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[去っていった人々を呆然と見送り、残っている二人に取りあえず]
ほい。
[皿に入れた芋を渡す]
まだ熱いから気をつけてな。
にしても、騒がしい。一体何が?
[といいつつ意識は芋の方に*向かった*]
[さっきより大きくはっきりとした怒号と、階段を駆け下りる音。]
[わたしは顔をこわばらせると、ゼルギウスさんに身を寄せてぎゅっとしがみつく。]
[手が震えてる。]
[追って、駆ける先。
聞こえてくるのは、ウェンデルの声]
逃げるって、一体、何がどうなって……?
[呟きつつ、今は。
前を行く子供を見失わぬよに、意識を集中させた]
[広間の前を横切る]
ッ、は…
[息を切らせ][足は止めず]
[けれど捻りでもしたか][速度は遅い]
!
[広間を出る影]
[ぶつかる直前][立ち止まる]
[エーファが駆け出し、ライヒアルトがその後を追う]
[外からはウェンデルの声]
[「身に覚えがないのなら何故逃げる」]
[想像以上の異変が起きていることが感じ取れた]
[彼が何を追って居るのか]
[気になったけれど、傍にはベアトリーチェが居る]
[視線を向けると、少女は自分に身を寄せしがみついていた]
[震える手]
[やはり、放ってはおけない]
ああ、ありがとう。
何があったかは、後でライヒ君達に聞くか。
[芋の乗った皿を差し出してくれたイヴァンには礼を言って]
[受け取った皿を一旦厨房にあるテーブルの上へと]
[それからしがみついて来るベアトリーチェの肩に手を乗せ]
[落ち着かせようと自分の方へ抱き寄せた]
[マテウスが手にした鷹の章。
所々に浅い傷のある鷹のそれは、勲章にも近く。
村人の視線をよく集める、誇らしげな、彼だけのものだった。]
…間違いないと、思う。
[呟き頷く。やや顔色は、悪い。]
…落ちた、のか。
[おそらくは、アーベルが。
大きな音に身を竦ませるゲルダの肩を抱いた。]
[目の前に、ヨハナの姿、そして立ち止まった青年の姿も見える。追って来るウェンデルの姿も視界に入ると、子供も一度、足を止めた]
[広間から半身だけを乗り出して、こちらへ走ってくるアーベルの姿を見つけると、いつも通りの笑みを浮かべながら、老婆は口を開く]
……おやおやまあまあ。
そんなに息を切らせて、何を慌てているのですか。アーベル君?
[一旦、言葉を切って、その後に続く言葉は]
―――例えば、人狼が見つかったからとか?
[二人の様子と返答にそれぞれ肯定の意をうけとり]
とりあえず、下降りるか?
[大きな物音、これはきっと階段を踏み外しでもしたか?
アーベルのあわてた様子からそう推測し、
階下の喧騒は二階にも響いて聞こえてくる]
それとこれは…
[言いながらナターリエの持つ毛玉を示してから落ちた破片を拾い]
もっていくか。
[ナターリエがゲルダの肩を抱く様子に自分はゲルダに安心させるように笑いかけて]
なに、ちょっとあわてることくらいあるさ。
話し合えばはっきりするだろう。
[その言葉は気休めにもならないかもしれないが]
……アーベル?
[視界に入った姿に、小さく呟く。
立ち止まる子供の横、自身も足を止めた]
一体、何が、起きてるんだよ……。
[零れるのは疑問。
状況が読めない]
[腕を取られ]
[眼を見開き][振り返る]
…嫌だ、
[『人狼』]
[老婆の言葉][背後から聞く]
離せッ
[乱暴に振り解こうと]
[ウェンデルは、口火を切る]
その様子。
昨日ではなく、今日に証拠を現したこと。
貴方の先日の問答からしても、白を切っていたにしては、
……今まで隠れていた人狼とは、思えない。
[疑問は沸く。
しかしそれは無罪の証明には繋がらず]
御自覚が、なかったのですか?
[『正当』な理由を生み出す]
[肩に触れる掌。
縋るという程強くは無いが、寄り添うように身体を寄せる]
いた、そう。
…怪我。してないと、いいな。
[小さな呟きは、この状況にあっても、落ちた相手を気遣う態で。
揺れる眼差しが階段の先を見た。
緩く、緩く息を吐き、睫毛を伏せる]
今のって。アーベルさんが、そう、ってこと?
[自分に対してか、誰に対してか。
確認のように、抑揚に欠けた声が零れた]
……人狼。
[ヨハナの発した言葉。
アーベルの様子。
ただでさえ、人付き合いのなかった身。
彼の事は、余り知らない。
それ故に、口を出す事はできず。
何か、嫌な感覚を覚えながらも、ウェンデルとの問答を見守った]
アーベル先生。
貴方が、人狼ですか。
[問いではなく、宣告の如き台詞]
[語る間に、左の手は動く。
蓋が床に落ちた。
振り解こうとするアーベルの手を、逆に払って。
二度、伸ばす腕は左。
鮮血にも似た、朱の花を宿した手が、首を狙う]
……あらあらまあまあ。
ほんに、一体どうされたというのですか……。
[ウェンデルの手を振りほどこうと乱暴に暴れるアーベルに近づき―――そして「予定通り」に暴れたアーベルの体に当たって、老婆は吹き飛ばされて、廊下の上へと倒れこんだ]
……は……!
