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んー……。
[眼鏡の奥に消えた目。
その先を透かし見る事はできず、ただ、問われたことに首を傾げる]
オレ、あんまりそういうの気にしねぇしなぁ。
[己が領域のまま、自由奔放に生きてきた身に、それはピン、とは来ず。
ナターリエのウィンクにちょっと固まったら、ピアに髪の毛引っ張られた]
最悪、か。
確かに、今のまんまじゃヤバイし……それを避けるためには、全力ださねぇとなあ……。
[それでも、告げられた言葉はすとん、と心に落ちたので、頷いた。
とか、喋っている間に、いつの間にか食堂は近く。
中から聞こえる声は、複数がそこにいる事を物語っていた]
あ、集まってるっぽい。
─東殿・食堂─
いや、ユーディットの場合はそれではなく、別の何かに寄るものではなかろうか、と。
…ギュンターの例があるでな。
[離れた位置に立ち止まるノーラに視線を向けつつ答え、己は席へと着く。再び冷えかけた身体を温めるべく湯呑を傾けたが、茶もまた冷え始めていて軽く眉を顰めた]
…?
[歩く事暫し。景色の流れを見る限りぐるりと一周して来た様だが――どうも仔が気付いた様子は無い。
尤も当ても無く彷徨う様子を見れば、もし気が付いていたとて気にする事も無かろうが。
ふと、前方から響く声に一度瞬きを見せると問いかけるかのように一度私へと視線を向ける。
大きな一室の様であるが、私とて此の建物の作りの詳細を知る訳では無い。
しかし幼子にとって気に掛かるものの様であった。]
…。
[おずと覗き込む。仔の腕から私も同様に覗き見るに
どうやら食堂らしき場所――成る程、声の出所は此処であったか。
外が雨の所為か、想像以上の方々が此方に集まって居る様子であった。]
―厨房―
[道を譲ってくれた影輝竜に会釈し、大地と影輝の竜と入れ替わるように厨房に入る。長い広口の袖を軽くまくり、成長期らしい機鋼の仔竜の為に大き目の皿にデザートを盛り付けた]
天聖殿と影輝殿は…さてどうしようか。
[大地の老竜が鼻を押さえながら食べるとも思えず、二竜の分を少なめに盛って盆に乗せて戻る]
[ナターリエの言葉には、少しだけ眉を下げて首を傾げ。
きちり、ぴしり、背筋を伸ばし食堂の扉を手を伸ばす。
ティルの言葉には、少しだけ目を和らげ]
まぁ――私の性分、ですから。
…ご心配、ありがとうございますね?
[口元にも薄く笑みを浮かべた。
それから表情を引き締めなおして食堂の扉を開いた。
そこに居た人々に、頭を下げる。]
何か、判った事などはありますか?
別の何か……
なれば、より急がねばなるまいの。
[ 言葉とは裏腹に、思考は別に向く。
翁の視線を避けるように顔を動かしたところで、開かれた侭の扉から中を覗き込む幼児の姿が視界に入った。]
リーチェ?
―― 食堂 ――
[ダーヴと天竜の会話を、今は黙って聞いている。離れた場所、丁度焔竜の部屋の外あたりを、機械竜が雨に濡れながら、カシャカシャと飛んでいる]
[その額に輝く宝玉は、今もまだ、燃えるような焔色のルビー]
─食堂─
性分、かぁ。
ん、でも、無理はしない方がいいと思うよー?
[ミリィに向け、笑いながら言って。
食堂にいる面々にやほー、と手を振る]
なんか、食べるもの残ってるー?
[ある、じゃなくて、残ってる、と聞いたのに他意はない。多分]
―食堂―
[食堂を順に回りながら機鋼の仔の側にデザートの大皿を置き、影輝の前にも控えめに盛られた皿を置く]
よろしければどうそ。
必要無いなら、他の方に。
[ちょうど入って来た面々に視線を流し会釈する。
大地の老竜にはご所望でしたらお持ちしますと囁いて通り過ぎた。その視線は勿論合わされる事なく、老竜の手首辺りに向いていた。
天聖の前には置く前に席を立つ姿が目に入る]
……何か、ありましたか?
[見詰め合う若焔と天聖の娘の様子に、最初から話を聞いているであろう機鋼竜にそっと問うた]
[ほぼ同時に食堂へと現れる四竜の姿。自然視線はそちらへと向く]
随分と集まって来たの。
皆腹でも減って居るか。
[冗談めいた言葉を紡いだ後にミリィの言葉を聞いて]
ハリョン殿とユーディットの話は聞いたかの?
