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動きが遅くては、この世界で此処まで上り詰めませんよ。
[貴女もご存知でしょう?
小さく笑みを零しながらそう言葉を返し。
するりと懐へと入れば、リングの刃を腹部に振り抜こうとするものの。
入ったかの手応えが判断出来ない内に、振り回される左腕に
軽く身体が弾き飛ばされ、壁へと衝突する。]
……ッぐ、
[僅かに呻くものの、ゆるりと立ち上がり。
白銀の獣へと、再び向き直る]
───!
[力で、というよりは遠心力を利用した鋼糸は強い香気ごとミュウの体を首、腹部、胸部の三点で断ち切る。
肉を断ち切り、骨すら落とす深いな手応えはを感じれば、ワイヤーを大きく一振りして血を払い]
…さよなら、盟友。
[見開いた琥珀色の瞳をそっと指で伏せれば血に染まる胸元に隠れたカードの一端を見つけ、それを引き抜けばカードに付着した血液で白い手袋が赤く染まる]
…まさか、自ら禁じた力に助けられるとは、ね。
[ぽつりと呟いて双魚のカードは白手袋で血液を拭い去ってからポケットにしまう。
そしてマイルズとアリア──カレンだった者に視線を向けて]
[ワイヤーが身体を引き裂いてゆく。
香気と共に意識も散ってゆく。
消え去る直前、思考を通り抜けてゆくのは。
『…見なくて、済んだな…』
ただ、それだけ閃くように通り抜け。
その意識は完全に*闇に散った*]
[マイルズを弾き飛ばすものの、寸前に振り抜かれた一撃により腹部の傷が開き、激痛が襲う]
いったぁァァァぁィィぃぃっ!!
痛い、痛イなぁ……クスン
ふぇー、ヤっぱりカレンちゃんが言うヨうにスピードなのカナ?
そうナんだ、それジャぁ……
[そう言い、スッと眼を閉じると再び体が変化。膨らんでいた腕はスリムで長く鋭い爪、そして足はカモシカの様にスリムながら筋肉の詰まったものに]
スピードもぉどぉー♪
[それは偶然振り向いた瞬間視界に飛び込んできたもう一つの戦い。
壁に強く体を打ちつける姿に思わず悲鳴に近い声をあげる]
───マイルズ!
[いつからか呼ばなくなった彼の名前をとっさに呼ぶ。
呼んだところで彼の痛みが和らぐことはないし、自分がかわってやれるわけではないのだが]
[腹部の傷を視界に止め、僅かに安堵の息を零す。
親指の腹で、僅かに血の滲んだ口唇の端を強く拭い。
荒く呼吸を零す中、相手の変化に一つ息を呑んで。]
…──本当、相性が悪い。
[更に原型を変える相手に、思わず苦笑と共に呟きが落ちる。
その声に、僅か自嘲も含まれて居ただろうか。
ゆるりと視線を向けながら緩く腕を挙げ、
再び相手へと構えを取って]
ンじゃ、行くよぉ
[そう言うと、ジョエルを超える常人離れしたスピードでマイルズに迫る]
微塵切リぃー♪
[肉薄すると、多方面から両手の爪による斬撃を繰り出す]
───、ッ!
[素早く目前へと迫った相手に、目を見開き。
辛うじて間合いを避けようと、一歩後ろへと下がる。
襲い来る斬撃に、素早くリングの刃を収めると横向きに構え。
辛うじて左の爪を弾き返す。右は、握るナイフで応戦するも
右から繰り出される攻撃までは全て防ぎきれずに]
[右手はハイペリオンリングに防ぎ切られるが、左手は一撃を弾かれるもののマイルズの右半身の数箇所をザックリと削っていく]
ふゥん、結構ヤるんだネ。でモ……
[そう言うと、マイルズの体を中心軸に回転。後ろに回り、厄介な得物を持つ左腕を取ろうとする]
───ッ、…!
[削られていく身体に、ギリ、と噛締める。
衝撃と攻撃の深さに、僅かよろめいた隙に背後を取られる。
しかし、左腕を狙われている事に気付くと、
ガチン、と鈍い音を立て、収めていた刃を後ろへ弾き出し
その伸ばされる腕を避けようと]
…な、──ッ!
