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書生 ハーヴェイ に 3人が投票した
双子 ウェンディ に 3人が投票した
双子 ウェンディ は村人の手により処刑された……
次の日の朝、見習いメイド ネリー が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、書生 ハーヴェイ、学生 メイ、流れ者 ギルバート、お嬢様 ヘンリエッタの4名。
/中/
中会話良いようなので。お疲れ様です。
…で、現在まとめサイトに書き込めないわけですが。(鳩のため直接編集不可)
/中/
みなさんお疲れ様でした。
もう推理とか最高苦手なのに…orz
ルーサーさん役に立たなくてごめんなさい。・゚・(ノД`)・゚・。
/中/
>ネリー、ウェン、お疲れ様。
さっきも言ったのに…これで中は最後ですよー。
ナサに戻らないと(ゴソゴソ←いろいろ猫を被ってるらしい)
/中/
勝敗度外視のRP村なんだから推理なんざせんでえぇんです。
狼の方から時期読んでじわじわヒント出していくんっすから…。(めそり
>ネリー
当方、箱なのでこちらへくれれば代筆しにいきます。
[ 向けられた其れは、同族を殺したのと同じ兇器。]
其れは、好い覚悟ですね。
同族殺しとは……酷く、人間らしくて。
[ 金糸の少女へと微笑を向ける――却って場に沿う程に艶やかな笑みを。]
然れども敵を討ちたいのなら、此の時間に行うべきではなかった。
如何して、神父殿と同じ過ちを犯すのか。
[ 其の言葉に彼女は薔薇色の唇を噛んだだろうか。其の華奢な指は重い引き鉄を引き、存外軽い音と共に銀の銃弾が彼へと向けて放たれる。]
/中/
>吟 ありがとうございますー(ノ∀`)
上の様子次第で必要になりましたらばお願いしたく。
寝る方おやすみなさいませ。
/中/
推理?何其れ美味しいの?
ちなみに普段はガチの人です。
さて今度こそ猫を被りなおそう…(無理はやめておく?)
/中/
中発言ばっかり…orz
箱なんだけど、書き込み欄が見当たりませんorz
こちらからの希望はありませんので、色々お好きにと何方か書き込んでいただければ…orz
では本当にお休みなさいorz
/中/
まとめサイトは直編集にて。
あと、なるべく雰囲気壊さぬようRP続行でお願いします。
では、続きはCMのあとで。
/中/
あぁ!遺言!
すみません、何方か遺言として
ヘンリエッタさんへ。ペンダントを差し上げますと纏めサイトに書き込んでいただければ幸いです。orz
夜まで来れないので…。
/中/
銃ぽいものは投げ付けるなり何なり、後は短刀使って適当に。殺るか殺らないかはお好きに。
↑みたいな感じで。>まとめ書き込み
…てことで中発言はここらで終了する所存ですが、表で死なぬと喋れない?もしや。
[其の体にそっと腕を回して、ローズが告げる言葉に緩く首を振り
そっと、だけど確かめるように此方からも抱き締めて]
君が謝る事じゃない…俺が傍に付いていれば。
そうすれば…
[其の言葉に、ローズは、俺のせいじゃない、と言いたげに微笑んで首を振り
そして、そのまま抱き締めたその胸に身を委ねる様に凭れ、目を閉じる
この姿で眠りを欲するのかは定かではないけれど
其れはとても安らいだ姿で]
…おやすみ、ローズ。
[そういって抱き締めたまま、そっと髪を撫でる]
……いいえ。
私こそ貴方に重い荷を課してしまい、申し訳なく思っていました。
だから、気に病むことなどありません。
[ウェンディを抱きしめようと……して、手が止まる。
罪深き己の手で、彼女を抱きしめてよいものかどうか、自らに問うている。]
[ 然し少女の小さな体躯に其の反動は大きかったか、銃弾は僅か狙いを逸れ、彼の右腕を掠め緋色が舞うと共に、手にしていた武器と云うには粗末なナイフが絨毯の上へと落ちる。僅か視線をずらせばもう一人の緑髪の少女へ向けては、黄金に煌めく双眸の男が動くか。]
……一度、機会をやったというのに。
[ 感情の見えぬ双眸で酷く残念そうに呟く彼の口許に浮かぶのは、*獣の嗤い。*]
…そしてまた、今宵も人が死ぬ。
その牙はその爪は守るため?
それとも喰らい尽くすため?
悲しみが牙を剥き、守りたい心が牙を剥く。
そして想いは…命を潰す。
[そういえば、とふと思い出す
自分を殺した男の、最後の心遣い
並べられた二つの体]
俺のこと憎んでたくせに、変なとこで気ぃ遣うのな、あいつ。
[其れは死に逝く者へのせめてもの手向けだったのだろうか?]
……ありがとうな。
[其れは、かなり場違いな言葉と知ってはいたけれど、他に浮かぶ言葉が無くて
其の言葉が届く事は無いと*知っているけれど*]
[あたたかいと感じるのは……どうしてなのだろう。
心地好くてわたしの意識がのまれてゆく。
安らぎの中から目覚めれば、わたしはその頬に、*口唇をあわせた*]
─広間─
[広間で交わされる言葉。
対立するものたち。
そうせねばならない意味が、わからない。
そんな思いを感じつつ、ただ、やり取りを見ていた。
動くつもりも干渉するつもりも、ないはずだった。
そして、以前の彼女であれば、来るべき死の影に脅え、動く事すら叶わなかっただろう。
だけど]
……ダメ、だよ。
[金色の髪の少女の言葉、彼女が手にした『それ』が向けられた先。
それは]
その『死』だけは、視たくないっ……。
[掠れた呟きは、乾いた音に遮られる。
大気を引き裂く、銀。
紅が舞った。
美しく]
……っ……どうしてっ!
[問い、否、答えは『知って』いる。
それでも。
それを容認する事はできず──]
[彼女が動く事は、誰一人、予想し得なかっただろう。
人の死に脅え、ただ、そこから逃れる事だけを望んでいた少女。
それが、動き出すなどと、誰が思おうか]
……あ。
[ふ、と。
目に入った青年の、人ならざる者の笑み]
『ああ。
やっぱり、お月様なんだ』
[頭を過ぎったのは、そんな考え。
そんな事を考えている自分に、くすり、と笑みをもらしつつ]
[床に落ちた小さな銀、弟のように思っていた少年の手にしていたナイフを手にする。
気配と動きに気づいた青年が、こちらを見やる。
その表情には刹那、驚きが掠めたろうか?
