いの主張はちっとも噛み合わない]
籠はあっちの棚。
俺は寝なおします。
ということで、お疲れ様。
[一方的に会話を打ち切って、奥へと引っ込んだ。
荷物を片した後は着替えもせずに寝台に潜り込み、何を言っても*狸寝入り*]
何でいやな――
ああ、もう。エーリ君の馬鹿。
[籠のありかをちゃんと見てから、メモ帳を取り出して、ペンを取る。]
[くるり、一つ円]
[それから少しの間ペンを動かして、狸寝入り中のエーリッヒのそばへ。]
痛いのが好きとか、マゾなんじゃないの?
[反応しても、止めてやらない、なんて。]
おれが痛そうだからいやなの。
そういうわけで。
[メモ帳を千切って、握りつぶす。]
[呟く言葉は、聞きなれない言語。]
[妖精の勉強をしている彼なら、それが妖精へと語りかける言葉だと理解したかもしれないけれど。]
―― 。
[ふわりと温かい光が、紙を握った手から、エーリッヒの手の怪我へと移り、癒してゆく。]
ばーか。
林檎取ってくるけど、ヨハナおばあちゃんには、エーリ君の要らないって言っておくね。
あと村の人が食材持ってくるから、おいといてね。シチュー作るから。
で、これもあげる。
[くっちゃになったメモ帳の中に、文字がなんにもないなんて、言わずに放ってさっさと籠を持って小屋を出た。]
[エーリッヒが何か言ってたとしても、そんなのは知ったことじゃない**]
バターはそんなもんだねェ。あといつものミルクもなァ。
それじゃァ、後で届けに来とくれ。
なァに留守でもいつもの窓なら開いてるさね。
[バターとミルクの宅配を頼み、クリームのお零れに与った御満悦の猫を一瞥。妖精の為に夜、皿に一杯のミルクを置く窓辺は常に鍵が開けっ放しなのは知る人は知っている]
…くく、あたしゃ妖精でも猫でもいいんだよゥ。文句あるならとっくにツィムトの髭はちょん切られてるだろうしねェ。
子供の頃からの習慣なんだ。こんな村だし死ぬまで続けるさね。
[どこぞで妖精の魔法が使われたなんて知らないが、皿のミルクの行方話に笑って猫を伴い店を出る。ぴんと立った猫の尻尾が店の主人に振られ、扉の間をするりと抜けた*]
[皺の寄った紙が枕元に落ちる。
気配が遠ざかってから、薄らと目を開いた。身を起こして腕の包帯を解くと、皮を割く痛みが僅かに走る]
……力の使い方くらいきちんと学べと。
[妖精は気まぐれだ。
先に受けたまじないと、結果として重ねられた魔法は、若干ながら反発を起こす。
説明を怠った自分の所為でもあったし、厭ったのはそれだけの理由でもないが。無理に止めなかったのは、相手も自分も子供っぽかったからだ]
まあ……、仕方ないか。
寝よ。
[癒しのために活性化させられた身体が熱を持つのが分かる。置き去りの紙は卓上に乗せて、一応包帯を巻き直し、今度は着替えをしてから布団に潜る。
人が来れば起きはするつもりだが、今は一時、*微睡みに浸ることにした*]
―森・林檎の木―
エーリ君の馬ー鹿。
嫌ならいやで怪我しないようにすればいいのに、出来ないんだから悪いんだ。
しかたないない。
[林檎の木を見上げ、んんっと唸った。]
何個取っていこう。
多めに取ってけばいいかな。たくさん食べたいし。
……ごめんね。
[樹に触れて、またメモ帳を取り出す。]
[やがて一枚、メモの切れ端と引き換えに、籠の中は林檎がたくさん。]
[他に違うのは、髪に隠れた耳にあったはずの、二つのピアスがなくなっていること**]
6人目、職人見習い ユリアン がやってきました。
―通り―
[祭りは終わり、人もまばらとなった村の一角。
綺羅綺羅と澄んだ音を立てる硝子の飾り。
売れ残りのその音を聞きながら、店の前、目を閉じて佇む。
その口から微かに零れる旋律は、他の耳に届くか否か。
尤も彼自身、他人に聴かせる気はなかったが]
物識り ヨハナが村を出て行きました。
6人目、噂好き ヨハナ がやってきました。
[ころん、と何かの転がる音がして目が覚めた]
なんじゃ…まァたお前かツィムト。
後で首輪にしてやると言ったのに、困ったヤツさね。
[前掛けのポケットから石を引っ張り出した猫に文句を垂れて揺り椅子から腰を上げた。ぎしりぎしりと揺り椅子と腰が鳴る]
おゥいてて…いやはや年は取りたく無いもんだねェ。
寒くなってくると途端に体のあちこちに来るよ。
さて、錆付く前に動き出しとくかね。
よしよし、バターもミルクも届いてるね。
だがそいつは明日にして、鍋と砂糖と香辛料と……
[慣れた手際で食料庫から出し入れし、甘い匂いの染み付いた鍋をどんと置いた所で腰を伸ばす]
さァて後は林檎が届いてからだねェ。
…しばらくはコイツにかかりっきりになるし、先にお前の用事を済ませとくさね。ほれ、おいで。
―通り―
[外の風に首を竦めて通りを歩く。耳聡く捉えた音に青い目を向けると目的の人物は店の前に佇んでいた]
あァ、いたいた、ユリアン。
お前さんに頼み事だよ。
この石をツィムトの首輪にして欲しいんだがねェ、どうだい?
[薄茶色の猫はなにやら不満げに一鳴きしたが、婆は構わず問いかけた*]
村の設定が変更されました。
7人目、少年 ティル がやってきました。
―― 森の奥・妖精の輪のすぐ近く ――
「くふ、くふふふ」
[サンザシの枝の下に丸まって、奇妙な笑い声をたてているこどもが一人]
「もう食べられないにゃー」
[お約束な寝言を言いつつ、ごろごろころん、ガツン!]
ふみゃあっ!!
[木の根に頭をぶつけた途端、ぴょこぴょこと頭から飛び出したのは猫の耳]
いたい…ああっ!耳、みみーーっ!!
[頭を押さえた拍子にふにゃりと手に触れた感触に、あわててぺたぺた猫耳を押さえる]
だ、だれも見てなかった、にゃ?
[ようやく耳を落ち着かせて、麦わら色の髪の中へと隠しこんで、ちょっとだけ不安そうにきょろきょろり]
[どうやら、誰も見ていないようだと(本当に誰もいなかったかはともかく)安心して、こどもは、ぴょこんと立ち上がる]
ふむふむ、それにしても、だにゃ。
[くるりと妖精の輪の回りを一周]
─通り─
[とことこと、マイペースで通りを歩いていく。
すれ違う人と、たまに立ち止まって言葉を交わして]
はぁい、御師匠様は、昨夜にお出かけになったきりですよぉ。
……え?
ボクは、大丈夫ですけど……?
[大抵の人(主に親世代の人たち)と、こんな会話をしていたり。
よく言えば純真、悪く言えば天然の見習い治癒術師は、色々と心配されているらしい]
……皆さん、そんなにけが人や病人が出るのが心配なのかしら?
[そして、当人はわかっていない]
[皺がれた手が前掛けから取り出すのは、薄い青を帯びた石。魔力を帯びた石は細工師なら価値のあるなしはわかるだろう]
硝子とはちィと違うが磨くならお手のもんだろゥ?
