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[袖が、風を孕んでふくらむ]
[長い髪がなびく]
[高い声で、不意に歌いだす]
I am GOD'S CHILD
この腐敗した世界に堕とされた
How do I live on such a field?
こんなもののために生まれたんじゃない
[哀しみに満ちた絶唱]
[エルザの頬を涙がこぼれ落ちる]
…ああ、ああ。やっぱり。
殺された子は、人狼だった…!!
[食べた食器を片付けて、ソファーの前にちょこんと座る。
籠からお人形を取り出して、ちょこちょこあそんでいるようで。]
「よいではないか」
「あーれー」
[黒髭のお人形が、青髪青年を襲って見えるのはきのせいきのせい。]
[駒、という言葉が不快で、余分と言われたことへの反応が遅れた。
女性を見ると、彼女は歌い出し。]
・・・・・な、
人狼?
[軽く目を見開いて。]
[呆然と歌うエルザを見つめる。
言葉を発するどころではない。全身の震えが止まらない]
[やがて届く少女の呟き]
[視線はのろのろと彼女の方へ]
[この子は何を知っているのだろう]
[絶唱と、それに続いた叫び。
投げられた言葉。
昼間、書斎で仕入れた『伝承』と、昨夜の会話と。
複数の情報から、一つ、答えを弾き出す]
……ようするに、だ。
集められた血脈の内、三人が、先祖帰りを起こした……と。
だが、二人以上はいらない。
だから、処分した。
……そういう意味と見て、いいんだな?
[問いかける声は、いつになく低く、冷たく響いて]
[確認する青年の冷静な、否、冷たく感じる言葉]
[その冷ややかさは...を現実へと引き戻したが]
どうして、そんなに平然としていられるんだ?
[心の中で思ったことが、呟きとなって毀れた]
…馬鹿げたルール。人数合わせね。
流浪の芸人がカードで遊んでいた人狼のゲームを見たことがある。
12人なら、人狼が2人、狂人が1人、占い師1人、霊能者1人、守護者が1人…。
ええ、そんなカードだったわね。
[…ベアトリーチェをじっと見る]
[言葉が聞こえて少女のほうを見る。
けれどすぐに女性に視線を戻したので、少女が持っている人形にまでは気付かなかった。]
要らない、だと・・・・
[低い声を洩らす。完全には隠し切れなかった不快感は死した少女への哀れから来るものではない。自分も同じものとして、彼―創造主―には見られているのであろうから。]
みっきーも、あそぶ?
[お人形の籠を差し出して。
何の変哲もない良くある着せ替え人形。
けれどもその年恰好や髪の色。
そして着せられた服装も、何処となくココに集められた者たちに似ていた。]
…ベアトリーチェ。
[問わずにいられなかった]
殺されてしまった子は、あなた?
それとも、あなたの…。
[姉妹、と問いたかったのか?]
[ミハエルの呟きに、冷たい蒼がそちらを見る。
口元に、微かに浮かぶのは、艶を帯びた──幻魔の笑み]
取り乱して泣き喚いて。
何が、変わる?
今、やるべき事は、手にした情報を生かす方法を考える事。
……そうして、生き残る事だ。
感情に流されて、術を、そして生命を失うつもりは、俺にはない。
[淡々と、淡々と。
その言葉は綴られて]
…あ、お人形。
[彼女が手にする着せ替え人形。
それはどことなく集められた者達を模しているように見え]
[エルザの言葉。カード遊び]
[ギュンターの言葉。神の戯れ]
あそび…
[くらり、と眩暈がした。
慌ててテーブルに手をつき、身体を支えて]
ねえ、ベアトリーチェ。
それはここで見つけたもの?
やりなおしの、やりなおしの、やりなおし。
ずーっとずーっと、やりなおし。
[見上げたその目は何も映さず。]
おきても おきても ゆめのなか。
ずーっと ずーっと ゆめのなか。
[淡々と言い続ける声。]
…めが、さめないの。
[人形を片手に抱いたまま、ふわりと力が抜けて崩れる。]
それは、そうですが。
[感情に流されるな、というのは彼も教えられてきたことで]
[けれど青年の言うそれは何かが根本的に違う気がして]
生き残ること。
[青年の口元に浮かんだ笑みに、全身がゾクリと震える]
[見てはいけないものを見た気がして、慌てて目を伏せた]
[ベアトリーチェの何も映さぬ瞳が、在りし日の、亡くなる直前の姉を思い起こさせる]
…ベス…。
[その名を呼んだとき、少女は崩れて]
しっかし、駒に……カード、ね。
随分と、退廃的な御趣味のカミサマがいるもんだ。
[銀糸を掴んでいた手を離し、前髪をかき上げる。
蒼の瞳に宿る光はどこか冷たく、そして、どこか楽しげで]
[眼を伏せる少年の様子に、また、笑む]
そう、生き残る事。
俺は死にたくない。誰かのために死んでやるつもりもない。
……簡単な事さ。
[周りの表情を伺っていた僕を、少女の声が引き戻す。
やりなおし。目が覚めない。
その意味は理解出来ない。]
・・・・・あ、
[崩れ落ちる少女への反応も遅れた。]
[目を見開いたまま、床へと倒れるその体は、
触れれば痩せて酷く細く。
ひんやりと低い体温も相俟って、
まるで人形のように、否…それとも……]
……っ……。
[崩れる少女。
その姿を見れば、刹那、幻魔は陰を潜める。
それでも、無事に受け止められるのを見れば、自らは動かずに]
[神様の試練?
そう考えていた...は、倒れた少女の姿にはっとする。
しかし既に少女は抱きとめられ。]
…大丈夫、かしら?
[エルザの腕の中のぬくもりはとても薄く、
ただ、ゆっくりと呼吸に合わせて膨らむ胸と、
かすかに体内を巡るリズムだけが、
それが生きているように感じさせた。]
[立ち上がろうとして、止まる。
首だけになって死んでいた瓜二つの少女は人狼だった、と。
それが本当ならば、否そうでなくとも。彼女が化物でないという保証は何処にもない。
女性が少女を抱えるのを見、また腰を降ろした。視線は外さずに。]
お水、持ってきますね。
[そっと告げて、頭を振って外へ向かう]
―to the kitchen―
[grassを取り出す。]
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