彼に、名を呼ばれたかも知れない。
もしかしたら、静止されただろうか?
でも、はっきりとはわからずに。
動きを止めたその横をすり抜け、走る先は、反動でよろめき、座り込んだ金の髪の少女の元]
「メイ……さん?」
[困惑した声が名を呼ぶ。
それも已む無き事だろうか。
この少女の知り得る『知識』では、霊視の力を持つ者は人の味方。
狼に与する事など、あり得ないのだろうから]
……キミは、正しいんだろうね、人として。
でも、ボクにとっては、今のキミは正しくないの。
[何故、と。
震える声が問うたろうか。
正しき力を持つあなたが、と]
……ああ、言ってなかったかな、キミには。
ボクは、人でもなければ獣でもない、狭間のものだから。
人の法にも、獣の掟にも。
従わないし、従えない。
……だから、ね。
[微笑む。幼子のように、無邪気に]
ボクにとっては……ボクのたいせつなものをこわしたもの。
こわそうとするものは。
……ボクがこわさなきゃならないもの、なの。
[例え、それが何者であっても、と。
淡々と告げて。
銀色を振るう。
小さな刃が、少女の胸に吸い込まれて。
伝わる衝撃。
それが。
忌避し続けてきたものを、自らもたらした事を、巫女に認識させる]
[金の髪の少女は、驚きながらも、どこか。
哀れむような瞳を巫女へ向けたろうか。
その唇が、赤毛の少女の名を紡ぐ。
彼女に、自分のペンダントを、と。
かすれた声が、告げた]
……そう。わかった、伝える。
[それに対する呟きは、ごく、簡素なもので。
薄紫の瞳は、静かなまま。
*消え行く生命を見つめていた*]
人は、何度も過ちを繰り返してきた。
これからも、過ちを何度も犯してゆくのだろう。
だが、それを嘲笑う事等赦しはしない。
人だからこそ、疑い罵り殺し合う。
けれど、人だからこそ互いに歩み寄る事もわかりあう事もある。
その過程を、そこから生まれる想いを。
嘲笑う事は赦さない。
嗚呼、今宵も…
[…それは、人の中で生きるための、偽りの心であるはずなのに。
あの調べを紡ぐ指が血に染まる。
この胸の痛みが分からない。]
…鉄の牙にて、人が……
[メイの呟きを聞き、首を横に振る。]
ああ、やはり。
力持つ者はそれに囚われる。
主よ、哀れみたまえ。
未ださ迷い続ける、生者の魂を。
[手を組んで祈り、十字を切る。]
[――始まりの場所――
ある者は覚悟を込めて、またある者は引き止められるままに、またある者は自ら望んで訪れたのではないけれど。
彼等をもてなす晩餐会の代わりに、血の惨劇が始まると皆に知らしめた場所。
あの時のように、今もまた、彼らはそこに集まって。
生きている者、死んでいる者。
人、獣、どちらでもない者。
全ての者が――最後の幕が下りるのを見届けようと。]
[かつて彼を「一人で歩くのはあぶない。」と心配してくれた青年の笑みは、ぎこちなくも温かみが感じられたのに。今、青年が浮かべているのは、一掻きで掻き落とせるのではと思う程に薄い笑み。]
………ぁぁ…。
[黄金に煌く琥珀の眸は、肉食の獣のようで。身を震わせて、嘆く。]
[そして――場は動く。その時を待ちわびていたかのように。]
……なっ…ウェンディっ!? ハーヴェイさん……っ!
[銃を向ける少女。散る鮮血。床に落ちる、小さなナイフ。
そして彼の良く見知っていた青年が浮かべたのは――獣の嗤い。]
そんな……そんなっ!
ハーヴェイさん…が…? ねぇ、どうして……っ!?
[やや皮肉な笑みを浮かべて鋭い言葉を放つ青年は、彼にとってやや苦手であると共に、いつか越えたいと願う目標でもあって。
そして、そのぶっきらぼうとも見える態度や言葉の奥には、確かに親しい者への気遣いが含まれていた、と思う。
だから、目の前の”現実”を信じたくはなくて。
大好きなお姉さんの死を知った時のように、目も耳も心も閉じてしまいたかった。
けれど――見届けると、心に決めていたから。
ぼろぼろと涙を零しながらも、目を逸らす事無く、それを見続ける。]
[背後で青年と少女の会話が流れ]
「でも、私は…神父様の敵を討つためなら…人だって殺せる程に…なってしまったんです」
「前者です、と云いたいですが。……喰らったのだと、貴女は云うのでしょう。
[其れを耳に入れ乍ら][揺らめく焔に魅入られた態で]
[す、と][何気無く][暖炉にくべられた薪に手を伸ばす]
[其の行動は]
[対立する二者と其れに注視する者達][広間を覆う緊迫の空気故に]
[誰にも見咎められる事無く]
「敵を討ちたいのなら、此の時間に行うべきではなかった。
如何して、神父殿と同じ過ちを犯すのか。」
[其の言葉に一拍遅れて銃声。]
[少女の軽い身体が反動で後ろへと]
[青年の右腕から][鮮やかな赤が]
[同時に]
[侍女服の女性が掌中の“物”を]
[投付け様としたのか][手袋の白が閃いた其の瞬間]
[その彼の視界に入ってきたのは、これまたよく見知った村の少年(?)――いや、纏う服からして、少女なのだろうか?]
…ぁ、メイさん………っ!
[けれど彼が叫んだのは少女の服装のせいではなく、床に落ちていた彼の名が刻まれたナイフを少女が手にした為で。]
ダメだよ…! メイさんやめてっ!