ツィムトが煩いんで、ぴかぴかにしてやっとくれさね。
[薄茶色の猫はユリアンの足元をぐるぐると回り、目付き悪く見上げている]
―通り―
[近寄る人の気配に気付いて歌は止まり、目を開けた。
老女を見留め、小さく頭を下げ。
目を細めて、石と猫を交互に見る。
少し待て、と手で示し、一度店の中へ引っ込んだ]
磨くだけなら、朝までには。
[戻って来て、言葉少なにそう告げた。
足許に纏わりつく猫をちらと見たが]
…で。
[今度は代金の話らしく、指を2本立てて見せた]
……う〜ん。
[気をつけなさいね、とか。
戸締りは忘れずに、とか。
先生が戻られるまで実家にいたら、とか。
そんな話がされるのは何故なのか]
……まぁ、ほとんどの人はブルーメの事は知らないから、仕方ないのかもですねぇ。
[知ってる相手からも、心配されている可能性は高そうだが]
でも、大丈夫なのに……ねぇ、リーリエ?
[素の問いかけに、鳥はつい、と目をそらした]
朝までにかね、そりゃぁいい。よろしくお願いするよ。
[無口なのは知ってるので機嫌を損なう事もなく頷く。だが値段交渉になると目つきが変わった。指を一本立てて振る]
…うゥん、猫相手にソイツはちィと高くつくねェ。
コイツと焼き立てのシュトゥルーデルでどうだい?
[1本の指に眉を寄せる。
すぐには首を縦に振らなかった。
が、シュトゥルーデルと言われ、考える素振りを見せ。
暫し沈黙。
やがて、仕方ないと言うかのように肩を竦めた]
よォし、交渉成立さね!
[にんまり笑って竦められた見習いの肩を叩く。気が変わらない内にと石を渡しながら]
焼くのは明日のつもりだから、引き取る時に引き換えようかねェ。
さすがに朝一にゃ間に合わないし、ついでに首輪に加工しといてくれても構わないよ。
あァ心配しなくても首輪分はちゃァんと色乗せするさ。
[肩が少し痛かったらしく、一瞬眉を顰めた。
受け取った石を透かすように見。
言われたことには一つ、二つ頷く。
上乗せの件については気付いていたのか、分かっていて指摘しなかったのかは定かでない。
ついでに首回りでも目測しようと思ったか、屈んで猫を見た]
うんうん、素直なもんさねェ。
ツィムトにも見習って欲しいもんだなァ。
[つい力が入りすぎたのは笑い飛ばして、素直に頷く様子に楽しげに目を細めた。猫は交渉が纏まったのに気付いたのか、なんだよ?みたいな目付きで屈んで来るユリアンを見上げ一声鳴いた]
こら、ツィムト。
ちゃァんときれいにして欲しかったら大人しくしなよゥ。
─森─
[何故か会う人会う人に心配されまくり。
そんな状況にちょっと疲れたのか、森の中へと踏み込んで]
……はい、いってらっしゃい。
[忙しなく羽ばたく白い鳥を、空の散歩へ送り出し、自分はのんびり小道を歩く]
撤去作業始まったら、のんびりできそうにないですしねぇ。
[そんな呟きをもらしつつ、ふわり、スカートの裾を翻す]
[受け取った石は右手の内に。
見上げてくるのをこちらも見返すような形になる。
傍から見れば睨み合いのようでもある。
暫く経った後、不意に左手を猫に伸ばす。
猫が避けないなら、その頭をわしわしと撫でようか]
―森・林檎の木のそば―
こんなもんかな。
どれくらい出来るかな。
ヨハナおばあちゃんの料理は楽しみだな。
美味しく頂くね
[樹に話しかける怪しい姿。]
エーリ君は放っておこう。
ヨハナおばあちゃんはどこにいるかな。
まだ、戻ってきてないかな。
どうしようね。
一応ピアスを取りに戻るかなぁ……。
一気に減っちゃったし、やっぱりあのペンほしいし、どうしよ。
ま、いっか。
[悩んだのは何なのか、森の中をふらりふらり。]
[三歩進んでは立ち止まり、足元に咲く花をしばらく眺め。
そこから三歩行ったら、今度は木に絡みつく蔦の実を眺め。
取り立てて珍しいものはないように見えるのに、何故かその様子は楽しげで]
いつもの秋……ですよねぇ?
落ち着かないのは、なんででしょ?
[木の根元に生えた赤いカサのキノコをつつきつつ、小さくぽつり]
[目を逸らしたら負けと思った猫は、見返す視線を真っ向から受けた。傍どころか猫からは睨み合いのつもりらしい。だんだん尻尾が膨らんでくる。
不意に伸びてきた手にも逃げる事なく睨み続け、結果として大人しく撫でられた。「ミ゛ァーヴー!」と抗議の声付きなのがとっても可愛くない態度]
おやおや、珍しいねェ。ツィムトが撫でさせるなんて。
明日雪が降らなきゃいいけど。
[一通り撫でた後立ち上がる。
猫が大人しく撫でられたことにか、実はひっそり張り合って居たのか、その顔は何処となく満足気であった。
右手の石を一度宙に放り、手中に収め、ポケットにしまった]
じゃあ。
[何も無ければすぐにでも作業を始めようかと、背を向ける]
[満足気な顔を見て猫は敗北感を味わったらしく、尻尾を垂れた。覚えてろよ、みたいな目でユリアンの背を睨んだ後、さっさと通りを歩き出す]
あァ、お願いするさね。
ちょィとお待ち、ツィムト!
[挨拶もそこそこに婆も足を自宅へと向けた]
―森―
んん、林檎ときたら赤頭巾だよね。
だけどもないから仕方ない。
[林檎を一つ、手に持って、ぱくり。つまみぐい。]
[しゃりしゃり音をさせながら、小道をゆく。]
おいしい。
って、あれ? 診療所の……あ、思い出した。ミリィって呼ばれてたね。
ミリィちゃん、やほ!
[食べかけ林檎を持った手を振った]
[傍目、真剣にキノコとお見合いしていたら、名前を呼ばれ]
……はぁい?
[とぼけた声で返事をしつつ、そちらを振り返る]
あら……ええと。
[とっさに名前が出てこないようで、ちょっと首を傾げていたりする]
散歩といえば、散歩ですねぇ。
通りを歩いていると、何故か皆さんに心配されるので、気晴らしに。
[ある意味飛んでもないこと、さらり]
林檎ですかぁ?
いただいちゃって、大丈夫なのです?
[確か、お使いがどうので話していたような、とか。
そちらの方は覚えていたらしい]
ミリィちゃんも怪我してるの?
エーリ君は怪我してたけど。
[不思議そうに様子を見やり、それから籠ごとさしだした]
こんなに一杯あるから、お好きにどうぞ。
ちゃんとたくさん摂ってきたから、これくらいだったらヨハナおばあちゃんが料理作れるよ。
[御機嫌斜めなツィムトは飼い主の声にも止まらず、未だ村を出られぬ旅人の影に紛れ見えなくなった]
……おやまァ、本当に負けず嫌いなこった。
頭が冷えたら戻ってくるじゃろし、今の内に香辛料ブレンドしとくかねェ。
[気紛れな猫と暮らすコツは放任主義とばかりに自宅に入り、秘伝の香辛料を混ぜ始める。こればっかりは年季だけでは説明できない味の秘訣]
ボクは、怪我はしてませんよ?
でも、何故か皆さん、戸締りに気をつけなさいとか、色々と注意してくださるのですよねぇ。
[こてん、と首を傾げて呟くように。
若い娘が一人で留守番、というのが問題と思い至らないのはさすがにどうか]
ああ、エーリは無茶をしたようですねぇ。
見回りするって言ってましたけど、ちゃんと休んでいるかしら。
[別れ際を思い出しながら呟き。
差し出された籠に、本当に嬉しそうににこ、と笑った]
ありがとうなのです。
お菓子になった林檎もよいですけど、採りたての林檎も、美味しいのですよねぇ。
[幸せそうに言いつつ、籠から赤を一つ手に取った]
ふんっ!勝利だにゃ!
