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うん、アタシも ─── 行かなきゃ。
[立ち上がろうとするのを見て、こちらも土を払いながら立ち上がって]
それじゃあ、また。
[刻が続く以上、次にまた会えるかは分からない。
けれど、敢えてそう言葉を紡ぎ、籠を持ってユーリと別れた。
歩み進む先は、当初の目的地とは変わっている**]
─ 自宅 ─
ら、
ら、
ら……
[動作はいつもどおりの不確かではあるが、
どこかやわらかく、軽い]
一生は一年。
周期は一年。
……だからきっと、わたくしは見られないのだなと諦めていた。
でも、
生きていて良かった。
生きていて、良かったわ。
─ テレーズ宅前 ─
[落とした荷物を拾わなくては。
そう思っても、今見たものの衝撃は消えない。
視線を巡らせると、ミレイユが崩れ落ちた姿をとらえる。
考えるより先に、足が動いた。]
ミレイユちゃん…!
[近付いて、ミケルもまた、彼女のそばに膝をつく。
だけれど、そこで、どうしようと動きは止まって。
辺りを見回して、誰かに助けを求めようとするけれど、今はまだいなくて。
おずおずと、手を、彼女の頭に伸ばした。
消えていない。居る。
ちょっとためらいがちに、何度か、頭にそっと触れる。
ぎこちのない動きで。]
ミレイユちゃん、
……あの、ね。
だいじょうぶ。
[目を合わせようとして、言葉を考えて。
大丈夫? という問いかけではなく、安心させたいから、
ぎこちなく、笑って。
サリィは、消えてしまった。
いきなりだった。どうしたんだろうって、そんなことミケルにはわからないけれど。
ミレイユの様子が、気がかりで、安心してほしくて、精一杯笑おうとした。
それから、視線を、サリィと行こうとしていた方向に投げる。
そこに人の姿をとらえると、ほっとして、ようやく肩の力が抜けた。]
[台車はあるのにサリィはいなかった。
ミケルは、二人に、言葉を伝える。]
あの、いきなり。
サリィちゃんが、消えちゃった。
テレーズちゃん、家にいないって。
いないのに、いるって、思ったって、言ってた。
[どうしたらいいのだろう。
二人を見上げる視線は、途方にくれたように、頼りなかった**]
─ 自宅 ─
[カタン、
と組んだ薪が崩れる音で目が覚めた。
竈の火はぽっぽっと赤く燃え、焼くべき物を待っている]
……あの子たち、遅いわねえ。
[口元を隠して欠伸をし、のんびりとつぶやいた]
よい、しょ。
[膝掛けを剥いで、立ち上がった]
─ →クレイグの自宅 ─
[進路を変更してやって来たのは家主の消えた家。
『外出中』の札が下がっている扉を、躊躇いなく開いた]
─────…………
[弟の不在時に中に入ったことはなかったため、家主の居ない部屋は酷く冷たい空気が漂い、長く誰も居なかったような錯覚さえ覚える。
けれど作業台には本が積まれ、今にも作業を始めようとしていたのではと思える様相だった]
………これ、『周期』の。
[積まれた本のページを捲ると、過去に起きた『周期』についてが書かれていて。
数ページ捲った後、その表紙を閉じる]
何か しようとしてたのかな。
[花のことを調べようとしていたのだろうか。
それとも『死神』について調べようとしていたのだろうか。
今となってはその意図を知ることは出来ない]
[しばらくの間、作業場の中を眺めていたが、作業台の上にあるものを見つけると、緩やかな動きでそれに手を伸ばす]
────………
[指先で一度突き、微かに揺れる様を見て]
…………ッ
[急に表情を歪め、突いた物を掴み取ると弟の家を飛び出した]
─ →洞窟奥地・苔の広場 ─
[周囲の目も憚らず全速力で駆けて、居住区よりも奥まった所にある小さな空間へと向かう。
苔の群生地の辺りまで駆けて来て、息を上げながら速度を落とし、転がる岩の傍へと歩み寄った]
………おぉい、おまえら。
[のそりと動くものに声をかける。
少しばかり引き攣った、小さな声。
足から力を抜くようにしゃがみ込み、更に距離を近付けると、声をかけた相手は触角をゆらりと揺らした]
…クーが、さ。
もう、来れなくなっちゃったんだよ。
[ゆらり、ゆらり。
相槌を打つように触角が揺れる]
だから、さ。
代わりに、コイツをおまえらの仲間にしてやってくんないかな。
[言いながら、手に握りこんでいた物を岩の上へと置く。
ここの住人を模した、虹色の殻を持つ焼物。
伸びた触角は揺れないけれど、姿かたちはほぼ同じ]
………だいじにしろって、いったじゃないか。
ばぁか。
[瞳に移る虹色が急にぼやけた。
滲んだ瞳を隠すように、膝に置いた手の甲に額を押し付ける。
震える声は次第にしゃくり上げるものへと変わり。
とおくに響く澄んだ音だけが辺りを包んでいた]
─ 洞窟奥地・苔の広場 ─
[上下していた肩が徐々に動きを緩め、しゃくり上げる声も途切れる]
………はぁ。
よし、すっきりした。
[手の甲に押し付けていた額を離すと、手の甲は目元を一往復して。
やや赤い色を目元に残した状態で顔を上げた]
今やれること、やんなきゃな。
[今がどんな『周期』なのかは理解した。
抗うことも難しいと解った。
だったら、『周期』だからと言って慌てふためく必要はない]
いつも通り、全力で過ごすだけだ。
[後悔なんて、後にならなきゃ分からないのだから]
もうすっかり冷えただろうな。
窯の器、回収しないと。
[今やれることと言えば、これまで続けてきた仕事。
サリィに頼まれていたスープ皿を届けるのが当面の目的となった。
しゃがんでいた状態から立ち上がり、虹色の殻を一度突いてからその場を後にする。
ちょっとばかし足が痺れて足元が覚束無くなったけれど、通りに戻る頃には何とか歩けるようになっていた]
― → テレーズ宅前 ―
[急いた気持ちは足を前に、更に前に。
抱える荷が邪魔に思えて、けれど手放せない。
――『日常』を手放してしまうみたいで]
[目的の建物が見える。
そうして、その前にふたつの人影と、台車]
[膝をつき、随分と低い位置から見上げる視線。
途方に暮れた瞳に置いてけぼりの子供を思わせたのは
その口から零れた言葉の所為もあったのだろうか]
…サリィが、消えた?
