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きみは自らの正体を知った。さあ、村人なら敵である人狼を退治しよう。人狼なら……狡猾に振る舞って人間たちを確実に仕留めていくのだ。
どうやらこの中には、村人が4名、人狼が1名、占い師が1名、霊能者が1名、狩人が1名、C国狂人が1名、共鳴者が2名、智狼が1名いるようだ。
全員、揃ったようじゃな。 皆に大事な話がある。
にわかには信じ難いが……この地に『人狼』と呼ばれる脅威が潜んでいるらしい。
既に、被害も出ている。皆、十分に気をつけてな。
[…ざわ…]
…ぇ?
[ふと、何かの気配が感じた気がして…ふり返るも、辺りには観光客しか居なくて…]
…
[一つ瞬きをするが、周りが一層騒がしくなると、目を丸くし…祭りが始まったことを知った]
[……一瞬の静寂、その後のどよめき。
村に転がり込んだ当初は、この瞬間を楽しみにしていたが]
……はじまったかぁ
[青年は賑わう窓の外をぼんやり見つつ
カツレツにフォークをつきたてる。]
[やや暫く悩んで、追加で2本。
一本は苺ジャム、もう一本は特注で、コンデンスミルク1リットルの中へ沈めたもの。]
まー、迷惑かけたみたいだし…
[天空に光の花が咲き、数瞬遅れてドーンと空気を振るわせる音]
お、始まったかな?
[日が変わり、村の各所から歓声が上がる。
自然、表情は緩んで]
…やはり良いものだな、始まりというのは。
[何かが一瞬で変わるような、そんな錯覚さえ覚える]
[窓を閉じ、ようやくランプを灯して身支度を始めた]
[声をかけてきた、青年と少女に挨拶を返そうとして、ふと、言葉を切る]
…ああ、始まったのね。
[少女は、一瞬だけ目を伏せる]
こんばんは!
[その表情は、すぐに消えてしまったけれど]
[ざわめきが強くなる、風の感触が、どこか、変わった気配]
っと。
祭り、始まったなっ!
[その事実を改めて認識して、はしゃいだ声を上げる。
憂いはしばし、横に置こう。ふと、そんな思いが脳裏を掠め]
[動こうか、動かないか、子供はとても悩んでいる。
なんだろう、なんだろう。
空にひかり、あかるいひかり。
大きな大きな花が咲く。]
花火、綺麗……
「夕食を一緒にとるから遅くなる」
[…という伝言を持って別荘に戻ってきた彼女を待っていたのは、主のお母上の、にこやかな笑顔。]
「迎えに行くのは、少し待ってあげて」
[――きっと、可愛い孫との水入らずの再会の時間を、出来るだけ長くしてあげようという心遣い。]
[そうして、彼女も夕食をとってから、迎えにと急いだのだけれど。
屋台のある表通りの人込みは、半端ではなくて――裏路地を迷いながら進む内に、祭りはもう始まってしまっていた。]
…流石。
[大玉の花火を見て…目を細めると、歩む速度を速め…広場に出た。
花壇のレンガに腰掛けると、まだ手の中で温もりを感じる包みを開け…マフラーをずらした]
…はむ。
[と一口。
もぐもぐ。花火を見ながら、ホットドックを食べ始めた]
―――…あ、れ?
[夜空に咲く花にも気を止めずに、…ふと、何かを探すように視線を巡らせて。
しかし、一寸前に声を掛けた少女から返事が返ってこれば
何でも無かったかの様に視線を戻して、へらりと笑みを浮かべる。]
うん、こんばんは!
……あ。そーだ、ミリィも一緒にご飯食べにいかない?
[どんどん増えていく道連れ。]
いやー、ほんっと…今日は代わってもらってすまねっす。
明日からはちゃんと見回り当番出れるっすからー。
[今日の当番を代わってもらったナイトハルトさん(29歳、左官屋の次男)に差し入れを渡し、再び喧騒の中へ。]
[窓の外が、空に上がる光球の影響で明滅する。
明滅からさほど送れず響く低音。]
[青年はそんな中、黙々とカツレツを食べていく]
[空に開く、花火を見やりつつ、一つ、嘆息]
毎年の事だけど、どんどんハデんなってくなぁ……。
[ぽつり、呟き。
リディがミリィを誘うのを聞けば、今夜も盛り上がるなぁ、と思いつつ]
ま、みんなで食いに行った方が盛り上がるしなっ。
一緒に行くかー?
…
[見上げた眸に映る、大輪の華]
[それに見とれてか、行き交う人波の中ぼんやりと立ち尽くす]
[先程見掛けた姿の事等、忘れてしまった様だった]
−酒場−
[ひょこっと覗き込んで、カウンターの隅で食事中のターゲット発見、ロックオン。]
ぉ、アリさん居た居た♪
[とっとこアーベルのところへ。]
…………
[少女は、夜空を見つめていた視線を、ゆっくりと地上に戻す。その瞳は、未だ天空の花の光を映したように煌めいて、そのまま、たっぷり一分ばかりの間を置いて]
…ごはん?
[返事と言うには、あまりにも微妙な返事を、誘ってくれた少女に返す]
[祭り見物に席を立つ人は多くても
今時分、入店するもの珍しい奴はいない。
………………いない筈なのだが…なにせ、相手がエーリッヒ…]
……………エーリッヒ……
[昨日背中にあった重さを思い出し、
”また背負うはめになるのはゴメンだ”とばかりの渋い顔で
青年はエーリッヒを迎え(?)た]
[相変わらずの白の装具を纏えば階下へと。
酒場となるこの場は相変わらず賑わっていて。
カウンターに青髪と金髪の青年を見かけるも、先日も同じようなところで見かけたようなと思うだけで声をかけることもなく。
主人に部屋の鍵を預け、扉の外へ]
…うわ。
[昼よりも遥かに増えたように見える人並みに、思わず声が出た]
[――ふる、と頭を振り、先を急ぐ。
やがて、なんとか辿り着いた家では――主は既に帰った後だと言われて、呆然。]
どう…しましょう……。
[一人で帰れると言い切ったらしい主を探しながら、きょろきょろと歩く。
――その手を、誰かが掴んで。小さな悲鳴。]
そっ!ご飯。夕ご飯……には遅いから、夜食?
[勧誘から一分の空白を物ともせずに、ニコリと笑みを浮かべて。
ほぼ引っ張るような形で相手の手を握れば、脳内勝手に道連れ決定。
…もしこのまま着いていってしまえば、巻き添え決定だろう]
よーし、皆でご飯だー!ベアちゃんも行くぞー!
ユリアンにぃ、何処に食べに行くのっ?
[皆で、との言葉に歩を進めつつも、
何処へ行くかは知らなかったらしい。行き先を問い]
[…人が増えてきた気もするが、今座っている所は少し道から外れているし、腰も掛けれるし…花火を見るにはなかなかの特等席である。
ホットドックを食べ終えると、その包んであった紙を畳んで丸め…]
…
[ふと、ここ数日で見慣れた少年が視界に入る。
…立っていて辛くはないだろうか。
おーい、と声をかけるも、この喧騒じゃ届くかは分からなかった]
[ベアトリーチェの言葉に、一つ、瞬いて]
あー、舞姫かぁ。
あ、でも、どーせ広場に行くんだし。
儀式もすぐには始まらないはずだし、まずは腹ごしらえしとこーぜ?
[ぽふ、と頭を撫で。
それから、リディの問いに]
あー、いつもの酒場。
あそこが一番味がいいからなっ。
[にぱ、と笑って言い切った]
空?……あぁ、花火ね!
[ベアトリーチェの言葉に、上を見上げて。
納得したように一つ頷けば、少女の頭を一撫で]
じゃあ、後でおいでねー?
風邪を引いたり、迷子にならないように気をつけて、
知らない人には、物をもらってもついていったりしちゃダメだよ?
物……は、貰ってもいいかもしれないけど。
[あれよあれよという間に片手を引っ張られる。しかし少女のぼんやりとした頭に状況は浸透していない]
夕御飯…じゃなくて、夜食なの?
ああ、でもリディ!
[少女の瞳に初めて不安の影が過る]
こんな時間に食べたら、太ってしまうわ!
[大問題らしい]
[人波に暫し圧倒されていたが、上空に光を感じて空を仰ぐ。
途端、光に遅れて走る音]
花火……また、盛大だな。
[そう言ってまた、表情が緩む。
消えた華を追うように次々と火の華は天上を彩って]
[リディの言葉に、子供はこくこくとうなずいた。
何か少し、わたわたしている。]
大丈夫です。
迷子になったら、施設に、戻ります。
風邪も、気をつけます。
やー、うん。もう大丈夫大丈夫♪
[へらっと笑って勝手にアーベルの隣の席へ。]
あー、かーちゃんがよろしくってさ。お礼くらいしとけって言われた。
[たぷんたぷん言ってる練乳の包み(中にはソーセージの入ったドーナツが漬けてある)を手渡してみたりとか。]
りょーかいです、ユリアン隊長!
リディ隊員、ただいまより酒場に向かいまーす!
[敬礼の形で右手を額へ添えれば、
ミリィの手を握ったまま酒場へと向かう道を歩みだす。]
だいじょーぶ!ミリィは十分痩せてるし。
ってゆーか痩せすぎだから、むしろもうちょっと食べないとダメ!
あたしお昼から何も食べてないから…順番的には、夕ご飯?
[……正しくは、大量の間食が入っているのだけれど]
[花が闇に消えた一瞬、視線を外す。
人込みから少し外れたところに、見覚えのある顔――というか、マフラー姿。イレーネ、と言っただろうか]
なかなかよさそうな場所、のように見えた]
[人込みの中を通り抜け、そちらに足を運んで]
君も、来ていたのか。
[声をかける]
[一人で残る、というベアトリーチェに、ちょっとだけ眉を寄せ]
ん、まあ、お前はしっかりしてるから、大丈夫だろっけど……。
[それでもやっぱり心配な訳なのだが]
まあ……だいじょーぶか。
この村で、施設の子に手ぇだしたらどうなるか、しらねぇヤツはいねーだろーし。
うん、風邪引くと折角のお祭りも楽しめないし。
迷子になったら、ちゃんと施設に帰るんだよー?
…っと、おろ?
[フルーツ飴の屋台へと駆け込んだ少女の様子を見て
んん?と首かしげ]
[彼女を捕獲した祭事実行委員いわく。
――衣装合わせのお時間をいただいきたい、らしい。]
えっ、でも、まだ私……ご主人様を探…っ!
[先に別荘に行ったが入れ違いで、服のサイズもわからないと言われたらしく。
絶対に逃がしません、とやたらと元気なおばちゃ…もとい、婦人に引きずられて。
ずるずるずる。]
ていうか、誰が隊長だっ!
[お約束の突込みをしつつ、自分も歩き出し。
少女たちの会話にやれやれ、と肩をすくめる]
……いや、お前は少し考えた方がよくね?
[昨日の様子をふと思い出して、ぽつりと]
[馬は存分に楽しませた。自分がバテるくらい。
だからもう暫くは自分の好きなように動いたっていいだろう。
さて、何をしようか]
[そんなことを悩みながら酒場の脇に突っ立ってるでかいのが一人。
はっきり言って邪魔でしかなさそうだ]
[ぁ、気付いたのかな?
…実際は自分の声に気付いたのではないとしても、すぐに気付いてくれたのは少し嬉しく]
うん。始まりは花火…そして、ね。
舞、って決まってるから。
[小さく笑むと、自分の隣のレンガを軽く叩き]
…見て行くんなら、座らない?
[苺飴を手に持って、子供は首を傾げる。
苺にしたのは失敗だったかもしれないと、
少し思ったかもしれない。]
大丈夫です、無理しません。
[にこにこと笑う。]
大丈夫、かしら?痩せ過ぎ?ほんとに?
[なんだか自信たっぷりに言い切られてしまったので、少女はとまどいながら、手を引かれるままに歩きだす。ちらりと隣のユリアンの顔を見上げたのには気付かれたろうか?]
[勝手に隣の席に腰を降ろしたエーリッヒに眉を顰め
静かにカツレツをエーリッヒの手の届かない反対側に逃す。]
……本当に大丈夫なのか…?
[頭が大丈夫そうじゃないのはいつものことだけど]
あんまり、おふくろさんを心配させるなよ。
[そう溜息をつきつつ、とりあえず紙袋を受け取る。
受けとれば”たぷん”とする紙袋に首を傾げ中を覗き見る。]
[そこにはコンデルスミルクでふやけて剥がれた衣と
丸裸になった棒が刺さったソーセージが1本]
………………嫌がらせか?
[ちら、と見上げるミリィの視線には、何気にそちらを見ていた事もあって一応気づいてはいたけれど]
……?
[多分、意味があったとしても、何もわかっていない。
相棒が、呆れたようにきゅう、と鳴いて、頬をてちり]
や、ほら。おまぃさん甘いもの好きだし?
[さらっと。]
あー、俺はキャベツとソーセージの煮込みー。
キャベツてんこ盛りで。
[マフラーを解きつつ注文。]
ミリィはだいじょーぶっ!
というか、逆に痩せすぎてて大丈夫ー?って気分。…ちゃんと食べてる??
[僅かに眉を寄せつつ。確かめるようにミリィの腰周りに腕を伸ばしながら問い。
ベアトリーチェが苺飴を手に笑って言えば、その言葉に大きく頷いて。
手の中の苺飴に、一瞬だけ視線が釘付けになったかもしれない]
そりゃー引率者のユリアンにぃが隊長ですよ!
それで、副隊長がヴィントね! ……あ、逆でもいい!
[ちなみに、ユリアンの「考えたほうが良い」という言葉は
華麗に彼女の耳を通り抜けたようだった。]
これが、妖精祭りの始まり、なのか。
[……悪くないと、小さく。]
ふむ。
立ったままよりも、そちらの方が楽しめる、か。
[僅かに、思考。しかし、興味が勝ったか]
そうしよう。
[手元の、食べかけのりんご飴をくるりと回して。
一応、レンガを払ってから、其処に腰掛ける]
[俯くミリィにまた、きょとん、として]
……どした?
祭りの熱気にでも当たったか?
[どこまでも素で聞いている。
相棒が、処置ナシ、と言わんばかりにへしょった]
ていうか、リディ、あれだ。
人にゃそれぞれ見合った体躯っつーもんがあるんだから。
無理に進めるな、な?
[ミリィとじゃれる?様子に苦笑しつつこんな事を言って]
……逆でもって、なんだこら。
[最後の一言には、さすがにむぅ、と]
甘いものが好きなのと悪食は断じて違う
[額に手を当てて盛大に溜息をつきつつ
…溜息でコンデルスミルクの表面がちいさくタプン。
いっそ、となりの金髪に「病み上がりに体力つけろ」と
この紙袋の中身を流し込んでやろうかと思案]
ぇぇ。そう。
毎年、使えるお金が、増えてるかは知らないけど…
どんどん、凄くなってくわ。
[小さく頷くと…また一つ花火は上がり…]
んー、座ってる方が、疲れない、でしょ?
人混みの、中で…立ってるのも、辛いし。
[隣に腰掛けるミハエルの手に林檎飴があるのを見ると小さく微笑み]
…楽しんでるようで、何より。
[結局は目覚める要因となった空腹を満たそうかと。
この酒場の食事も美味いけれど、やはり祭りなら出店だろう]
[白い姿はふいと人波に乗り、適当に屋台を物色を始める。
人波に乗り過ぎてまた迷子になるだろうことは*今は忘れて*]
[少し目を見開いて]
[それでもそのあどけない笑顔に、口許は綻んで]
…そう。
[ベアトリーチェの目線の高さまで屈んで、頭を撫でようと]
[飴を持ちかえ、右手を伸ばした]
僕の、きょうだい。
[子供は、口の中で呟いた。]
妖精になったきょうだいが、
僕をあわれに思ったのかなぁ。
[言葉は、子供の口の中だけに止まった。
子供の頬笑みは、いつもより、幸せそう。]
えと…そんなに不健康じゃないと思うわ。
森で野宿しても平気だし。
[相変わらず、少し戸惑い気味だったが、明るい友達の声に励まされるように、少女の顔に微笑みが戻る]
ヴィント隊長…素敵かも。
[少女は夢見る瞳をネズミに注いだ]
[伸ばされた手を、おとなしく受け入れる。
子供の金色の髪が、優しい人に従って、
さら、さら
零れる。震える。]
ええと、あのね。
ノーラさん。
[長い栗色の髪には、雪のように白い花冠を乗せ。
身に纏うのは、ふわり、ふわりと何枚も薄絹を重ねた、花弁のような真白の衣装。
そして背中には――淡い淡い紫の…蝶のような羽根。
妖精である本当の自分の姿とは全然違う、華やかな衣装に、ほんのり頬を染めて。出番を…待つ。]
体躯、かぁ。………うー…そーだよね。
ゴメン、ミリィ。無理に食べなくてもいーよ?