[イモリをノックダウンしたらしい]
おいらに挑戦するとはいい度胸だにゃ!
[目を回してるイモリをてしてしてし、尻尾がぱたぱたぱた]
あーっ!尻尾、しっぽーーっ!!
[慌てて尻尾を(以下略)]
ふう、あやうかったにゃ…て、にゃって言っちゃ駄目だったんだにゃ…て、だめにゃーっ!!(じたじたばたばた)
[おちつけ]
休んでるから大丈夫だよ、エーリ君。
おばかだよね
[籠を引っ込めて、しゃりと一かじり]
うんうん、やっぱり林檎は美味しい。
しゃりしゃりするし。
つまみ食い、おばあちゃんに怒られちゃうかな。
まあいいか。
ミリィちゃんは、戸締りとかって、……よくわすれたりするの?
[枝に止まった白い鳥。
こて、と首を傾げて対決を眺めていた訳だが。
自分を見る目がきらーん、としているのに、ちょっとは危機感を覚えた。
かも知れない。
相方と同じで、妙な所鈍いのかも]
―― 森のどこか ――
[ティルは白い鳥を発見した!うずうずしている、とってもうずうずしている]
ま、待つ、にゃ。たしかあれは…
[なんとなく苦い記憶が蘇ってきたらしい]
前から、ですけどねぇ。
[「前から」が示すのが行動の事か、はたまた「おばか」という言葉なのかは不明なまま頷いて]
あんまり食べ過ぎると、お菓子が減っちゃうかもですねぇ。
……戸締り、ちゃんとしますよ?
でも、御師匠様がいない、って話すと、皆さんそういうのです。
[猫じゃんぷは、食らった記憶が新しかったようで。
白い鳥、とっさに飛び上がって回避した。
そのまま一つ高い枝に乗っかって、くるる、くるるる、と抗議開始]
……でも、そんなに心配しなくても、大丈夫だと思うのですよねぇ。
[真顔で言われても、やはり危機感ナシ]
ですねぇ、あんまりお待たせするとよくないですし。
……あ、ボクは、リーリエを迎えにいかないとならないので、また後で、ですねぇ。
[林檎、ありがとうです、ともう一度笑って。
のんびりとした足取りで、木々の奥へと足を向ける]
みゃぎ!
[がっしと爪を食い込ませて枝にしがみついた。一つ上の枝で抗議する鳥に向かって、右腕を伸ばしてあたっくあたっく]
みゃ!みゃ!
[ぴょこん、と耳が出ました]
[木の上の攻防戦はある意味ほのぼの?
相手が自由に動けそうにない、と見切った白の鳥、枝からぴょいぴょい飛び上がる事であたっく回避]
……さぁて、と。
リーリエ、どこまで行ったのかしら。
[相方は相方で、のんびりのんびり、移動中。
一応、気配はたどっているらしいが、三歩進んで以下略につき、速度は遅い]
―― 森小屋 ――
[戸を叩く音と声に目を覚まし、緩慢に身を起こして応対に出る。予想通りに受け渡された食材に、代わって礼を述べるも視線は相手から外れた]
あいつ、ヒモの素質あるよなぁ。
いや、こっちの話。
……馬鹿は風邪は引かないから平気ですって。
[手を振るも些か億劫で、それは表にも現れたらしい。
指摘の内容に先の老爺の言を思い出して、苦笑した]
みゃー!ひきょうだにゃー!
[人間の姿でなかったら、鳥の後を追う事もできたのに、と、悔しさ一杯でじたじたばたばた。ついでに尻尾も出ました、じたじたぱたぱた]
[来訪者との世間話もそこそこに切り上げ、袋に纏められた食材は分かりやすいよう居間の卓上に置く。そのまま部屋に戻りかけて、不意に外を見た]
……今のうちに行っとくか。
[ぽつり呟き、踵を返す。
錆び付いた扉の閉まる音が静寂に*響いた*]
[ひきょうと言われてもー、とか。
そんな響きの声で白い鳥はくるるる、るるる]
……あ、リーリエ、こっちですねぇ。
[その声を聞きつけた相方は、ようやくそちらへと向かい]
……あらら?
[目に入った状況に、きょとん]
ぅえ?
[さすがに近づいて来た人の気配には気付いたようで]
ああーっ!耳、みみーとしっぽーーっ!!
[慌てて耳と尻尾を押さえようとしたら…そりゃ落ちます]
みっぎゃーっ!
[ぼすっ!意外と落下音が軽かったのは、一応受け身を取ったらしい。猫なりに]
……あららぁ。
[落下する姿に、上がる声はやっぱりとぼけていた]
ええと、大丈夫ですかぁ?
[近づいて呼びかける、その肩に白い鳥がふわり、と舞い降りた]
みゃ?!お、おまえは、箒の魔女にゃっ!
[ミリィさんへの認識は、そーゆーことらしいです、はい]
お、お、お、おいらを、どうする気にゃ?!
[ずざざざざっと木の傍まで後ずさって、ふう、と威嚇。尻尾はすっかりけばけばに]
あらあら。
[ふらふらとしている様子にか言葉にか、とにかく少し顔をしかめ]
箒の魔女、ってなんですかぁ、もぉ。
……否定はしませんけど。
[しないんですか]
別に、どうもしないですよぉ?
怪我をしてるなら、手当てはしますけど。
ほんとに、何もしない、にゃ?
[じいいいいいいい]
怪我は、ちょっとだけしてる、けどにゃ。手当なんかいらないにゃ!
[それでも尻尾は落ち着いた模様。ちなみに怪我は、木から落ちた時じゃなくて、森の奥で木の根に頭をぶつけた時のたんこぶらしいですよ]
しませんよぉ?
ブルーメだって、余程のことがないと怒ったりしないんですから。
[知り合った経緯を思い出して、くすりと笑う]
……ちょっとだけ?
痛いなら、痛み止めのおまじないくらいはしておきますよぉ?
い、いたくなんかないにゃ!
[笑うミリィに、顔を赤くして立ち上がる。茂みの影の薄茶猫の声も聞こえたようで]
次は、箒にも負けないにゃ!覚えておくがいいにゃ!
[そろそろと後ずさりながら、精一杯の捨て台詞を残して]
あららぁ、行ってしまいました。
……大丈夫なら、良いのですけど。
[軽く首を傾げつつ、駆けてゆく姿を見送る]
……さて、それではボクもそろそろ診療所に戻りましょうか。
ちゃんと、待機していないとですしねぇ。
[薄茶色の気配に気付いてか、落ち着かない肩の上の鳥を撫でつつ、呟いて。
ふわり、とスカートの裾を翻しつつ*村へと戻って行く*]
―自宅―
[明日の作業準備を終えて、長い木の勺でとろ火にかけた鍋をゆっくりとかき回す。窓の外まで漂うのは朝とはまた違う栗の甘い匂い]
焼き栗は美味いんじゃが日持ちせんからなァ。
よし、後は冷ませば出来上がりさね。
…それにしてもまだ返ってこないねェ。
ツィムトのヤツ、一体どこまでいったんだか。
[火を落として揺り椅子に腰掛け、甘い匂いの中で一息つく]
[その頃、ツィムトはティルが放置していった目を回したイモリを以下略し、満足気に舌なめずりして食後の散歩としゃれ込んでいた。
飼い主の心猫知らずである]
[そうこうしている内に訪問者が来て、婆は腰を上げた。扉の外には青い髪の青年と林檎の籠]
あらまァ、たくさん採ってきたねェ。上等上等。
明日腕によりをかけて焼くから楽しみにしときなァ。
坊にもそう言っといてくれさね。
[捨て台詞通りにアーベルが宿主の分を要らないと言ったかどうかは、さて*]
8人目、学生 リディ がやってきました。
ー村内の民家、二階の窓から少女が通りを眺めているー
つまんないな……。
[お祭りの次の日は寂しい。
昨日は村にあふれていた人も音楽も、嵐と一緒にどこかへ行ってしまった。
雨に洗われた道に前日の熱気はない。]
道が塞がっちゃったから、学校にも行けないし。
何か面白いこと、ないかなぁ。
[そう言って林檎を齧りながら窓の外を見る。
開け放した窓からは、栗を煮る甘い匂いが*漂って来た*。]
楽しみにしてるよ、ヨハナおばあちゃん!
