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次の日の朝、自衛団長 ギュンター が無残な姿で発見された。
そして、消え行くもの。
運命の輪が回りだす。
紡がれるのは、如何なる結末への道筋か……。
現在の生存者は、音楽家 エーリッヒ、画家の卵 ミリィ、少年 ティル、娼婦 イレーネ、召使い ユーディット、詩人 ハインリヒ、工房徒弟 ユリアン、医師 オトフリート、小説家 ブリジット、新妻 ノーラ、青年 アーベル の 11 名。
良かった。
[イレーネの言葉に、ゆっくりとミリィが微笑んだ]
うん。私は人間よ。貴方のような力は何も持ってないけどね。
……だけど、これで見分ける力を使う対象が1人減らせる。
イレーネ。信用できる人は最後まで信用する覚悟で。
少しでも信じられなくなった人は、疑って。
見分けようとするなら……それが一番大事だと思う。
誰が人狼で、誰が人間か。
それは、私にも分からないから、すごい怖いんだけどね。
ありがと。まあ今は、そうやってお喋りする相手もそんなにいないから……ああ、違うか。
ティルがいたね。
[微笑む。呟きには、んー、と高い空を見上げ。
ふっと顔を戻し、首を振った。]
それはない。大丈夫。
昨日、イレーネさんが、人狼を見つける力がある、って言ってたでしょう。それに、私たちだって何もできないわけじゃない。誰が狼なのか人間なのか、一生懸命考えることはできる。戦うことはできる。
……この村には、人狼の御伽噺があるんだってね。
でも、それって、御伽噺を語り教える人間がいないと、私たちが知ることもできなかったはずでしょう。
つまり。人狼が出てきても、人間はちゃんと生き残って、そのお話を後に伝えられたってこと。
だから、大丈夫。
[ティルの頭に手を置き、撫でる。]
きっと元通りの、いつもの村になるから。
[言い終えたところで、膝から猫が飛び降り、駆け出した。
それを、何気なく見送る。]
[広場の入り口までくると立ち止まり、空いている方の手をひらひらと振ってまばらな――ごくまばらな人影が存在する広場を一望し]
やあ、諸君。今日は、調子はどうだい。
地に穴が開いてはいないかね。
蓋が解れてはいないかい。いないなら、それは僥倖。
[大きな声で挨拶をする足元を猫が駆け抜ける。それを視線で追い――ぴたりと。自身の足の横、猫が通り去った後のそこを見つめて、停止した。数秒、微塵も動かずに]
[特に、行く宛もなく適当に道を選んで進む。
それは、音のイメージを固めるときの癖で。
気づけば、どこをどう通ったのか、村の門の近くまで来ていた]
……っと。
こっちに来ても、意味、ないだろうに。
[今は出れないんだから、と独りごち。
閉ざされた門を睨むように見てから、踵を返そうとして──]
……?
[ふ、と。
感じたのは微かな違和感]
―診療所―
[アーベルの言葉には何も答えられなかった。
ただ、その言葉の重さだけを受け止めて翠を翳らせた]
探さなければいけないのは。
私だって分かっていますよ。
[椅子には座らず、床に座り込むようにして壁に背を預ける]
でも、どうしても疑いたくない相手だって。
いるじゃないですか…。
[喉元に手を当てて、目を瞑る]
< 白猫はそのまま通り過ぎようとして、
止まった女性に気付くと、
幾分か離れたところで同じ様に脚を留め振り返る。
静止、数秒 >
[猫を見送った視線の先に、なにやら大声で挨拶をしたブリジットが立ち尽くしているのを見て取る。]
こんにちは、ブリジットさん。
……大丈夫?
[「大丈夫?」には昨日の血が滲んでいた手の具合だとか、そもそも体調だとか、固まっているけど動物嫌いなのかな、とか、色んなことが含まれていたが。]
……なん、だ?
[空気が、どこか、違う。
感じたのは、それ。
感覚的にどうの、というのではなく。それはわりと、物理的な違和感で]
……血の臭い……か?
[口にしてから、後悔した。
言葉にしたら、現実になる、というのはどこか異国の信仰だったか、などと考えつつ。
それでも、足はそれを感じる方へと、向いて]
信用できる人は最後まで信じて、信じられなくなったら疑う…。
[ミリィの言葉に、一つ一つゆっくりと頷いてゆく。]
…うん、私も、怖い。
[両手を胸の上に乗せて、微かに肩を震わせた。
手の中には二つの蛋白石が握られたまま。]
そういえば、ハインリヒさんが女子供は先に調べた方がとか、言ってたんだっけ…。
調べた方が、皆が安心するから?
