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……御揃いで。
[ゆっくり、少し気怠けに、緑の瞳を瞬かせる。
体重を預けた状態から身を起こすと、葉が揺れて微かに音が立つ]
そこの二人は緊張感がないな。
シチュー食べろっていったのに、食べないから鍋こげちゃったよ。
一応つけておいたけど。
だっておばかなエーリ君のために、緊張感もってどうするの
大丈夫だよ、ツィムト。
……終わったら、人は後で、解放するから。
[警戒の唸りに宥めるように言うも、その内容は少しずれている]
気持ちばっかり張り詰めてても、仕方ないですもの。
[緊張感がない、という言葉にこう返して]
それに、疲れて見えるのは、確かですしねぇ。
……無理のしすぎじゃ、ないのです?
勝手に使うほうが悪い。
[まるで子供の喧嘩レベルの会話。
至って真顔なのが、可笑しくもある]
持たれても困るけどさ。
最初は祭りのつもりだったし。
楽しんでたのは、確か。
やれやれ、だから食べさせるよう言ったのになァ。
[気だるげな様子に溜息を吐いて、静かな目を向ける]
友達にそんな言い方するもんじゃないさね。
……それに置いてかれるのが嫌だからって、置いていくのも止めて欲しいさね。
[薄茶猫はエーッリヒの言葉に唸り声を潜めるが、目付きは悪い]
楽しんでたならなんでそんなことやり始めたのさ。
エーリ君はわかってない。
[むぅとしながら、一歩、二歩、近付いて]
おじいさんがなんて言ったかも、おれは知らないけど。
でもエーリ君はあいされてるじゃないか。
みんなから。それにおれもエーリ君好きだし。
[肩をすくめた]
楽しめばいいじゃない。
何やっててもさ。楽しいなら楽しんで良いんだよ。
エーリ君が何をやったにしろ、何を隠してるにしろね。
大人しくしてくれてたら無理もせずに済むよ?
[心配の言葉にも、悪びれた様子は見えない]
……そんなつもり、別に、ない。
[ヨハナへの否定は、両方に対して]
人間だって、悪戯されるのは困るだろ。
妖精だって、いつまでも守って、馬鹿みたいだ。
ばらばらでいいのに。
エーリ君はやっぱりおばかだ。
一緒にいたいから、一緒にいるんじゃない。
どうしてばらばらでいればいいなんて言うの。
エーリ君は、本当はどうしたいの?
悪戯も手伝いも、言い聞かせだって、持ちつ持たれつってやつさね。それに…バラバラだと寂しいもんだがなァ。
妖精と人間が関わりあって暮らす。こんな楽しい村ないと、わたしゃ思うんだがねェ。
でも、大人しくしてたら、もっと無茶しそうなんですもの。
[さらり、返して]
守りたいものを守ろうとするのは、馬鹿な事かしら。
一緒にいたい、という気持ちは、自然なものだと思うですよ?
それは、いつも一緒は疲れるし、たまに一人になりたい時もありますけど。
でも、つながりが全然ないのは、寂しいものです。
う、……るさいな。
[出てくる言葉は酷く子供染みたもの。
感情を抑えるように、自分の手を掴む]
犯人だってわかってるなら、捕まえればいいだろ。
なんでそんなの、気にするのか。
大体、守護妖精さんだって契約とかで無しに、愛 の為に村守ってるだけと聞くしねェ。
傍から見れば馬鹿みたいでも、本人がそれでいいならいいような。
[罰のせいで云々は二百年の間にどこかに忘れ去られた模様]
置いてくつもりでもないなら、坊は何を…望むんだい?
それすら話してはくれないのかねェ。
[手の内の像は、妖精王が作っただけあってそれなりに本物に近い]
エーリ君がどーしょもない馬鹿だから。
[にっこり笑って、近付いた。]
[頭を叩きたいようだ]
みんなエーリ君のこと好きなんだよ。
恵まれてるじゃない。
望み?
……界を別つ、それだけ。
繋がりがあったって、寂しいのには、代わりないだろ。
余計に感じるばっかりだ。
喪ったものなんて、戻らない。
なんで、って……。
[はあ、と。
思わず、呆れたようなため息がもれた]
そんなの、大事だからに決まってるじゃないですかぁ。
どうでもいい、と思うなら、とっくに成敗してますよぉ?
[思いっきり、素で言った]
……界を別つ。
そんなことして、どうするんですか?
それに、寂しい気持ちがあるから、嬉しい気持ちが強くなるものですよ。
喪ったものは戻らない。
なら、新しいものを築くことは、できないのですか?
[僅かに首を傾げつつ、問いかけてみた。
肩の鳥がばさり、物言いたげに羽ばたいて]
逃げて後悔しないってならそれでもいいかもしれないがねェ。
坊は絶対後で後悔しそうに見えるんじゃよなァ。
じゃから、わたしゃ坊が後悔せんでいいよう林檎の森番さん達に代わりに止めたいんじゃよ。
[アーベルの声を聞いて、ぽつりと呟く。
そしてエーリッヒからようやく返った答えに、大きく息を吐いた]
…ほゥら、案の定さね。
わたしゃそんな事になったら哀しむさァ。村の皆もきっとなァ。
そしたら、後悔するのはきっと坊さね。
お前さんは優しすぎる子だから。
[皆の言葉は届いているのか、ただ、表情には僅かの困惑。
婆の握る像に視線を注ぐ。
昨晩の事もあって疑い深くなっているのか、揺れているのか、すぐさま飛びつくような真似はしなかったが]
守護妖精さんが虹の天使に何を込めたのかはしらないがなァ。
天使が祈るのはきっと、別れじゃなく皆の幸せさね。
[皺だらけの手で握られたそれは虹色の光を隙間から少しだけ零す]
エーリッヒ、お前は本当に虹の天使に別れを願いたいのかい?
[新しいものを築くだとか、後悔だとか、優しいだとか。
答えを返したとして、それは否定ばかりの、頑是無い子供のようなものだったに違いないが。叩かれた衝撃で、完全に封殺された]
……っまえは、何が、したいんだっ
すっきりしたかったに決まってるじゃないか。
だいたいエーリ君はこの世で自分がふしあわせだなんて思ってるの?
しあわせじゃなかったの?
今自分が何を思ってるのかって、口にしてみたらどうなのさ。
……ほんとに、子供みたいですねぇ。
[エーリッヒと、アーベルの様子に呆れたような呟きをもらし。
それから、ヨハナの手から零れる虹色の光に、紅の瞳を向ける。
肩の鳥がぱささ、と忙しなく羽ばたき、くるる、と鳴いた]
おやまァ、いい音だねェ。
[イイ音立ててはたかれる姿に、婆は目を眇めて前に出る。
握った手を翳すのは、模された妖精の環]
わたしゃそんな事より、お前さんが後悔しない道を願うさね。
別れは悲しいけど人の時は短い分、新たな出会いもある。
出会いがなければ悲しいも無いが、喜びも無いさねェ。
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