[ミリィとわかれた後に、ヨハナの家へ。]
[喜ばれたし、喜ぶ言葉の後に、むぅと顔をしかめた。]
ダメ、あげない。
エーリ君は馬鹿だからあげちゃだめ。
[子供の喧嘩にしかみえない。]
エーリ君の分もおれが食べるよ。
よろしくね!
あ、ヨハナおばあちゃん、手伝いいるなら手伝うよ**
あげないって、アンタ…
[丸くなった目は、続く言葉に目尻の皺をくしゃくしゃにして笑う]
そゥかい、そゥかい。
なら作る量は変わらないからいいさね。
おや、ありがとよ。
明日は薪を多めに使うから運んでおいてくれると嬉しいねェ。
ついでに味見もしていきな。
[薪を運び終える頃には、ケトルも湯気を立てポットに注がれて、薄くスライスし火で炙ったパンに栗のクリームが添えられる]
……で、喧嘩の原因は何なんだい?
[大き目のマグに二人分の茶をいれながら、なにやら楽しげな話を聞こうと婆は目を輝かせた*]
―― 村の中 ――
[抜き足、差し足、忍び足]
あいつは、居ないかにゃ?
[きょろきょろきょろ、警戒しているのは薄茶の猫の姿。魔女の箒も天敵だが、この村を縄張りにしている先住猫は、天敵以上に厄介だ。ことにその猫の飼い主が菓子作りの名人とあっては…]
今日こそ、御飯をげっとだにゃっ!
[家の近くに、猫の姿が見えないと判断すると、猫まっしぐら]
―― ヨハナの家の外 ――
[窓から家の中をそおっと覗く。家主は客とお茶の最中…こっそりこそこそ裏口へ、抜き足、差し足、忍び足…]
[キッチンの方からは、甘いマロンクリームの匂いがする。思わず涎がじゅるり]
きゅるるるる…!
[ついでに派手にお腹も鳴って、あわあわあわと壁に貼り付いた]
[どうやら音には気付かれなかったようで、家の中から人の出て来る気配は無い]
しめしめだにゃ。
[くふふ、と笑って裏口に近づく。ごそごそとポケットから取り出したのは一本の猫のヒゲ。猫妖精の魔法の力を持つヒゲで、ちょいちょいと扉の隙間をつつくと、音も無く裏口の戸は開いた]
ふふん、ちょろいもんだにゃ。
[身を低くして、こそこそとキッチンに向かって匍匐前進]
――…ねえ、ヨハナおばあちゃん、何か音しなかった?
[エーリッヒについての悪態を、思いつくまま、並べた。]
[そんな最中、何かの音がしたようで、思わず尋ねる。]
ああ、いいよ。えーと、おれが見てくるよ。
ご馳走になってるしね。
本当においしくって良いな。
今度作り方教えて。旅先でご馳走して、材料貰うんだ。
[順序が逆。]
まあ、見てくる。
こっそりとね。
[音を立てずに、キッチンの方へと、こっそり。]
……
[キッチンにティルを見つけて、しばらく悩んだ。]
[食事泥棒かなと、じぃっと見てから、一歩、二歩。]
何やってるの?
[嬉しそうに鍋に顔を近づける様子に、なんの前触れもなく、声をかけた。]
みぎゃっ!
[突然、背後からかけられた声に飛び上がる。覗きこんでいた鍋に、突っ込みかけて踏みとどまったのは、御飯が大事の本能かも]
お、お前は誰にゃっ!怪しい奴めっ!
[振り返り様、びしいと指を突きつける…居直りと言うにもあんまりです]
いやいや、あやしいのは君だよ、少年。
おれはちゃんとこの家に招かれてきているんだからね。
君は、おじゃましますってちゃんと挨拶した?
挨拶はしなきゃだめだよ。
[どこかずれている。]
で、食べたいの?
食べたいなら、よけいに、ヨハナおばあちゃんに聞かなきゃ。
内緒で食べたら、窃盗だよ。
自衛団に捕まっちゃうよ?
ううう…
[だらだらだらだら、思いっきり冷や汗をかいている。そりゃもうぐうの音もでないとはこのことで]
……おじゃま、します。
[とりあえず、それだけ言ったのは、意味があるのか?]
じゃあ、さよならだにゃ!
[鍋を抱えて逃げ出そうとした、が]
ふみぎゃっ!!
[まだ冷めてなかったみたいです]
あち、あち、あちっ!!
[猫妖精は手足も猫手なので、床の上を飛び跳ねる。ぴょこりぴょこりと猫耳が出たのは言うまでもない]
あ。鍋泥棒。
[真顔で、あつがってるのに言ってみた。]
ダメだよ。おれに言っても。
そっか、猫だったんだ。
熱いものに触っちゃうなんてダメだろう?
んん、反省してもらうためにもちゃんとヨハナおばあちゃんに治療してもらおうかな。
でもまずはほら、こっち、水。
[と水場に近付いて、おいでと呼んだ。]
[熱がってるのを前に、随分と冷静。]
―― 通り ――
[一軒の店から出て来た青年は、小さな紙袋を手にしていた。
内から取り出した飴の包み紙の片端を噛み、反対側を引いて解く。上を向いて淡い黄の球体を口内に送り、紙は握り潰してポケットに突っ込む]
……だるい。
[カチ、と飴玉を歯に当てた]
―― ヨハナの家・キッチン ――
水?!
[まだぴょんぴょんしながら、耳をぴくぴく]
水は嫌いにゃーっ!
[凄い勢いで壁に貼り付いて、ぶんぶん首を振る]
─通り─
……むう。
[雑貨屋の前、何やら悩んでいる様子で立ち尽くし中]
何色がいいかしら……?
[呟く視線が向けられているのは、色とりどりのリボン]
頑張ってくれていますし、そろそろ新調してあげたいのですよねぇ……。
ツィムト。
[舌先で飴玉を軽くつついて箸に寄せて名を呼んだ。
可愛らしさとは程遠い目つきの猫は、耳聡く聞きつけにゃあと鳴く]
食材にされそうになって逃げて来たのか?
だって水じゃないと、やけどは治らないよ。
やけどって水で冷やさないと。
そんなにいやなの?
[悩む表情]
そっか、猫だからだね。
[悩んだ理由は酷かった。]
じゃあ、仕方ないか。
このペン気にいってたんだけどな。
あついのわかったけど、じっとしてて。
[ティルに言いながら、メモ帳を取り出して丸を描いたり、何か描いたり。]
[聞かれても黙ってて、と言って、かきおわったメモを握る。]
「ひやしてあげて」
[妖精の言葉でそう言うと、ひんやりとした空気が、鍋に触ったらしい指にぴたりと触れる。]
学生 リディが村を出て行きました。
8人目、学生 リディ がやってきました。
[ぼんやりと視線は通りを行ったり来たり。]
ん?