[元気で良く彼の事をからかっていた、少年とも少女ともつかぬ事が気にならぬ程、親しかった人。
けれど、人の死に怯えて震えていた姿を見てしまっていたから。
いけない、と叫ぶ。
よく見知った少女が、よく見知った青年を傷つける姿なんて見たくない、と。]
[風切る音を立てて][飛来した物体]
[火の点いた薪が]
[其の手を打ち]
[掌から黒い塊が弾かれ落ちる]
[ハッと][驚きに打たれ]
[其れでも脚に手を走らせ][短刀を抜き放ち]
メイ…さ………
[声が、かすれる。涙がまた溢れて、頬を伝う。]
[それは、健気に神父様の敵を討とうとした、金髪の少女の死が哀しかったのか。
己と年端の変わらぬ少女の死が、己の死と重なったせいなのか。
それとも――仲が良かった少女と青年が傷つけ合わなかった事への安堵なのか。
わからぬままに、魂を削りゆく。]
[人為らぬ速度で襲い掛かって来た影に]
[尚も抵抗し、][脚で蹴り付け]
[爪で掻き毟り或いは抉ろうと][手を]
[…然し、][其処迄、だった。]
[──圧し掛かった女の脚を両膝で押さえ付け]
[左手で][女の手首を][骨も砕けそうな力で握り締めて]
[黄金に煌く眸][細い月の形に歪んだ唇に]
[微かな嗤いを浮かべた]
[ 普段の彼ならば気付けただろう。旋律が何時の間にか途切れていた事も、彼女の気配が近付いて来ていた事も。然し人の意識は眼前に、獣の意識は男へと向けていた彼が“其れ”を知った時には全てが遅い。
闇色の双眸が月を宿し掛け、夜の獣が覚醒めようとした瞬間、銀の煌めきは碧の少女の手中に収められ、一驚を喫した彼の瞳から月光が消え理性の光が過る。]
な、……メイ!?
[ 少女の名を呼ぶも、寂寂とした薄紫の双瞳の巫女は留まらずに彼を傷付けた者を狙う。妙に淡々とした、其れでいて何処か稚い子供の如き声が彼の耳を突いた。]
馬鹿、何をして……!!
[ ――何をして? 其れは己に向けられるべき科白だ。“賭けに勝った”以上、其れはもう己が身を獣へと変え、全てを喰らうと決めたのだから。詰まりは碧の少女をも殺すと云う事。彼女が如何しようが、彼には何一つとして関係無い。
其の迷いが彼を其処から動けなくさせていた。其れは幾度目かの事。嗚呼、然うだ、彼女が絡むと何時も斯うだったと今更ながらに思う。]
[涙で霞む視界が、ゆらり、揺れて。
目に入るは、お下げの少女を押さえ込む、茶色の髪の青年の姿。]
…ネリー…さ…ん……
おにぃ…さ……
[控えめながらも優しく庇ってくれた、お下げの少女。
変わってしまった――変えてしまった…?――茶色の髪の青年。]
[あぁ、いっそ全て涙になって流れてしまえと、*嘆く。*]
──包帯を取りに行けば好かったのに。ネリー。
[獣の嗤い]
[睨み付ける女の][激しい瞳を][覗き込み]
[嘲笑い][揶揄する様に][囁く]
然うすれば、少なくとも、今此処で、こんな風に死なずに済んだ。
[然し続いた言葉には、]
[あえかに哀惜の色が滲んでは居なかっただろうか?]
[ ハーヴェイの両眼が見開かれ、そして緩やかに瞬かれれば其れは長い前髪に一時隠るる。
金糸の少女の胸から溢れるは消えゆく生命の焔の色。甘い芳香は渇いた獣の欲望を呼び起こす。彼方には男に組み敷かれ呻く護り手の少女。焔は潰えておらねど其れも“未だ”に過ぎない。
……ハ、
[ 歪む口許から零れるのは わらいごえ 。]
[最早耐え切れない、][と云った風情で]
[迸る赫い泉に口を付け]
[一滴も余さず飲み干そうと][貪り続ける]
[黄金の眸は蕩け][陶然と][赫の齎す快楽に揺蕩う]
[ ――緋色の雨が降り注ぐ。
緩やかに卓上に歩み寄った彼が手にしたのは、全てを見詰めていた真白の花。己が血で真紅に染まりし手を其れへと伸ばし、細き花弁に薄い口唇で触れる。
細めた眼に映るのは嘗て人であった者と人成らざる者。死者と生者、彼岸に往きし者と此岸に残りし者。
白の花を其の狭間へと放れば其の色も香りも染まりゆく。其れは手向け花か命を摘み採った証しか、真意を知る者は無い。]
[何時の間にかぐったりと][力を失った女の身体を抱き抱え]
[首に接吻を降らせる様に][忙しなく角度を変え何度も]
[犬歯で創を咬み拡げ][舌を尖らせ其処に]
[ぴちゃ][ぴちゃ][と]
[濡れた音が]
[静まり返った室内に虚しく響く。]
[激しい憎悪の中、ぽつりと浮かび上がる悲哀にも似た]
……逃げ…
[それは唇から零れたか、零れたように思っただけか]
[緋の闇に沈んで行く彼女が知る故はない]
[ネリー][血に染んだ侍女服を纏った女性が]
[生まれたばかりの獣に抱かれ]
[息絶える迄の刹那]
[庇護していた少女を][霞みゆく眸で見詰め]
[弱々しく震える唇で][何か告げようとしていたのを]
[終に彼が知る事は無い。]
……悲しいことだわ
[意識の浮かぶことはあぁ…
わたしの意識はその光景をみている。]
もう戻れないのだわ……
わたしもあなたも
[わたしとは違う、
それでも異端である者。]
生きている限り
戻れなかったのだわ
[まるで夢の中のように少し遠い光景。
あぁそれもそうだ、わたしは彼の腕の中にいるはずなのだから]
[不思議な感覚だった。
わたしは夢の中で現実をみる。
悲しいこと。
彼らをわたしは止めることができず
わたしは彼らの狂気を見るしかできず]
殺してあげられれば良かった……
[あぁわたしだけでよかったのに
かなしむ人はみたくなかった。
優しい子たちが、そうしてしまうのを見たくなかった]
[ゆらり
張りつめていた空気が揺れる
切り裂く銀は
しかし少女には荷が勝ちすぎたか
其れを掠めるだけで]
[撃たれた青年は
わずかに血を流し
ナイフを取り落とすも不可思議な笑みを浮かべ]
…あぁ、あいつが
[腕に抱いた女性の命を喰らったのは
紛れもなく彼なのだと
確信せざるを得ない
獣の…]
[また新たに空気が動く
霊視の巫女…その彼女が落ちた刃を
しかし其れは獣には向けられず
彼を撃った少女の命を奪う]
…あぁ、信じた物を守るために。
[其れが間違いであると誰が責められるだろうか?]
[ 歯車は何処から狂い始めたのか、或いは最初から狂っていたのか。広間は生命の証と揺れる焔とで緋く彩られ、其処に在るのは狂気の宴。人間には毒、獣には美酒を思わせる、噎せ返る程の甘い馨り。
護り手の少女の視線の先には、恐怖にか足を竦ませ震える幼子が。然し其の声を聴き留めたのは巫女だけであったろうか。
何時の間にかカーテンの向こうからは零れる月の光。少女へと緩やかに向けられる黒の視線も叉其の色を宿す。]
……武器庫では、どうも?
