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…いや、別に。
[邪魔というほどのものでもなかったし、余計と言えば余計だったかもしれないがかといってそれほど問題ではなくて]
お前の子だったのか。
[ひらひらと離れていく薄い花弁を眺めながら]
それはまあ、戻るのも面白くないのですがねえ。
[すい、と足を進め、軽く斜めに斬り上げるように]
あなたを傷つけると、麒麟殿を嘆かせてしまいそうなのが、なんとも…
僕の子というには語弊はあるね。
僕よりも長生きだから。
[花は爪先に落ちて、消える。]
この世界の核を、送り出すか、
この世界から皆を追い出すか、
どちらかで、元の場所に戻れるのだっけ。
[部屋の中から聞こえるのは話し声。そして力の揺らめき。覚えのある漂う気配は、どこか殺気立っているように感じられただろうか]
今度は何やらかしてんだよ。
[眉を顰め、ふ、と短く息を吐いてからドアノブに手をかけ扉を開けた。扉を開けた先、そこに居たのは双方剣を構える時空竜と精神の魔]
随分と楽しそうだな、お前ら。
[口をついて出たのは皮肉げな言葉。どちらかと言えば、オトフリートに向かって厳しめの視線が向かっただろうか。また無茶してるんだろう、と言うかのように]
ふーん。
流石翠樹の属。
[紡がれる言葉。視線が少しだけ細まる]
…そうだと聞いているが。
[何でそんなことを今聞くのだとでも言うように、首をひねる]
[斬り上げの一撃に、刃を合わせて押さえつつ]
それこそ、いらん心配だな……容易く、斬られるつもりはねぇよ!
[あわせた刃に力をかけ、一気に体勢を崩しに持ち込もうと]
クレメンス。
……心の魔だけど、わかる?
[尋ねながらも、わかってるんだろうなというような声。]
核なのって聞いたんだけど、答えなかったんだ。
多分、そうなんだろうね。
追い出したら、元に戻れるかな?
丁度いいところへ、いらっしゃいましたね、風使い殿。
[ふわり、と空を舞うように、ハインリヒの背後に飛ぶと、黒い剣をその喉元に突きつけた]
オトフリートに無茶はやめるように、言ってあげてもらえませんか?
[にこり、と微笑む]
クレメンス。
……ああ、あの胡散臭いの?
[魔とか、精神とか、そんなことよりもそっちのほうがインパクトが強かったらしい]
そうだと思うなら、やってみりゃいいんじゃない?
百聞は一見に如かず。
言うだろ?
[突きつけられた剣には動じることも無く]
言ったところで聞いちゃくれねぇよ。
何度言ったことか。
で、この刃は何かね。
[喉元に突きつけられる刃を親指と人差し指でつまみ、喉から放すように少し力を込める]
うん。
[目を開いたのは夢現で答えてから。
視界にミハエルの姿を確認すれば、安心したように微笑んで]
何で穏便に済まないんだろう。
[原因の一つである自覚は薄い]
そうだね。
でもきっと、時の竜がやるよ。
僕はここにいようかな。
一番、好きな場所だから。
[小さく笑って。]
うさんくさいなんて本人が聞いたら……きっと悦ぶよ。
[競り合いを外した心魔の動き。
異眸は鋭く、それを追う。
手にした刃は、そのままに。
心を乱せば、不利になると理解しているのは、過去の経験故か]
いえ、これはまあ、保険といいますか。
実は、私に外に戻れとおっしゃっているのですがね。
私は、陽精殿に無意識に力を吸い取られているブリジットを先に返すべきだと思うのですよ、どう思われます?
[押し戻そうとする刃はハインリヒの喉元から動かなかったが、そこに殺気はなく、いささかのんびりと問いかける]
誰しも受け容れられるものと
そうでないものが在るのだろう。
……お前、時を追う毎に何処かへ力を奪われてはいないか?
それとも、この空間へ同化をしているか。
………あ、そ。
[軽く肩をすくめて、ひっそり時空竜のつくづくの苦労人生に合掌したとかしないとか]
…ふーん?
ま、あの様子じゃ確かに。
それはそれは、大した保険だな。
外に戻れ、ね。
俺としては精神面で考えるとお前さんに戻って欲しいものだが。
それとそこでヘルガとブリジットが出て来ることが良く分からん。
[言いながら話の流れで誰がどんな位置・どんな状態に居るのかを頭の中で整理する。押し退けても動かぬ刃にはしばらく力を込めていたが、途中で諦め両手を腰に当てた]
そんで、お前さんは外に戻りたくないがためにオトフリートとやりあってたってか?
ええ、実はそうなのですよ。
私としては、この空間を、皆さんが無事に戻るまで安定させておくお手伝いを、と思っているのですがねえ。
[剣を突きつけながらでは、まったくもって説得力に欠ける...のは承知のうえという顔だった]
まぁ、消えたのナタ・リェさんだし。
今回は分からなくもないんだけど。
…えっ?