……って、野宿ってすごいね!あたしした事ないや…。
森で野宿するぐらいなら、多分、あたしより健康的。
[ユリアンの言葉に、漸く思い当たったのか
戸惑う少女へと小さく頭を下げて。
むぅとした様子には、きょとんと首を傾げた]
え、だって隊長の立場に不服そうだったから、
ヴィントとの2択にしてみたのだけど。
無闇やたらに豪華にするのは、資金の無駄遣いだと思うが。
[そうは言いつつも、矢張り視線は、花火へと]
立っているだけならば、問題は無い。
……この人の波は、確かに、少々厳しいものがあるが。
[その後に付け加えられた言葉に、きょとんと、瞬き。
イレーネの目の向いた先を見て、……バツの悪そうな表情に]
店主に勧められたんだ。
[自分は悪くない、と言いたげ。一口、齧る]
そっか、ならいっけど。
[ふるふる、と首を振る様子に怪訝なものを感じながらも一先ず納得して。
夢見る瞳には、何となくやれやれと]
いや別に、不服とかじゃねーけど。
[何となくため息をつく肩では、当の相棒がぴょい、と立ち上がり、思いっきり胸を張っていたりする訳だが、それはスルーして]
……ま、いいや。
とにかくいこーぜ、今日は特別、奢ってやっからさ。
[にぱ、と全開の笑顔で言い切った]
[振り付けは、辛うじて…覚えている、はず。きっと。
失敗しても、笑って誤魔化せばいいとも、言われた。
けれど、出番だと促されれば、緊張しない訳がなく……
震える手を、きゅ、と抱きしめて。
一歩、一歩、舞台の中央へと……足を進める。]
[ミハエルの言葉には小さく苦笑し…]
…この村にも、花火師さんが居るから、力を入れたいのよ。
こういう、お祭で…皆に、知って貰えれば…自分を、売り出す、チャンス、でしょう?
…あたしも、少し、気持ち…分かる。
[花火に視線を移し…また、ミハエルに戻す]
ん。だから…ここ、お気に入りの、場所なの。
[くすり、と小さく笑うと]
…そう…
でも、お祭も…良いモノ、でしょう?
[友達の、ごめんという言葉に、少女はふわりと笑う]
ううん。リディは、私を心配してくれたのね。ありがとう。
野宿は楽しいのよ。綺麗な星や、大きな月を森の中で独り占めできて、とても素敵。
今度一緒に泊まってみる?
[ふと、ミハエルの視線が花火から移っていることに気付き…]
…ぁ。
[ミハエルと一緒にいた少女…舞姫の衣装に身を包むその姿に、少なからず胸が躍る]
…
[が…立ちつくすその姿に、小さく首を傾げ…]
[―――視線が、集まる。
音が…ざわめきが、静まっていく。
誰もが『舞姫』を見上げる、その中に――主の姿を見]
[安堵したように、にこ、と笑んで。]
[最初の一音に合わせ、指先を、*高く上げる*]
へー…野宿とかしたことないけど、スッゴイ面白そう!
森の中って、ちょっと怖いイメージがあるけど…
ってホント!?一緒に泊まってもいい!?
ミリィが一緒ならすっごく楽しそうっ!
[夜の森には入ったことがない自分には、とても新鮮で。
投げられた提案にぱぁと笑みを浮かべれば、繋いだ手をぎゅうと握って]
って、わーいやった!
ユリアンにぃの奢りっ!
ありがと!今度何かお返しするからっ!
[きゃあきゃあとはしゃいだまま、その足取りは酒場へと]
―通り→酒場―
お返し、ね。
ま、それなりに期待しとくわ。
[リディのはしゃいだ様子にくくっ、と笑いつつ、酒場へと。
そろそろ、儀式の時間だなーと思いつつ]
[進めば進む程ごった返す人]
[その先には祭りの華があるのだから、当然と言えば当然で]
[漸く辿り着いたその先]
……嗚呼。
[丁度舞い始めたその姿を見て、小さく微笑んだ]
ええ、私もリディと一緒なら楽しいと思うわ。
[にっこり笑って、少女は友達の手を握り返す。いつも他の人には夢のようだと笑われる、おとぎ話や神話の世界の物語を、彼女は笑わずに楽しそうに聞いてくれる。彼女に話すための美しい星の神話を探しておこう、と心の中で少女は決めた]
[遠くからでも、幾重にも重ねた白き花の如き衣装は闇の中にもよく映えて、天に満ちる星の光と色とりどりランプの灯に、淡い羽根がふわりと浮かび上がって見えた]
[舞台の中央で動きを止めたその姿に、あわやと思ったが。
彼女が微かに笑んだかのように感じられ、小さく息を吐いて、目を伏せた]
……お気に入りの場所か。
君のおかげで、よく、見えそうだ。
昨日といい、本当に、世話になっているな。
[再び緑眼を開いて、イレーネにそう答え]
……ああ。悪く、ないと思う。
[ぽつりと、言った]
[音と共に舞姫の手が動き…
その姿に小さく、ほぅ、と息を吐く]
…ん、どういたしまして…
とは言っても、あたしも、ミハエルさんには、御世話になったんだけどね。
[舞台で踊る姿を頬を緩めながら見つめ…]
…良かった。
[少しだけミハエルの方を向き…口元に笑みを零すと、視線は舞台に]
うん、すっごく楽しみにしてる!
[ミリィから手を握り返されれば、えへへ、と笑みを返して。
儀式の音楽に耳を傾けながら、友人の手を引いたまま酒場の扉を開く。
その中に見覚えのある姿を見れば、あ。と小さく声を上げた]
アーベルにぃ、こんばんはー!
……何食べてるの?
[彼女の踊る妖精の舞は、彼がよく知っているダンスとは、また違う。ふわり、ふわりと、真白の花弁と薄紫の羽根が揺れ]
……僕が?
何か、しただろうか。
[一瞬、イレーネに視線を戻し。首を傾げ、問う]
[酒場に入ると、少女はくるりと辺りを見回し、ユリアンと目が合いそうになった瞬間に、また頬を染めて俯いてしまう]
もう、踊りが始まったかしら?
[必死で話題を探すように、呟いた声も小さくて。誰かに届いたかどうか]
[――その頃。
彼の母親――フィーリネもまた、使用人の反対を押し切って別荘から出、喧騒から些か離れた場所で、その舞を見ていただなんて、彼は知りもしなかったのだが。
とは言え、彼女の容姿は人目を惹いてしまうものだから、彼が周囲に注意を向けたならば、気付けたかもしれない。
柔らかな微笑に、穏やかな眼差し。昔の自分を、其処に見ているかのようだった]
おー、やっぱ賑やかだなー。
[酒場に入れば、見慣れた顔がちらほらと見受けられ。
適当に挨拶しつつ、椅子の一つに落ち着く。
ミリィの様子に気づいていたかどうかは全く不明、更に気づいていたとして……*果たして何と、捉えるやら*]
[暫くその幻想的な舞にみとれていたが、聞き覚えのある声に気がつく。]
あ、リディ居た居た。
昨日はすまんかった。
…まー、あんまし覚えてねぇんだけど。
[フレンチドッグイチゴ味の包みをわたしつつ。]
[青年はエーリッヒがいなくなってやっと静かに食事が出来ると思ったら…]
………今度はリディか。
[たぷつく紙袋をカウンターの隅に置き、振りかえる。
そこにはリディと愉快な仲間達。]
……………カツレツ…くってる
[リディの質問に答えるべく、
フォークに刺したカツレツを示す]
[…懐かしい。
自分では出せなかった舞の魅力を引き出せているようで、羨ましいとも、ソレを見れて嬉しいとも思う]
…ん。
あの子…に、舞姫、勧めてくれたんでしょ?
[言葉少なに言う]
…あたしも、出店出せたし。
え、どしたのーミリィ。踊り?見たい?
[ミリィの小さな声に、はたと振り向けば
良く聞き取り無かったのか、こてりと首を傾げ。]
あ、エリにぃだー。もー風邪はダイジョーブなの?
全然昨日なら気にしないでもいいのにー…って何、これ。
[エーリッヒの言葉に気付けばそちらへと視線を移す。
包みを受け取れば、問いつつも包みを開いて]
熱下がったなら良いんだけど…
少年の手の甲を恭しく取ったり、口づけ落としたり。
ぽけぽけにも程があるから。
[包みから出てきたフレンチドッグに、目を丸くしつつ。
イチゴ味と聞けば、おぉぉ?と小さく歓声を上げる。
ありがとー!と、大事そうに包みなおせば
恐らく記憶に残ってないだろう昨夜の出来事をぽつりと]
……カツレツ。うん、そりゃ見れば判るって。
また昨日のアーベルにぃとは、えっらいギャップの激しいものを…。
あ、ううん。踊りは、また見られるから。
[どこかぼんやりしていた少女は、友達の言葉に笑って首を振る。そして、彼女の話しかけたうちの一人…金髪の青年にふと目を止めて、小さく、あ、と声を上げた]
あの…やっぱり風邪ひいちゃったんですか?
[森で起こしてあげなかったのは、やっぱり悪かったかと、少し罪悪感を感じた]
いや、俺も甘いものだけで生きられないから。
[甘いものだけで生存出来るならそうするが…
生憎普通の体質だ。肉も野菜も必要だ。]
……それに、甘くはなくても
ここの店の食事は美味いから
[美味くなければ、甘くないものは食べたくないと言わんばかりの口調]
……………
[イレーネの言葉に、ああ、その事かとは思いつつも]
最初にユーディットに勧めたのは、あの、実行委員の男だろう。
僕は己の思う事を言ったまでだし、自分の利をとっての行動だ。
[礼を言われる事ではない、と呟いて]
[視線を逸らすように動かした、その先に、――見覚えのある姿]
……母上?
[すっと立ち上がり、彼にしては珍しく慌てた様子で、其方へ。
見付かった母親の方はと言えば、悪戯のバレた子供のような笑みを浮かべて。御身体に障りますと、彼がそれを心配する光景は、*年相応に見えただろうか*]
[青年の戸惑いにも気付かぬ様子で、にっこりと少女は笑う]
でも、無事に戻れて良かったですね。妖精の輪の近くで眠ってしまっていたから、あちら側に行ってしまったかもしれないと思って、少し心配してました。
[少女自身はその妖精の輪の中で眠っていたわけだが、その点は気にしていないらしかった]
[やがて、酒場のマスターに注文を問われ、少女は甘いワインとチーズと黒パンを注文して、席についた。友達に言われたとおり、夜食で腹ごしらえをして帰ろうと*考えているようだ*]
…そう? じゃあまた踊り見に行こーね!
[友人の首を振る様子に、僅かに首を傾げながらもにぱっと笑って。
アーベルの言葉に、きょとんと]
…人間、糖分があれば結構飲まず食わずでも生きられるんだって聞いたよ?
[何を求めているのか]
んー、けど、ここのご飯が美味しいのは賛成っ!
あたしも食べる。ユリアンにぃの奢りだけど!
[近くの席へと座れば、店員へと声を掛けて。
とりあえずシーザーサラダを一つ注文]
…ん。
でも、結果的に、あたしにも益があったわけだしね…
…エーリッヒじゃ、あの子、誘えなかっただろうし。
[ふられてたしね、と、小さく笑い…]
…母上…?
[見れば、毎年祭りを見に来る貴族の一人で…
ぁぁ、アソコの子だったのか…と今更ながらに気がついたらしい。
目を瞬かせたが、舞姫の舞の方に視線を*戻した*。
…その笑みは、何に対しての笑みかは…分からなかったが]
[なんとなく、赤毛の…確かミリィだったか…少女の飲むワインが気になったが
それよりも、気にすべくはリディの発言]
………そうか…糖分だけでも…
[青年の目が真剣に光る。
自分の限界を試したいわけでもなんでもないが
結構、本気で試してみるのもいいかもしれない]
[それにしてもユリアンは豪勢だ…
リディの食欲を考えるととても青年には
彼女に奢ることなんて出来ない]
[リディの「ユリアンの奢り」を聞いて、
青年はユリアンを尊敬の目で眺めた]
うん、何かの本で読んだよー?
糖分とか、油分とか…遭難のときとかは飴だけで1週間は保つって…
………。
[目の前の青年の目が光ったのに気付いたのは…幸か不幸か。
青年のためを思えば、止めるべきか応援するべきか…]
……まぁ。うん。
好きなものが沢山食べれたら、案外生きていけるんじゃない…かな?
[歯切れの悪い返事を返しつつ、運ばれてきたサラダにフォークを突き立てる]
一週間…………狙うなら一ヶ月か…
[俺なら一ヶ月はもたせてみせる
…と、無駄な誇りを胸に抱いたとか抱かないとか。]
失敗しても、本望…な気もするしな
[青年はリディの普段とは違う歯切れの悪い言葉に気がつかず
応援と勘違いしたのか、真剣に頷き
食べ続ける甘いものはなんでもいいのだろうか?
と、実行プランを*計算し始めた*]
[一ヶ月。…その呟きに思わず無言でサラダを口に運ぶ。
一ヶ月、どうするつもりなのか。
―――そんなこと、当人に聞かなくたって安易に予想がついた]
本望、か。
…とりあえず、身体。壊さないように、ね?