[ 柔らかに紡がれた科白に、少女は其の意味を理解したろうか。]
壊れたものは戻らない……
[わたしはそれでも
あわれみは覚えられずに]
あなたたちはしあわせで、
しあわせを求めて
だからそれしか…………
[*わたしはただ、ゆめのかなしみの中に涙をこぼす*]
[そしてまた新たに空気は動く]
[動いたのは男の命を奪った彼
緑の髪の少女に襲いかかり
押し倒し
何か囁いた後で
手にした刃でその首を掻き切り
目覚めた獣は血を啜る
その刃の正体を知り
自嘲]
[少女の目前では、いくつかのことが同時に起きていたけれど、ヘンリエッタが見ていたのはただ一人。
彼女の姿が、琥珀の目をした男の影に隠れ見えなくなった時、少女は弾かれたように動いた。
唇からもれる叫びはただ、その名のみ。]
[彼は言っていた
『あんたがトビーを殺したおかげで記憶が戻った』
と。
そして彼は男を殺し
血を貪り
そして己の牙となる刃を手に入れる]
…奴を目覚めさせたのは、俺か?
そして牙を与えたのも。
[自嘲の笑みは
やがて声を伴い
くつくつと笑いながら
広間を見つめる]
[――嘆く彼の上に、赤い雨が降り注ぐ。
それは、既に死した身である彼を染める事は出来なかったけれど。
命の雫であるがゆえか、揺らめく身体へ仄かな温もりを残し、通り過ぎて。]
……っぅ、…っく……ネリー…さ……ん……
[呻けども、声にならず。声になったとしても、嘆きは届かない。]
[――そして、茶色の髪の青年が、少女の命の泉溢れる喉元へと口を付けるのを見れば。ついに耐えかねたか、涙溢れる目を硬く閉じて、]
[ぴちゃ][ぴちゃ]
[濡れた音だけが、耳へと届く。]
……ゃだ……やだよぉ………
元の…お兄さんに……戻ってよぉ……ねぇ………!?
[目を固く閉じたまま、彼の知る”お兄さん”へ戻ってと、何度もうわ言のように繰り返す。
言葉も祈りも――青年には届かないと知っているけれど。]
[――やがて、音も *途絶えるだろうか。*]
[幼き姿を見つけ、目を細め。]
大切なものは守れても、己の身だけは守れぬか。
…己が身を盾にしたとて、倒れれば次はあの子だというのに。
けものから人をまもるのが私たちの役目。
自分をまもることを考えてはだめ、だって。
[“施設”で教えられたことを、ただ口にした]
[少女の問い掛けに答える為、視線を。]
ここは、死者の集う安息の地。
ま、天国じゃないみたいですがね。
[*くすくす*]
…お前もそう言うのだな。
守る為なら死んでもよいと。
その後に残したものがどうなろうと知ったことではない…か。
分かんない。
しにたくないって、思っちゃだめだから。
[きゅ、と眉を寄せる]
…だから、みんなしんじゃった。
けものに食べられちゃった。
[笑い声が聞こえる、ナサニエルの声。
わたしはその背をきつく抱き締める。
悲しみも苦しみもぜんぶすいとってしまいたい。
それがわたしの……願い]
[意識だけがわたしの姿を象る。
ああ違う、ずれているのか?
やっぱりあいまいな時間の中、わたしは銀色の獣と少女をみる]
本当は、しにたくなんかなかった。
のこされたくなかった。
[彼女が語るのはいつの記憶か]
…でも、両方はむりだから。
…ならば、お前のなかで一番要らないものから捨てればよい。
…そんな人間を沢山見てきた。
最初に旅人、次には娼婦。
家族よりは他人が死ねばいい。
そう言った男は自分の娘に貪り喰われたか…。
ねえ、コーネリアスさん
あなたの願いは、――ちがうわね。
あなたは何をしりたいの?
[わたしは獣にといかける]
[鮮やかな──鮮やかすぎる、真紅。
金の髪の少女はやがて、その動きを完全に止め、頽れる。
その様子を、静かに見つめて。
呟く。
聞き取れないような声で]
…ひとの絆とは?
[獣は小首を傾げて見上げる。]
お互い殺し合うのに、共に在りたい。
同族なのにそれぞれ扱いが違うのは何故だ?
[ふる、と首を振れば、意識を掠める声。
……気づかぬ内に。
そう、遠くない場所で、また一つ、人の死]
─…逃げ……─
[短い言葉。
それが向くのは、赤毛の少女だろう。
だが、それを伝えたとして。
当の少女がそれを受け入れるとは思い難く]
……キミの言葉も、届かないかもしれないね。
[或いは、意味をなさないかもしれない、と。
心の奥で呟きつつ。
青年が、少女に呼びかけるのを、ぼんやりと、聞く]
……月……。
[呟く。
それは、望んでも、決して手に出来ぬものの象徴だと。
異能たる巫女の一族にとって、最も遠きモノなのだと。
祖母に言われた言葉を*思い出して*]
人は弱いものなのだわ
信じれば裏切られる、その時のことを考えてしまう。
そして誰よりもその人を欲したら、その人との場所を守るためなら、なんでもできてしまうもの
殺すってことは――その人のすべてを奪うことでもある。他の誰にも奪わせたくないから、命を下すのだわ
それが破滅とわかっていても。
扱いが違うのは……
わたしたちには、想いの限界があるのだとわたしは思うわ
たとえ同族――人間だとしても、好きと嫌いでバランスをとる
わたしにも嫌いな人がいたわ…憎くて仕方なかった、もう顔すらおぼえていない男。彼が死んだらわたしは喜ぶ。おかしいことかしら?
ひとの絆は心の絆
それは時には誰かを愛し守る
誰かをな憎み殺す
血の絆より強くて弱いのかもしれない
わたしはそう思うわ
ん、たかが娼婦の言葉だから、わたしの思うことだから
本当のこたえじゃないのかもしれないけれど
そう?
ん、たとえば…そうね
少しでもその人を憎んだりすれば、疑念をいだいたりすれば。
強くてもゆらいでしまうのだわ。
幾人もわたしは知っている
愛した人を、強くおもいあっていた人を、うたがってつきはなしてしまった人を
[少女の視線にわたしは微笑みを作ってかえす]
大事なものがたくさんあるのね
[そういえばわたしはいつ、彼の腕から離れたのかしら
曖昧すぎる記憶。
なぜかはわたしはまだしらない]
[ヘンリエッタの叫びは組伏される少女に聞こえただろうか。
緑の髪の少女の唇が微かに動くのが見えた。
けれど、その声は聞こえない。]
たくさんを守るのは、一人ではできないわ?
