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痛そうとは思いますけど、醜くなんてありません。
[サーシャに偽りなき言葉を向けて、漂う闇をそっと払う仕草。
惑うような色を右目に感じながらも
拒絶の色は見えなかったこともあり曝された頬と彼の左手の間に
オリガの手が滑り込むようにして捩れた肌に触れようとした]
闇に囚われたとしても私が傍に居ます。
雷が怖くて動けずにいた時、あなたがしてくれたように。
[心の揺らぎが伝わるかのような響きに言葉を重ねる]
みたとしても、私は変わらないから。
みせてほしい、……触れさせてほしい。
サーシャさんの事を、もっと知りたい。
[知りたかった。
それは生あるその時には終ぞ言えずにいた言葉。
微かに熱こもる声がそれを本心であると伝えていた]
─ 三階・書斎 ─
[女主人の骸に向けた言葉に、返される声はあったか。
無くとも、もう既に心は定まって]
…誰か、止血をお願い出来ますか。
[呼べば、メイドが音も無く姿を見せる。
右肩の傷、血止めを済ませるだけで後は良いと断って]
私はまだ行くところがありますので、此処を離れます。
もしその間にメーフィエが屋敷を出るようなら、教えて下さい。
[メイドに頼むは、『仲間』のこと。
自分やベルナルトとの間に隔意を感じているのは気付いていた。
『鬼』になりたくない>>4:*25と彼女は言った。
ならばと、「人」に戻るを躊躇わぬよう冷たい言葉を向けて、突き放して。
そんな己の顔などもう見たくないかもしれないけれど、せめて見送りだけでもと願って。
そして、『鬼』はまた一階へと降りていった]
─ 一階・室内庭園 ─
ベルナルト。
[血に塗れたまま、訪れたのは青年の元。
先に来た時のように、傍らに膝をつき、その顔を見つめて]
…ごめんなさい。
後は任せてと言ったのに。
約束は、守れそうにありません。
[メーフィエと一緒に生きて、勝ちはした。
けれど、彼女と一緒に、ここから出ることは出来ない]
…あなたのことも、利用してしまった。
[よりによって、『仲間』を傷つけることに]
─ 一階・室内庭園 ─
[暫くの沈黙の後、ゆるりとした動作で青年の手を取ると、『仲間』から切り取った一房の髪を乗せる。
己の黒髪にも刃を滑らせ、同じように切り取ったそれも手の上に重ね]
…一緒に生きて、出る事は叶いませんでしたが。
せめて、これだけでも、一緒に。
[そ、と彼の手から落ちぬよう、握らせてから]
…私は、此処に残ります。
『ゲーム』は、終わっていませんから。
与えられた役割を受け入れた駒は、ゲーム盤と共に在るべきでしょう。
それに、私の望みはもう、此処を出ずとも叶えられたから。
[穏やかな声で告げるは己の決意。
既に自分の望みは、『仲間』が叶えてくれた。
メーフィエが名を呼んでくれた時から、私は「アレーナ」を取り戻せたのだから。
もう悔いは無い、そう思いながら立ち上がろうとした、けれど]
…ベルナルト。
叶うなら。
…あなたにも、「アレーナ」と呼んで欲しかった。
[離れる間際、壊れ物に触れるかのようにそっとその頬に触れ、呟いて。
『仲間』の選択を見届けた後、女は屋敷と共に、眠りについた]
[───そして。
幾度も日が昇り、落ちるを繰り返した先。
始まりの雨が降る。
始まりの場所の森に。
始まりの刻、夕暮れに響くコエ]
……ワタシノ コエガ キコエマスカ?
[目覚めた女が放つそれに、引き寄せられる人間達。
『取り決め』によって選ばれた、新たな駒]
ようこそいらっしゃいました──『宴』の場へ。
[全ての駒が集まって、13の鐘が鳴り。
訪れた者達の前に現れるは、艶やかな真紅を纏った女]
(あなた方が、今回の『ゲーム』の駒なのですね)
[視線をめぐらせ、集まった者達の顔を見遣る。
あの時『ゲーム』を終わらせていれば、集められる事など無かったはずの彼ら、彼女らから目を逸らす事無く]
わたくしはアナスタシア──此度の場の主にして、『宴の始まりに饗されるもの』。
[自分が言われたと同じ様に、唐突な宣をする。
名乗る名も己の名ではなく、役割貰い受けた女のそれ。
『仲間』が呼んでくれた響きを、塗り替えられてしまわぬように]
紅き月の煌めく夜に、始まりを告げる13番目の鐘が鳴り響きました。
だから、『ゲーム』をしましょう?
……それが、遠いとおい昔からの、取り決めですから。
[目を閉じると、己が殺し、他者が殺した者の顔が鮮明に浮かぶ。
胸の内、感じる苦しさを笑みに隠して]
/*
ちょっと急に出かける事になったので、メーフィエにごめんと思いつつ確定で色々落とさせて頂きまし、た…!
村終了までには戻れるはずだけど、戻れなかったらごめんなさいと色々好き勝手してごめんね…!!!**
──…ふっ ……ぐ ぅ ───
[その瞬間、闇に覆われていた左半身の形が徐々に露になっていく。
押し込めていた感情が声となり、次第に涙声へと。
僕は顔を、泣き顔に歪めて頬に触れたオリガの手に自分の左手を重ねた。
オリガの手には捩れ爛れた肌の感覚が伝わるはずだ。
誰かに触れさせることなどさせたこともなかった。
見せることすら躊躇った。
その傷を、オリガが触れている。
僕を、僕の闇を受け入れてくれている。
それが嬉しくて、僕はまた右目から涙を零した]
─…ぁ、 あり … と … ──
[嗚咽によりまともに発音が出来ないながらも、触れてくれるオリガに感謝を紡いで。
僕は子供のように泣きじゃくった]
― 地下墓地 ―
僕ら?僕らは、きっと、ここからは出られないと思うよ。
だって、望んでここに来て、出たいとは一度も思わなかったもの。
どうなるかは判らないけど…ずっとこのままなのか、そのうち消えてしまうのかのどちらかだろうね。
[時間の感覚などとっくの昔に曖昧だ。人を殺して切り刻む事を望み、我が身の切り刻まれる痛みを受け入れて、ただ血に濡れて生きるよりは、無限の闇を漂う方が楽だろうと、ぼんやりと思うだけ]
キミは不思議な人だね、リディヤ。なんで僕らのことなんか気にするの?
僕らは、ここに来る前から化け物だったんだから、「鬼」の役を振られた人より、よっぽど酷い。
だからキミが気にする必要なんてないんだよ?
[本気で解らないという顔で、そう告げて、『彼』は、白い指先で上を指す]
もうお行き、キミはきっと、光の中にいつか還れるから。
[言ってから、それが「終わり」しか願わなかった『彼』が、新たに抱いた願いなのだと、初めて気付いて…リディヤを見つめる黒い瞳は、凪の静けさを破り、さざ波のように揺れた]
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