…かもしれない。だが、違うかもしれない。
[ゲルダの言葉に、返すこちらの声もいつもの精彩はない。]
…行こう、それを確かめないと。
[ゲルダの肩を抱いたまま、マテウスの問いにこくりとはっきり、頷いた。
顔色はまだ戻ってはいないが。]
[ゲルダの様子に]
やっぱりゲルダはやさしいんだな。
怪我もそうだが…、
[その先の言葉は飲み込み、
すぐに投げかけられた疑問に]
なんともいえないな。
とりあえず話を聞いて、状況を確認してみないことにはな。
[ナターリエの返答に頷き]
ナタリー、ゲルダを頼む。
階段気をつけろ。
[先行して階段をおりていく、
すぐにも廊下の先広間の入り口あたりにひとだかりが見え、後ろの二人を気遣いながらそちらに向かう]
自覚、が… ?
[視線が彷徨う]
僕は、…僕は、
[口唇は震え]
[迫る手]
[掴まれていないもう片手で][その手首を掴もうと]
下。うん、降りる…。
[そろり、小さな一歩を階段に向ける。
行きたい気持ちと、行きたくない気持ちはほぼ均等]
…マテウス兄さん。
ありがとう。
[気遣う気持ちが伝わるのに、礼を述べて。
けれど、と言の葉を続ける]
でも。
もう、そういうのじゃないって分かるから。
あたしも、ずっと綺麗な子供のときのままではないから。
[酷く淋しげな呟きを、マテウスへと向ける]
[伸びるウェンデルの左の手。
鮮やかな──鮮やか過ぎる、朱の花]
あれは……。
[朱花、と。
声に出さずに呟く。
直後、廊下に倒れこむ老婆の様子に、ち、と舌打ち一つ]
あんたは、後ろに下がってた方がいい!
[倒れる仕種が演技と見抜く余裕はなく。
助け起こしながらも、視線はウェンデルたちを追って]
[アーベルに向かうウェンデル。
出遅れたからもうそこまでは手が届かないか。
距離だけは縮め同居人の近くへ。
何かあれば動ける場所、何もなくばヨハナを助けるのを手伝おうと]
[ベアトリーチェの震えは止まらない]
[今起きている騒ぎが人狼を追い詰めているのだとしたら]
[そう考えると自分も恐ろしく思えて来る]
[追い詰められた人狼が本性を現し暴れ始めはしないかと]
[肩に置いていた手をベアトリーチェの頭へと移動させ]
[ゆっくりと、優しく、何度も何度も撫で続ける]
[反対の手は無意識に胸の辺りへと伸び]
[懐に隠した短剣を服の上から押さえた]
…大丈夫、大丈夫だから。
俺が、君を護るから。
[ベアトリーチェにだけ聞こえるよな声量で]
[何かあればの覚悟だけは決めながらそう囁いた]
分からないというのならば、
こうして、確かめるしかない。
[睨みつける金の瞳には、アーベルの姿は映っていない。
ただ。己が絶対と信じるものが在るのみ]
違うかもしれないって。
ナターリエは、本当にそんな風に思える?
[普段と異なる響きに、問いを返す。
酷な質問だと理解してなお、口は動いた]
うん。あたしも、確かめたい。
だから、行く。
[ナターリエに庇われながらも、更に歩みを進めて階段を降りていく]
[脇をすり抜けていく子供。
疑っている相手。だが]
危ない。
[エーファの方へ更に一歩。
告げられた宣告に、再び疑惑の元である青年を見た]
……家主殿。
[やって来た気配に、視線は刹那、そちらへ。
そこに響く、花を宿すものたちの言葉。
ぎ、と唇をかんだ後、暗き翠は、そちらを見据える。
迷いは、ない。
己が力で見定める事に]
[ゲルダの返答にはくしゃりと頭を撫でて]
だからって汚く染まる必要はない。
[そう応えた。
廊下の先では、
ウェンデルの朱花を宿した手がアーベルを捕まえていて、
逆手にもたれた万年筆]
おいっ!ウェンデルっ!
[その名を呼び駆け寄る、
その声は相手に届いたであろうか?
騒ぎを聞きつけ団員がこちらに向かってくる気配が感じられた]
[無意識に、反対の手に握ったままだった毛玉は、ポケットの中に入れた。]
ああ。分かった。
[マテウスにこくと、そこだけは強く、頷くのは守る者故か。
ゲルダの問いに、緩く首を振る。声にせずとも、思いは伝わっただろう。否と。
同じような思いを抱いたまま。
ゲルダを庇いながら、足元に注意し階段を降りる。]
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