[…余計な事を言ってしまったかもしれない。
そう気付いても最早後の祭りだった。
真顔で返された頷きに、曖昧に笑みを返して。
どうにか、彼が無事に断念してくれる事を祈りつつ
追加注文のために、店員へと向けてひらりと*手を上げた*]
[昨晩食事を済ませ、祭り開催で賑わう村を自宅に戻れば
短い睡眠で、周辺の掃除に駆り出された青年。]
[数人で組んで通りや、村の入り口辺りのゴミを払う。]
[…………その異変が起きたのは、
何人かで村の入り口を掃除している時だった。]
[同じように掃除に駆り出された青年の一人が、
村の入り口まで来ると、しきりに歩きづらそうにするのだ。]
[他の青年が「おいおい、それは今度は何の"妖精がいる"アピールだ?」と
笑う中も、その青年は歩きづらそうに村の入り口を掃除する。
勿論青年アーベルも「…手の込んだPRだ」と苦笑し
その青年の動きを事実だと思うことはなかった。]
[何故か村の外に行こうとしない…行けない自分。]
[青年は掃除をしつつも、自身におきたその異変に首を傾げつつ
周りの人をなんとか誤魔化しながら、村の入り口の掃除を終えた時には、
掃除をしただけとは思えない疲労が体内に*蓄積されていた……*]
…ねむ。
[思わずなまあくび。
昨夜は酒場で青年団の先輩達に捕まり、この時間まで付き合わされた訳で。]
…病み上がりなんだからもっと気ぃ使ってくれても…。
[夜明け後の清掃タイムをだらだら手伝って、*自宅へ戻るのでした*]
[――まだ月の姿が薄く残る、夜と朝の間の刻。
裏路地を、ぱたたたっと翔る小さな影。
やがて、影は音もなく高い天窓から別荘に入り込んで、彼女に与えられた部屋へと姿を消して。
『ぽふり』
人の姿に変じるのとベットに沈むのと、どちらが早かったろうか。]
[――昨夜、舞いの儀式を終えた後。
花冠を祭壇に飾り、羽の付いた衣装から大き目の侍女服へと戻っても、彼女の意識は見事なまでに……ふわふわと浮き上がっていた。
にこにこと笑みを浮かべていた…らしい事は覚えているが、どんな受け答えをしたかは記憶に怪しい。
主親子と共に別荘へと戻っても、とても眠れはしなくて。
元の姿に戻って、天窓からそっと抜け出たのは、夜もかなり更けた時刻だった。]
─工房・自室─
[てちてち、と相棒に頬を叩かれ目を覚ます。何となく気だるいのは、昨夜酒場で騒いだからか]
んー……。
[唸るような声を上げつつ、目を覚ます。
ぼんやり見上げる天井には、光のアート]
ひかり……はね……。
[一瞬で変わって行くその形を見ながら、ぼんやりと呟いて]
……出店の準備、しねーと。
[それから、ゆっくりと起き上がって、こんな呟きをもらす。
作っておいた煌めく細工たちを、大切に抱え上げ、それからふと、作業台の上の紫水晶を見やり]
……はあ。
[嘆息。それでも、通りに出て自分の出店の準備を始める時には、*多分、きっと、いつも通り*]
[祭りの余韻か、まだ人影が残る表通りを避けて。
裏路地を辿り、昼間見つけた『Fairy's fire』と看板を下げた店へと、するり、潜り込む。
微かな青い光を放つ、馬のランプにぺこりと御辞儀して。
ランプ達の眠りを妨げないように…静かに埃を払い、床に散る小さなガラスの屑を掃く。
微かな青い光の中、小さな影が躍るように揺れる。
最後に、もう一度ぺこりと御辞儀して。
小さな訪問者は、するりと部屋から去っていった。]
[――そして今は、浅い眠りの中。
焦げ茶色の瞳を瞼の下に隠し、幸せそうに微笑んで。
天窓が僅かに開いている事にも、*気付かぬままに。*]
[昨晩。舞いの儀式が終わった後、機嫌のよさそうな母と、何処となく様子のおかしいユーディット共に、別荘に戻って。
ベッドに横になり目を閉じてからも、あの幻想的な光景は、彼の瞼の裏に焼きついていた。案外と直ぐに眠りに落ちたようにも、長い間、物思いに耽っていたようにも思えて、何時寝たのか覚えていなくて。
目が覚めた時にも、自分が夢の中にいるのか、現実にいるのか――
よく解らない、妙な気分だった]
[それでも顔を洗い身支度を整えれば、大分すっきりとして。
食事を済ませ、散歩をしたいと言い出した母と共に、柔らかな陽のひかりの満ちる道を、ゆっくりと歩く。
鳥の囀り。人の話し声。雪を踏む音。
この村では、時間が、遅く、静かに流れるように感じられる。
祭りは数日に掛けて続くらしく、彼が此処から解放される事は未だ無い。少しずつ慣れてきた所為か、他の要因か。来た時程に、早く帰りたいと思う事は無くなっていたが]
[途中、母の足が、急に止まる。
宙に視線を巡らせ、何事かを考え込む様子で]
母上?
[不思議そうに見上げて問えば、彼女は何でも無いと言うように、同い年の子に比べ、些か低い彼の頭をそっと撫ぜ、花笑みを浮かべたが、其処にほんの僅か、困惑の色が見えたのは、彼の気の所為だったろうか。
彼はもうそんな歳ではないのだからと言いつつも、それを拒否する事もなく。
母が再び歩みを進めるのに合わせ、母子は昼下がりの散歩を*楽しむのだった*]
[人影の無い馬屋の中。
動く気配を見せない愛馬の姿を見遣り息を吐く]
…どうしたものかな…
[ぼやいたところで聞いてくれるのは他の馬たちだけで。
もう一度、深く息を吐いた]
仕方が無いな、嘆いていたって状況は変わらん。
[踵を返せば宿の前の大通りに出る。
そういえば、イレーナとユリアンも出店しているのだろうか。
思い当たれば近場を歩く人に声をかけ*道をお伺い*]
――Midnight with the stars and you
Midnight at a rendezvous――
[人の良い老夫婦の営む小さな農場]
[長い髪を後ろで纏め、袖を捲り、くすんだ色のエプロンをつけて]
――Your arms held a message tender
Saying I surrender all my love to you――
[小さな声で歌を紡ぎながら、慣れた手つきで袋の中身を容器に移し替える。さらさらと音をたてて流れるのは、小さな穀物の粒の様だった]
よ…っと。
[重みのあるそれを持ち上げ、慎重に運ぶ]
[今日は祭りで忙しい農場主に代わり、家を空ける間の動物の世話を頼まれていた]
[不用心な気もしなくはないが、それだけ信頼されていると思えば悪い気はしない。何より生活費の為でもある]
[容器をあけると、鶏たちが我先にと群がり餌を突つく。これが終われば仕事も一段落、といったところだった]
[暫く眺めた後、外に出る。農場は殆どが雪や水溜まりで覆われていて、長靴越しでも地面の冷たさが伝わる様だった]
[祭りで賑わう大通りとは違って、此処には何時もの静けさがある。その横に伸びる道を真っ直ぐに行けば、村の入口が見える筈]
[と]
…――ッ
[くらり]
[一瞬視界が霞む]
[まるでそれ以上其方のほうを見ることを拒む様な]
[如何してそんな事を思ったのかは分からないけれど]
[再び顔を上げた時には、視界は正常を取り戻していた]
…
[きっと疲れているのだろう。今日は働き詰めだし――何より昨日は祭りの始まりの日だった]
少し、休みましょうか…
[台所を借りて、お茶でも淹れて]
[考えながら、家の中へと*入って*]
[子供は、目を覚ました。
明け方、太陽、上る頃。
すてきな舞姫は窓から眺めた。
綺麗だったから嬉しかった。
ううん、それよりもっと嬉しいことを
子供は思う。綻ぶ。]
お祭りは楽しい。
楽しいは幸せ。
あまいものも、嬉しいことも、いっぱい。
[それから子供はふと気づく。
どうして今までと違うんだろう。
お祭りだから、かわったのかな?
ううん、それはおかしい。
子供は首を傾げた。]
去年もいたのに・・・
[でも、子供は子供。
嬉しいことだからいいやと笑う。]
[子供はとことこ、村の外れに。
いつもの木の実をとりにいった。
はず。]
・・・?
[でもなんだか、同じところをくるくる回る。]
困ったなぁ。
[小さな声で、呟いた。
いつもと同じ道を、
*すすんでいるはずなのに*]
[自身で思っていたよりも疲れていたのか、それとも……他に要因があったのか。
いささか寝過ごしてしまい、飛び起きたのは太陽が真上にかかろうとする頃。]
すみません…でした……。
[恐縮しまくって先輩に頭を下げるも、起こさなくていいと言われていたとの事で。更に頭が下がったのは言うまでもなく。]
[主親子が散歩に出掛けるのを見送って。
寝坊した分まで張り切って、別荘中を駆け回る。
ぱたぱた。ぱたた。
両手に抱えた真っ白なリネンが、花弁のようにひらひら揺れる。]
[少女は、見慣れぬ部屋で目を覚ました。いつもより高い天井、少し広いベッド。森の中とは違う空気。しばらく首を傾げて、ああそうだったと思い出す。今日から祭りが終わるまで、街の宿屋に泊まっておいでと祖父に言われたのだ。毎夜人の数倍の時間をかけて夜道を行き来する孫娘を心配しての配慮だった]
明日になったら、おじいちゃんに何かお菓子を買っていこう。
[お下げを編み直しながら、少女は呟く。森番の仕事に祭りの休暇は無く、祖父が会場にやってくることはない。けれど、土産話をしながら一緒にお茶を飲めば、きっと喜んでくれるだろう。けれど、それは明日の話。今日は1日、祭りを楽しむつもりだった]
[つやつやとした赤い髪を念入りに編んで、少女は鏡を覗き込む]
がんばるのよミリィ、今日こそきっと。
[鏡の中の少女は、僅かに頬を染めている。スカートについた大きなポケットの中には、街でベビーシッターのアルバイトをして貯めた少女の全財産を入れた財布が入っている。どうしても、このお金で買いたいものが、少女にはあった]
……戻ろう。
[子供は、遂に諦めた。
諦めたから、踵を返した。
踵を返したら、なんと迷路を脱出した。]
……なんだろう、これ。
[少し首を傾げて、酒場へ向かうことにした。
出られない理由なんて、まったく浮かばなかった。]
あら?
こんにちは、椋鳥さん、こんなに寒いのに餌を探しに来たの?
そうだ、クッキーがあるわ。食べる?
[真っすぐ祭りの広場に着くのは、やはり少女には*無理らしい*]
─工房前─
[日々、賑やかさを増す通りの一画。
そこに、広場の楽団の奏でるものとはまた違った音色が響いている。
音の源は、宝石工房の前。
ランプの灯りに煌めく細工の並んだ台のすぐ隣。
木箱の上に腰掛けた青年が紡ぐ、オカリナの音色が澄んだ空気に響いて行く]
[音色に引かれた観光客が足を止め、次いで、煌めきに目を止める。
声がかけられれば音色は止まり、二言、三言言葉が交わされた後。
時に、煌めきは足を止めた者の手に渡り。
時に、それらは全く動く事無く。
いずれにしろ、ランプの灯火の下で、キラキラと幻想的な光の粒子をこぼして行く]
ふぅっ……まーまー、かね?
[元より、大した売り上げは期待してはいないけれど。
それでも、造り上げた者たちが誰かに喜ばれるのが嬉しくて、つい、笑みが浮かんだ]
…はぁ…
[小さく溜め息をついた。
外の賑わいは祭りの気分。
自身も心がはずむ…はず、だったのだが。
昨日の違和感、そして、今朝方見た夢。
夢にしてはハッキリと覚えていて…しかも、とてもじゃないが、良い夢とは思えなかった]
…
[ランプを眺めていく人々には微かに笑みを携え…
しかし、心内では何とも言えない…何かがあった]
甘くて、おいしくて、しあわせ。
[子供はにこにこ笑って、
一袋、買った。五つ、入ってる。
ちょっと考えて、もう一袋。
それからもうちょっと考えて、一つ、別に。]
……幸せなきもち。
[不思議なことは、夢だけには留まらない。
朝起きてみると、部屋の中の埃や…片づけようと思っていた工房のガラス屑が綺麗サッパリ無くなっていたのだ。
流石に少し不安になって、工房の中、店の中を調べたが…何も、盗まれているモノはなくて。
不思議なこともあるモノだと、小さく思ったのだが…]
…はい、ありがとう…
[指差されたランプを手に取ると、代金を受けとり…明るい緑を基調としたランプは子供の手に渡った]
…
[しかし、何かがおかしい。
何がおかしいとは言えないのだが…
むぅ。小さく唸り、視線を落とす]
はーいはいはい、参加する子はこっちへ並んでねー?
[例の派手な法被を着て、ご丁寧にもメガホンまで持たされ、ゲームイベントの参加者誘導中。
雪玉を投げて的に当たれば賞品がもらえたりとかするらしい。]
[とことこ、とてとて。
子供は大通りを歩いている。
右手に、二つの飴入り袋。
左手に、一つの飴入り袋。
と、目の前の大きな声。
きょとん、とした顔の子供。]
参加……?
[なんだろうと首を傾げた子供は、
酒場でふられたシーンを思い出した。
……なんとなく。]
[時が過ぎるにつれ、人の数が増えていく。
夜に近づくにつれ、灯の数が増えていく]
[人の声に、楽団の演奏が重ねられていき、活気付く祭り。
予定では夕餉の前には帰る筈だったのに、母はもっと見て行きたいのだと、子供のような事を言って。仕方ないと言ったふうに、彼はそれに付き合っていた。どちらが子なのか、解らない]
[その中を透明な旋律が通り過ぎて、ふ、と母が足を止めた。
彼女の視線の先を追えば、石細工が煌めきを放っていた]
て、何だよ?
[唐突な事にきょとん、としつつ問えば、相棒はきゅ、と声を上げて一点をじい、と。
視線の先には、金髪の少年の姿]
……おま、な。
あんま根に持つな、な?
[苦笑しつつ、小さな頭を撫で。
木箱から立ち上がって、細工を見つめる女性に軽く、一礼を]
[フィリーネはそっと其方へ歩み寄り、こんばんは、と店番の男に挨拶と共に一礼を。
そうやって露店を回るのは毎年の事、だそうなのだが。
彼自身はと言えば。
細工よりも、男の肩上の小動物に、目がいって。
今にも、“目を逸らしたら負け”な睨み合いを始めそうな勢いだった。
母はそれに気付かず――あるいは気付いているのかもしれないが、少し屈んで、肩に零れた金糸を片手で掬い上げながら、楽しげに煌めきを見詰めている。止める気はなさそうだった]
[少女は、一陣の風に飛び立っていく椋鳥を空に見上げる]
今日は、なんだか、空の色も不思議。
[柘榴石色の瞳で、菫色の空を見上げ、ふいに、思い出したように辺りを見回す]
大変!また暗くなっちゃう!
[長いスカートと赤いお下げ髪を翻し、少女はぱたぱたと広場に向かって駆け出した]
[祭りの時だけ見かける女性と連れ立ってやって来た少年に、どっかで聞いた姓だと思ってたら、と呑気に納得しつつ。
一方、肩の上の相棒は相変わらず少年にじぃぃぃぃ、と視線を向けている訳で]
お前ねー……。
[こうなると、最早処置ナシか。
そんな達観をしながら、問われるままに、石の説明をしていたり]
ぉ、ぷちリーチェもやってく?こういうの結構好きっしょ?
並んで並んで〜♪
[金髪の子供の姿を見つけて手招き。列には幼児から少年くらいまでがわいわい整列していたり。]
[翠玉の双眸と、つぶらな瞳とがぶつかり合い、火花の散る勢い。
当然ながら、何の利も無いのだが、これは最早、意地の領域だろうか]
[フィリーネはそれを余所に、にこにこと、至って平和に男と言葉を交わす。
彼女の瞳の色に似た、翠の煌めきを放つブローチを手にとって。
光を一つ、買い求める]
[子供は傾げた首を、
今度は反対側に、こてん。
エーリッヒを見上げて、雪を見て、
何度かくりかえして、こくんとうなずいた。]
やってみます。
ええと……ええと?
[子供はとりあえず列に並んだ。]
あ…!
[少女の目指す出店は、すぐに見つかった。それはもう、間違えようの無い、繊細で美しい煌めきが、少女の目を奪う。夢見心地で近付きかけて、そこに展開する緊張感溢れる?場面に、思わず足を止める]
ええと…
[天然の翡翠と、小さな黒曜石の対決は、それなりに見応えはあったけれど…止めたほうがいいのだろうか?]
ありがとうございましたっ。
……風の御加護が、ありますように。
[翡翠を選んでくれた女性に、心からの笑顔で一礼して。
細工を託す時の、決まり文句を口にする。
それから]
……いやだから、いつまでやってるかな、お前。
[肩の相棒に、呆れた声で突っ込みを]
[ふわりと微笑みを返して、フィリーネは男性に礼を返す。
「貴方にも妖精の導きがありますように」と紡いだ言葉は、届いたろうか。
そうして、今更気付いたかのように、我が子に目を向けて。
その視線を受け、慌てて、彼は鼠から目を背けて、居住まいを正した。
次いで灰色の鼠を見て、可愛らしいと言いながら、その頭をそっと撫でる。にこにこにこ。母は強し。
――かくして、彼と鼠との勝負は、呆気なく幕を下ろした]
こ、こんばんは!
[ユリアンに声をかけられた少女は、あわててぴょこりとお辞儀をした。一瞬で赤く染まった頬を見られはしなかったろうかと、どきどきする胸を必死で押さえ、小さく深呼吸してから顔を上げる]
[勝負の中断に、相棒は一瞬不満げにきゅう、と鳴くものの。
可愛いといわれて撫でられれば悪い気はしないようで、きゅぅぅ、と声を上げる。
それでも、やっぱり同じ決意が回ってるらしい。
だからそれに何の意味があるのかと。
突っ込みたいのは置いといて]
ん、こんばんわだな。
[走ってきたミリィに、いつもと変わらぬ笑顔を向ける。
……例によって例の如くというか、特に何も気づいてないというかだが]
[列に並んだ子供たちは次々と、まぁるい雪玉を渡されて投げる。
的まで届かなかった子供にも、小さなクッキーの包みをプレゼント。]
おぉぉ!すっげー!おめでとっ!!