[ふぅ、と小さく息を吐いて。それから驚いて息を止めた。
数秒の間。人姿では苦しくなってきて軽く咳き込み]
ケホ。
うん、中途半端に取り込まれてるかも、とは言われたの。
……
クレメンスの相手はきっと大変だと思うけどね。
[小さく笑う。天を仰ぐ。]
あなたも、早く戻りたい?
僕はなんだか怖くなってきてしまった。
[ミハエルは、空いた手を額へ当てた。]
……気付くのが遅かったか。
お前が望むのなら、オトフリートにでも言っていまのうちに向こうへ戻る事もでき……何だ?
ほほー、見かけによらず殊勝だな。
だがここから開放されるには俺らが外に出なくても、核を追い出せば良いはず。
お前さんがその核であるなら、尚更外に出てって欲しいね。
[腰に当てた手が何かを握る。慣れた手付きで引き抜くと、喉元に当てられた刃の柄側へとそれを滑り込ませ、喉元を護るように横へスライドさせる。滑り込ませたそれは、いつも腰に据えている使い慣れた特製のトンファー。先程より力を込め首との隙間を作ると、空いている腕の肘をクレメンスの脇腹目掛け繰り出しつつ、体勢を低くして捕らわれた状態から逃げ出そうと]
できればしたくない。
[きっぱり、明確な意思を示す]
…どうだかな。
帰りたいと言えば帰りたいのかも知れんが。
帰りたくないと言えば帰りたくないかもしれない。
いろいろ面倒だし。
…離れるの、何だか、嫌。
オトフリートさんたちの気も立ってるし。
もっと気をつける、から。
[目は逸らしたまま。
それがちゃんと出来る自信は無いようで]
嫌われたものだね、クレメンスも
[おかしそうに笑って、館のほうを見た。]
……面倒なことは回避したいよね。
やっぱり。
そういえば、あなたの名前は何だっけ?
陽と樹の精。……陽の王の子。それはわかるのだけれど、ちゃんと名前を知らなかった。
やはり、そう、来ますか!
[ハインリヒの繰り出すトンファーを避け、剣を引いて飛び退る…が、僅かにトンファーの先端がその胴を掠めた]
判っていただけなくて、残念ですよ、風使い殿、時空竜殿。
[その言葉だけを残し、トンファーが掠めた胴から、ざらりと砂の像が崩れるように、心の魔の姿は崩れ落ち、影の中に消える]
ああいう人のことを見透かしてるような構えかたのやつはあんまりいけ好かなくてね。
[暇を持て余しているらしい小動物を時折撫でながら]
そりゃあもう。
避けて通れるならいくらでも。
……ヘルガ。
[ぽつん、と自分の名を告げて]
ち、逃げるか!
[体勢を戻し、影へと消えるクレメンスへ横薙ぎの一撃。しかしその攻撃は虚しく空を切る]
くっそ、風が使えねぇって時に。
どこ行きやがったあの野郎。
[影へと消える様子に、舌打ち一つ。
弾き出すのは無限の輪、一つ]
エターナル・ロンド!
追え!
[気を辿り、後を追うよに飛ばす。
自身も動こうした矢先、伝わる衝撃に足が止まった]
[舌打ちをした瞬間、空間が震えた]
なんだぁ!?
[体勢を崩しはしなかったものの、部屋を出て探そうとした足は止められ]
…何か、起きたってのか?
ヘルガ。
僕はリックというんだ。
[撫でられて気持ちよさげな魔獣の子を見て。]
……困ったね。
ここは何もなくて、そのくせこういう場所はあるから、居心地が良いや。
[呟くと同時に、空間が揺れる。思わず、手を地についた。]
[館の上空、閉ざされた空の上に、黒い影が浮かぶ「それ」は古いフィルムに焼き付けられた、薄れた映像のように不確かに揺らぎながら、巨大な黒い片翼を、大きく広げた]
[衝撃が鎮まったなら、ハインリヒの方を振り返り]
追跡はかけた、輪の波動を追えば、捕えられる!
どーせ閉鎖空間だ、いける場所なんざ、限られてる!
ヴィンター、行くぞ!
[光鎖を右腕に、白梟を左肩に乗せ。
輪の導くまま、外へと駆け出した]
そう。
今更だけど、よろしく?
[ぐらり、と揺れる世界に、少しだけふわりと浮いた足元を支えるように蔓草が絡む]
…まったく。
本当に、中途半端に居心地がいいってのが一番手に負えないな。
っと、そりゃ頼もしいこって!
[追跡をかけたと言うオトフリートの言葉にその後を追う。外へ向かい、一度辺りを見回した後に空を見上げた。館の上空に見える、黒い影]
んだよ、あれ…!
だってぇ。
[涙目になりつつ、反駁しようとして。
すぐに収められた言葉の強さにふる、と首を振った。
が、次の瞬間]
きゃぁ!?
[空いている手で耳を押さえる。
音ではなかったが、大きく揺さぶられたような感覚を覚えて。
コップの縁から毀れるように、揺れた力の一部は再び流れ消えた]
……あれは。
[仰いだ天に影の存在。苦笑。]
戻らなきゃいけないのも、わかってるんだけどね。
あなたも、そうでしょう?
[ヘルガを見ることなく、そう尋ねる。]
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