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[くるり、くるりと回る薄金に瞳を奪われ]
うん。……えっと、こう、かな
[毛羽立った毛を一枚、ちぎる。その痛みに顔を顰めて、うぅ、と小さく唸る]
へえ、今は羊飼い、なんだ
……お仕事、難しい?
[親父、と聞くと少しだけ瞳に影を落とす。調子が変わる、ということが、どういう意味なのかはわからず、眉根を寄せた]
[ オーフェンは昨日、食事も一緒だった男と一緒にいるようだ。]
こんにちは。
[ とりあえず、挨拶をして近付く。
何かを話している様子だったが、構わず。]
オーフェン、昨日は大丈夫でしたか?
心配したんですよ。
[ それから、今更ながらと思いながら。]
えーっと…そちらは…お名前伺っても。
[ あまり話をしたことはなかった。
避けられていることに気付きはしない。]
あは、また今度〜また今度〜
[よじ登って一旦後ろを見た後、どこかに行こうと駆け出して]
あぐぅ
[蔦をはずしていなかったためしっかりとこける。]
むぅ
[引っ張った。千切れない。ずっと自分の体を支えていた蔦がそうそう切れたりはしない。
だが、引っ張って引っ張って。岩にこすりつけて、引きちぎろうとする
解いたりすることを考えてないようだ]
―自宅―
[小川から水を汲んだ手桶を寝台の脇に置く。寝台の上には、結界樹の傍で、結局気を失ってしまったエリカが、眠っていた。アヤメの家に連れて帰らなかったのは、どうしてこうなったのかの説明が面倒だったこともあったが、収められぬままの異形の翼が人目につかぬように運ぶには、人のあまり来ないこの家が都合が良かったからでもあった]
落ちないところ、か。
[エリカの言葉の真意は汲み取れない。しかしここは湖からも海からも遠かった。どこにも「落ちる」ことはないだろう]
[振り向いた先にロザりんの顔を見つけて]
こんにちは、ロザりんさん。
昨日……?
[何のことかと首を傾げてしばし悩み、気がつくと手を口にあてて]
あ!……うん、ごめん、なさい。
……しん、ぱい?
[向けられた経験のない言葉に、目をぱちくり。続く言葉に、ラスの顔を見る]
痛いならまだだ、痛くないくらい毛羽立ったやつを千切るといい。
羊飼い…って程でもないなぁ、大した数いないし。
いや、全然難しくはないぜ。
[顔を顰めたオーフェンには笑みを漏らしつつ、頭を撫でようと手を伸ばした所で女性の声がかかる。
顔を挙げ、あぁお嬢様か、といった気持ちは顔に出さぬように。]
俺、ラス。
[だが声は少しだけ無愛想で低かったかもしれない。]
[そして今、狐はやはり海の所に。
めずらしくも手にするものは、赤い殻のついた実ではなく、橙色の皮。
やはり海の下に沈め、立ち上がった。]
[寝台の脇に開く窓から、やや日の傾いた空を見上げる。長老は今日にも結界樹への封じを始めると言っていた。それに意見を差し挟むべきかどうか、迷う]
少なくとも…この娘だけは……
[守護天将の素質を持つかもしれない娘。余所者であることから封じの対象になる可能性も高い。彼女を対象から外すように、長老に願い出ておく方がいいかもしれない]
理由は…、さて、どうするかな。
[真実を告げるにはまだ早いと思われた。何より確証が得られていない]
カルロスなら、可愛い女の子は疑えない、の一言で済むのだがな。
[溜め息混じりに、天敵とも言える男の名を口にした]
[岩にこすりつけて蔦を千切る
体にまだ巻きついているのがあるが、動く分に気になるまで忘れてしまう]
あは。あはははは
……どう――だろうね…あはは
[空を見る。陽光の下に舞う翼を見て笑う]
[ 心配の後についた疑問符に首を傾げる。]
―――――…。
お元気そうなら構いませんよ。
けど、リディアは怒っているかもしれません。
後で、お話してあげて下さいね。
[ そう言って笑みを向ける。
男からはオーフェンとは真逆のような反応が返される。]
嗚呼、貴方がラス殿ですか。
リディアからお名前だけは聞いておりましたが。
私はロザリンドです。ロザリーで構いません。
[ そう言ってオーフェンに向けた笑みと同じものを向ける。]
そう……なんだ。
[ラスに言われると、右の翼を覗き込んで、もっと毛羽立った羽毛を探している]
……羊飼い、僕にも、できるかな?
[頭に伸ばされた手にわずかに身を竦め]
……?
[名を告げるラスの声が、今まで話していた声色と変わったことに、目をぱちくり。ラスとロザりんの顔を交互に見る]
うっ
リディアさん、やっぱり……怒って……た?