安心する為に占ってもいいのかな…。
[それは先ほどのミリィの言葉とは少し矛盾しており。
うぅんと、難しい、困ったような顔をした。]
…ごめんね…ありがとう、姉ちゃん。
[頭に乗せられた手がうれしくて。思わずそっと手を伸ばす]
そうだね。姉ちゃんの言うとおりだよね。
イレーネ姉ちゃんが狼みつけたり、俺たちが考えたり。できることはあったよな。
俺も気弱になってたのかな…
[ちょっと苦笑いをして、いつものように笑顔を作ろうとする。]
ありがと、ユーディ姉ちゃん。話聞いてもらえて、少し落ち着いた。
一緒に、がんばろう。
[そういってひょこりと立ち上がれば、かけていく白猫と、その先にいたブリジットの姿が目に入る]
[しばし歩き、足を止める。
感じた臭いは、だいぶきつくなり、それが嫌な予感を助長していた]
…………。
[無意識、右手が左の腕を掴む。
村の門と、近くの民家の間の空間。
子供がかくれんぼに使うような、そんな物陰。
見るなという思いと、確かめなくては、という思いの攻防を経て、覗き込んだ先には]
…………爺さま?
[見知った者のの、見知らぬ姿]
……っ、……
[短く、詰まったような声。正面、猫がいる方とは逆に向き直る。僅かに見開いたような双眸。次の瞬間、空いている手と荷物を持った手、両方でそれぞれ耳を押さえて俯き]
――あああ!!
[広場に響き渡るような叫び声をあげた]
[未だ、齎された死も広場での出来事も、遠い場所。
暫くの後、呼ばれたように遣って来た白猫を肩上に迎える。
白い毛並みを撫ぜて、青の眼を眇めた。
*やがて緩やかに歩み出した先に見るものは、何か*]
[瞬き、一つ。
首と、腹部と。
紅を零すのは、その二箇所。
首は噛み痕、腹部には爪痕。
腹部は荒らされているようにも見え]
……これ……は……。
[人の仕業じゃない。
直感が告げ、そして──]
冗談……じゃ。
冗談じゃねぇよ!
[自然、声が上がった。
風に乗って、声はどこまで響くか]
[イレーネの言葉に、はっとしたようにミリィが首を振った]
ううん。
安心の為に力を使うのは良くない。
基本的に、安全策と思うことは大体悪手になるわ。
安心するから、じゃなく、信じられないから、で力を使うの。
そう。とっても、これは怖いこと。
当たっていたとしても、外れたとしても、その人のことを名指しで疑うんだから。色んな人の悪意を背負わなければいけないのだから。
[真剣な顔つきで、イレーネを見据える]
だけど。
貴方は、私を信じてくれるって言ってくれた。
だから、その重い荷物。私も一緒に持ってあげる。
大丈夫よ。貴方は、一人じゃないんだから。ちゃんと最後まで一緒にいてあげるわ。
もし、死が二人を別つとしてもね。
[ウィンクしながら、イレーネの体を優しく抱きしめた]
[笑顔をつくろうとする少年の様子に、痛ましいものを覚える。
今さっき口にしたことは、ただ希望論に過ぎない。
イレーネは狼を見つけるかもしれないが、そのイレーネは偽なのかもしれない。
自分たちは考えることはできるが、答えに辿り着けるとは限らない。
語り伝えられた御伽噺はあるが、語り伝えることのできなかった御伽噺もまた、あるだろう。
けれど。]
うん、一緒にがんばろう。
[微笑み返す。
ひょっとしたらこの少年が人狼かもしれない、そんな可能性もある。
そう諌める頭の中の声は、ひとまず無視することにした。]
きっと皆、不安に思ってる。
だけど……不安に負けて、諦めたらおしまいだから。
[言い終えて、
目の前のブリジットの様子がおかしいことに気付き――
――悲鳴に戦慄する。]
ちょっと、待ってね。
[ティルに声をかけてから、ブリジットの元に急ぐ。]
どうしたんですか、ブリジットさん。
ブリジットさん!
[落ち着かせるように肩を抱く。]
[思わず上げた声。それと、そう遠くない場所で上がった叫びは重なったか。
声を聞きつけた自衛団が集まる怒号を聞きつつ、その場に膝を突く。
何があったかと、問いただす声は今は遠く]
……始まる……始まった。
[ただ、ぽつり、と。
そんな呟きが零れるのみ。
一方、自衛団の隊員の一部は診療所へと向かうか。
それは治療よりも、検死を求めているのだろうけれど]
うん。がんばろう。
諦めたらお仕舞い、だよね。
[ユーディッドの不安には気がつかずに、笑顔を向けていれば。
そこへブリジットの大きな叫び声が響き渡る]
ブリジット姉ちゃん!どうかしたの?大丈夫?!
[ユーディッドが駆け出すのについて、思わずそちらに向かい駆け出していた]
[やがて立ち上がり奥の部屋へ。
水音が響き、暫くすると戻ってきて薬の確認を始めた]
イザとなれば、誰か他の人にやってもらうしかありません。
とりあえず普通に使えば大丈夫そうなものを一覧にして…。
[カリカリとペンの音が響く]
[と、どこかでもうひとつ、叫ぶような声が聞こえた気がした。
それと共に、何かざわめきが、村の中を駆け抜けていくような。]
[ミリィの言葉には微かな困惑。
納得していないというよりは、どうしていいか分からず困っているという様子がみられたろうか。
悪意を背負うに事を思えば再び心は怯えを呼んだが。共にと言われた言葉に、抱きしめてくれた腕に、まずは戸惑い、だがすぐに嬉しそうに微笑んだ。]
うん、ありがとう、ミリィ。
…ありがとう。
[こちらからも手を背に回す。
常に熱は固く厚いものからしか与えられず。それを不満に思ったわけではなかったが。
親友の柔らかい体から伝わってくる、心地よい温かさが嬉しかった。]
…死ななければいいね、ううん、死なないように、頑張らないといけないんだね。
[ドンドンドンドン!