何人もで何人をも守るしか
守るだけでもなくて、守られなくては。
限界がきてしまう
[両方の掌を見つめながら]
……うん。
まもられたから、私もまもろうとして。
…でも、できなかった。
[施設が獣に滅ぼされた時。
最後に彼女を庇って死んで行った、男の子を思い出す]
[泣いて、泣いて、泣いて……零れた涙の雫は魂の欠片。
雫となった欠片は、ふわりと散り…緩やかに大気へと溶け込んで。]
[残り僅かな魂は、卵のように…胎児のように。丸くなって……
*静かに夢を見る。*]
[掴んだ拍子に、蝋燭の一本が倒れ、血に汚れた敷布を朱に染める。
暖かいと思った。
けれど、ヘンリエッタの震えは止まらない。
この震えは寒さでも恐怖でもない。
ヘンリエッタにはもう、恐れるものなどないのだから。
あるのはただ、冷たい殺意。]
[投付けられた燭台]
[其れは血の陶酔に溺れる男の背へと]
[然し、幼い少女の力では]
[辛うじて当てるのが精一杯で]
[組み伏した女性を押さえ付ける][脚に当たった物の]
[特に痛痒を覚えた様子も無く]
[変わらず][首筋に口唇を押し当てた儘]
[忘我の境地に]
[投げ付けた燭台は、男を傷つけることなく、床に転がる。
何故、あの武器庫から毒薬を持ってこなかったのかと後悔した。
あの時、暖かく弾んでいたネリーの吐息。
それはもうない。
転がった燭台を再び持ち上げ、今度は男の首筋を狙い、打ち落とす。
びくびくと動くそこが、柔らかそうに見えたから。
武器庫で持ち上げた長剣よりも、毒瓶よりも、燭台は軽く感じられた。]
[殺意]
[間近に迫った気配に][遅まき乍ら獣の本能が覚醒を促し]
[打ち落とされた燭台を掌で受け止め]
[食餌を邪魔された獣の][威嚇の唸りを喉奥から発する]
[男がこちらを振り向いたことに、少しだけ微笑む。
その手がヘンリエッタの大切な人から離れたことにも。
けれど、それは喜びではない。楽しいことは全て、終わってしまった。
燭台を引き、今度は彼の顔面目掛けて打ち下ろそうと下が、少女の力では果たせなかった。両手で引いても、受け止められた燭台はびくともしない。
だから、彼の顔を狙い、噛み付こうと口を寄せる。]
[緋く広がる血と、揺れる焔の海。
獣に殺意を向ける赤い少女。
初めて気がついたとでも言うように、翠の瞳は見開かれ]
[死んだ女性の躯を放り出し]
[噛み付こうと口を寄せる][少女の顔を掴んで]
[抱き抱えて押さえ付けようとする]
……お、
[気遣う表情で][声を発し掛けて][止め]
だめ…!
[弾かれたようにそちらのほうへ。
水の中にいるように大気を掻いて]
[焦る程には早く進まず]
[酷く、もどかしい]
[押さえ付けられた顔を懸命に動かし、男を見据えた。
その表情は、殺人者のものにしては頼りなく。彼と言葉を交わしたことを思い出した。
緑の髪の少年のことも。]
何で。
なんでネリーを。
[ネリーは誰も殺してはいないのに。
呟いた声に激情はなく。けれど、瞳には殺意をみなぎらせ。]
[問いかけに、こくり頷く。]
だから、死んで。
あなたは生きていたいの?
[彼が気にかけていた少年のいない、この世界で。]
[ 赤髪の少女は彼も目に入らぬ様子で己が慕う少女を組み敷く男へと其の赤銅の瞳に冷たき憎悪の焔を滾らせ、地に落ちた蝋燭は其の色を敷布に分け与え徐々に揺めきを広げゆく。]
……此れが人の絆、ね。
[ 脆くも崩れた其れらに関心も失せたかの如く緩やかに巫女へと視線を戻せば、月を宿した双眸が移ろうのは映されし朱の所為か其れとも感情の揺らぎか。]
[同族と言われてはじめて、誰が人外であったかを理解した。男の力の訳も。]
あなたには、守るものがまだあるのね。
私にはもう無いのに。
[もう無いのに何故、自分がこの男が憎いのだろう。
殺してもあの少女は戻って来ないのに。
この男を殺したい。]
[視線を向けられ、一つ、瞬く。
わずか、揺らぐような瞳に。
返すのは、不思議そうな視線]
……なに?
[問う様子は、幼子のようでもあり]
それでも
自分が死ぬ前に、大切な人を守りたいと思うのは、当然のことだわ。
[わたしは少女を見る]
守るだけじゃなくて、守られるのだわ。
背を向けて、背をあわせて。
守られるのと守るのを、一緒にやるの。
そうじゃないと……一緒にはいられないのだわ。
[逆に問われ、ああそうかと気づいた。
あれほど恐れていた死は、もう怖くない。
自分はそれを求めている。
けれど、自分で胸を突く気はしない。
突くのは、目の前の男の胸だ。
ヘンリエッタは、力を求めて目だけで辺りを見回した。
蝋燭から零れた赤は少しずつ床に広がり、壁に移りゆく。
先ほどから咽が苦しいのはそのせいかと気づいた。
このまま、この男を放さなければ彼を殺せるだろうか。]
[女性の声が耳に届いたのか。
今まで殆ど感情を映さなかった、表情が大きく歪む]
しにたくなんて、なかった。
[沈鬱な表情の獣を、それでも懸命に睨めつけながら]
[とすん――]
[少女の体に衝撃が走り――]
[ふわり――]
[舞った金糸の陰から見えたのは――]
メイ…さ…ん?――何故……
[信じていたはずの味方。その味方に裏切られたことを知り、愕然とする――]
『ボクにとって…今の君は正しくないの――』
[聞こえてくる彼女の『言い訳』に、少女は――]
[くすり――]
[誰にも悟られずに微笑み――]
travaviller du chapeau――
[呟いた言葉は目の前の少女に聞こえたか――]
[それでも少女の力に託した言葉。
それは赤髪の少女に自身を重ねた為に漏れた言葉なのか。
それとも――]
でも…あなただけは…生き延びて――
[そっと願いを込め、少女は生の世界から姿を消した――]
……なに?