[急激に気管を締められ、苦痛に顔を歪める。
首へと巻きつく手に抗おうと、右手の指を掛け。
腹部へと迫る爪に気付きながら、成す事も出来ず]
[左爪が背中から腹へ刺し貫く。その感触にウットリすると]
んジャ、いたダきまァす
[そう言ってペロリと首筋を舐め、あーんと齧り付く]
[腹部へ走る衝撃と熱に、目前が赤に染まる。
力を失う様に左腕が垂れ下がると同時に
握られていたリングが深紅へと色を変え、溶ける様に霧散して。
締められた儘の腕に掛かる、右手も辛うじて引っかかるのみ。
ゲホ、と小さく咳き込むと同時に口の中に朱が広がった。
首筋に這う舌に嫌悪する暇も無く、歯をつき立てられる。
鮮血が、首筋を伝って]
…───、
[白銀の言葉に言い返す様に、薄く開いた口唇が動いて。
しかしそれは声に成らず、荒い呼吸と共にヒュと音が洩れる。
最早、視界も朧げに霞み掛かり、抗う力も指から抜けて。]
[自らの血を、相手が飲み下すのを感じて。
意識の消え行く中、 緩く、目を見開いた。
その一瞬を待っていたかの様に。
にぃ、と。──口許に、僅かに弧が浮かびあがったのは、一瞬]
『――突き破れ、』
[気管を締められ、声に成らない韻。
瞬間。
白銀の内部へと取り込まれた血が、それを合図に硬化する。
刃にも似た鋭さを持って、膨張した其れは内側から押し破ろうと]
[突如全身を内側から襲う激痛。ふと見下ろすと胸から緋色の刃が生えている。その光景を呆然と見ていたが、ゴプッと血を吐くと]
……ナにこれ!?
痛ッ、イタイイタイ
[マイルズを絞める手を離し、その場でのた打ち回る]
[首を締める手が離れ、ズルリとそのまま床へ崩れ落ちる。
腹部へと空いた傷から深紅が床へと広がるのもそのままに、
のた打ち回り、絶叫する声に更に笑みを浮かべた]
…誰が、唯で餌に為るかと。
貴女を放置して…彼に手を出されては、困るのですよ。
[───再起不能に陥れます。
吐き捨てる様に呟けば、緋色の其れは力を増した。
失血が酷いのか、最早視界も暗い。
放置すれば、最早保って数分だろうか。
口の中に広がる血を吐き捨てると、ギリと噛締める]
───『飛散しろ』…!
[音となって紡いだ言葉は
更なる力を持って、獣の身体を破り抜け様と]
[痛い痛いと泣きじゃくるアリア。だが]
は…あ……相変わらず…痛いの嫌い…な我侭お姫様っぷりで
[口を割って出てきた口調は、カレンの物]
……異物収束。強制……移動
[油汗を垂らしつつそう呟くと、体内をモゴモゴと何かが蠢動
異物であるマイルズの血を押さえ込みつつ右腕に収束。全ての血が右腕に集まるのと、マイルズの言霊が発動するのは同時
瞬間、右腕を突き破り、いくつもの血の杭が腕から生える]
っ!! ……っはぁ。何とか間に合った、ってとこかな
[右腕をぶらんと垂らし、血を垂らしながら呟く]
──、な…
[聞えてきた聴き慣れた声に、僅かに目を見開き。
殆ど視界が朧げとなった、空ろな瞳を向ける。
僅か、反撃の意思を帯びた光も、直ぐに掻き消えて。
薄く開いた口唇が、微かに、動く。
は、と。身近な呼吸と一つ零し、動きが止まった。
少女の腕から突き破った緋色の杭が、*溶ける様に消え*]
[マイルズが息絶え、右手から生えていた杭は溶けるように消える]
はぁ、ふぅ。まったく、結局悪化しちゃったじゃん
だから大人しく…しとい…て欲しいの……に……
[最後に不平を洩らすと、糸が切れた人形のように崩れ落ちる]
…………。
[崩れ落ちるカレンの姿をただ見つめる―その姿からは彼女に対する感情は読み取れない。
その口から出たはもう一人の勝者への問い]
なあ、ジョエル。おっさんはどこに居ると思う?
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