テレーズは家に、……。
[いない?と、口には出来なかった。
低く落ちていた視線はゆるりと上がりながら巡り。
…途中で足を止めていなければ、共に来ている筈の彼を]
まあ……。
まさか、何かあったんじゃ。
[ユーリの返答に、困惑の表情を皺に刻んで]
あの子たちが怪我をしたり、
勿体ない死に方をしてしまうようなことがあったら可愛そうだわ。
……ユーリちゃん、探してきてくれる?
[まだ赤さの残る左手を包むように指を組んで]
……あら、待って。
ユーリちゃん……。
貴方、なにか、
─ →自宅兼工房 ─
[パンの調達は一旦置くことにして、真っ直ぐ工房へと戻る。
窯から器を取り出すと、道具屋に卸す分と、個人へ届ける分に分けて籠に収めた]
……お、良い感じ。
壁に掛けといても良いかもね。
[平皿を両手に取ると、満足げな笑みを浮かべる。
緑地に広がる蒲公英の絵。
今回ばかりは実用性よりデザイン性を優先した。
何かを残したかったと言う訳ではない。
単に描いてみたかったのだ、身に宿った花を。
この皿にぴったりだと思ったから]
さて、行きますか。
[平皿は作業台の上に置き、配布する器を入れた籠を持ち工房を出る。
先に2・3軒配布先を回ってから、スープ皿を白花亭へと持って行った]
……。
[それから近づいてくる足音に、ゆっくりと顔を向けて。
ミケルが彼らに説明をする最中]
テレーズの時と。
ゆめと、一緒だった。
[何処まで届くかも怪しいちいさな声で、呟く]
─ →白花亭 ─
お邪魔さまー。
サリィに頼まれたスープ皿持って来たんだけど、サリィ居る?
[扉を開けて中に声をかける。
応対に出たのは彼女の父。
サリィは現在不在らしい]
そっか、じゃあこれ置いてくね。
サリィに言えば分かるから。
[籠からスープ皿を取り出しサリィの父に渡して、手を振りその場を辞した。
未だ、サリィの身に起きたことには気付いていない]
ああ、構わないわ。
大したことではないの。
これから起こることに比べたら、
どんなことも些細でしかないわ……。
[なんの話かと聞き返されれば、
目を細め、少し違った笑みになる]
本当?
本当に何のことかわからない?
隠してもダメよ……。
― テレーズ宅前 ―
[遣った視線が、はたと瞬く。
ミレイユへと落として、はたはたと瞬いて]
…ミレイユ?
どした、何か気になる事でもあったんか?
[かすかに耳に届いたのは言葉では無くて音だけだった。
荷を両手に抱え直し、よいせとしゃがみ込む。
視線が合う程では無いが先程よりは近付いた距離で、
こと、と軽く首を傾いで]
それは間違いよ、ユーリちゃん。
人生というのはね、暇つぶしなの。
「周期」を迎えるその時までの時間を、
ヒトは耐えて、無為に潰しているにしかすぎないのよ。
大事なのは、「あの花」。
主は「あの花」。
従はわたくしたち。
「あの花」を咲かせる為だけに、わたくしたち雪花は存在しているの。
[くす、
くす、
萎びた老女でありながら、少女のように透明に笑って]
[首筋にあてられた手。
まるで見透かすようにそこへ、不自由なはずの視線をあてて]
分かるわ。
分かるようになった、というのが正しいかしら。
わたくしはね、
選ばれたのよ、ユーリちゃん。
他の誰でもなく、
若い子供でも、美しい娘でも、力強い男でもなく、
無駄に死に、見送られる方になるはずだった、
このわたくしが。
[しなびた唇が、笑みに歪んだ]
─ →道具屋 ─
[白花亭を後にして向かうのは道具屋。
出来た器を卸すために向かったのだけれど]
………居ないんかーい!
[扉に掛けられた『休憩中』の札を見て思わず声を上げた]
休憩ってことは、テレーズのとこかなぁ。
しゃーない、次の機会にするか。
[日常のままに過ごそうと決めたから、そんな言葉もすんなり出てくる]
流石にテレーズのところに押しかけるのもなぁ…。
よし、じゃあ今度こそパンを。
[そう考えて一旦道具屋を後にすることにした]
― テレーズ宅前 ―
[消えた夢の話をするミレイユに視線が向く。
テレーズとサリィ。
二人が同じように消えたと裏付けるかのようなそれ。]
――…さっきまであんなに元気だったのに。
ほんと、突然なんだな。
[消えたと言われてもやはり実感は伴わない。
空虚さの滲む響きがぽつと落ちた。]
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