[知らない子供がウェーバーさんの家を覗き込んでいるのが見えて、思わず身を乗り出す。
ウェーバーさんの家にあんな子供はいただろうか。]
のぞき魔……?
[子供はそのまま裏口へと回ると、何やらがさごそした後、戸を開けて室内へと滑り込んだ。]
……どろぼう!?
……何してるにゃ?
[どうやら、水をかけられる事は無さそうだと判ると、今度は好奇心がむくむく]
それ、何の印にゃ?にゃにゃにゃ?!?
[ペン先の動きを目で追っていると、ふいに冷んやりとした空気が触れる]
お前、妖精なのにゃ?
[目を丸くして、アーベルを見た。じいいいいいい]
[猫はなんと返答をしたのやら。
熱は案外と思考を鈍らせるものらしい。向こうも悩み中らしく、こちらには気付いていなかった様子だが]
ミリィ、何してんの?
今、結んであげてるのが、緑ですからぁ……。
今度は、青系かしら?
んん、一度帰って、ちゃんと確かめた方がいいですかねぇ……。
[そも、なんに結ぶつもりのリボンなのかと。
口ぶりからして、自分でないのは確かだろうが]
……て、あら?
[ひとまず、戻るべきか、と結論づけたところに声をかけられ]
エーリ。寝てたんじゃないのですか?
[先に森で聞いた話を思い出しつつ、きょと、と瞬き]
寝て起きて買い物。
[傍で脚を留めた猫は彼女を見れば鳥の姿を捜したに違いない。
右手で袋を抱えていた事に気付いて、なんとなく、左に移す。腕にはまだ包帯を巻いているし、シャツの下ではあるけれど]
そっちは……リボン?
[視線の向いていた先を追いかけ、疑問混じりに言った]
ほんとに違うにゃ?
[消えるペンを見ながら、耳がぴくぴく]
も、もともと痛くなんかないにゃ!
[恩人に向かって、ふん、とふんぞり返ってこの態度]
あっと……武器武器!
[食べきった林檎の芯を放り投げると、代わりに戸口に立てかけてあった帚を手に取る。
通りにいる人には目もくれず、ウェーバーさんちの裏口へと。
足音を顰め、中の様子を伺った。]
―店内―
[こきり、と首を鳴らした。
掛けていた眼鏡を外し、手元から視線を離して。
壁に掛かった時計を見れば、あれから5回転程したところ。
椅子を鳴らして立ち上がり、丹念に磨かれた石は作業台の上に。
どうやら休憩に入るらしい]
― →通り―
……ちゃんと、休まないと、ダメですよぉ?
[気だるげにも見える様子に、軽く、首を傾げつつ注意を一つ。
白い鳥は、猫の視線にやや警戒気味の様子]
ええ、リボンですよぉ。
そろそろ、ブルーメのリボンを新しくしてあげようかと思いまして。
ちがうちがう。
違うから。
あのペンはお礼でなくなっちゃったの。
[暫くは使えないかなーなんて思いながら、ポケットにメモをしまいこんだ。]
……痛くなかったの?
そっか。
じゃあもう一度触ってみる? ほら、中にはおいしいのがあるよ?
[耳を仕舞う様子を、微笑ましそうに見る。]
うん、可愛い猫耳だったね。
用事済んだら帰るさ。
[要る?と問うと同時、答えを聞く前に飴玉を一つ、放り投げる]
ああ、なるほど。頑張ってるもんなー。
自分の分はいいのか?
[遠すぎず近すぎずの位置で、薄茶の猫は目つきをますます悪くしつつ、機を窺っているようだった]
むうむうむう…つまり妖精じゃないんだにゃ?
[ほんとに分かったのかどうかは若干怪しい。可愛い耳と言われると、赤くなりながら、顔を顰めた]
可愛くないにゃ!かっこいい耳なんだにゃ!
[こだわってるみたいです]
泥棒め、正義の勇者リディ様が成敗してやる……
[呟きながらそっと裏口の戸をあける。
泥のついた不思議な足跡が、廊下に続いていた。
ふわり、栗の匂いが廊下の先から濃厚に漂う。]
む。今日のおやつは栗の甘露煮かな。
[思わず唾を飲み込んだ時、キッチンの方で物音がするのに気づいた。
びくりとして帚を持つ手に力を込めると、廊下を慎重に進んでいく。]
うん、そうだよ。
かっこいい、というか、やっぱりかわいいだと思うけどな。
君はかっこいい方がいいの?
[不思議そうに見て]
まあ、いいけど。
ほら、食べたいなら、まずはヨハナおばあちゃんにご挨拶。
そうしたらきっと、優しいから、おばあちゃんがちゃんととってくれるよ。
もっと美味しくしてくれるよ?
[投げ渡された飴を両手で受け止め、ありがとうです、とにこりと笑い]
うん、ちゃんと休んだ方がいいですよぉ。
ブルーメのお陰で、一人でも安心してお留守番できますからねぇ。
ボクは、別に……あまり、飾るのとか、好きじゃないですし。
[自分の分は、という問いには、困ったようにこう返す。
肩の鳥はといえば、機を伺う猫と睨みあい続行。
そこだけ妙に緊迫してるかも]
―通り―
[休憩の際の習慣、いつもと違わず、森の方角へと足を向け。
やがて雑貨屋の前に差し掛かる。
視線は話している2人より先に、その足許の薄茶猫を捉えたらしい。
今は鳥に夢中らしい猫がこちらに気付いたなら、唸り声の一つでも上げただろう]
[キッチンのドアノブに手をかけると、勢い良く戸を開く。]
こらー!どろぼーうー!
動くな!
村の平和を守る正義の味方、リディ様が来たからには悪事は働かせないわよ!
[大声で叫んで、帚を構えた。]
かっこいい方がいいに決まってるにゃ!
[ぷう、と膨れて、しかし「美味しく」という言葉には心が動いたらしい]
あ、挨拶すればいいのかにゃ…て、みゃーっ!?
[アーベルの後を付いて行きかけた所で、飛び込んで来た正義の味方に驚いて、再び壁に貼り付いた]
その前に、こいつ届けたほうがいいのかな、っと?
[猫を掴みあげようとしてしゃがんだところで、気配に気付いた薄茶の猫が不意に睨み合いを中断して、些かやる気の足りない唸り声をあげた。
視線は青年とは別の方向。釣られて、見やる]
[勢い込んで扉を開けたものの、意外なほど近くに人がいて慌てて一歩飛び退く。
聞こえて来たのは冷静な突っ込み。]
正義のためだ!仕方ない!
[堂々と答えると、相手の顔を確認した。
先ほど家を覗き込んでいた少年ではない。]
むむ。泥棒に仲間が居たとは……!
あら、猫さん。
[気付いてなかったらしい]
お散歩してたんなら、好きにさせてあげてもいいかもですけど……。
[例によってのんびりと言いつつ、肩の白い鳥を撫で。
視線の流れにつられるように、猫の見ていた方を見る]
こんにちはですよ、ユーリ。
お散歩ですかぁ?
いやいやいや。
食べ物泥棒をしようとしたけど、今からお客になるのはあっちの子。
おれは最初からお客。明日の林檎を渡しにきたんだ。
君は今からお客になる?