[10歳くらいの男の子がど真ん中に当てて、小さなおもちゃの弓矢をもらっていったりとか。]
[ゆっくりと、手足が同時に出てしまわないように気遣いながら、ことのほかゆっくりと、少女は出店に歩み寄る。そして、金色の髪の少年に、にこりと微笑みかけた]
こんばんは、ミハエル。今日はお母様と御一緒なのね。
[一目で少年の母と判る、美しい婦人にも、小さく膝を折って一礼する]
[順番はようやく子供の所に。
子供は雪玉を渡されて、
ちょっと悩むように渡してくれた人を見上げる。
実行委員の人がにこにこ笑っている。
子供はこくりとうなずいた。]
……届かなかったです。
[投げるのに失敗したらしい。
子供は、じぃっと実行委員の人を見上げた。
クッキーを貰って、両手はいっぱい。]
……エーリッヒさん、どうぞです。
[てててと近づいた子供は、
なんとか片手に荷物をまとめて、
もう片手で飴の袋を開ける。]
この前の……
[傍に来た少女を見て、彼が呟く]
[ちなみに、きゅぅと鳴いた鼠から視線を其方に向けた母は、青髪の男と赤髪の少女を見て、あら、と小さく声を上げたのだが、彼の方はそんな事には気付いていない]
……ああ、そうだ。
[何と言葉を返したものか、少々、居心地悪そうに。
そんな様子を察したのか、はたまた、お邪魔だと感じたのか。
母は、ミリィにこんばんはと挨拶をして、息子がお世話にだとかなんだとか、儀礼的な台詞を述べると、二人と一匹に礼をして、彼を促してその場を立ち去ろうと]
? ……はい、解りました。
[母に倣って形式的に軽く頭を下げ]
[フィリーネは何やら、にこにこと微笑んで、楽しそうな様子だ]
[どこか視線が彷徨ってるように見えるミリィの様子に、きょとん、としつつ首を傾げ]
ん……?
どーかしたか?
[問いかける様子は、どこまでも、素]
ありゃりゃ残念〜。
今当ててればあのクマちゃんもらえたのになぁ。
[しゃがみこんでリーチェをなでなで。]
ん?飴?ありがとな〜♪
[ひとつもらって口の中で転がし、またおしごとに。]
いえ、お世話だなんて、そんな…あの、お買い物はもう…
[少女は優し気に微笑みかけてくれた婦人に、もう行っちゃうんですか、と言いたげな視線を向けてみるが、彼女はにこにこと笑うばかりで]
………
[ちらと、店の主に視線を向けると、明らかに不審そうな顔をされている]
あの、あの、私………石細工を買いに……
[ようやく少女の口から出た声は、虫の音より小さい…かもしれない]
先程、済ませたところだ。では。
[機微に気付かぬ彼と、悪戯っぽい微笑を浮かべた彼の母親は、そう言うと、工房の前を後にする。
頑張ってね、と小さく彼女の呟いた声は、風に乗って消えた]
[妙に落ち着かない様子に(その理由とか全く考えていない訳だが)、大丈夫なのか、とさすがにちょっと心配になった所に聞こえてきた声に、一つ瞬いて]
そっか、ありがとなっ。
一応、種類はそれなりにあるけど……どんなのがいいんだ?
[それから、本当に嬉しそうににぱ、と笑って見せる。
……肩の相棒が呆れたようにへしょり、としているのは言うべくもなく]
[そのまま帰るのかと思いきや、母はまだうろつき足りないらしく。
体調の心配はあったが、楽しそうだからと、敢えて止めはせずに、人通りの多い道を歩く。不思議と人にぶつからないのは、避け方が上手いからだろうか]
[次に聞こえて来たのは、子供達のわあきゃあと騒ぐ声。
どうやら、何かのゲームイベントの真っ最中らしい。
祭り実行委員着用の、派手な法被が見え隠れしている]
Ca, c'est ma vie
Chante et rit
Toi aussi
[柔らかく年齢を積み重ねた女性の声が唄をつむぐ。
その女性の膝で唄を聞くのは青い髪の少年。]
[広くはないけど、暖炉では薪が燃える温かい小さな家の一室。
祖母の聞かせてくれた、御伽噺と唄は、
祖母の生まれ故郷の村で彼女が出会ったある事件と
その時あった―妖精―が唄っていた唄……]
―青年 アーベルの自宅―
[青年はゆっくりと寝台から身を起こす。]
…………
[何年ぶりだろう、祖母の夢を見たのは。]
[青年は朝の掃除での異常な疲労から
祭り見物にでも使えとばかりの空いた時間を
自宅に戻って少し横になっていた。]
[その横になった時に、どうやらうとうとしていたようで。]
…………懐かしいな…
[エーリッヒが昨日よこした、
コンデルスミルク漬けソーセージとドーナッツの生地
…が入った紙袋からソーセージを取りだし水洗い。
軽く茹でなおして温める。
それから、戸棚に置きっぱなしで堅くなったプリッツェルを
深めの皿に開けたコンデルスミルクに浸し食事にする。]
[…考え事をしながら食べ尽くす。]
……ごちそうさま。
[空になった皿を見ながら、
どうして今さらあんな懐かしい夢を見たのだろう?]
[それに朝起こったことは一体なんだったのだろう?]
[しばらく考えこんでみたが答えは見つからず、
自宅で悶々としててもしょうがなさそうだ…
と、溜息と共に結論づける。]
[横になったことと食事で体力を取り戻した青年は
着古したコーとを羽織ると、賑やかな広場へ。]
[――その頃、別荘では。]
…え?
ほんとうに…準備しなくていいのですか…?
[空も茜と藍に染まり、そろそろ夕餉を支度をと厨房へ戻ってきた彼女を出迎えたのは、今日は主親子の夕食は要らないという先輩の言葉で。
目を丸くする彼女に、イザベラは片目を瞑って内緒ね、とお母上様が最初から”そのつもり”で息子である少年を散歩へ連れ出したのだと種明かしして。
更に、「私は毎年来ているから」と、初めて村に来た彼女にも祭りに行ってきたらと勧めてきて、困惑。
――結局、妖精ゆえの(?)好奇心が勝って。
よろしくお願いします、と頭を下げて、祭りの会場へと足を向けた。]
[道を教えて貰いながらも、行く先々の出店に気を取られ、持ち前の方向音痴も発揮して、見事に無関係の道を行く。
ふと思い出したように通りすがりの人に道を聞けば逆方向を示され。
何かもう諦めた]
此処らは何が……ん?
[開き直って通りの周辺で楽しもうと見回した目に、見覚えのある姿が映る。確かノーラと名乗った女性だったか]
[少し考えた後、人を避けつつ歩み寄って、驚かせないようにそっと彼女の肩を叩いた]
……って、おーい?
[突然固まられてはさすがに驚く訳で]
ほんとに……大丈夫かよ、お前?
調子悪いんなら、少し座って、休んだ方がいいんじゃね?
[やや心配そうに問いかけつつ。ごく何気なく、大きな瞳を覗き込むように見つめ]
[結局、いまいち優れなかった体調も、祭りの喧騒の中に飲まれる頃には特に気にならない程度になっていて]
[やはり疲れの所為だったのかとぼんやり思いながら、片手には先程買った大判焼きの紙袋を抱えて]
……?
――あら、こんばんは。
[肩の感触に振り返って、赤髪の騎士の姿を目にし。微笑んで挨拶を返す]
[いつもより、遠い場所に、或いは、まったく異次元に、少女は旅していたようで。はっと気付くと目の前に、覗き込む瞳]
…きゃあああああ!!
[お約束]
はいはい並んで並んで〜♪
[きゃぁきゃぁはしゃぐ子供たちを誘導したり、喧嘩してるのをなだめたり。
楽しそうにおかしの包みを持っていく子らを見送ったり。
未だに特賞のクマちゃんは、棚の上に鎮座したまま。]
…あれ?
フィー姉さん〜! 久しぶりっすー♪
[見物客の中に、見忘れるはずも無い姿を見つけて手を振ってみたりとか。]
[振り返った姿に安堵したように此方も笑みを浮かべた]
こんばんは。
良かった、もしも間違えていたらどうしようかと。
[そう言って、ふと彼女の手にある紙袋に目を留める]
…それは?
[漂う甘い匂いに興味を惹かれたか、僅かに首を傾げて問う]
わとっ!?
[いきなり悲鳴を上げられればそりゃまあ、さすがに驚く訳で。
思わず、後ろに下がって硬直。
突然の悲鳴に当然の如く周囲の注目は集まる訳だが]
え、あ、え?
俺、なんかした?
[多分、何にもしてないから問題なのだろうけど。
肩の相棒、呆れたようにきゅうう、と鳴いて]
[はたと気付くと、困り顔のユリアンと、周囲の奇異の視線…というか、すでに取り繕う隙もなさそうな状況で]
あ、あ、あ…ご、ごめんなさいっ!なんでもないんですっ!!
ええと、あの…さっき、そこに妖精さんが見えた気がしてっ!!
でも気のせいだったみたいです。ごめんなさい、ごめんなさい!
[それでも少女は、必死にお下げをぴょこぴょこ振り回し、回り中に頭を下げる]
嗚呼、人も多いですしね。
知り合いを見かけても似た人だったら如何しようかなんて、良く思います。
[周囲を見渡して小さく笑い。それから視線につられ、紙袋のほうを見て]
あ、良かったら食べますか?
[袋の口を開けて差し出す。幾つ買ったのやら、結構詰まっている]
[にこにこと見詰めていた母が、手を振る人影に視線を移す。
あら、と頬に手を添え、其方に歩んでいくと、ふわりと優雅な礼。
「御久し振りね、エーリッヒくん」
親しげな口調で、元気だった?などと尋ねている。和やかな雰囲気]
[彼は、そんな母と、目の前の男――この間の毛布男だ――を見比べ]
……御知り合い、ですか?
[嫌な予感。]
[周囲の人々が苦笑と共に視線を外すと、漸く息をついて、少女はユリアンに向き直り、真っ赤な顔で頭を下げる]
ほんとにごめんなさい…
[今度は消え入るような声だった]
あ、あー、えーとー……。
[何か必死に頭を下げるミリィの様子に、しばし呆然としていたものの、何とか気を取り直して]
そ、そーかぁ、妖精さんかあ。
ま、まあ、祭りだし、そんな気がしても不思議はないよなっ。
[何とか強引に話をまとめよう、と試み]
あー、いやども、すいません、お騒がせしちゃって。
[遠巻きにしている通行人に、自分も頭を下げてみたり]
[ほぼ一年ぶりの再会に積もる話も以下略で。]
ぉー、この子がミハエル君っすかー。
ほんっと、賢そうでいい子っすねぇ。天使のように可愛いって…話以上っすよー。ほんっと。
[馴れ馴れしくしゃがみこんでミハエルの頭をなでてみたりとか。]
あ、雪投げゲーム参加していかない?
私は土地勘もないから、不安からか人を知り合いと見間違えることも実際にあってね。
[少し肩を竦めて苦笑する。
何処でも土地勘はないだろうという話なのだが。
差し出された大判焼を思わずじっと見つめて]
ああいや、ちゃんと自分で……
[言いかけて、袋の中に随分詰まっていることに気付く]
…もしかして、誰かのところに持って行くところだったのかな。
[邪魔をしてしまっただろうか、と]
[取りあえず、周囲が落ち着いた所で、一つ息を吐いて。
落ち込んだ様子のミリィの様子に、苦笑めいた表情を向け]
ああ、いや、気にすんな。
それよりほら、木箱しかないけど。ちょっと、座って休んどけよ。
[さっきまで自分が座っていた木箱を示しつつ、軽い口調でこう言った]
[少女は泣きそうな気持ちだった。しかし、ここで泣いてもなんにもならないどころか、ユリアンを益々困らせてしまうのは明白で、それだけはなんとしても避けたい事態なのも明白だった]
ありがとう。
[だから、零れそうになる涙を飲み込んで、座るように奨めてくれたユリアンにがんばって笑いかけてみた。うまく笑えたかどうか判らなかったが]
[会話の内容は何ともほのぼのしていて、長閑な空気]
[どうやら、この男の、彼に対する記憶はすっぽ抜けたかどうかしているらしい]
……………
[母の方は我が子を褒められて、嬉しそうに花笑みを浮かべている]
[しかし、彼はと言えば、それどころではなくて。
やけに親しげに頭まで撫でてくる手を振り払おうにも、思考が停止している]
……あの、母上……この者……いえ、方は……
[きょとん、とした表情の母。知らなかったの?という風に]
「エーリッヒくんはね、貴方のはとこに当たるの。
優しいお兄さんだから、仲良くしてね?」
[にっこり。笑みと共に、紡がれた言葉]
[出店の数々を、一つ一つ丁寧に覗き込んで、ゆっくりと歩く。大き目の侍女服に身を包み、髪を後ろに緩く纏めている彼女が、昨日の『舞姫』と気付く人はほとんどないようで、気を張ることなく存分に祭りの雰囲気を満喫していた。
――いくつ目かの角を曲がろうとしたその時。
「妖精さんが見えた(気が)」という声が響いて。
びくっ、と反射的に身を竦めてそちらを見れば、見覚えのある青い髪の青年と紅い髪の少女がいて、思わずくるりと踵を返し、反対方向へ。]
嗚呼、いらっしゃるのは初めてでしたっけ。
[相手の方向音痴っぷりは多分知らなかったと思う]
え?…あ、いえ。
そんなつもりは無かったんですけど、お店の人がおまけだって。
[だから遠慮なさらず、と肩を竦めて。…にしても貰い過ぎだ]
[しかしそんな我が子の様子に、フィリーネは首を傾げるばかり。
それどころか、照れているのかなどと思っているらしく。
エーリッヒの誘いの言葉に、彼の代わりにとばかり、「遊んでいこうかしら」と、暢気に答えている]
[向けられた、ややぎこちない笑顔に笑みで返して。
それから、台の上に置いたままだったオカリナを再び手に取る]
取りあえず、なんだ。
落ち着いたら、見てってくれな、俺の細工?
[軽い口調で言いつつ、再びオカリナを奏で始め]
今まで祭りと休暇が重なることがなくてね。
ずっと来たいと思っていたら、今回は運良く休みが貰えたんだ。
[方向音痴はこの村で知っているのは恐らく一人だけ。多分]
おまけ…
[一体どんな豪気な店員だったのだろうとちょっと思ったが]
では、遠慮なくいただこう。
[礼を述べてから一口齧り、口内に広がる甘さに頬が緩む]
…ん、美味いなこれは。
んー?ちょっと人見知りさんなのかな?
ま、いきなり知らない人ばっかのとこ来たんじゃしかたないかー。
[にこにことしゃがみこんで笑顔で覗き込んでみたりとか。]
[他の団員から、何サボってんだと叱責の声。]
あー、はいはい、いま戻りますよっと。
[振り向いて適当に返答すると、ミハエルに向かって手を差し出し。]
ほら、いくぞ?
お母さん見てるんだからいいとこ見せて来いや。
男だろ?ん?
[たくさんの人を見ていたから、
子供は二人の人に気づくのが遅れた。
首を傾げる。
綺麗な金色の髪の女の人。
一緒にいるのは、ミハエルだ。
子供はすぐに思い至って、手の袋と顔を見比べる。
でも少年は雪投げをしようとしているように、
子供には見えた。]
えーと……。
[正直、色々と暴れたい気分だったのだが、母の手前、それは出来ずに。
覗き込まれれば、それはもう。僅かばかり、顔が引き攣っただろうか。
差し出された手を、ちらと見るも、それには触れず]
言われなくとも、解っている。
[……むっすりと。]
はい、あとで、ちゃんと見せてもらいます。
[幾分か落ち着いた声で言った少女は、ユリアンの奏で始めたオカリナの音に聞き入っている]
そうなんですか。お忙しそうですものね、騎士さんも。
[楽しんで頂けると良いのですけど、と]
[にこにこと食べる姿を眺めながら]
そういえば、これからどちらへ?
[急ぎ足で、人の多い方へ多い方へと逃げて。
気が付けば、なにやら賑やかな人垣と…聞き覚えのある声に、ようやく足を止めた。]
……ぁ。
ご主人様…と、実行委員の人…?