[名を呼ぶ声に、僅か首を傾げて、再び問う。
薄紫の瞳は静かなまま。
ただじっと。
そこにいるものを。
彼女にとっては、繋ぎ止める最後の糸を
見つめて]
[ふと――
聞き覚えのある声に少女は振り向く――]
あれ…神父様――?
[声の方を振り返れば、少女が一番会いたかった者の姿――]
[無心に駆け寄る少女に、差し伸べられた手は、済んでの所で止まり――]
『慕って貰うほどの人間ではないのに、良いのですか?』
[投げ掛けられる言葉――
しかし少女は躊躇うことなく――]
それは…私自身が決めることですわ?神父様――
[その胸に飛び込んだ――]
お役に立てなくて…ごめんなさい――
[謝罪の言葉を*口にしながら*――]
[ 朱が刻一刻と其の色を広げてゆけば、誰も彼も其れに照らされ同じ色に染まる。一歩、其方へと歩を進めてそぅと伸ばされた手は巫女の頬を掠めるか。伸ばさぬもう片方の腕からはぽたりと緋色の雫伝い床に落ちた。]
……欲しい……?
[ 其れは問い掛けか自問か。双眸は緩やかに眇められて矢張り僅かに揺らぐ。]
[投げられた言葉の意味を、しばし、捉えきれず。
それから、ようやく理解して。
……理解できたから。
瞳が、揺らいだ]
……寄せて、くれるの?
ハーヴェイの、いる方、に?
[問いかける声は、震えて。
その様子は、巫女となる以前の少女の不安の示し方とほぼ同じにも見えるか]
…共に在らねば意味が無い。
[獣はそっと目を伏せる。]
生けるときも、死するときも…共にいくことを望んでいた。
離れてもずっと、コエだけは聞こえていた。
置いていかれる気持ちが理解るか?
命を捨てて守ろうとするものに。
[獣を排除し、主の遺したこの館を護ると、そう心に決めて]
[それが自らに与えられた使命なのだと、刃を手にして]
[それでも]
私は、結局――
何一つ、護ることができませんでした。
[悔しげに、哀しげに、下唇を噛み締めて]
[男は生まれついて何も持たなかった
愛するものも
愛してくれるものも
求めても与えられず
与えようにも求められず
唯一人で]
[やっと手に入れそうになった愛おしきものは
壊されて
男の心も壊れかけ
其れは愛故、悲しみ故か?
否
其れは唯
やっと手に入れたものを壊された事への
憤り故の
否
其れもまた愛なのだろうか?
その答を男は知らず]
[男が与える事が出来た物は
命と 血と 兇刃たる刃
今は獣となった男に
其れは望んだ事ではなく
あぁ、だけど]
何も残せないよりはよっぽどマシだ。
[くつくつと声を上げて
嗤う]
置いていきたかったわけじゃない。
私も置いていかれたから。
[俯いたまま、僅かに肩を震わせて]
――ただ、護りたかっただけ。
[獣の言葉に、わたしは微笑を作る]
そうね。
だからこそ……わたしは、その苦しみを二度と味わいたくなかったのだわ。
[そっと、左の手を腹に当てる。
あぁ、ほんの手のひらの上に残った黒い、黒く染まった、あの姿。
思い出して、俯いた]
[ 揺らめく月の双眸は何処か遠く感情は見えずに唯、少女の薄紫を見詰める。]
……でも。
[ 伸ばされた手は緩やかに宙を彷徨って、]
俺は……、メイを、喰らうよ。
今でなくとも、何時か。
[口許には薄らと人とも獣とも取れぬ笑みめいたものが浮かぶか。]
[わらいごえに、わたしはその手を下ろして。
その彼を見る。
自然に手が伸びていくのを、自分で不思議に思う。]
ナサニエルさん……
ねぇ。
……好き、だったわ、ずっと。決して思わないと、思ったのに。
だから
そんな風に苦しまないで、悲しまないで……?
[霊視の巫女の言葉は
其れは
人からの決別を
だけど]
共に在りたいと思うのは、間違いじゃないだろう?
[愛おしきものに
同じように愛され
受け入れられるのならば]
[喰らう、と言われて。
ほんの僅か、首を傾げる。
それでも]
……かまわない、よ?
それなら、それで。
ボクが消えるのが先なら。
……その方が、いいから……。
[ふわり、と。
笑んだ。
泣き笑いの微笑。
それは巫女ではなく、少女の笑い方だったやも知れず]
[此方へと伸びる手を
そのまま受け入れて
笑う
悲しみの色はそのままに]
…決して、手に入らないものと思っていたから。
だから、触れるのが怖かった。
君を抱けなかったのはそのせいだ。
そして失って
やっぱり俺には手に入らぬものと……
君は、俺の手を離さないでいてくれるかい?ローズ。
[其れはまるで、子供が願いを請うようで]
…摘み取るも、
共に歩むも…
お前の好きにすればいい。
[聞こえたコエに応えるように。
その役目が自分よりも彼にこそ相応しいと決めたのだから。]
[胸に飛び込んできたウェンディに一瞬驚くが、
微笑を浮かべながらいとおしそうに抱きしめる。]
ウェンディ。
私は何一つ、父親らしい事などしてあげられなかった。
貴方の愛に、こたえられなかった。
でも、もし許されるのなら。
「おとうさん」と、呼んでもらえませんか?
[一種の『賭け』だった。
拒絶される可能性もないわけではない。
それでも。]
[ヘンリエッタの顔を抑えた手に、問いかけた唇に、滴る赤い血。これは彼女のものだ。
ぬるりと光るその血が、ヘンリエッタの頬を染めた。
むせ返る煙の匂いのなかに、それよりも濃く錆の匂い。
あの晩、頬に触れた手を思った。
あの夜に、時が止まってしまったのなら良かったのに。]
置いていかれる悲しみは
嫌と言うほど味わったさ。
だから、守りたかった。
共に在る為に。
[獣の言葉に笑う
命を捨ててでも、と言う事は
命を捨てる、と言う事とは同義ではない、と
其れは唯の理屈でしかないけれど]
わたしは、あなたの手を離さない。
[強く抱きしめて。
その身体から不安を除けるようにと願って]
今のわたしは、売り物じゃないわ。
嘘をつく必要も無い。
……死んで、そうやって言えるのも、困ったものだけれど。でもだから言うわ。
わたしはとても汚れているけれど、あなたとずっと、一緒にいたい。
駄目、かしら……?