おいしいよ。
ヨハナおばあちゃんのお手製だから当然だけど。
……不法侵入者にはくれなかったりして
[最後の言葉は、ちっちゃすぎる。]
[まさかね、なんて思ったから、二人には聞こえてないだろう**]
[猫の隣の青年が屈んで、漸く認識できたらしい。
同時に白い鳥と少女も。
双方への挨拶代わりに片手を上げる。
尋ねられたことには頷いて答えた。
その間猫にずっと睨まれていたとしても、何処吹く風で]
うむむ……泥棒はあの子だけか!
[青年の口からウェーバーさんの名前が出ると、見慣れない顔を疑うようにじっと見てその背後の少年に視線を移した。
泥棒(推定)からも、同じように共謀を否定する言葉が出ると、ふっと息を吐き帚を少年に構え直す。]
[仕種だけの返事はいつもの事なので気にした様子もなく。
ふと、ある事を思い出して、そうだ、と声を上げる]
ユーリ、今、お仕事忙しいです?
また、細工入りの瓶をお願いしたいのですけど。
[大丈夫かしら、と。
軽く、首を傾げて問いかける]
―自宅―
[物音はツィムトかと思い気にもしなかったが]
それじゃァお言葉に甘えるさね。
[見てくると言うアーベルに任せ、揺り椅子でのんびり構える。
そのうちに聞こえてくる騒動にも腰を上げずに聞き耳を立てた]
おやまァ、いつもの泥棒猫かい。
いっつも追い払ってるツィムトが留守だってのに運が無いねェ。
そうか。ああ、今年も良い石が出来てたよ。
……いつもの場所は、崖崩れあったから立ち入り禁止だろうけど。
[興味の対象があちこちに移って忙しい猫を、今のうちに掴もうと手を伸ばす。
しかし抱き上げる前に、はたと、ミリアムに眼差しを転じた]
そうだ、ミリィ。
お前、知ってただろ、爺が来るって。
[今更ながらあの香草茶の真意が掴めた。自然、眉が寄る]
せ、せ、せーぎのみかたなんかには、負けないにゃっ!
[しゅた、と両手を上げて、爪を出すとニャンコ拳のポーズ。しかし箒には嫌な思い出がありまくるので、どもりがち。ちなみに正義の味方の意味は分かってません。]
祭りも終わったってのに賑やかなこった。
さァて招かれぬ客にゃ、何をしてもらおうかねェ。
[なにやら底意地の悪い事を言いながら、よいしょと立ち上がってキッチンを覗き込む]
おやおや、どういった騒ぎだい?
あたしゃ聞かせてもらってもいいと思うんだがねェ?
[にんまりとちょっとだけ見覚えのある少年と御近所の少女を見下ろすように顎を上げた]
はぁい?
[エーリッヒの言葉に、そちらを見やり]
自衛団員さんが、置き去りの荷物があった、って教えてくれたんですよぉ。
それで、もしかしたらエーリかなぁ、と思ったら、予想通りでしたから。
ギュンター御爺様の事だから、行くだろうなぁ、とは思ってましたけど。
[くすくす笑いながら、さらっと説明]
ほう……正義の味方に歯向かうとは……愚かな。
[なにやら奇妙な構えをとった少年に,最近読んだ小説の言葉を引用すると不敵に笑ってじり、と間合いをつめる。]
このリディ様が成敗してくれよう!
あ、ウィーバーさん、こんにちは。
危ないから下がって。
泥棒です!
[のんびりとかけられた声に振り向くと、元気よく答えた。
黒髪の青年に訂正の言葉がかけられようと、気にしない。]
[家の主の登場に、少女の気が逸れたと見ると、隙をついて逃げ出そうと、裏口へと駆け出した…が]
ぷぎゃっ!!
[こけました。……お約束]
今は一つ。
…終わってからで良ければ。
[ミリィへの返答として出た言葉も、やはり端的で。
少しばかり先客(猫)を見て、視線を戻す。
エーリッヒの言葉には、少し残念そうな顔をした]
急いでたから置き忘れたんだよ。
まあ、失くしたらそれなりに困ったし、助かったは助かった。
んだけど、さぁ。
この村の爺婆は元気すぎる。
[引っ張られた頬が痛んだ気がして、頬に手を当てた。
未だ屈んでいたから、膝の上に肘を置いて頬杖を突いて溜息を吐く。
様々な事を気にしなければ、伏せた睫毛が陰を作る様は憂える青年と言った態なのだが]
って、店前でだべるのも邪魔だな。
[さっと気を取り直して言う辺り、切り替えが早い]
[2人の遣り取りの意味は分かっている…というか、割といつものこととして捉えているらしい。
唸り声のほうに顔を向け。
睨むツィムトに対して、こちらは案外楽しげである]
こらっ!待てー!
[叫んで帚を持ったまま後を追った。
追跡はほんの数秒。
すぐに転んだ少年に、呆れた顔で歩き追いつく。]
情けない泥棒ね。
[転んだ体を引き起こすように手を差し伸べた。]
ほォう、泥棒ねェ。
[リディの言い分にそ知らぬ顔で頷いて、ティルを意地悪く見てにんまり。ちゃっかりした礼の要求に笑いを堪えながら、恐ろしげな声をティルに向ける。
素早く逃げようとした泥棒未遂猫が見事にこけたのを見て噴出す]
ほゥら、悪い子は妖精にお仕置きされるのさ。
反省しない悪い子はどうしてやろうかねェ。ぐるぐる巻きにして川にでも流そうか、それとも木にぶら下げようか。
[言いながらアーベルに『ちょィと黙っといて』と見る目は笑っている]
あ、ボクの方は空いてる時でいいのですよ。
そんなに急いでいる訳じゃないですから。
[ユリアンに笑いながら返して。
猫に向いた視線を追い、それから]
大事なものは、ちゃんと持ってないと、ですよぉ。
[エーリッヒの言葉に、また、楽しげに笑った]
元気なのは良い事ですよぉ。
お年を召して塞ぎこんでしまうのは、よくないのですから。
……あ、確かに、ここに集まっているのはお邪魔ですねぇ。
うう…て、敵の情けは受けない、にゃ…じゃない、受けないよ!
[少女の手をてしっと払って、ぶつけた鼻を押さえながら、ぺたんと床に座り込む。やっと語尾がまずいことに気付いたっぽいです]
[猫は見事捕まったのが気に入らずに、じったんばったん。
しかし背後から捕獲された体勢では爪が届かず猫踊りしてる風に見えなくも無い。
目は吊りあがって口は裂け、そりゃぁ凄い形相だが]
わっ、引っ掻いたな!
[てしられた手をひいて少年を睨む。]
ぐるぐる巻き川流しの刑だ!
[ウェーバーさんの言葉を借りて帚をその鼻先に突きつけた。]
[リディの手を断るティルに笑いそうになる顔を無理矢理顰め、怯えた声にほくそ笑む]
そォう、川がいいのかい?
それとも…ちゃァんと謝って、そこの泥を掃除するかい?
……あらら。
[捕獲された猫の様子に、きょと、と瞬き。
それから、くすり、と笑みをもらす。
肩の鳥も、楽しげにくるる、と声を上げていたり]
か、か、川は駄目にゃーっ!
[折角修正した語尾が、元の木阿弥。箒の恐怖も合わせて、ふるふるぷるぷる]
そ、掃除する、にゃ!
[涙目]
ほら、本当に大事なものはここにあるし。
[紙袋を持った左手で己の胸を指し示し言うが、笑みを浮かべた様子からして冗談のつもりらしい]
そういうこと。
俺はヨハナ婆んところ寄ってから帰るつもりだけど、そっちは?