いきなり叩かれた扉にハッとして立ち上がる]
どうしました。
急変でも……
[扉を開けた向こうにいたのは、鉱夫達ではなく複数の自衛団員。
強張った表情と、有無を言わさぬ口調に顔が青褪める]
…分かりました。
鞄を取らせて下さい。
[睨みつける視線を背に受けながら、往診に使う鞄と上着を手に取った。急いで羽織ると、周囲を囲まれ促されるままに走る]
――!
[そこにあったのは、診断を下すまでもないであろう姿]
[叫び声が聞こえた気がした。
外がやけに騒がしい。]
…なにかあったのかしら?
ちょっと様子、みてくるね。
[止める姉に小さく首を振って、外へと。
風に乗ってくる微かな赤い薫りに、咽喉の奥が苦い。]
…や。
[足が竦むのは本能的なものだろうか。
口元を押さえた手も、身体を支える膝も震えていて。
それでも、何が起こったのかを見極めたいと路地へ。]
……どうして、だ。どうして。
ずっと……は。……なかった、のに。 また!
どうして。何故。滅亡、――黒き影!
[呻きのような呟きのような言葉に、時折叫びが混じる。幾分荒い呼吸をしながら肩を抱くユーディットと、奥のティルとを見、一時沈黙し]
……。
駄目だ。行かないと。祈らねば。
折れた塔を。落ちた星を。蓋は崩れ、……
行かねば。呼ぶだろう。何故か。
聞こえるからだ。
[断片的に言ってゆらと耳元から手を離し、腕で払うようにしてユーディットから離れる。おぼつかない足取りで歩き始め、数歩行ったところで走り出す。
広場と離れた場所――本来村の出入り口である、その付近へと]
[呆然としていた時間はどれほどのものか。
立ち上がり、場所を開ける──というか、開けさせられた。
まだどこか、ふらつくような感覚があるのは、立ち込める臭いと熱気のせいだろうか、などと考えつつ、脇に退いて]
……は。
冗談じゃ、ねぇ、よ。
[零れ落ちたのは、掠れた声]
…ねぇ、もしかして…
[慌しく駆け回る自警団の人々の中、膝を付いて座り込む幼馴染の姿。]
死んで…るの?
[狐に荒らされた鶏小屋を思わず思い浮かべた。
アレはまだ幼い頃のことだろうか。
けれど、そこでずたずたに引き裂かれた残骸は、鶏なんかじゃなく…人間。
人狼への危機を最も危惧していた人物。]
…ぅっ。
[こみ上げてくるものを押さえたって、ろくに何も口に出来ていないんじゃ出るものも無いのだけど。
震える膝は、何とか立っているのがやっとで。]
…あんな風に、されちゃうなんて……
[死を認識していくうちに、込み上げてくるのは恐怖。]
これ、は。
[息を飲み、だがすぐに頭を振って近くへと寄る。
自衛団員に促されて脇へと避けるエーリッヒをチラリと見てから]
…最初に脇から。
ついで首を。最後に改めて腹を、というところですか。
[傷口や出血の仕方を確かめながら、低く呟く。
翠は冷たく一つ一つを見つめ、手を紅に染めて確認してゆく]
首の傷など。どう見ても「食われて」いますね。
[酷く乾いた冷たい声で断じる]
ブリジットさん、落ち着いてください。
一体何が……
[間近で聞いている筈なのに、その口から発される言葉は、内容はまるで聞き取れず。困惑して聞き返そうとしたところで、腕を払われた。]
行く、って、どこへ。
[呆然と。置いていかれた形になって、その背中を見送る。
そこに、宿から出てきたノーラがふらふらと同じ方向――村の入り口――に向かう姿が見え。]
……ノーラ?
……どうしたんだろう。
[首をその方角に向ける。騒がしい。ざわめきが聞こえる。
ややして、後ろにいたティルを振り返った。]
ティル。私たちも、行こう。
[決然とした表情。声をかけて、二人の後を追う。]
ブリジット姉ちゃん、どうしたのさ。
[様子のおかしいブリジットに困惑しながらも。
駆け出していく姿を、追いかけて駆けていく。
程なくして、凄惨な光景を見ることに*なるのだろう*]
[耳に届く、聞きなれた声には、とそちらを振り返る]
……って、ノーラ!
大丈夫かよ、おい!
[大丈夫なはずはない、とわかっていても。
そう、声をかけずにはおれず。
近づいて、震える身体を支えようと手を伸ばし]
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