[ナンパされたので顔の記憶はあったものの、名前の記憶はないらしい。]
[子供は、なんだか仲のよさそうな(※主観)
三人の姿に楽しくなった。
にこにこしながら、あたりを見回す。
そこに女の人を見つけた。]
ええと、裏口の人で、ふったひと。
それで。
綺麗な踊りのお姉さん。
[子供は頬笑みを灯らせた。]
まぁ、確かに休みは少ないかとも思うけどね。
充分に楽しませてもらってるよ。
[街の賑やかさとは少し違って新鮮だ、と周りを見回し笑って]
んー…今は特に目的地というのはないかな。
[ぺろりと大判焼を食べ終え、行儀悪く指を舐める。
単に迷って今日は諦めたなんて絶対に口にしない]
[青の瞳を、空に向ける。
心なしか、そこには陰りの色があり。何事か、悩んでいるような様子も伺え。
……それはそれで、色々とらしくないというか何というか、なのだが]
[よく似た金の髪を持つ三人の微笑ましい様子(主観)を、静かに笑みを浮かべて遠くから見守っていると。
どこからか、あどけない声が聞こえて。]
……?
[「踊りの…」という言葉に、そちらを見れば、こちらも金のをもつ、少女が両手に袋をいくつも持ってこちらを見ていた。]
…こんにちは。
[主に綿菓子をくれた少女と気付いて、にこ、と笑み。]
[手渡された雪玉を、革の手袋を嵌めた手で、確り掴む。
やけに真剣な表情で、的をじっと見詰め。
赤い線から、出ないように]
[母の方は、ユーディットの姿を認め、ショールを掻き寄せつつにっこりと笑みかけ]
こんにちは。
[にこにこ、笑ったまま、子供は頭を下げた。]
ええと、昨日、綺麗でした。
近くで見れなくて、残念です。
[それから、飴の袋をあけて、
一つ、どうぞと差し出した。]
それなら良かった。
[笑みのまま、もう一つ如何と勧めてみる。本当に幾つあるのだろう]
嗚呼、それなら少し一緒に回りません?
1人より2人のほうが楽しいですから。
[良ければですけど、と首傾げ。勿論目的地を諦めたなんて知る由もない]
[大きく、振りかぶって][けれど、無駄の無い動き]
[――ひゅっ]
[雪の玉が、風を切る音が聞こえて]
[すぱぁんっ]
[的に当たるその音は、些か鋭く][白が、闇に、散った]
[主がどこかへと離れていく様子に、小首を傾げて見送れば、お母上がこちらに気付いたらしい様子に、慌ててぺこりと頭を下げた。
そして、赤い線の前に立ち、雪玉を手に的を真剣に見つめる主の姿に、思わず手を胸の前で握り締めて、じっと見つめる。]
[もうひとつと差し出されて少し悩む。
確かに美味かったしもうひとつくらい容易く腹に収まるけれど]
いや、私はもう満足したから。
出店している人に差し入れしたらどうだろう?
[彼女が以前すでに差し入れに回っているなど露知らず。
提案には笑みを浮かべて頷いて]
ああ、其方がよろしければ是非。
[今日の迷子は回避できるだろうことに喜んだなんて以下略]
ん、あ、ああ。
ゆっくり、見てくれな。
[笑みに笑みで返して、一つ、頷く。
ランプの灯火の下、石の細工が弾く光は、それを見つめる者を包む燐光のヴェールにも見えて]
…………。
[なんか、妙な感覚]
おぉー!!
[観客がどよめく。
お見事っ!!と実行委員のおっちゃんたちが拍手。
賞品の中から好きなものを選ぶようにとミハエルに。]
そう…ですね。
[ちょっと瞬いて、袋の中を覗き]
[まだだいぶ残っている。昨日回らなかった辺りに差し入れても良いだろう、と]
じゃあ、行きましょうか?
[快諾を得ると袋の口を閉じ、微笑んで]
[相手の以下略などやっぱり知らない]
夏の夜の月の涙…若草の雫に濡れる春の花…霜の降りる夜の星の欠片…
[少女はひとつひとつ、きらめく石と繊細な細工を見つめて、その印象を言葉にしていく。柘榴石の瞳がきらきらと輝く]
[きらり。
屋台の灯りに反射して、掌の中に納まった小さな石は七色に煌いた。]
[チェーンへと繋がったそれを顔の前にぶら下げては、掌へ。
それを繰り返して……早1時間は経過しただろうか。
その石を見つめるには不釣合いともいえる顰め面で
考え込むように小さく唸れば、ペンダントを見つめたまま再びため息が漏れた。
角度を変えれば、石の色がきらりと変わって…確かに綺麗ではある。
―――綺麗ではあるのだけども。]
……うっがー!もー、コレをどーせいっちゅーねんっ!
[ギリギリと握り締めていたペンダントを、乱暴にポケットへと突っ込む。
…考え続けるのは、残念ながら少女の性に合わなかった。
思考を断ち切る様に息を吐けば、壁に凭れ掛っていた身体を起こして。
ぐ、と一つ伸びをすれば、―――小さく、くしゃみ。]
[流石に1時間外で立ち尽くしていれば、身体も冷えるだろう。
……小さく苦笑すれば、少女はそのまま珍しく*帰路へと*]
[頭を下げる金の髪の少女につられ、こちらもぺこりと頭を下げて。告げられた褒め言葉に、更に深く頭を下げる。]
ありがとう…ございます…。
[あまりにも無我夢中で、どんな舞だったのか自分では覚えていなかったけれど。
もう二度と立つ事はないであろう舞台を、そう言ってもらえた事が嬉しくて、頬を仄かに染めて、ふわりと微笑んだ。]
…いただきます。
[差し出された飴玉を、大切そうに受け取って。そっと口に含めば、甘い幸せの味に、頬がゆるんだ。]
[詩を吟じるような言葉。それに、何となくこそばゆいような、そんな感じを受ける。
造形への評価や批判はしょっちゅう受けるけれど、こういう風に言われた事は、余りないから]
ええ、それでは…
[す、と些か芝居がかった一礼をして]
まずはどちらへ参られますか、レディ?
[そう言って微笑みを向けるも、それは長くは続かず。
むず痒そうな照れ笑いに変わった]
よー、アリさん。
[アーベルにてしてし挨拶。]
ん?金髪羨ましい?ブリーチとかしてみたらー?
[ニヤニヤ笑いつつ、アーベルの髪の毛をわしゃっと。]
[芝居掛かった様子に、少しきょとんとして]
[相手が照れたように笑うのを見れば、此方も笑う]
ええ、では…
[辺りを見渡して]
[遠く、先程歓声が聞こえたほうを見]
あっちに行ってみません?
[エーリッヒの微笑にも、不機嫌そうな顔]
[賞品を眺めてみても、彼にはどれがよいか解らなかったし、母に聞いても、好きなものを選べと言われるだけだと、思ったから。
少し、考え込むように、手に顎を当てて。
視線を逸らしたところで、金髪の少女の姿を認め]
……ベアトリーチェ。
君はどれか、欲しいものがあるか?
[彼女に声をかける。
どうやら、こないだの礼をする心算らしい]
[青年は金髪軍団を眺める]
[妙齢の女性+中身はあれだが20台中盤+少年+少女]
[脇に控える茶髪の女性はメイドの用な服装]
……ふむ、なかなか絵になるな。
[なんとなく幸せそうな構図に見え目を細める]
[…なことをぼんやり考えて入たら、
エーリッヒにいきなり髪を撫でられ]
………っな!
それは、そこの少年少女だけにしておけ!!
[と、慌てて手を跳ねのける
…人目のある所での行動に若干頬が熱くなる。]
[どれも本当に綺麗だと、溜め息をついて、少女は顔を上げ、ユリアンを見つめる。この美しいかたちを産み出したのは、この人なのだ、と、そう思って]
[笑われるだろうという予想は裏切られず。
更に気恥ずかしくなり少し頬を掻いて]
[では、という言葉に彼女の目線の先を見る]
ああ、では行こうか。
[ひとつ頷いて、歓声のした方へと一歩踏み出す。
女性を先に立たせて人混みを歩くのは躊躇われ常に先を行こうと。
道を間違えそうになれば彼女が止めてくれるだろうと期待して]
[邪魔にならないよう静かに後ろに下がり、主と少女の微笑ましい遣り取りを見守る。
……ついでに金髪と青髪の青年たちの様子も、こちらは別の意味で距離をとって、にこにこと見守っている。]
[ニヤつくエーリッヒの鳩尾に拳を容赦なく叩きこもうと手を握る]
……………………覚悟は出来てるな
[座った目でエーリッヒを見据える]
[見つめられ、何となく、妙な感覚継続。
ランプの灯火が生み出す燐光には、幻惑の効果でもあるのかと。
ふとそんな、らしくない事を考えて]
お菓子……
[子供は、なんだろうと首を傾げる。
それから、はたと思いだした。
あげたものといえば綿菓子しかない。]
ええと……ええと。
でも、僕が、あげたくて、あげたから……
[子供は困ってしまったようだ。]
やだなー、そんな怖い顔することないじゃん〜♪
[へらへら笑いつつ。]
ただねぇ、蟻くん。俺もまー、一応自衛団員よ?
それなりにある程度は、ね?
[一つ頷いて]
[少し下がった辺りの位置を保ち、ついて歩く]
ええと…
あ。
[やがて見えて来た一際賑わう屋台に、見知った何人もの姿を見つけた]
そうか…”ある程度”だが覚悟は出来てると言うこと…だな?
[青年は一つなづくと”とんっ”
…と、軽くエーリッヒとの距離を詰めて
握り締めた拳を当初の予定通り、鳩尾を狙い突き出す]
[困惑した少女の様子に、此方も首を傾げるも。
ふむ、と顎に、軽く握った手を当てつ]
……ならば。
僕も、君にあげたいと思うから、あげる。
何か問題があるだろうか。
[無骨な言い方なものだが、彼なりの誠意のようだ]
[ユーディット同様、母はにこにこと、それを見守っている訳だが]
ん、ああ。
……あ、わりと自信作だったヤツだ、それ。
[選ばれた物に、何となく、嬉しいものを感じつつ]
……風の御加護が、ありますように、と。
[口上だけは、忘れない。これは大事な決まり事]
[何かを見つけた様子の彼女の声に一度足を止める]
あれは…
[見覚えのある姿がいくつか見える。
賑わう様子に何か良いことでもあったのだろうか]
………
[声をかけようとして、見知らぬ青髪と金髪の青年の様子に思わず言葉が止まった]
[二人を見ての、フィリーネの一言はと言えば。
「エーリッヒくんったら、相変わらずね」
そんな言葉で。
何時もの事と捉えているらしく、さして心配はしていない]
……相変わらず、なのですか。
[頭が痛くなった。]
[ミハエルの言葉に、困ったようにわたわたしている。
子供は、あまり慣れていないようだ。]
ええと……ええと……
僕は……
[言い分はわかったものの、子供には何かを選べるわけもなく、
ただ困ったように、じっとミハエルを見た。
後ろの格闘技は後で結果を見ようと思っただけにした。]
[…ふぅ、と小さく息を吐くと、今残っているランプの数を数え…]
…そんなに、急がなくてもいっか。
[売り物のランプの灯りを一つずつ消していく]
…先、失礼します、ね…
[周りの出店の人々に軽く頭を下げると、自分の店の中へと入る…
ガラスのベルの音を聞きながら、ドアを閉めた]
…はぁ…
………前から思っていたが
この村の自警団は本当に大丈夫なんだろうか…
[伸びるほど殴ったつもりはなかったんだけど…と
地面に倒れ伏すエーリッヒに
自警団に関する疑問と、彼に対する軽い罪悪感]
[代金を払い、嬉しそうに、その青い花を身につけて、少女は微笑む]
ありがとう、ユリアン。今日は、ごめんなさい。
ヴィントも、おやすみなさい。また、明日。
[ふわりと風を纏うように、スカートの裾を翻し、少女は駆け出す。とくとくと、跳ねる心臓の上を押さえるように小さな拳を*握りしめて*]
ん、ああ……あんまり気にすんなっ。
[ごめんなさい、という言葉に、いつもの笑顔でこう返し]
お休み、またなー。
[走って行く背に、手を振る。
肩の相棒も一緒に、手を振って見送った]
[自分をじっと見詰める少女の様子に、彼は、ついと視線を賞品棚の方へと向け。
目に付いたのは、特賞の位置にある、大きなクマのぬいぐるみ]
……ぬいぐるみは、好きだろうか?
[そう、尋ねてみる]
[ぱったりと倒れ付したエーリッヒにさすがに驚いて。
おずおずと近寄り、跪いて、軽く身体を揺すってみる。]
…あの…大丈夫ですか…?
[…大丈夫には見えないから、聞いているのだけれど。]
さて、と……。
[相棒と、二人になった所で、一つ息を吐いて。
周囲の客足が途切れがちなのを確かめ、出店の片付けに入る]
……んでもって。
[やたら賑やかな一画では、何が起きているのかと。
今更のように気にしてみたりとか]
まあ…
昔からあんな感じで良くやってたし、サニーとも…
[だから多分大丈夫だと呟く声は、自分に言い聞かせているのかも知れない]
[ともあれ、集団のほうへと更に足を踏み出す]
[暗い店の中…しかし、その足取りには迷いはなく。
一つ、一つ…ランプに明かりを灯していく]
…
[七色の光を灯すと、机の上に鎮座する馬を撫でた]
探す…ねぇ。
…何を、探せば良いんだか…
[祭りの喧騒は店の外…
しかし、店の中では呟き、そして溜め息が大きく響いた]
はぁ…
[大丈夫と言われても伸びているのは本当に大丈夫なんだろうか。
此処の住人である彼女が言うなら大丈夫だろうと言い聞かせ。
ノーラが歩き出すのを見れば自分も集団に歩み寄る。
声をかけるのは何となく躊躇われたけれど]
……………
[メイドに背中をさすられ咳き込むエーリッヒに
そういえば病み上がりだったことも思い出し…]
…………………すまん。
[と、小さく謝罪]
[ベアトリーチェの様子を、眺め]
では、それを。
[端的に。実行委員の男に声を掛け、大きなクマを受け取る。
柔らかくて、ファンシーな作り。彼が抱えるにも、少々大きいか。
……金髪の少年とぬいぐるみという組み合わせは、妙に似合っていて、それもまた、おかしかったけれど]
[出店を片付け、ふらりと歩く。
宛もなく歩いたはずなのに、その賑やかな一画にめぐってしまったのは幸か不幸か]
……つーか、揃ってると賑やかだな、お前ら……。
[場の状況に、ぽつり。素で呟いた]
よかった…。
[生きていた(!)らしい事に安堵して、ほぅと小さな吐息を零す。
人間は短命らしいから、もしかしてと内心ちょっぴり怖くなっていたのは、誰にもわからなかったろうけれど。]
痴話喧嘩は…ほどほどになさって下さいね…。
[もしかしてお邪魔だったのかしら?
…と思いつつ、向かいに屈む加害者の青年に小さく苦笑して、静かに立ち上がり傍を離れた。]
[ぬいぐるみを持ったミハエルは、
子供にはかわいらしく写った。
よく似合ってるとは言わなかったけれど、
突然向き直られて、驚いた。]
え、えと。
大丈夫、です。
えと……あの……
ありがとうございます
[よく考えれば何が大丈夫なのかわからないが
子供は慌ててしまってあまり理解できていないようだ。
手首にかけた、どんぐり飴の入った袋が
ぶつかりあって、コツコツ音をたてる。]
[近くに来た頃には何とか落ち着いた様で]
ええと…。
良かったら…食べる?
[青年たちのほうに、持っていた紙袋を掲げ]
[殴られたばかりの人に勧めて大丈夫なのだろうか]
[違和感は何だったか…
ソレすらも微弱な感覚でしかない。
それとも、何かを見つければ、また何か変わるのだろうか…?]