[言うと同時に右手で猫を掴みあげる。痛みはもう殆どなく怪我の存在を知っているのもミリアムくらいだから、隠すのはすっかり忘れていた。
しかも首根っこ。可愛らしくない鳴き声は余計に悲惨になっただろう。
その形相のほうは、青年の側から見えはしなかったが、二人と一羽の反応から、どんな風になっているかの想像は容易につく]
まあ、いつものことだし放っといてもいいんだが。
祭りの後の崖崩れ、なんて不穏なことがあったばっかだし。
それは、そうですけどねぇ。
[胸を指し示しての言葉にこう返して。
猫を掴む腕の動きを追う時だけは、紅の瞳はほんの少し真剣さを帯びるものの、すぐにそれは消えて]
特に、予定もないのですよねぇ、ボクは。
一応、診療所に待機してた方がいいのかも知れませんけど、何もなければそれに越した事はないですし。
よォし、それならいいじゃろ。…くくく。
[ティルの敗北宣言に、ついに笑い出しながらリディへ向いて]
さァて、嬢はお手柄だったねェ。
だけど裏口じゃなく玄関もちゃァんとあるんだよ。
今度からはそちらから訪問しとくれ。
御褒美を用意するまで掃除の見張りも頼むさね。
[それからなにやら見ているアーベルの方を見やって説明した]
あァ、こちらはマッキンリーさんちの嬢ちゃんだよ。
近所に越してきたとこでねェ。
なるほど。
じゃあ、気にしなくてよかったんだね。
不法侵入が二人だったらヨハナおばあちゃんも大変だなって思ってたんだ。
おれはアーベルっていうんだよ。
エーリ君のところに宿借りてて、そろそろ出ようと思ってたけど、崖崩れでまだ居候中だったりするから、よろしくね。
[猫はユリアンの様子に目ざとく気付いて「フシャァー!」と気勢を上げたが、首根っこ捕まれててはどうしようもない。
虚しく前足で空を切りながら、ぶらーんぶらーんと揺れる痛みにようやく唸り声を上げる程度には大人しくなった。
鳥の啼き声には、ゆらぁり尻尾が不穏気に揺らめいたりした]
[ウェーバーさんがご褒美と口にするのを聞くと歓声を上げる。]
は!リディ・マッキンリーがしっかと見張らせていただきます。
[ぴしと、軍隊式に手を上げて頷いた。
お客だと言う青年に自分を紹介するのを好奇心に満ちた目で見て口を挟む。]
こちらのお客さんは?
お祭りを見に来たの?
……そうじゃなァ、考えてみてもいいがなァ。
そもそも掃除は汚された分を戻すだけなんじゃから、ちィと虫が良すぎる話だねェ。
[ティルの視線に、確約せずのらりくらりと逃げながら]
ま、さっさと掃除が済まなきゃ全部食べちまってるかもなァ。
ほれ、早くおし。
[ケトルを火にかけ、なんだかんだで更に二人分の準備を始めた]
ああ、そっか。
お師匠さんいないもんな。
まあ、程ほどに息抜いて、好きにしたらいいんじゃないか。
[納得の頷き。それから暴れる猫に視線を落として]
ほーら。こうやって掴まれんの厭なら、大人しくしとけ。
[大人しくなったところを見計らい、一度地面に紙袋を置いて、猫を抱え直すのもやはり慣れた右腕。
手提げでも持ってくれば良かった、とは後悔先に立たず]
それじゃ、一先ず行くかな。
また、になるかな?
[別段、付いて来るなら来るで止めはしないが。
一応は別れの言葉を告げて、歩み出す]
さすがに二人ともじゃったら困ったねェ。
まァ、アンタもいてくれたし助かったよ。もう少しでせっかくの初物がなくなるところだった。
[手を忙しく動かしながらアーベルに言って、リディの問いに頷く]
そうらしいねェ。足止め中で気の毒なこった。
わたしゃ気軽に手伝ってもらえるんで助かってるがねェ。
そこの林檎もアーベルが採ってきてくれたのさね。
はい。よろしくお願いします。
[アーベルと名乗った青年の自己紹介にぺこりと頭を下げてかえす。]
崖崩れかぁ。
現場見ました?
見に行きたいんだけど、母さんが危ないから駄目って。
[少しだけ不満げに口を尖らせて零す。]
ですねぇ、のんびりするのもいいかしら。
[いつもしてないか、というのはさておいて]
じゃあ、猫さんはよろしくですよ。
あと、腕が痛むようなら、診せに来てくださいねぇ?
……何か、「重ね」られてるみたいですし。
[歩み出す背に向けて、こんな言葉を投げて]
さぁて、と。
ユーリは、どうしますの?
[場にいるもう一人に向け、問いを投げかけてみたり]
[腕の件は知らない故に、特に反応することもなく。
だいぶ大人しくなった猫の頭に、一度ぽふと手を置いた。
それから、猫を抱えたエーリッヒが背を向けるのに片手を上げた]
[少年の帚さばきをうんうんと監視しながら、ふと問いかけた。]
そういやアンタ、どこの子?
このへんじゃ見ないけど、アンタも崖崩れで帰れなくなったの?
おお、上手だね、泥棒猫くん。
[名前がわからないのでそう呼ぶことにした、らしい。]
なくならないでよかったよ、ヨハナおばあちゃん。
エーリ君に自慢してやらなきゃだめなんだから。
崖崩れは見てきたよ。
酷かったよ。
確かに危ないかもしれないね。
ちょっとでも進んだら、すぐおっこちちゃいそう。
リディちゃんが心配だから、いっちゃだめっていうんだと思うよ。お母さんのこと、心配させないであげなきゃね。
おいらは旅をしてるんだ…よ。
崖崩れのことは知らない。
[リディに問われると、箒を止めないままで、答える。問いの返答になってるかどうかは微妙だが]
[腕だとか「重ね」だとか、聞こえた言葉に去る背を見るが、見ただけでは分からない様子]
森に。
[尋ねられてそう返す。
その後でミリィを示し、首を傾げてみせた。
そっちはどうする、との問い]
ふむ、手先は意外と不器用じゃないようだねェ…。
[薄く切ったパンを育ち盛り用に多めに切って炙りつつ、ティルの手際を盗み見る。掃除があらかたすむ頃にはパンに栗のクリームを乗せた大皿と新たに二つ増えたマグカップ]
さァて、お菓子が欲しい泥棒さんや。
食べたいならその分ちゃァんと働くのが対価ってもんさ。
明日、籠一杯の栗を拾ってくるってなら御馳走してあげるんだけどねェ。どうする?
[キッチンにはパンと栗とお茶の香ばしい匂い]
[猫はちゃんと抱えなおされて大人しく…ではなく、右腕から漂う薬の匂いに気を取られ鼻先に皺を寄せた。落されないようにと服に爪を立てているが、肌までは届かないだろう。
ユリアンの手に「ミ゛」と声が出たが、すぐに離れたので耳がぴぴっと跳ねただけですんだ]
[背後から投げかけられた台詞は、聞こえなかったか、その振りか。
鳥やらユリアンやらにまだ気を取られがちな猫の意向は無視して、祭りが終われど帰れぬ人達で普段より賑やかな通りを歩み、到達するのはウェーバー宅。
裏口からではなくて、きちんと表から]
ヨハナ婆ー、いるー?
ふみゃ…?明日?
[ヨハナにかけられた声に首を傾げる。甘い栗の匂いに鼻がひくひく]
栗を拾ってくれば、いい、の?
[目はお皿の上に釘付け。ちなみに、アーベルの呼び方はまるで気にしていないというか、耳に入ってるか疑問]
おっこっちゃいそうなんだ!