今のところその話くらいじゃろうか…。
…ああ、ダーヴィッドがエルザを調べたいとは言っておるな。
[視線を件の二人に向けて。
ノーラの言葉には一つ頷き、視線につられるように再び入口へと]
─自室─
[旅慣れている所為か、荷物は簡素。
触媒に使う百華香が広くは無い部屋を覆っている。
椅子を引いて座るよう促すと、自分はベッドに腰掛けた。]
…で、話?
[何かを隠しているような気は、ずっとしていた。
それも、心配になっている原因の一つ。]
ああ、折角用意してくださったのに申し訳ありません。
早くに戻るだけの余裕がありましたらいただきますが、他に召し上がる方がいらっしゃるならそちらに。
[皿を手に戻るアーベルへと済まなそうに頭を下げ、ダーヴィッドの後について食堂から出て行った]
―食堂→焔竜の部屋―
―食堂―
…! ノーラ。
[当初の目的とは結果的に異なった様であったが、
見知った者の姿を見つけた事は素直に嬉しい様であった。
小さく声を上げると幼子はぱたり翠を散らし手に持った小袋を握り締めたまま影の下へ駆けて行く。
本来の目的のお方は直ぐ近くに居るなれど、幼子の視界には今暫くは映っておらぬ様であった。
…否、考えてみれば先程まで一人暢気に出歩いて居た身。
もし気付いていたとて、幼子にとっては優先されるべき順位が影竜殿であっただけかも知れぬ。]
―― 食堂 ――
[目の前に置かれたデザートの皿に、軽く目を見開いて]
わあ、美味しそうだ!ありがとうございます。
[にこりと精神竜に向かって微笑む様子は、いつもと同じようでいて、少し違って見えただろう]
ダーヴがエルザさんを調べるつもりみたいです。
[デザートをスプーンに掬いながら、言葉は淡々と口にされた]
―焔竜の部屋―
[独特の香りが広がる部屋に少しだけ戸惑いながら、示された椅子に浅く腰掛けた]
…もっと早くに決断しておくのでした。
まさか皆のいるその場で問われるとは思いませんでしたけれど。
[苦笑して、ローブの胸元を止めている鉤を、一つ二つと外す]
―回廊―
[ゆるりと、巡る。
しとしとという雨の音を聞きながら、まわりを見て。]
[ため息を吐くと、そっと廊下の、椅子に座り込んだ。]
[暗い闇が、ある。
それに隠れて自分の姿は見えなかっただろう。
食堂から、二人、出てくる人影が見えた。]
ん、ずっと寝てたし、色々調べると疲れるし腹減るからっ!
[ザムエルの言葉には頷きました、力いっぱい。
入れ違うよに出て行く二人には、不思議そうな視線を向けるものの。
ともあれ、精神竜の示す皿に、青の目がきらきらしたのは、誰の目にもはっきり見えたはず]
…エルザ?
[服のボタンを外していく様子に、なんとなく視線をそらす。
いやいやいや、そんなことは無いんだろうとは思うけれども。]
そうかそうか。
ならばたんと食うが良かろうて。
……カレーは残ってなかったんじゃったかの。
[エーリッヒが持ってきたので最後だったか、と首を傾げる。デザートに目を輝かせるティルを見て、飴玉袋をもう一つ用意すべきじゃったか、と思ったり]
[ 駆け寄ってくる翠樹の仔竜に、思い返すのは陽光の仔竜の姿か。
ほんの一時、翳る表情は仔の眼には映ったろうか。後に入って来た三者の声に顔を上げた頃には、露と失せてはいたが。]
―食堂―
いえ、私が勝手に持って来ただけですから。
また後ほど必要になってから盛られた方がいいですね。
[天聖の謝罪に首を振り、出て行くニ竜を眼鏡奥の紫紺が見送る。
そして機鋼の仔の嬉しげな声に視線を戻し、その心の動きに違和感を覚え眉を少し寄せた]
……エルザ殿を。
どうしてかはお聞きになっていますか?
[中から取り出すのは宝飾の施された首飾り。
中心には強い力を持つ真珠と土耳古石が抱かれている]
違和感の元はこれだと思います。
私が天聖の気を欠きそうになり頼ったせいで、流水の力もまた表に出てしまったのでしょう。
…もう、お分かりですよね。
我君よりお預かりしたものです。最初の異変が起きたときに。
誰が「干渉されて」いるか分からない現状、下手な場所で口に出すわけには参りませんでしたので。これまでお伝えすることが出来ませんでした。
[目の前の相手に関しては、口を滑らすかも、などという懸念がもう一人との間にあったなどいうのは、内緒である]
[食堂の空気がまだ判らなかったので
厨房を覗き、うすらとする茉莉花茶の香りに少し目を細める。]
お茶、いりますか?