…何、本気にしてるんだろ…夢、なのに。
[はは、とくしゃり。髪を撫で…
コートとマフラーを脱ぎ、寝間着を*手に取った*]
[少女の手首にかかった袋を見、自分の抱いたぬいぐるみを見て]
[飴同士のぶつかる、小さな音が、彼の耳にも届いた]
……大丈夫そうには、あまり、見えないが。
[率直な、感想を]
[メイドの発言に首を傾げながら
新に増えた女性の声に顔を上げればそこにいたのは大判焼き
……もといノーラで。]
[”食べる”?の問いには深く頷く]
[そういえば両手にいっぱいだった。
子供は思って、わたわたと慌てる。
手に持っていた飴を一まとめにする。]
ええと。
どうぞ、なのです。
[ミハエルに逆に差し出すも、
そうしたらお互い、もてないのは当然で。
子供は、はたと気づいて、こまった。]
[そもそも彼には、ぬいぐるみの影になっていて、それがよく見えず。
差し出しているのは、一応、解るのだが]
……………
[やっぱり、困った。]
[母がこっそりと、ユーディットに同意するように頷いていたのも、見えない]
[深く頷く様子に小さく笑って、紙袋をあけて差し出し]
[ついでに振り返り]
良かったら皆さんも。
[その場の皆にも声を掛けてみた]
[しばらく硬直していた子供は、
ノーラが何かをすすめている声に気づく。
そうして、はたと気づいた。]
ノーラさんにあげますですっ
[一袋だけはポケットにいれて、子供は両手を空けた。
とっても無理やりに。]
[会釈するノーラにどもー、と手を振りつつ。
差し出された紙袋の中身にわは、と嬉しげな声を]
え、あ、もらってもいい訳?
助かった〜、出店引っ付きで、ロクに物、食べてねーんだよなっ。
[それもそれでどうなのかと]
[ノーラからもらった大判焼きを一口
……口の中に広がる甘味にほっと一息つきつつ]
[ふと気づけば、金髪少年とベアトリーチェがオモシロい状況]
どうぞ。
[エーリッヒにも同じ様に差し出し。袋の中は例の如くで底が見えない]
[ベアトリーチェに袋を差し出され、半ば反射的に受け取る]
…あ。ありがとう…?
[ミハエルの抱える熊の縫いぐるみをその先に見、此方から渡すのはやめておいた]
[それから、ミハエルに手をのばす。
ちょっとだけ、子供は躊躇ったけれど]
もう、大丈夫。
もてます。
ええと……
本当に、ありがとうございます
[少し、照れたように言った。]
……………?
[何があったのかは、理解は出来なかったが]
そうか。
[一つ頷いて、ぬいぐるみを、少女に手渡そうと]
……別段、礼を言われる事ではない。
僕が先に、貰ったのだから。
[借りを返しただけだ、と言いたいらしい]
わは、感謝、助かるっ!
[幾つでも、と言われて、思わず声が弾んだ。
とはいえ、さすがに限界はあるので、自分と相棒の分と、あわせて三つ、袋からもらって]
……やっぱ、疲れてる時は甘い物が一番いいよなー。
[浸っている。肩の相棒も幸せそうだ]
[両手いっぱい、ぬいぐるみを受け取る。
とても大きいぬいぐるみ。
ほわほわと幸せの頬笑みが浮かぶ。]
でも、うれしいです……
[それから、そっと一つ、持っていた飴を、
手のひらで滑らせて、渡す。]
……………
[何と返したものか、暫し、迷うように視線を巡らせ]
……君が喜ぶのなら、その縫い包みも、喜ぶだろう。
僕が持っているよりも、ずっと。
[彼らしくもない台詞。途切れがちに、紡いで。
つい、受け取ってしまった飴には、困惑の表情が見えたか]
大事に、します。
[ふわりと笑って、子供はぎゅっと抱きしめる。
ぬいぐるみは暖かい。
暖かくてしあわせ。
それから、小さくあくびした。]
……今日は、もう、もって、帰ります。
一緒に寝ます
[ありがとうと最後にもう一度、
子供は言って、一生懸命、とことこと*歩いていった*]
[微笑ましげな皆の様子に気付かなかったのは、彼にとって、幸いだったろう]
[ぬいぐるみを抱えて去っていく少女を、見送って。
その後ろ姿が人込みに紛れて見えなくなった後、柔らかな微笑を湛え、見守っていた、母親の傍らに]
……母上。御身体は、大丈夫ですか?
[言葉少なであった事に、心配をして。そう、声をかける]
[幾らか会話を交え、フィリーネの気が済んだなら、*別荘へと戻る事だろう*]
[青年は今しがたみた微笑ましい光景に、小さく笑むと]
[そう言えば何か気になっていたことが有ったけど
でもそれがなんだったのか…]
[大判焼きの甘さに夢中になるうちにどうでもよくなり
もう少し祭りを見物したら、
今日は早めに家にかえろう…*と、考えた*]
[無事にクマの受け取りが済んだ事に、微笑んで。
去っていく一人と一匹(?)の姿を、静かに見送った。]
…ほんとうに…可愛かった……。
[余韻に浸るように呟いてから。
そっと主の後ろへと歩み寄り、*ちょこんと控えた。*]
[撫でられた相棒、嬉しそうにきゅ、と鳴く。
その様子に、懐いてるなこいつ、とかふと思いつつ。
とにかく今は、大判焼きにの摂取に、意識を集中する事にしたらしい]
[そういえばこの間、酒場で迷惑をかけたことを思い出して]
[帰りに寄って行こうかな、等と思いながら]
[有り余る大判焼きを自分でも一つ*手にした*]
[あれだけ配っても然程減っていない気がする紙袋の中身。
一体どれだけ入っているんだろう。
そもそも彼女は何個買ったんだろう。
そんな取りとめのないことを考えながら、やっぱりもうひとつ、と*ノーラに頼んだ*]
[ぼんやりとしている間に、周囲の人影はまばらになり]
ふうっ……俺も工房帰って、寝るか。
[今日は色々あったよな、とふと思い返しつつ。
のんびりとした足取りで、*家路へと*]
[――真夜中を過ぎ、月も眠る頃。
『ぽむり』
今日も今日とて元の姿に戻り、ベットから音もなく飛び降りる。
――けれど、足取り軽く別荘を駆け回ることなく、
小首を傾げて、なにやら思案中。]
[やがて、なにやらいい事を思いついたのか、ぱむ、と小さな手を叩いて。
今夜も天窓から、するりと、別荘の外へと抜け出した。
ぱた、ぱた。ぱたたた。
淡く光を滲ませる霜の上を、軽やかに駆けて。
目指すは、金と紅に彩られた森。
人間の…否、妖精の硬貨すら持たない彼女には、掃除くらいしかお礼の手段を持っていないのだけれど、飴をくれた少女が何処に住んでいるのかは知らなくて。
代わりに、少女の喜びそうな物を見つけられないかなと
――そう考えたのだが。]
[――やがて、彼女はぱたりと足を止めて。]
…だぁれ? いたずらをしてるのは…?
[きょろきょろ見回しても……わからなくて。
結局、森へ行くのは諦めて。
目立たない道はずれに咲く、小さな花をたくさん摘んで
*別荘へと戻ったのだった。*]
―工房・個室―
[さし込む日差しが目覚めを呼び込み、目が覚める。
青の瞳、しばしぼんやりと天井を見つめ]
…………。
[昨夜の事を思い返して、しばしぼんやりと]
……ちょい、散歩にでも行くかぁ。
[呟きつつ、身支度を整えて。
作業台の上の、紫水晶をまた、見やる。
それに映すべきカタチは、まだ見えない]
…………。
[ぼんやりとする頬を、相棒がてち、と叩いた。
その感触に我に返り、苦笑を一つ。
自室を出て厨房に向かい、軽く胃に物を入れてから、外へ]
[外に出れば包む大気はひやりと冷たく。
……それに負けない熱気の余韻はさすがと言うべきか。
ふとこぼれる、笑み。
そして、その足は森へと向き]
……何だ、これ……。
[村と森との境界線。
そこに、違和感めいたものを覚え。
しばし、立ち尽くす]
なんにもない……よな?
[問うた所で、答えはなく。相棒もまた、首を傾げるのみ]
[陽が、一番高く昇る時間。
きりりと澄んだ空気も緩み、日差しが優しく降り注ぐ。
はた、はた。はた、はた。
洗い上げられた真っ白なリネンが、風に撫でられて、
揺れる。]
[朝食の席に、母の姿は無かった。
イザベラに尋ねれば、まだ、寝所で休んでいるとの事で。
身体が強くないというのに、殆ど一日中出歩いていた所為だろう。矢張り、無理にでも連れ帰るべきだったろうか]
[食事を済ませ、毎日の日課――簡単な復習や運動を終えた後、母の寝所に向かう]
[コンコンと、規則正しく二度、ノックの音]
……ミハエルです。
母上、失礼致します。
[内からの返事を聞いて扉を開け、一礼。
半身を起こし、イザベラに髪を梳かれるフィリーネの姿があった。陽光を受けた金色は、宝石の如くに煌めく]
御身体の具合は如何ですか?
あれ程、無茶はなさらぬようにと申し上げたのに。
……医者に掛りたくないのでしたら、御自愛なさって下さい。
[何方が親だか解らない我が子の言葉に、母は楽しかったものだからと、困ったように笑みを浮かべた。侍女がそんな彼を宥める]
……母上に何かあれば、皆が……父上が哀しみます。
[無論 自分も、とは小さく。
それきり黙り込んだ彼を見、イザベラが退出する。
母は謝罪の言葉を述べ、細い腕を伸ばして、傍らに来た我が子の頭を撫ぜた]
[彼が口を開こうとした瞬間、フィリーネがくすりと笑う。
「そうね。
大事をとって――
明日には、温泉にでも行こうかしら」
無邪気に微笑みつつ、皆も一緒にと付け加える彼女は、*ちっとも反省していないようだった*]
[乾くまでには、まだまだ時間がかかりそう、と。
その間に、お使いに。
手籠の中には、買い物リストと言う名の地図が一枚。
そして――朝の一仕事を終えた後、与えられた部屋に戻って、小さな手で編み上げた、小さな花の小さな花冠が一つ。
渡すまでに萎れないよう、小さくおまじないを唱えてはあるけれど。ちゃんと遇えるかしら?]
[地図を見ながら店を廻り、身体を温める効能のある生の香草と、新鮮な林檎を買い求めて。
ぱた、ぱた、と来た道を戻る。
途中、酒場を通りかかって。
聞こえた嘶きに、ふと、足を止めた。]
[少し道を逸れ、ぴょこ、と馬小屋を覗き込めば。
見覚えのある馬が一頭、こちらの気配を察して首を上げて。
じぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
……何故か始まる、見つめあい。]
[勝った、と思ったのか、馬はふんふんと鼻を鳴らし。
その迫力に彼女は逆らいきれず……果物屋でおまけにもらった小振りの林檎を、びくびくと差し出した。
はぐり。
林檎を咥えた馬の注意が、完全に逸れた瞬間。]
………っ!
[涙ながらに逃げて行く姿が、*見られたりしたとか。*]
[子供は朝陽の下で目を覚ます。
隣に大きな茶色の頭。
ふわふわ、ふかふか。
柔らかくて、頬笑みが浮かんだ。]
嬉しいなぁ。
お祭りが始まって、いっぱい嬉しいなぁ。
[抱きしめるように眠っていたから、
ちょっと疲れていたけれど。]
こんな風に眠れるなんて、嬉しいなぁ。
きょうだいみたいな優しい人もいて、
きょうだいみたいに眠れるなんて
[ステージ近くの仮設テントの楽屋で、伝統衣装の装束を着付けられている。
黙っていれば以下略なのだが。]
つーかまー、今年はあいつがやるんだったんだけどなぁ。
[旅から帰らぬ旧友を思い出してぽつり]。。
[子供は熊を相手に首を傾げた。
それから少し考えて、熊を撫でる。]
行ってきます。
[同じ言葉を施設の大人にも、
言って子供は外へかける。
大人たちは、昨日の熊の話に、
花を咲かせ始める。
きっと一人の女の人が、
夜になる前に、お礼を言いに行くだろう。]
いってみようかなぁ。
[子供は、とても嬉しいようで、
もう村の入り口に向かっている。
しかし、村の入り口についたら、
なんだか体が重くなる。
芸人たちは陽気だし、
観客たちも飛び跳ねているのに。]
[しらずのうちに、きょうだいのような人に、
コエを投げていた。
本当は投げるつもりもなかったけれど。
そして大通りに戻って、たくさんの店を覗いていく。
夕刻、子供を見つければ、
頭に小さなティアラを飾り、
照れくさそうに歩いているだろう。]
[彼は、薄らと、目を開ける]
[――くらい。遠くに細い、月あかり]
……………!?
[勢いよく身を起こして、辺りを見回す。
屋敷よりも質素な、けれど、清潔に保たれた部屋。
意識がはっきりとしてきて、田舎の村にある別荘来ていたのだと、思い出す。
此処には煩い御目付役も厳しい先生も居らず、優しい母がいる]
[ゆっくりと、長く、息を吐く]
[部屋を出ると、イザベラが彼の姿を認めて(ちなみに、転寝してしまった少年を部屋まで運んだのも彼女だ)、機嫌良さそうに、施設の女性が御礼に来た事を伝える]
施設、の?
[覚えが無くて、彼は鸚鵡返しに問う。
けれど、侍女の話の中に、彼がぬいぐるみを渡した少女の名を見つけて、漸く理解した。それから施設の話も、幾らか聞く。彼は初めて、耳にする話]
……。そうか。
[短く答えると、夕餉の準備が出来ていると告げられて、彼は広間に向かった]
[施設の人が来た時には母もその場にいて。
歳の近い子もいるようだから息子と仲良くして欲しいだとか、温泉に一緒に行きませんかだなんて世間話をしていた事は、――彼の知らない話]
[結局大判焼きの行く末はと言えば、あの後残った分の大半が酒場の主人に提供されることになり。某青年程ではないが見掛けに寄らず甘党な彼は結構喜んでいたとか]
[そして]
……ぁふ。
[彼女は欠伸を一つ]
[暖炉の傍のロッキングチェアに腰掛けて、膝掛けの上には本が一冊。夕方帰ってきてから今まで完全に居眠りしていたという構図が出来上がっていた]
[伸びをして、それから小さく首を傾げて]
[先程まで何か夢を見ていた様な気がするのだけれど、視界が開けた瞬間に記憶の隅に追いやられてしまった]
まあ、…良いか。
[釈然とはしなかったけれど]
[気になることは、他にもあったけれど]
[少女の踏みしめる枯れた草の下、一度溶けて再び凍りかけた雪が、シャクシャクと音を立てる。ほう、と白い息を吐いて、少女は夜空に滲む月を見上げた]
やっぱり、閉ざされてしまっているのね。
[腕に提げた籠から、祖父に届けるはずだったマフィンを一つ取って、ぱくりと一口。村の中から出られなくては、森番小屋に帰ることも出来ない。祭りを楽しんでおいでと送り出してくれた祖父は、戻らなくても心配はしないだろうけれど]
でも、これって、村の人がみんな閉じ込められてしまっているってことよねえ?
[困ったわね、と、少女の見上げた林檎の木の枝で、しまりすの子供が小首を傾げた]
[月が、青白い光を優しく投げかける頃。
厨房では、小さくハミングしながら洗い物をする姿があった。流れる甘いメロディーに、どんな言葉を乗せているのかまでは聞き取れないけれど。]
〜〜、〜〜〜♪
[すっかり馴染みつつある洗い場の片隅には、数輪の小さな花がガラスのコップに飾られている。]
どこに行こう。
[子供は悩む。大通りはちゃんと見た。
お店はいっぱいだった。
そういえば少しおなかもすいてきたなと、
酒場に行こうかと考える。]
[擦れ違う人は皆、楽しそうで、祭りの熱気は少々の不安や懸念など吹き飛ばしてしまいそう。少女の足取りも自然に軽く、踊るようなそれに変わっていく]
Georgie Porgie, pudding and pie…♪
[小さく歌いながら、歩いていく]
[広場まで着いたところで、少女は小さな金髪の女の子を見つけた。その手には、何故か苺チョコが十本]
こんばんは、ベアトリーチェ。
[思わず声をかけてみる]
[纏う衣は北風を模した青。
立ち上がれば両手足に飾った幾つもの銀の輪がしゃらりと澄んだ音を立てる。
幾重にも重ねた薄い絹を揺らして、全身を伸ばしてほぐす準備体操。
数名の男たちが、時代がかった鎧に身を包み、儀礼用の槍のように装飾を施された長い木の棒を手にとる。
祭壇にささげられた花輪を奪い合いながらの源泉までの追いかけっこ。
舞姫の優雅な踊りと共に、この祭りの中心になっている儀式である。
ちなみに、見物客の乱入もOKで、その花輪を奪って源泉に投げ込んだ男は、想い人を必ず幸せに出来るとの言い伝えもあるとか。]
[――昼間、店を探して歩いている途中で遇った、少女の事を思い出す。]
未来の舞姫に…。
[そう言って渡した小さな花冠は、はにかむ少女にぴったりで。]
[……つい。
『ご主人様にも…似合うかしら…?』
なんて思った事は…ナイショの話、だけれど。]
あ、こんばんは
[両手にどうやってもとうか、四苦八苦していたら、
声をかけられて、子供はぺこり、頭を下げる。]
あ、一本どうぞです。
[おすそ分け決定は、やっぱり、大変だからだろうか。]
[食後の一時。
彼はソファに身を沈め、甘い花の香りがする紅茶を口にする。
身体の中から、ゆっくりと温まっていくような気がした。
フィリーネは大事をとって私室で休んでいるし、イザベラはそんな母の話し相手になっているから、其処にいるのは彼ひとりだった。
屋敷に居る時には誰かしら傍にいたから、それもまた、珍しい事]
[サイドテーブルにカップを置いて頬杖を突き、視線を移す。
カーテンを開いた窓の向こう、柔らかなひかりが注ぐ。
聞こえて来るのは、流れる水音と、微かな旋律]
[声をかけたら、苺チョコを渡されてしまった]
あ、ありがとう。でもいいの?