[最初にリディアに会った時の悪魔のような笑顔が脳裏に蘇り、ごくりと唾を飲み込んだ。額を汗が流れていく]
……う、うん。話、するよ。
[ちょっと気が重くなった]
─森─
……よしっと……こんなとこかな。
[淡い緑の詰め込まれた籠、その中を確かめて呟く。
詰め込まれた緑は、布に織り込む特殊な繊維の材料。
これから取り出したものを織り込む事で、翼の出し入れを妨げぬ衣類を作る事ができるという、ある意味ではとても重要なもの]
さて……んじゃ、帰る前に、旦那のとこ行ってくるか。
[包みを入れた下げ鞄を見やり、呟く]
……少しは、落ち着いたかねぇ……。
[そんな事を呟きつつ、ばさり、開くのは深紫の一対]
ロザリーね、よろしく。
[出来るだけ声は固くならないよう、気をつけて。
オーフェンが身を竦めたのを見て撫でようとした手はふわり、その目的を止めて自らの首のうしろを撫でた。]
ん、羊に興味あるのか?
今度みにくるか?
[窯の後始末をしている間に兎は冷めた。
小屋に戻り紙に包む。]
……余り溜まっていないが、ついでだ。
持っていくか。
[薬の原料になる胆を乾燥させた物を戸棚の奥から出す。]
[ 少し感じた違和感に首を捻るも気にはしない。]
はい、よろしくお願い致しますわ。
[ 少し様子の変わったオーフェンに笑いかける。]
そんなに気にすることありませんわ。
リディアも心配していたのです。
なので、安心させてあげてください。
[ そう言って極力安心させるよう声をかける。
怖がられなければその頭を撫でようと。]
あれ……?
[声色が戻ったラスに、自分の気のせいだったのかな、と瞬き]
うん。興味、ある。
見たい……海みたいな、羊
[瞳に好奇の色を濃く浮かべる]
[舞い上がり、風を捉えて滑空する。
深紫が空に舞うのは、余り回数の多い事ではない。
本来の四翼を二翼に抑えている分、飛行時の負担が大きいからだ。
風を捉え、滑るよに島の外れ、岩場の小屋へと辿り着くと]
旦那ー、いるかぁーい?
[舞い降りながら、声をかける。
その肩に、一歩遅れてラウルがふわり、と舞い降りた]
うん。リディアさん、も、心配……?
そっか……
[悪びれた表情の中にも、喜色が見え隠れ。伸ばされる手には、できるだけ表情を変えないように口をぎゅっと噛みしめ]
[広げたままの翼に負担をかけぬように、
眠る姿勢は自然、俯せに近くなっていた。
瞼を重たげに開けて、目に入ったのは、白。
数度、瞬く。
金糸雀色は、ぼやけている]
……、……………。
[手を突いて身を起こそうとして、声に、止まった]
[首を捻られ、ん、んん、と咳払いをする。
オーフェンには笑いかけて]
あー、今うちの羊毛刈った後で禿げだわ。
海みたいじゃないかも。
[悪戯ぽく、言う。]
[他に爪や牙なども出し、全てまとめて袋に入れた。
羽ばたきの音に窓の外を見る。深紫が蒼穹に映えた。]
……来たか。
[狭い小屋を横切り、扉に手を掛けて大きく開け放つ。]
ああ、いるぞ。
えー……
羊、禿げ、なんだ……
[あからさまに落胆。むぅと指を口元に当てて]
ラスさんって、つがい?
[首を傾げて、唐突な問い]
今日は、出かけてなかったんだねぇ。
[開け放たれた扉と、返ってきた声。
返す言葉は、僅かに安堵を帯びていたか]
昨夜は送ってくれてありがとねぇ。
これ、野菜と魚と、適当に作ってきたから。
ちゃんと、食べとくれよ?
[提げ鞄を示しつつの言葉は、どこか念を押すようにも聞こえるやも知れず。
肩のラウルは、細められた目にぴぃぱた、と羽ばたいて挨拶を返す]
[ オーフェンの微妙な表情には気付かず頭を撫でる。]
はい、だから後でお話してあげてくださいね。
[ 会話の中心は羊のようで。
動いているところは見たことがあったろうか。]
……では、オーフェンの姿も見ましたし、私はこれで。
少しお元気そうに見えましたので安心致しました。
[ そう言って離れる。
オーフェンがラスに珍妙な問いをしているのを笑いながら。]
ふふっ…では私はこれで失礼致します。
ラス殿も、また。
[ そう言って羽根を広げその場を離れていく。]
あは、綺麗だね…
[あれは結界樹のほうへいったのだろうか。
あっちは岩場のほうへいったのだろうか。いや、それはどうでもよくて
衝動を抑えるように、花を散らす。木を蹴り飛ばす。]
[オーフェンの言葉には、細い目を縦に精一杯開き、ぱちぱちと瞬いて。
大分長い時間固まって、口を開く]
つが、い、って…
[目を見開いたまま、手の平をばたばた振った]
いや、独身だぞ。
……うん。わかった
ありがとね……ロザりんさん
[ロザりんが羽根を広げる所を惚けたような瞳で見て、手を振り見送る。その後ラスの方を向いて]
あ、そうなんだ……
ラスさん、大事な人って、いる?
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