[お茶の葉のポットを見たり、
他に食べるものがあるかと冷蔵庫を覗いたりする。]
え、カレー。
残ってないの?
[がーん、とか。
背後に書き文字浮かんだかも知れません、ええ]
甘いものは、入るとこ違うんだけどなあ……。
[それでも、確保はしっかりしてます]
……ところで、なんかあったの?
なんか、深刻な雰囲気だったっぽいけど……。
[言いつつ、視線はちらりと入り口の方へ。
問いたいのは、先の二人の事らしい]
――?
ノーラ、げんき、ない?
[翳りの差した表情を眼に捉えたかそれとも幼子特有の勘か。
仔は影へと困惑の色にも似た眼差しを向けた。]
あめ、たべる?
――おじいちゃんに、もらったの。
……、あ。
[おじいちゃん。と呟く様を見るに、漸く出歩きの目的を思い出したかの様であった。
一つに夢中となれば事を忘れ易いのは仔だからと言え、少々思いやられる。]
は?
[緊張のままにそう告げてから、相手の態度に気が付いた]
あ、ええと、その。
失礼を致しました。
[真っ赤になると慌てて胸元を掻き合わせた。
胸の半分ほどまで開きかけていたローブの中には、左手よりもずっと複雑な刻印があるのが垣間見えただろうか]
ですから、ええと、その。
[自分のせいだがちょっとパニック]
―― 食堂 ――
[続けての精神竜の問いに、もぐもぐとデザートを頬張っていた右手を止める]
時空竜のユーディットさんが居なくなったのに、安定し過ぎているのが気になるんだとか。
対ならぬ対…とはいえ、厳密には影響し合っているわけではないから、ダーヴの気にし過ぎじゃないかとは思うんですけど。
否定出来る、強い要素もないんですよねえ。
[はあ、と溜め息。困ったような顔はいくらか普段の様子に戻っていた]
…あぁ。
[そこに在るのは、断つものにして刃ならざるもの。
驚愕に見開かれた目は、次の瞬間には柔らかく笑みへと変わる。]
そっか、それを隠してて…
[ごめん、と洩れる呟き。]
取られる訳にも行かないし、かといって振るう訳にも行かないしな。
…大変だったろ?
あー、儂にも茶ぁくれぃ。
[厨房に向かうミリィの背中に声をかけた。一応、冷めかけた緑茶は飲み切っている。
ショックを受けているらしいティルに苦笑を漏らすと]
いや、儂は見ておらんからはきとは分らんがの。
大半はダーヴィッドに食われておる。
[この辺りはおそらく相手の予想の範疇ではあるだろうか。続いて訊ねられたことには]
ダーヴィッドがエルザを調べたいと言うたのじゃが…エルザはその前に個人的に話があると言うてな。
それで部屋に向かったのじゃろう。
[中の声など聞こえるはずもなく、
そのまま、いいかと放置する。]
[ぎしぎしあんあん聞こえてきたら嫌だったのもある。]
[人の中にいるのもいやで、そっとその場を離れた]
―→玄関―
だいじょうぶ。
[ 幼児の眼差しに影は緩やかに首を左右に振り、申し出には少し困ったように沈黙を落とす。しかし、不意に発された短い声に、首を傾いだ。]
……どうか、した?
[大きく深呼吸。そんな場合ではないと、響いてくる声に言われるまでも無く分かってはいるのだ]
いいえ。
私も誰を信じればよいのかで迷っておりましたから。
それも結局はダーヴィッド様に更なる負担を掛けることに…。
はい、そもこれは仮契約にすぎぬと剣からも伝えられています。
この力を使って何かをすることは適いません。
そして、万一にも…奪われるわけには参りません。
……いいえ。私も天聖が竜族の一員。
託された命には全力で努めるだけです。
[最後はフワリと微笑んだ。
幼い頃と同じ、だが成長して確りとしたものを得た表情を]
……あー……。
[火炎の竜の名に、意識が遠くに行ったのは瞬間。
精神竜の気遣いに、すぐに浮上したりするのは、外見相応にお子様反応。
実年齢には、逆行してはいるのだが]
ふぅん……。
天聖竜が揺らされてるとかなってたら、ある意味泣けるけど。
……時空竜に干渉できる、なんてのがいるんじゃ、そこも疑問なるのは、ある意味不思議ないかあ。
―東殿・翠樹の個室―
んんん……。
[随分と深く寝入ってしまっていたようで、身体の節々が軋む様に感じられた。
少し身体を動かすと、毛布がふさりと床に落ちた]
……あら。
[しゃっきりとしない寝ぼけ眼のまま、毛布を丁寧に畳んで行く。
一連の動作を行ったところで、翠樹の仔の姿が見えないのに気付いて]
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