[こんなに沢山買ったのだから、よっぽど好物なのだろうと思ったので、少女は少し心配そうに問い返す]
[こくこくといっぱい、子供はうなずく。]
僕、みんなに上げようと思いました。
だからもらってください。
[でもなんとなく、
最初に苺チョコを食べた人が、
何かの被害にあいそうだと……
思ったり、思わなかったり。]
そう、それじゃ、遠慮なく頂くわね。ありがとう、ベアトリーチェ。
[少女はもう一度お礼を言って…危ない予感などには気付かずに…ふと思いついて、手にした籠を差し出す]
それじゃこれをお返しに。籠も使ってちょうだいね。
[一本渡された苺チョコの残りは、いかにも女の子の手には余って見える。マフィンが二つ入った小さな籠は、彼女の手にも重くはないだろうと思われた]
……いいんですか?
[驚いた顔で、ミリィに尋ねる。
子供は、それから、嬉しそうにした。
ぺこりと頭を下げた。]
ありがとうございます。
籠もありがとうございます。使います。
[頭を下げた表紙にティアラが落ちそうで、
慌ててもとの位置に頭を動かした子供だった。]
どういたしまして。うふふ、そんなに一人でマフィンを食べたら太ってしまうもの。遠慮しないで。
[ぺこりと頭を下げる女の子の仕草が可愛くて、少女の頬に優しい笑みが浮かぶ]
あら、ティアラがずれてしまいそうね?
[女の子の傍に近付いて、大きなポケットからヘアピンを幾つか取り出す]
これで止めておくといいわ。
[にっこり笑って、綺麗な金色の髪に手を伸ばす]
[平穏な時。これも悪くは無い……が、][溜息]
……退屈だ。
[呟くとほぼ同時のタイミングで、旋律が止む。
数秒して、洗い物のかちゃかちゃと言う音が大きくなった。
不思議に思いつ、空になったカップを手に厨房を覗く]
ユーディット?
[声をかけると、少女はやけに慌てた様子で、なんでしょうかと振り向くも]
[一度、瞬き]
……ここは、顔を洗う場所ではないと思うが。
[自分の頬を指差してみせ、泡がついている、と指摘して。飲み終えた白のカップを、台に置く。彼女の顔がやけに赤かったような気がするのは、彼の気の所為だろうか]
少し、出掛けて来る。君は、どうする?
[尋ねれば、少女はこくこくと頷いて。それを確認してから、厨房を後に]
[村から出れない。
そう"聴いて"。物は試しとやってきた村外れ]
せぇ……、のっ…!
[大きく振りかぶって。―――ヒュ、と精一杯雪球を投げれば
それは容易く白い弧を描いて、森の中へと吸い込まれていった。
じ、と暫くその先を見遣って。そうしてふと思い出したように
キョロリと辺りを見回せば、当然の様に
周りには途中で途絶えた自分の足跡しかなく。腰へ手を当てて考え込む]
なんっかなぁ……。
どーも、気がはれねぇってか、何ていうか。
[宛もなくふらふらと通りを歩きつつ、またため息。
ガラじゃない、とは思えども。
解決できない事は重たく意識の一部を捕え、離そうとする様子もなかった]
う〜〜……。
[思わず上がる、唸るような声。それに、相棒が落ち着け、と言わんばかりにてちり、と頬を叩いた]
[――案の定、とも言うべきか。村から離れようとすればするほど
歩幅が縮んでいく…とでも言うのだろうか。
苦労して進んだかと思えば、気付けば自分の足跡を再び辿っている様な有様で。
…どれだけ足掻こうとも、村より外に出れそうにはなかった。]
["聴いた"言葉の通りなら。そう思ってひたすら投げ続けた雪球。
―――あの言葉が嘘なら、多分「グー」で一発という所なのだが。]
あー…本当だー…。
……39個も投げたのに、1個も戻ってこないなぁ…。
[…結構、試していたらしい。
嘆息を漏らせば、チラリと向ける視線は自分の胸元]
―――面白いことは好きだけど…、ねっ!
[よ、と片足を軸に半回転して。
くるりと踵を返せば、村へと道のりを辿る。]
[ミリィの手が頭に伸びる。
子供はきょとんとした顔で、それを受ける。]
ええと、あの、ありがとうです。
[慌てて、にこっと頬笑みを浮かべた。
それから子供は籠の中のマフィンを見る。]
ミリィさんが、作ったのですか?
[淡茶のオーバーコートを身に纏い、革の手袋に、革のブーツ。
侍女を伴い、扉を開ける。夜の風が、彼の頬を撫ぜた]
[外の空気は冷たく、吐く息は白かったけれども、相変わらず村は賑やかで、人の活気と色とりどりの光に包まれていて、寒いと感じる間も無さそうだった。
出掛けると言っても、特に宛てがある訳でもなく。満天の星の下、歩みを進める]
[ティアラをヘアピンで止めながら、少女は問いかけに、小さく肩を竦めた]
いいえ、屋台で買ったの。私がマフィンやケーキを作ると、なぜか、必ず爆発してしまうから、危なくて、他所のお家では作れないのよねえ。
[どうしてかしら?と、心底不思議そうに首を傾げた]
……そう言えば、そうだった…
[村の入り口で箒をもって、青年はうんざりする。]
[昨日は大判焼きの甘さにすっかり心を奪われていたが
青年は相変らず村の外から先にでることが出来なくて
そして、やっぱり考えても答えなんてでなくって。]
……まさか、本当に妖精の仕業だったりな…
[青年はそう呟きながら、はなからそのことを信じていない表情で]
[まだ、小さい頃の影響が残ってるのかな]
[そう思いながら朝の掃除を終りにし、
他の村の人々と一緒に村の中心へ戻っていった]
―早朝:村の入り口→村―
[小さな花は、ミリィの手の下で揺れている。
子供はじっとおとなしくしながら、話を聞く。
なんだかおかしな話を聞いた気がするが、
そういうこともあるんだなと、思っておいた。]
爆発してしまったら、怪我をしてしまいます……
怪我、しなかったですか?
[心配そうに尋ねるが、しかし、
台所の心配は、実感が無いのでできないようだ。]
はい、出来上がり。
[明るく言って、少女は、手触りのいい柔らかい金髪を撫でる。続く問いには、少し遠い目をして応じた]
そうねえ、怪我はしないけれど、オーブンが焦げ焦げになって、エプロンが生地でべたべたになっちゃうことが多いわ。おじいちゃんのところで挑戦した時は、おじいちゃんのヒゲが、ちょっと焦げてしまったし。
[怪我をしなかったのは、多分、ただの運だろう]
[何か、自分にとって不思議なことがあると
それは、きっと妖精のせいに違いない…と思っていた小さい頃。]
[むしろ、そう思い込みたかった小さい頃。]
[そんな、幼年期の自分を思い出し
青年は、小さく苦笑する。]
「おーい、アーベル!そっち準備終ったか?」
[考え事をしている時、
祭りを取りしきる実行委員の人に声をかけられ
青年は現実に引き戻される。]
[頭を撫でられて、嬉しそうに子供は笑った。]
ありがとうございます。
……エプロン、いっぱい必要ですね。
おひげだけで、よかったです。
[なんだかそら恐ろしいものを少し感じてしまった*らしい*]
[今は源泉までのルートの安全最終確認…の仕事中だった。]
[見物客も混ざるおいかけっこ
…ルートに危険なものが放置されていないか
突如邪魔になるものが置かれたりしてないか。
ルートにある屋台の一時撤収がすんでいるかどうか確認して歩く。]
[足を止め、首を捻る。何となく気だるいのは居眠りの所為だろうか]
[ふと思い出してコートのポケットを探ると、昨日少女に貰った飴の袋が出てきて]
[一つ口に放り込めば円やかな黒糖の味が広がった]
…ん。
[舌の上で転がすうちに幾らか気も晴れた気がする。そのまままた、大通りへと向かって歩き出した]
[屋台通りに並ぶ店の一つ一つの前で、いちいち立ち止まる。
彼にとっては見慣れないものの連続で、興味深いらしく。
ユーディットはと言えば、矢張り彼女も少し珍しそうに、けれど、主を見守るかのように後ろに控えている]
[そんな二人組は、たとえ人込みの中でも、些か目立ってしまうか]
[自分が担当した区画ではクレープ屋の撤収が遅れていた。
が、青年自身も撤収を手伝うことで、
無事担当区画の安全は確保された。]
[手伝ったついでに、クレープを貰ったのは言うまでもない。]
…んっし。行きますかっ!
[気合の声を上げて立ち上がると、手足につけられた銀の輪がシャらりと鳴った。
儀礼用のダブルクリスを手に取る。
二つの月の刃は、危険の無いように軽い木を銀色に塗ったもので、間をキラキラ輝く1.5メートルほどの薄絹の布で繋いである。
すっと構えて意識を澄ませ、舞台へと。]
[屋台通りで、時折立ち止まっては細々と水風船やらを買い込んで。
ウサギの飴細工は、片手に握り締めたままだ。
買ったは良いものの、どうやら勿体無くて食べれないらしい]
……なんか、食べ物ほしーかも。
[何買おう。とぽつりと呟きながら歩を進めて。
ふと視線を上げれば、何処かで見た2人組に気付いて、
おや。と小さく首を傾げる。]
……あの、あれだ。エリにぃの『お姉さま』少年だ!
[数寸考え込んで、記憶に思い当たりを見つければ
あぁ!と納得したように声を上げる。
―――覚え方は失礼極まりないものだけれど。]
[――ぴき。]
[そんな奇妙な音が、傍に控えていたユーディットには聞こえたかもしれない]
誰が、“お姉さま少年”かっ!
[上がった声に、思わず反応。顔を其方へと向け、憤慨した表情]
[冷たい夜風は、色んな意味で火照りきった彼女の頬を程よく冷ましてくれた。
主の後を付いて、柔らかな光に照らされた屋台を見て回るのは、とても楽しくて。
知らず、笑みを浮かべている様は、一歩控えている態度も相まって、微笑ましく映ったかもしれない。]
[…シャラン
銀の輪が鳴る。
ゆっくりと両手にクリスを構え、男たちは彼を包囲する。
振り回され振り下ろされる棒をその手の刃で受け、始まる剣舞は次第に激しさを増していき、
銀の輪の鳴る音と、木と木のぶつかる音が、夜空に響く。]
[広場の片隅にユリアンの姿を見つけ、少女は一瞬、声をかけようかどうしようかと迷う素振り。しかし、決心のつかないうちに、舞台の上に現れた若者に、人々の注目が集まり、少女の意識もそちらに吸い寄せられる]
[声のする方に近づくと…]
ああ…リディに、それに熊少年」に、給仕兼メイドさんがいる。
熊少年、昨日は見事だったな。
[どうやら青年の中で金髪少年は熊少年にジョブチェンジしたようだ]
[突然向けられた憤慨の表情に、思わずきょとん。
一拍おいて、こてりと首を傾げた。
まぁもちろんのこと「ぴき」と言う音は聞いてもいない]
……えーと、君が?
[返すべき言葉が違う。]
…やーえへへー。
だって、エリにぃが君に「姉さん」って言ってたから
その記憶しか無いんだもん。名前もしらないし。
[ゴメンねー?と、へらりと悪びれた様子も無く笑みを向けて]
[三人の騎士姿の男が、同時に棒を振り下ろす。
それを半歩下がって避け、棒の交点を踏んでカタパルトのように高く跳躍。
夜空を切り裂く北風のように舞い、男たちの頭上を跳び越すと、祭壇へと手を伸ばす。
その手に掲げるは、舞姫が捧し花輪。]
……熊少年?
[青髪の――元紅茶男の接近に、目を瞬かせる。
続いた明るい茶の髪をした少女の言葉に、額に手を当て、深々と溜息。
“『お姉さま』少年”に、“熊少年”。一体、どんな見方をされているのか]
僕の名は、ミハエル=フォン=エーデルシュタインだ。
妙な呼び方をしないで貰いたい。
……それと、あの男の話はしない欲しい……
[かなりショックだったらしい。はとこ関係だった事が]
[そんな事を言っているうちに、響く澄んだ銀輪の音に、激しい剣舞の音]
[シャラン、シャラン、と銀の輪が鳴って、若者達の剣舞が激しさを増していく。やがて、掲げられた花の輪を見つめ、少女はほう、と吐息をついて、僅かに目を伏せた]
…大判焼き…もといノーラ
昨日は美味かった、ありがとうな。
[なんだか失礼な認識をしつつ…
エディには手を振りかえし]
[それから、名前を名乗った熊少年ことミハエルに向き直る。]
そうか、ミハエルと言うのか。
名前を知らなかったもので、印象深いもので呼んだ、すまなかったな。
俺はアーベル=エアハルトだ。
…………あの男……
[青年が言葉を続けようとしたが、
響くイベントの開始を知らせる音にそちらを振り向く]
[元気な少女と青い髪の青年の主に対する暴言に、
あわあわしつつ見守っていれば。
激昂したと見えた主は、少しげんなりしたかのように名を名乗って。
慌てて彼女も後ろでぺこりと頭を下げる。]
[ふいに響いた剣戟の音に振り向けば、昨夜彼女の髪を飾った花冠が高く掲げられていて。
思わず目が引き寄せられる。]
[振り返ると、丁度向こうも此方を見ていたので軽く会釈。勿論相手が大判焼きを思い出してるなんてちっとも知らない]
[そのまた先には先程の声の発生源]
…と、あの子は…リディちゃん?
[金髪の少年と話す茶髪の少女を見るのは久しぶりのことだった]
[背後では舞台からの音が響いてくる]
[馬屋の中、柵に肘をついて愛馬を見遣る。
何やら妙にご機嫌な]
…何があったんだ、一体。
[問いかけても馬が話せる筈も無く。
今にも鼻唄を歌い出しそうな雰囲気を纏うばかり。
何かしてやった覚えはないのにこの上機嫌。
ぐったりと伏せて溜息を吐く男の頭を馬が小突いて。
じと目で見上げれば馬はふんと息をした]
ふむ? ミハ君ね、おっけーい。覚えた覚えた。
[親指と人差し指で丸を作って、了解の意を示す。
しかし、呼び名が許可も無く渾名に変換されている辺り全然オッケーでもない。
…とエーリッヒの話題に声が沈むのを見れば、
小さく首を傾げながらも、あの行動に引いたのかと勝手に納得して。
……まさか血縁関係だとは思いも寄らない]
あたしはリディ。リディ=ティーレマン。よろしくっ!
あ、折角だしお詫び?にコレあげる。甘いもの好き?
[へらりと笑って名を名乗れば、思いついたように
手に持っていたウサギの細工飴を半ば強引に握らせる。
と、剣戟の音が耳に届けば、音のほうへと視線を向けて]
…あ、噂をすれば、ってやつだね。
エリにぃの出るヤツが始まったっ!
