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次の日の朝、 ヘイハチ が無残な姿で発見された。
……そして、その日、村には新たなルールが付け加えられた。
見分けの付かない人狼を排するため、1日1人ずつ疑わしい者を処刑する。誰を処刑するかは全員の投票によって決める……
無辜の者も犠牲になるが、やむを得ない……
そして、人間と人狼の暗く静かな戦いが始まった。
現在の生存者は、 マイコ、 マコト、 アズマ、 ヒサタカ、 ウミ、 ヨウコ、 フユ、 ヨウスケ、 サヤカ、 ショウの10名。
早朝の校庭にリン……と鈴が鳴り響く。
ゆらり、現れる桜色の影。
「きめるはこころ。
おもいのままに。
えらぶことなど。
たしゃにはできぬ。
ゆくもかえるも。
しるべはこころ。
やみにしずむや、ひかりにまうや。
そのゆくすえはだれもしらぬよ」
無邪気さすら感じる声がゆるりと響き、そして、鈴の音と共にその姿は消えうせた。
―寮・自室―
[朝の日差しに目を開ける。昨夜は夢も見なかった。ベッドを離れて着替えると、それが習い性のように窓の外の桜を見遣る。早朝に響いた鈴の音と少女の声は、眠りの中にも届いていたか…ただ、じっと咲き誇る花を見つめて]
―寮・自室―
[窓を開けてベランダに出る。
正面の男子棟を見れば、大きな身体が部屋に戻っていくところで]
あの人は違う。
間違いないのは、あそこ。
[そう言うとマコトの部屋の方を見て目を細めて]
昨日会えなかった人は一人。
つまりはそういうことなのかな?
[記憶を辿りながら、指折り数えてゆき。
動いた視線はアズマの部屋へ]
邪魔しないでね。
今は我慢してるんだから。
−寮・自室−
[夜が明け、朝が来て、陽が昇る。
切り取られた世界でもそれだけは変わらない。
けれども、蝉の歌も、人のざわめきも、なかった。
まだ睡眠を求める瞼を、ゆっくりと持ち上げる]
『…起きないと、練習の付き合い、』
[行けないし、行く必要はない。付き合うべき相手がいないから]
『あー、バイトのシフト………』
[無断欠勤をしてしまったと気づく。それを謝りたくともできはしないが]
『昨日は、…そう、みんなで食事して、』
[たとえ仮初めの日常であっても、料理を皆が食べてくれるのは嬉しかった]
『………あ、アイツ、水泳部のヤツか』
[霧生小夜花、その名前をふと思い出す。
フユの口にしていた名がまた1つ一致した]
『少ない、なぁ。』
[指折り数えかけて、止めた。
目を覚ました仔犬が、見上げて、鳴いた]
ん、はよ、リュウ。
[顔を向けて、ショウは、笑う。]
『ああ、―――18になったんだっけ』
[実感はちっとも湧かなかった。
時が止まってしまったかの如く。
酷い誕生日だった、と今更ながらに思う。
寝床から抜け出して伸びをすると、カーテンを開けた。
季節外れの桜は今日も、風に枝を揺らして咲っている。
ショウが身支度を始めようとすると仔犬は傍から離れて、
ベッドの傍に置かれたバスケットボールを前脚で突つく]
いつまでも、こうしてらんねぇよなぁ。
[何とか、しないと。
小さく零れた呟き。]
―――でも。
[仔犬が動きを止めて、首を傾げた。
薄手のパーカーを羽織り、フロントジッパーを閉める。
ベルトポーチを腰に巻いて、息を吐き出すと、
ぱしん、と軽く、自らの頬を叩く。]
んし、行くぞ、リュウ。
[きゃんっ、と元気のいい声があがる。
仔犬と連れ立って、ショウは、*部屋を出た*]
―体育館―
[ぎゅうとボールを抱いて、準備室に積み上げられたマットのうえに座っている。
どこか遠い目をしているか。]
……どこにいるのかな
部屋に戻ってるかなぁ
[呟いて、立ち上がる。
だけれどあまり行きたいと思えなかった。
苦しい。
なんでかもわからずに、ボールを手放して]
―寮・自室/早朝―
[目覚めを呼び込んだのは、遠くから響く鈴野の音。
そして、無邪気と言えば無邪気な声]
あの子……桜花……か。
[小さく呟いて、起き出す。
静かな部屋。
ため息を一つついて起き出して。
身支度を整え、部屋を出る。
その手には、竹刀]
[寮を出る前にふと思い立ち、給湯室へ。
忘れていた和菓子を一つ、麦茶と一緒に摘まんで。
ふと、家族の事を思う。
連絡がつかなくなって、皆心配しているだろうか。
過るのは、そんな思い]
[女子寮、各階に備え付けられた洗面所の三階。
掌に掬った温い水に顔を浸す。水音。
顎の先から滴る雫を手の甲で拭い、タオルを一枚、たっぷり水を染み込ませてから絞った。
同居人の額にそれを乗せる為に、自室へ*戻る*。]
自分の欲しい物は。
ちゃんと言うべきだったんだね。
欲しい物にはちゃんと手を伸ばすべきだったんだ。
だって、そうすれば。
一人にならないですんだのに。
寂しいだなんて思わずに済んだんだから。
もっと力が欲しいよ。
そうすればもっと手を伸ばせる。
ねえ。
壊れちゃうくらいなら。
その前にちょうだい?