[アーベルさんの説明に興奮した声をあげて身を乗り出した。]
いいなぁ。やっぱり見に行かなくっちゃ。
滅多に見れるものじゃないもの。
[諭す言葉を右から左へ受け流し,決意するように頷いた。]
危険だからわくわくするのに、母さんてば分かってないんだから。
おやおや、自慢するほどの事かねェ。
けど褒め言葉と受け取っておくよ。
[なんだかんだで坊は毎年食べてるような…とは思ったが口には出さず、アーベルのリディやティルへの言い草に笑みを零す]
そうだねェ、二人目の怪我人になっちゃ困るから嬢やも好奇心は程ほどにな。
ティルはカッツェなのかい? じゃァ猫でいいさね。
リディちゃん、それはダメだよ。
ダメ。
リディちゃんは、身を乗り出しておっこっちゃいそうなんだよ。
[けっこう酷いことを真顔で言った]
――エーリ君のばーか。
[でも悪態づいた。外から聞こえた声に。]
[ちょうど掃除が終わり、キッチンから紅茶の良い匂いが漂って来た頃、玄関口から来訪者の声がした。]
む。誰かお茶の匂いを嗅ぎ付けて来たな……。
開けてきます?
[お茶を準備する老女にそう声をかけて、勝手知ったる人の家をずんずん進む。]
森に、ですかぁ。
今は、お散歩にいい季節ですからねぇ……。
[端的な答えに、妙にしみじみとした口調でこう言って。
問いの仕種に、こちらも軽く、首を傾げる]
んん、どうしましょうか。
お邪魔でなければ、お付き合いしてもいいかしら。
さっき言った瓶の意匠にお願いしたい、綺麗な蔦が森にあったのですよ。
[鍵は開いてるから勝手に入ってくるだろうと表は放置してティルの様子に大きく頷く]
そうさ、ご馳走されたら、材料を貰わないとねェ。
[アーベルの台詞をもじって言うと、どうだいと重ねて尋ねる]
[扉を開けようにも、両の手とも塞がっているわけで。
とりあえずは荷を降ろそうかとしたところで、人の近付いて来る気配がした。老婆にしては、些か勢いが良いが]
[エーリッヒの腕に比較的大人しく抱かれていた猫は、ねぐらに増えた気配と匂いに耳をぴんと立てて前足に力を入れた。
まだティルの匂いには気付いていないが、隙あらば逃げ出して家の中に飛び込もうと首を下げる]
ああ、えっと。
[村には長く住んではいるが、普段は森に引っ込んでいるために、新しい人間を覚えるまでには時間がかかる。出かけた名前は喉で引っかかった]
……いや、お茶菓子貰いに来たわけじゃなくて、お届け物。
[視線で腕の中の猫を指し示す。
力を緩めた腕からは、猫が望めばすぐに下りられそうだった]
[傾けていた首を戻して、今度は縦に振る。
構わないらしい。
蔦の話にもう一度、考えるように頷き。
相手の動きを待つように、ゆっくりと目的に向けて歩き出した]
―通り→ ―
村の設定が変更されました。
[肯定の仕種に、こちらもとことこと歩き出す。
年齢のわりに小柄なためか、動きは忙しなく見えるかも知れない]
そういえば、今やってるのはどんな細工なのです?
[目的の蔦の場所へと向かいつつ、何気なく問いかける]
毬なしで虫もなしの栗を籠いっぱい、じゃからな。
[皿に釘付けのティルにそう言って、アーベルの悪態に目を細めた。ティルが隅に寄る様子には気づかずに皿を運び出す]
こらこら、お茶菓子は切れちゃいないさね。
おや、ツィムト。坊に連れて来てもらったのかい。世話かけたねェ。
[薄茶猫は開いた扉と緩んだ腕に、飛び降りてすり抜ける様に中へ]
[戸の向こうに立っていたのは森番の青年。]
よし。どうぞお入りください。
[お茶菓子を貰いに来た訳じゃ,の言葉に安心して中へと案内する。]
あれ、ツィムト?
どうかしたんですか?
[挨拶代わりに耳の後ろを掻いてやろうと猫へ手を伸ばした。]
いや、崖崩れなんてあったから。
独りで出歩いていると心配かなって、
[伸ばした少女の手を擦り抜け、駆けていく猫を見送る]
何か見つけたんかな。
[やる気のなさを漂わせているツィムトにしては素早い動きに首を捻った]
ああ、別に用事はないから、すぐに帰――
[る、と言い切る前に思い出したのは、口止めの約束]
いや、あった。
お邪魔します。
[ご近所でも愛想が悪いと評判の薄茶猫は、リディの手を易々と逃れて家の中。下手に手を出してたら、ティルに続いてツィムトにまで引っかかれていたのだから、ある意味運が良かったのか。
そして、縄張り侵入の泥棒猫へ、ツィムトは本日の鬱憤全てを込めて踊りかかった]
[背の高さの分、先に行きがちではあるが。
時折立ち止まりかけたり、一応速度を合わせるようには努めているらしい]
さっきの奴の、首輪。
[森まではそんな感じで、森に着いた後は逆にミリィについて行く形で。
問いにはそんな答え。
単語から邪推さえしなければ、猫のことだと推測はできようか]
[ウェーバーさんにお茶菓子のことを指摘されるとえへへと肩をすくめた。
食器を運ぶのに手を貸そうとそちらに歩み寄る。]
そういえば、さっき二人めの怪我人て言っていたけど、あの崖崩れで誰か怪我した人が居るんですか?
[手を動かしながら、その舌も休まることはない。]
[エーリッヒの呟きで飼い主はようやく猫の動きの理由に思い当たった]
あァ、いかんいかん!
これツィムト、おやめ!
坊は勝手にお邪魔してておくれ。嬢、お菓子じゃ。
[皿をリディに押し付けるようにして、猫を追う]
[歩調を合わせてもらって、どうにか遅れずに通りを抜け]
さっきの……。
[森に入ると、下草を踏み分けて進みつつ、ほんの少し思案の素振り]
猫さんの……ですよね、首輪。
[人に首輪、というのは普通はない、という突っ込みの入りそうな事を呟いた。
白い鳥が、突っ込むようにくるる、と鳴く。
その内に、たどり着くのは、蔦の絡まる木の所。
大小の葉が重なり、色と影のコントラストを織り成す自然の造形]
これ、なんですけど。
ね、綺麗でしょ?
[中に入ると予想外に中は賑やかで、保育園でも始めたかと思ったのは口にはせず]
ヨハナ婆、ギュンター爺に告げ口した――
[投げようとした台詞は、それより真っ直ぐ何処かへ向かう猫に阻害された。
その上、少女の問いの答えを思い切り指し示されて、ぱちり瞬く]
……わわ。
いたずらっ子なんだ、ツィムトってば。
[突然押し付けられた皿をそれでもしっかりと受け取って、ウェーバーさんを見送った。
来訪者を振り返り、軽く首を傾げるとお茶の準備を続ける。]
あ、ヨハナおばあちゃん。
えーと、
……なーむ?
[誰に対してだかはわからない。]
[それからさっきの、お菓子をいただいていた部屋に戻る。]
[まだ紅茶が残っている。]
ちょィとアーベル、見てないでお止め!
[楽しげに見ている青年に声を投げて、薄茶猫に手を伸ばす]
あァもう、ツィムトおやめったら。
今日はお客さんなんだよ!
[猫を追って行ってしまった家主の、問いに対する答えに再度来訪者を振り向く。
目を瞬く金髪の青年をなぜか尊敬の目で見上げ、矢継ぎ早に質問した。]
貴方が怪我したの?
崖からおっこちたの?
崖が崩れるところ見た?
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