[今から競争が始まるのだと気がついて、少女は、一緒にいた子供の手を引いて、危なくなさそうな場所を探して下がる。去年もついでに告白してしまおうと勢い込んだ若者が数人飛び入りで駆け込んでいって、沿道はなかなかの騒ぎになったのだ]
ん、動き出す、な。
[呟きつつ、場所を変えて行く。
色々な意味で熱狂を招くこの出し物、見るのは結構、好きな方で。
なるべく、最前列を維持するようにいるのがいつもの事なのだ]
[高く掲げた花輪を握り、青年は一陣の風となって走り出す。
一足ごとにしゃらりと鳴る銀の音。
その後ろを追って、鎧姿の男たちも駆け出した。]
印象深いもの?
[昨夜の光景が見られていた事には、気付いていないらしい。
しかし、彼の中ではアーベル=元紅茶男だったので、その点に関しては御互い様だ]
…………ミハ君……?
[そんな呼び方をされるとは思ってもみなかった]
[反論しようとした矢先、細工飴を握らされ、ぱちくり、瞬きを]
甘いものは、嫌いではないが……これは……
[なんというか、可愛らしくて困る]
[舞台の上から動き出す男達に、驚きの声をあげ。]
何が…始まる、の…?
[迷子防止でもなく、主のコートの端をきゅ、と握る。]
…わ!ノーラさんだ!お久しぶりですっ!
[アーベルの言葉に、演舞からちらりと視線をズラせば
見覚えのある女性が立っている事に漸く気付いた。
記憶と合致すれば、わ、と小さく声を上げて。]
甘いものキライじゃないなら、良し!
おねーさんからのプレゼントです。遠慮せずに受け取れ!
[ミハエルの言い淀みの意味に気付かないまま、笑みを向けて。
と、エーリッヒが駆け出したのを見れば若干慌てたように]
っとと、やっばい。非難非難!
そこにいると、巻き込まれるよー?
[てってと通りの脇へと一人退避。何も知らない観光客に、
何に巻き込まれるのかすら伝えない不親切なご案内。]
[背後からの音を察し、邪魔にならないように端に下がって。駆け抜けてゆく青年を見れば、軽く手を振り返す]
[嗚呼、そういえば今年は]
……本当に何してるんだか、ね。
[人知れずぽつり]
手を離さないでね、ベアトリーチェ!
[いよいよ駆け出した一団に、その姿を良く見ようとする見物客達も群がって、おしくらまんじゅうのような人ごみの中、少女は必死で、子供を抱き寄せる。こんな人の群れの中では見えないだろうと、抱き上げようと試みるが、非力な彼女には、人々の頭の上まで、子供を持ち上げてやることは到底無理だった]
[賑わう方へと闇雲に足を進めていたら、自分の歩く速度よりも明らかに速く賑わいは近付いてくる]
…え?
[何が起きるのだろう。
そう考える前に周囲の人々がさっと道の脇に分かれていくのを見て。
その理由を考え付く前に自分も道の脇へと下がった]
[たまに立ち止まって追っ手をからかってみたり、
ひょいひょいとトンボを切って棒を避けたり、
子供に花輪を差し出してまた引っ込めてからかってみたり。
夜空に響く歓声と、銀の音。
走れば薄絹が靡き、銀の輪が鳴る。]
[ミハエルの疑問にコクリと頷き]
ベアトリーチェに、大きな熊のぬいぐるみをあげてただろ?
[それから、また視線を戻し、
走り出したエーリッヒ…その後ろの観客の先頭にユリアンの姿も見える]
やーれやれ、今年の追手側、なっさけねーなー。
完全に、からかわれてるじゃんよ。
[走る者たちの動きを追いつつ、辛辣な一言がぽそり、と]
[下がっていると、少女のほうも此方に気付いたようで。すぐに微笑んで手を振り返した]
[相変わらず元気な声にくす、と笑って]
[それからまた、男達のほうに目を向けた]
[行く先に飛び出してきた飛び入りの青年にフェイントかけて突破。
ひとりふたりと追っ手は増えて、街の中を駆け抜けていく。]
[リディの「巻き込まれるよー」に手を軽くポンとうつ。]
………そうだな…ミハエルに給仕兼メイドさん
もう数歩…さがって…人の波に飲まれる
[青年は危険を察し、ミハエルとメイドさんに近づく]
遠慮している訳ではな……、避難?
[件の男から目を背けるのが優先されて、何が起こっているのか、把握し切れていなかったが。リディとアーベルの警告、それに近付く銀の音に、漸く事態に気付いて]
……ユーディット、下がれ。
[驚いている侍女の様子を気に留める事なく、飴細工を持っているのとは逆の手で、彼女の手を引き寄せて、脇へと下がる]
[初めて人間界に来た彼女が、祭りの内容を詳しく知る由もなく。
うねり押し寄せる人並みに、目を丸くして呆然と立ち竦む。
アーベルの「下がって」と言う声は、歓声に掻き消されたか耳に届かずに。]
[周囲の安全を確認してから、アーベルの返答に、ああ、と]
……見ていたのか。
[別段悪い事をした訳でもない――
寧ろ、良い事をした筈なのだが、何と無く、バツの悪そうな表情]
[女の子を腕に抱いて、人波に攫われていきながら、少女は友達の姿を見つけて伸び上がった]
リディ…!
[最後まで言わない内に、流れて通過]
[それが自分に向いたのかどうかは、はっきりとわからないものの。
……正直、追手役も飛び入りも、盛り上げるには役不足、という感が強いのは事実で]
……ヴィント、踏み潰されそうにねぇとこまで、下がってろ!
[言うや否や。勢いをつけて場に乱入する。
慌てたように跳ねる、灰色の小さな影。
……勿論というか。
深い事は考えていないのは、い う ま で も な い]
[それでも賑わいはまだ遠く、その場に留まろうとする人々を掻き分けるようにして広場の方へと向かう]
[やがて賑わいは程近くなり、其方の方へ目を向けていた…ら]
っと…すまない。
[流されてきたのだろう赤髪の少女とぶつかった。
そしてその腕に抱かれた金の髪の少女に気付く]
ベアトリーチェ?
[流されかける自身の体を留めつつ、彼女たちも支えようと]
[ノーラから手を振り返されれば満足そうに、にんまりと笑みを浮かべて。
駆け抜けていく集団を、道の脇でわくわくと眺めていれば
ふと。僅かに聞こえた様な呼び声にきょとんと人並みへと視線を向けて]
………ミリィ?
[ちらりと見えた姿に、思わず手に持っていた水風船がビヨンと伸びる]
[きちんとメイドさんの手を引いて守ろうとする姿、
それにバツの悪そうなミハエルの表情に
青年は、柔らかく笑んで。]
[頭を撫でようかと思ったが、
それはしっかり紳士然とした少年には失礼な気がして。
同年代にするように、ポンポンと労いを込めて肩を叩く。]
ちょうどいいんで、イライラ発散させてもらうぜっ!
[向けられた笑みに、似たような表情で返しつつ、呼吸を整え、走る速度を上げる]
いよっと!
[まずは牽制、とばかりにダッシュからのスライディングで足元を狙い]
…え、ちょ。わー!?
まさかミリィ巻き込まれちゃってるっっ!?
[予想外な友人の事態にあわわ、とうろたえて。
暫く踏鞴を踏んでいたものの、決したようにグッと握りこぶしを作れば]
アーベルにぃ、これ持っててっ!
[指に通していた水風船をぽーんと相手に放り投げれば
相手が受け取ったかどうかも確認しないまま 人の波の中へ]
[ほとんど、意識が飛びかけていた少女の耳に、見知らぬ男性の声が届いた。腕に抱いた子供を呼んだのだと気付いて、更に、その腕が人ごみの中で、支えてくれようとしてくれていることにも気付く]
あの、あの…ベアトリーチェをお願いします!
[自分を一緒に支えるのは無理がある、と判断して、少女はせめて、子供を任せようと腕を延ばす]
[主に受け止められて姿勢を整えるのと、人波が押し寄せたのはほんの僅かな時間差で。]
…ぁ、ありがとう…ございます…。
[赤くなる間もなく、流れ行く人波を見送りつつの発した声は、微かに震えて。
元の姿であれば、簡単に飲み込まれていたであろう祭りの激しさに、息をのんだ。]
[青年の微笑と、肩を叩く仕草に、訝んだ表情。
何が言いたいのかと疑問に思いつ、アーベルを見……上げて。
同年代の少年より背の低い彼には、青年は(控えめに言って)少々遠かった。
……成長期はこれからだと、内心自分に言い聞かせ、つん、と顔を背ける]
[だが、拗ね気味の顔+片手のうさぎの細工飴が、子供っぽさを倍増させ中]
[…なんだか、一人勝ち、だなぁ…と思った瞬間、逃げる者の楽しそうな声]
ユリアン…
…まぁ…いっか。
[他に飛び入りは入らないのか、と少し辺りを見回し…視線を戻す。
これはこれで面白そうだから、と、人混みの中、小さく呟いてじっと見ている]
[突然のリディの要請。
次の瞬間飛んでくる水風船を右手で受けとめて]
うわっ!……おいっ危険だぞ!リディ!!
[と、声はかけるが、声よりも早くリディは人の波に消える。
……お転婆なリディは人並み異常の運動神経は有った筈だが]
……………………
[それでも、この人ごみに16の少女が混ざるのは無謀と判断し
青年も人並みの中に紛れ込む]
[此方へと伸ばされた腕の中のベアトリーチェを片腕に抱き、そのまま流されて行ってしまいそうな少女をもう一方の腕で抱きこむようにして人波から庇う]
すまない、体勢は暫く我慢してくれ。
[このまま彼女が流れて行ったら色々と危険な気がして咄嗟に取った行動なのだが…自覚はしているものの、傍から見たら相当微妙な体勢だろうと思われる]
[避けられるのは、ある程度想定済み。
素早く態勢を立て直しつつ、低く身構え、一つ、息を吐く]
……せいっ!
[掛け声と共に地を蹴り、距離を詰める。
狙うは懐に飛び込んでの一撃か]
[やはり見覚えのある青年が一人、争いに加わる]
[ふと見回してみれば、人々の足の間に駆け抜けて行く鼠を発見]
[器用さに少し感心しながら]
…あ。
[視線をずらすと、何だか流されて行くリディ]
[子供は、必死になりながら、
二人から離れないようにしている。
しかし騒ぎを見る目はどこか生ぬるかったかもしれない。]
…っと!!
[宙返りからたららを踏んで着地したところへユリアンが突っ込んでくる。
振り向きざまに回し蹴りを放って迎え撃つ。
足首の銀の輪がシャリンと高い音を立てた。]
[息を吐く間はなさそうだった。
更に近くなる賑わいと共に人混みも酷くなり]
ベアトリーチェも君も、できるだけ掴まって!
[くる、と体の向きを変え、人波を自分の背で止めて二人には被害が及ばないようにと。本気で体勢のことを考えている余裕はなさそうだ]
わとっと!
[カウンターの回し蹴りは、とっさに腕をクロスさせてガードして。
そのまま態勢を低くしつつ、蹴りの後の不安定な足元を狙って行く。
青の瞳には、子供っぽい、わくわくとした光が宿り]
周囲には気を付け……
[礼を言うユーディットに、声をを掛けようとして]
[ぽん、と頭を撫でられる感覚]
な……っ
[無礼者、と言おうとしたが、既にアーベルの姿は無く。
人込みの中へと飛び込んでいく青い髪がちらりと見えた]
…あらら。
[どちらも動きが半端なく良い…
観光目的で来た者達には敷居が高すぎるのだろうか?
割り込む暇がないようで…]
…じゃ、今年はエーリッヒか、ユリアン…なのかな?
[先ほど、見慣れた姿も居たような気がしたが…あの近くにいないと言うことは、飛び入りはしていないのだろうと]
ぬぁっ!
[軸足を払われて、体勢が崩れる。
音高く響く、銀の音。
こける瞬間に花輪は空へ。
突然吹いた強い風が花輪を高く舞い上げる。]
……っ多分、こっちの方だった…と、思…っ!
[よもや、水風船を預けたはずの青年も後を追って来ているとは思わず
見事に勢い良く流されつつも、波へと消えた友人を追って
隙間をちまちまとすり抜けて。]
……っ、みっけた!ミリィ、にベアちゃん……!
…。……。
わ、わわ…っ?
[男性に庇われる様にして立っている、
見覚えのある赤い髪と、少女の存在に気付いて
何とか波に逆らおうとしてみるものの。
―――そりゃ、急に止まれるわけもなかった]
よっしゃあっ!
[響く鈴の音に重ね、歓声が上がる。
体勢の崩れに巻き込まれぬよう、強引に後退しつつ。
天高くに舞った花輪を目で追う。
高く、高く、空を舞う。白い輪。
その落下地点を目測して、そちらへ向けて強引に地を蹴り、走る]
[気を付けるように、と言いかけた主に、言葉もなくこくこくと頷いて。繋がれたままの手をきゅ、と握る。
自分の今の姿からすれば、どちらが保護者かわからないとか、そんな事も意識からすっぽ抜けたまま、青年を憮然と見送る主の後ろで小さくなっていた。]
[見慣れた茶髪がぴょこぴょこと。]
……おいっ!!
[持ち主に頼まれた水風船をわらぬよう、
左腕を、精一杯リディの方へと伸ばす]
[しっかりとしがみ付いてくれたベアトリーチェに安堵しつつ。
絶えることの無い人波の中に立ち続けて居た…が]
へ…?
[此方に向けて投げられた気がする声に振り返り。
その少女も流されて行きそうなのに気が付きはしたのだが。
生憎、腕は二本とも埋まっていた]
[注目すべき花輪に目を遣る余裕は…残念ながら、無かった]
[目の前を、リディが通過していく、そして、気付くと、ユリアンが視線の先に…もう、何がなんだか、少女には判らなくなりつつあった。これももしや、妖精の祭りの魔法だろうか?と思わず現実逃避したくなるほどだ]
…ぉー。
[流石についていけなかった者が棚ぼた、という状況は避けられたようで…小さく声を漏らす]
…もうそろそろ…っと。
[投げ入れる姿を見るならば、人が魅入っている隙に良い場所を取りに行こうと、人の間をすり抜けていく]
ここまで来てっ……。
[にい、と浮かぶ、悪戯っ子の、笑み]
取られるかっての!
[花輪を抱え込むようにして、前方へと飛び込むように一回転。
ついた片手のみでバランスを取り、態勢を立て直す、という無茶を決めた後。
一気に走る。目指すゴールへと]
[我先に前へ進もうとする群衆の中で
その群衆の中の人をつか前ようトする動きは異質で
なかなか、思う様に腕が伸びなくて。
何度か指先がリディの髪を掠めるも
まさか髪を掴むわけにいかなくて。]
……っ!…・……・リディ!掴まれッ!!
…ちょっと…すいません…っと。
[するする、と人の間を通っていき…
歓声が聞こえた気がして、軽く振り返ると…ユリアンが走り出していた]
…ぁ。
[急がないと。
しかし、人々も移動しようとするのか、先ほどよりも進むスピードは遅く…]
[一瞬、騎士らしい男性と目があった気がした。…が、それ所ではなかった。
自分の浅はかさと共に『……あぁ、こりゃ流されるなー』とぼんやり、思考を巡らせた瞬間
聞き覚えのある声が聞こえて、反射的にそちらを振り向く。
視線の先には、先ほど荷物を預けたはずの青年が腕を伸ばしていて]
…っ、アーベルにぃ…!
[…あれ、何でいるんだろ?とか内心チラリと思いつつ
反射的に、差し出された腕へと手を伸ばして]
[蒼の風の気合を背後に捉えつつも、軽く視線を投げるのみで]
いよっ……っとお!
[掛け声。
次の瞬間、その身が高く、跳躍した]
せえのっ、と!
[ジャンプの頂点から、手にした花輪を源泉へと投げ込む。
ふわり舞う、白]
[元気だなぁと子供は思った。
なんというか……
少し考えて、子供はため息。
しかしそれもやっぱり、
人ごみに消えていった。
来年のお祭りの時は、これに巻き込まれないようにしよう。]
…っ、とっ…!
[なんとか人混みを押し退け、源泉の近くの空間に出て…]
…
[息をのむ。
ちょうど、視界に入ったのはユリアンが花輪を投げた瞬間だった]
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