[声は少し、不安を帯びてしまうけれど。]
[目を見開き、琥珀の瞳を見据える。
死ねない、は生きたいではないことを、少女は知っていたけれど。]
死んで。
[煙に詰まる咽からもれるのは殺意のみ。]
散々お前が厭がる事して来たんだから、其れくらいは聞かないとな……。
[ 黒曜石の双瞳は緩やかに細められ、クスクスと薄く笑う彼も叉、獣ではなく人としての青年のものだったろうか。然れどももう彼の時は還らないと知っていて、其れは全て己が所為だとも解っている。伸ばされた手は、少女の頬を撫ぜるか。
ぽたり。叉一つ、床には緋い染みが広がり朱い焔は全てを覆っていく。]
好いよ。
俺が死ぬ前に、――お前を殺す。
[ 其れはハーヴェイの、恐らくは最初で最期の約束。]
[夢見るは―――貧しいながらも温かい家族。
皮肉屋の青年。
少し苛めっ子な年上の子。
困りもののお得意様に。 姉さんの憧れの人。]
いやだ。
ころさないで。
[哀願するような響きを洩らして]
[まるで彼女自身が、その眸に囚われているかのように]
[強く抱き締められて、ほんの一瞬目を瞠る
浮かぶ笑みは心からの想いを映して]
……汚れているのは俺も同じさ。
それでも…叶うならば、共に。
ずっと君と一緒に居たいと。
[その体をそっと抱き締める]
……愛している。君を。
[本当は、生きているうちに言いたかった、言葉を]
[それから―――館で初めてであった、
少し大人びた少女。
大らかな青年。
赤毛の少女。]
[怪我だらけの、お兄さん]
……ほんとだよね。
怖がってるの、わかってて、あれなんだから……。
[笑いながら、返す。
やり取りは、以前と変わらない。
けれど。
そこにどんな変化があったとしても、今となってはどうでもいい事なのかも知れなくて。
頬に触れる感触に、僅か、目を細める]
うん……約束、だよ?
[呟いて。その約束を。自身の中に。しっかりと刻み込む]
……忘れたら……怒るから、ね?
[言葉を聞いて、わたしは、あぁ。
しあわせだと思う。
こうやって愛情を向けられることに、慣れているはずだというのに。
わたしはあきれるほど、恥ずかしくて。うれしくて。]
……わたしも、愛してる。
ずっと、ずっと、側にいさせて欲しいくらいに。
[ねぇ、こうやってずっと抱きしめて欲しかったの。
なんていったら、彼はどうするだろうか、なんて*思う@一時退席*]
[振り返りはしなかった]
[そんなことしなくても、解かってしまったから]
[銀の雫が一筋]
[大きく揺らぎ、その姿は*薄らいで*]
止められてたら、とっくに止めて……、
[ 言葉の途中で喉を押さえたのは徐々に部屋を包んでいく朱の所為か、其れとも喉の渇きの所為か。双瞳が再び揺らぎを持てば月の光も叉宿り掛け、二、三度瞬けば触れていた手を離して、]
……情けな……。
[ 浮かぶのは自嘲の笑みか。]
あぁ、永遠にだって傍に居たいよ。
[ローズを抱き締めて語る甘い睦言は
その場にそぐわぬ色合い
広間では、また一つ
命の焔が消えたところ]
……そして残るは獣ばかり、か?
[そして消え行く命の代わりに
全て焼き尽くす朱が揺れる]
[彼は丸まったまま――― 夢を見てるから。
”お兄さん”によって、少女がその命を手折られた事も知らぬはず、]
[――なのに。]
[残り僅かな魂がまた、雫となって零れていくのは *何故だろうか*]
[既に広間は]
[燃え広がった焔に包まれつつあり]
[充満した白煙が喉を焼く。]
[此の中に在っては]
[仮令強靭な生命力を持つ人狼と雖も無事に済む筈も無い。]
[此の儘留まり続けるのも][そろそろ限界に近い。]
……いいよ。
止められるものじゃないのは、わかるから……。
[途切れた言葉に呟くようにこう言って。
それから、心配そうな瞳をじっと向ける]
……大丈夫?
[不安げに問うた直後に、自身も軽く、咳き込んで]
[がたりと梁の燃え落ちる音。
静かに焔は館に広がり、
燃えてゆく燃えてゆく
消えた命も、まだ消えぬ命も包み込んで。]
[少女の首に回した腕を解き]
[殆ど][優しいと言っても良い手付きで]
[投げ出された儘転がる][緑の髪の女性の傍に]
[少女を寝かせる。]
[……軽く咳き込む。]
[瞳閉じたまま、唇が微かに動く。漏れるのは嗚咽ではなく、哀願。]
逃げて…
[その言葉は、誰に向けてのものなのだろう……?]
[二人寄り添う様に][横たわる姿を]
[暫しの間見ていたが]
[少し離れた所で][向かい合う青年と少女の二人に向かって]
[振り向いた時には既に]
[其の表情には][一欠片の感傷も窺えず]
大、丈夫……つったら嘘になる、が。
[ 存外素直に其の言葉を口にして、右腕から零れる緋色の雫を舐め取る。其の程度で渇きが収まる筈も無いが暢気に“食事”を取っている訳にも行かずに。]
そうも云ってられない、だろう。
[ 端目で永遠に目覚めぬ睡りについた少女を見遣り、其れから服を裂いて自らの右腕を縛る。]
……あぁ……
[床に散る赤よりも、焔の朱が其れに勝り
揺れて揺れて
其処にある全てを
嘘も罪も死をも全てを無に返そうと]
[彼のうでのなかからでも、その焔はよく見えて。
わたしは、壊れた景色を眺める。]
……かなしい獣たちだけだわ。
でも。
一緒に、燃えてゆくのかしら?
[その言葉は、願うようでもあったかもしれない]
……うん。
[こく、と頷いて。
それから、呼びかけてきた声の方を振り返り。
横たわる、二人の少女の姿に、瞳は僅か、揺らいで]
……あの言葉を聞いたら。
キミは……それに従った?
[問いは、赤毛の少女に向けて。
勿論、答えは返らないのだけれど]
否。
[未だ聲を持たぬ][人ならぬ人][獣ならぬ獣は]
[実声で応える。]
俺は…彼の人と一緒に行けなかったが。
彼女は行くと言って呉れたのだろう?
……って、ちょっ!