甘くておいしいの。
力の、源。
それをくれれば。
もっと音色に近づける。
[ぼんやりとそんなことを考えていれば。
いつのまにか日も高い位置まで来ていて]
まあ、とりあえずは。
様子を見に行ってみようかな。
[クルリと身を翻して部屋に戻る。
動きやすそうな服装に着替えると、特に目的を定めるでもなく*外に出た*]
―寮・自室→…―
[彼の少女の声は此処まで届いたか、夢現の中に聞いていたかも知れない。
のろのろと顔を洗い、最低限の支度を済ませて部屋を出る。
ほんの少し前、最愛の妹と久しぶりに会話した場所を、]
……ああ。
今日って、何日だっけ。
[彼女が二度と動かなくなった場所を見つめた。その正確な位置はもう既に思い出せなくなっていた。
ただ、彼女がもう家に帰ることは二度とないのだと、それだけを。]
…母さん、大丈夫かな。
[もしかしたら恋人でもできたのかも知れないと、最期の会話を思い出す。夫を亡くした傷がやっと癒えたのに、娘までも亡くしたと知ったら。]
―寮・自室―
[ごろ、と床の上へ腕を投げ打って、身体を仰向けた。
本当はベッドで寝ようとしていたのだけれど
二段ベッドの骨組みが金属で出来ている為か、
少し動くだけで静電気が走って、痛くて仕方ない。
冬場でもこんな事なかったっつーの、と小さく舌打ちを零して。
妙に冴え渡る感覚へ意識を向けながら、
白い天井を見詰めたままの視線をゆるりと瞬いた。]
……寝れねー。
[がば、と軽く勢いをつけて身体を起こす。
原因は色々思い辺りが多すぎる気がするけども]
―…→桜―
[其処から寮を出て数分の後。あの桜の下に洋亮は居た。うたいわらっていた少女の姿は、今は見えない。
根元に座り、幹に背中を預け、瞳に未だ宿らない感情の代わりに薄紅色を映した。]
『うつわはだいちに、たましいはそらに』
[少女がうたった言葉を思う。大柄な先輩が、お経を上げてくれたと聞いたことを。]
……ちゃんと、いけたか?
[想うのは彼女。
そして、もう一人。]
[人気の無い弓道場…弓道衣姿で座禅を組んでいる]
…………
[小一時間もそうしていただろうか、やがて、ゆるりと瞼を開いて、傍らに置いた弓を取った]
っあー、面倒くせ…。
[ドアノブの金具に数分間四苦八苦しながら、漸く部屋のドアを開ける。
(結局苦労したにも関わらず静電気を食らうハメになったが)
小さな痛みの走る指先を軽く振りながら、廊下へと踏み出そうとして。]
……お供え物?
[ちょこんと3つ並んでいるおにぎりを、思わず凝視する。
確かに、ドアの前に誰かが来た気配はあった気がする。
まじまじと3つのおにぎりをみつめながら、差出人の正体を考えてみて
…考えた処で、思い浮かぶ人物なんて1人ぐらいしか居ないのだけれど。]
…えーと、ありがたくいただきます?
[空腹なんて、色々有りすぎて忘れていた。
自分はあまりにも食に拘りが無さ過ぎる、とちらり考えながら
有りがたくラップに包まれたそれを拾い上げる。
…アルミホイルに包まれていなくて良かった、とか少し思った。
おにぎりの一つのラップを剥がしながら、階下へと降りる。
歩き食いが行儀悪いのは知っているけれど、知ったこっちゃ無い。]
[ポケットの携帯を片手に。圏外という左上の表示は一昨日からずっとそのまま。
アドレス帳を開いて、マ行の一番上に表示された名前。夏休みに入る前、少し唐突にも思えるタイミングでアドレスを聞いて来た少女。彼女が恐らくは。そして彼女も、]
……
[小さく口唇が動き。
はらはらと降る桜の花片が一枚、画面の上に*落ちた。*]
[射場に立ち、無心に弓を引く。離れた矢は、過たず的の中心に立つ。続けざまに次の矢を番え、弓を引く…競技では有り得ない連射だが、流れるような動作に迷いは無い]
…ん、おかか。
[一口、二口と食べ進めて、出てきた具材の名前をぽつりと零す。
…塩握りかと思っていた。意外に豪華。
むぐ、と更に一口含んで。顎を動かしながら給湯室へと入った。
冷蔵庫にペットボトルの緑茶を引っつかんで、
ボトルの蓋を外しながら給湯室を早々に後にする。
…流石に腕が足りないので、2つのおにぎりはポケットの中。]
[ただ立ち食いするのも味気ないな、と
ぼんやりと思考を巡らせて、思い出したのは一つの場所。
正しく言えば、そこ以外で昼食を取ることは久しくなかっただけだが。]
あー…久しぶりに、行くか。
[其処まで口に出して久しぶりと言うのも語弊が有るな、と少し思う。
夏休みに入ってから、まだ、数日しか立っていない。
──随分と、昔の事のように思えてしまったけれど。
玄関まですたすたと歩を進めて、靴へと履き替える。
再び、ドアノブで暫くの苦労を要してから、外へと踏み出した]
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