[唐突に抱き上げられ、声が上擦る。
更に似合いと言われ。
焦り]
あ、え……と……。
[だからと言って、逆らう理由もなく。
そのまま、身を預け]
ならば。
其の日まで一緒に居ると好い。
[然うして][今度は碧の髪の少女に顔を向け]
離すな、最期の日迄。
[祝福する様に、][鮮やかな笑みを。]
あぁ、哀しい獣たちさ。
命有る物は皆哀しみを背負う。
人も獣も同じ事。
……燃えてしまえば…
だけど、そうも行かないみたいだな。
[獣が少女を抱き上げるのを見れば、薄く笑う]
生き延びろ。
人の命を喰らって生きるのならば。
奪った命の分まで生きて見せろ。
[焔は燃え上がる。永遠の眠りについた者達を、中に抱いたまま。
それは、凄惨な館を棺桶とする―― *火葬のように。*]
……る・せ・え、つってんだろう。
[ 男に云い返しつつ半眼に成る其の青年の双瞳には、現在は獣の輝きは無い。其れは束の間の事であるのかもしれないが。然し其の後の言葉には瞳は瞬かれ、]
……………、……然様で……。
[何処と無くバツの悪そうな表情をしながらも、然う呟く。]
…それでも、共に在りたい気持ちは理解る。
[できるならば、あの調べに永遠に寄り添って居たかった、そんな心もある故に。
聞こえたコエにポツリと応える。]
こっちのが、早いんだ。文句云うな。
[ 人の姿をしては居れど、其の力は矢張り獣の其れを有す。軽々と少女の躰を抱えれば扉の外へと駆け、人には在らざる速さで外へと向かう。]
解ってる、ての。
[ 数日前迄の平穏だった館の姿は何処にも無く、全てが焔の朱に包まれて燃え落ちるのは、最早時間の問題と思われた。――幾つもの死を包み込んで。]
そうね。
[焔の中をゆく獣たちは、生きるだろう。]
かなしいけれど……しあわせになってくれると良いわ
しあわせに生きてくれると、良い
別に、文句言ってるわけじゃ……。
[掠れた声でぽそぽそと返しつつ。
しっかりと、しがみつくようにして]
……あ。
[燃え落ちる館に、ふと、思う。
残っていた、もう一筋の、糸──ピアノの事を]
……ありがと……。
[小さく呟いた言葉は何に向けられたのか、それを知るのは、少女のみで]
[白銀の獣は、静かに歌う。
身に纏うその色は、子孫を遺せぬ滅びの色。
ついと一筋、頬を濡らす。
…人の中で生きるための偽りの心であるはずなのに。]
[──でも今は。]
[少なくとも、彼の人が]
[仮令何時か、自分を殺してしまうかも知れないと分かっていても、]
[其れでも一緒に行きたかった][生きたかった]
[のだと]
[知る事が出来たのだから。]
[ローズを見遣り、僅かに微笑む]
幸せになってくれないと困るな。
そうやって悲しむものがいるうちは。
悲しませた人の分まで
あいつ等は幸せにならなきゃいけない。
其れが生き残ったもんの義務ってモンさ。
[燃え落ちていこうとする屋敷を見渡して]
あぁ、もう終わりだな……
……あ゛ー、本……勿体ねぇ。
[ 少女を抱えた儘に燃え落ちていく館を見上げながら僅かに冗談めかしてぼやきつつも、青年が想うのは部屋に置いて来た一冊の手帳。雨に濡れ粗用途を為さなくなった物ながらも、其処に書き残した、唯、一文――忌避し逃れ続けても、何れは訪れる時なのだろうが。]
……命を奪い続けた者の咎、然う容易には死すらも赦されはしない、だろうな。
[ 小さく呟きを落とす。]
[微笑を見れば、わたしは嬉しくなって
それでも崩れていく館が。
時間を教えて。]
そう、ね。
もう終わりだわ。
……ねぇ、ナサニエルさん。お願いがあるの。
[その頬に手を伸ばして]
キス、してもいい?
[抱きしめられれば、少女は嬉しそうに微笑み――]
[差し出された願いには――]
[ふわり――]
[たゆたう柔らかな金糸を靡かせ――]
おとうさん――
[薄紅色の唇は、確かにその言葉を紡ぎ――]
ねぇ、おとうさん――
私たちは…これからずっと一緒に居ることが出来るの?
[燃え盛る屋敷を、何処か喜ばしげに見つめながら――]
[呟く――]
[全ての呪縛から解き放たれたように――]
[護ろうとして]
[ついぞ護ることのできなかった少女]
[横たえられたその頬を]
[あの時涙を拭ったように]
[そっと撫でるように]
[触れるように]
ええ。
これからは、ずっと一緒ですよ。ウェンディ。
[おとうさんと呼ばれ、嬉しそうに微笑んで。
*もう一度、ウェンディをきつく抱きしめた。*]
[轟音に包まれ、燃え落ちて行く館。]
[湧き上がる黒煙]
[夜空をも焦がす様に][赫々と燃える焔は]
[雪の様に舞い散る火の粉を散らして]
[願い、との言葉に目を向けて
手を伸ばし告げられた言葉にほんの一瞬の惑い
だけど
其れは同じ気持ちであったから
頷いて]
良いよ…。
[そういってそっと顔を寄せる]
[庭園へと歩み出る。
燃え落ちる館の熱風に、冬薔薇の茂みが揺れ、
その前で獣は蹲り、その落月の瞳を閉じた。
冬薔薇の茂みの奥には、白亜の墓標。]
[やがて館が燃え尽きてしまう頃]
[全ての骸が地に返る頃には]
[その姿も元からなかったかのように]
[焔の向こうへと*消え失せるのか――*]
きつく抱きしめられれば――]
ようやく私…還る場所が…出来たみたい…
[微笑み――]
[安堵の溜息を漏らして――]
長かった…。お父さんに辿り着くまで――
[小さく肩を震わせながら、少女はその身を彼に*預けた*――]
[ ――朱く朱く、天までをも染め上げていく焔。
軈て赤き雨は降り止み館で起こりし惨劇は終わりを告げれども、生きとし生ける者が其処に在り続ける限り悪夢は決して終わらず、犯した所業も失せる訳ではなく、閑かに閑かに重く重く降り積もっていく。]
[少し照れくさくて。
それでも頬から首へ手を滑らせ、
腕を回して]
……ありがとう。
[微笑が浮かんで。
わたしはそれに気づかぬままに、そっと口唇を押し当てる。]
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