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―東殿/食堂―
[属性ゆえか苛烈な電撃の竜の言動に僅かに視線を流し、疾風の竜の答えにまた戻す]
……わかれば話は早いのに、ですね。
[口元に指先を当てたまま同意の頷きを返すと同時、窓から飛び出る姿を見送る。
そして座席に残された黄蛇に気付き、視線をめぐらせて大地の竜にいつの間にか近づいていた翠樹の仔竜に留めた]
…だめ?
たのしそう、なのに。
[萎れる様な声に、内心私は安堵する事になる。
窓から飛び出て行ったのは見て取れたが――まさか真似したいなどと言い出すとは夢にも思わなかった故に。
地竜殿にお止め頂き助かったと云わざるを得ないであろう。]
うん、あのね。
[目線の近しくなった地竜殿を真直ぐに見据えつつ、仔は先を促され地竜殿の耳元へと顔を近づける。――不要に口外してはならぬという言葉に従ったか、さては秘密裏の会話で話すのを気に入ったのやも知れぬ。
何れにせよ地を這い、未だ仔よりも距離を置く私の耳元には声は届かぬ。]
けん、もってる?
すっごい、つよいやつ。
―東殿・個室前の廊下―
[西殿の方を見ていた時、不意に風が動くのが見えた]
あの影は、風竜……ティルの?
[何が起きたのだろう。
感じた胸騒ぎは、徐々にではあるが、膨れて行く。
先に西殿へ向かおうと、踵を返したところで。
部屋から出てきた、命竜の姿が見えただろうか]
なんつーか……わっかんねぇ。
[ぽつり。
雨の中に零れるのは、小さな呟き]
どいつもこいつも……そろいもそろって。
何がしてぇんだよ?
揺らされた連中も、竜王も。
ひそひそこそこそして……ワケわかんねぇよ!
[吐き捨てるよに言いつつ、結界を殴りつける。
鈍い音が、雨の向こうに響いた]
風邪をひきますよ?
[ そっくり同じ口調で、影は言う。
外へと歩み出せば、同じく濡れるのだが。水を含んだ土は普段よりも柔らかく、微かに沈んだ。数歩の距離を置いて立ち止まる。]
―東殿・廊下―
[なにやら慌しい声が聞こえるが、原因は分かっていた。
先ほど、西殿の中で会った――彼女の件だろう。
ダーヴィットあたりはめっさ凹んでるんだろうなと思いながら、自身も再び、今度は徒歩で西殿へ向かおうとして。出くわした影一つ。]
よう、氷竜殿。
騒がしいようだが…何かあったか?
[さも今しりましたと言った風に尋ねかける。]
[ ふ、とノーラの意識を深淵に引き落とす。
光と闇の分かたれぬ今、浮上するのはかなり億劫ではあるが。]
引かなかろ。影なればな。
[ 紫に変わりし瞳を向け月闇の竜を映す。煙る雨に、視界はやや霞んだ。]
己であるを望むが故に、力を求めるか?
[しばし、壁を睨むように見た後。
東殿には戻らず、庭園の木の上へ]
…………。
[そのまましばし、枝の上から雫をこぼす空を*睨むように見つめ続け*]
―東殿/食堂―
[大地の老竜と翠樹の仔竜の話は内緒なので当然聞こえない。
風を聞く疾風の竜ならまだしも、青年では何か冒険めいた仔竜の心の動きを感じる程度だった。
そちらに意識を向けながらも開け放された窓へと歩き、雨風が入らぬように閉じる。
そして振り向いた時、意気消沈した若焔が食堂へと入って来た]
……エルザ殿が?
それは…どのようにしてですか?
[飛び出した疾風竜の言葉により概ねわかっていたが、正しく刻む為に問いかける]
―東殿・廊下―
ごきげんようかしら、命竜殿。
[意味無く同じ呼び方で返した後には、ふるりと首を振り]
騒がしいほど、騒がしいのかは分からないけれど……
今、ティルが結界のほうに駆けて行ったみたいなの。
……もしかしたら、また誰か「引き込まれた」か。
それとも、揺らされたものに襲われたか。とにかく、何か起きたのかも。
[ふるり、首を振るう]
―― 食堂 ――
[飛び出していく風竜をただ見送ったのは、恐らく珍しいことだろう。ダーヴが食堂に現れてから、ようやく、息を吐く]
…他は、無事かな?
結界を見に行くか、人の集まっているところに行こうかと思ったんだけれど。
貴方は?少し、疲れているようだけれど……。
[どこか疲れているような命竜に向かい、尋ねる。
また探査の為に力を使ったのだろうか。そんな風に、気遣うように]
振り向いた時にはもう、無限の輪に捕まってた。
十中八九、虚竜王様の手によるものだと…。
[半ば鱗の生えた手をきつくきつく握り締める。]
……どうもせぬ。
出来ぬ、というが正しいか。
此の器に、我の震える力は無きが故に。
陽光の仔竜が囚われし今となっては尚更にな。
[ 素直な肯定に、胸に手を当てつ吐息を零す。
細い滴が肌を伝い、纏う布を濡らしてゆく。]
好きなようにするがよかろ。
お前も、あれも。
願いの在るならば。
―東殿・廊下―
うむ、ごきげんよう。…って言うと偉そうだな俺。
[へらり、笑みを返すも、続いた言葉には眉を顰める。]
…引き込まれ、ってまたか。
どっちだったとしても厄介だな…とにかく行ってみるか?
[外は雨だが、そうも言ってられないだろうかと。
それでも一応尋ねてみる。]
―東殿・廊下―
あら、なんだか似合ってたけれど。
[へらりとした笑みを見ると、少しだけ笑みが零れたが]
……虚竜の王が機嫌。
結界の中に引き込まれたユディとかでも、治せないのかしらね。
[ほぅと息を零したところで、命竜の問いかけに頷く]
……雨が気になるなら、私の周りだけ雪や雹に変えられるけれど?
[こてんと首を微かに傾げ、尋ねる。
濡れるのと冷たいの、どちらがマシ?とでも聞くように]
―東殿/食堂―
[若焔の言葉に静かに耳を傾けて、青年は若焔へと歩み寄った。
握り締められた鱗立つ手に、袖から少しだけ覗く指先を添える]
虚竜王の不機嫌ならば恐らく誰も止められません。
あまり気を落とされぬように。
……エルザ殿に心配されますよ。
[少しだけ痛みを消して、指先を離す。
そして仲の良い様子の機鋼の仔に声を投げて下がった]
エーリッヒ殿、よろしければ若焔殿の側に。
[ダメかと再度訊ね来る様子には、重ねるようにして制止の言葉を紡ぐ]
なりませぬ。
お行儀が悪いですよ?
[告げてから、耳元へ顔を近付けてくる様子に己が耳をそちらへと向ける。その先で紡がれた言葉には少し、動きが止まりかけた]
……剣、じゃと?
[強い剣、幼子はそう繰り返す。常で剣をその身に帯びることはほとんど無い。今帯びていると言えば──]
…いや、儂は持っては居らぬよ。
剣を扱うは苦手でのぅ。
[ややあって紡いだ言葉は否定を含むもの]
[ちらりと心竜を見上げる顔は、きっととてつもなく情けないもの。]
…けど。
アイツが…アイツの卵見つけたときからさ、絶対守ってやるって思ってたのに。
[口惜しさは、どうすることもできず。]
手伝ってはあなたの望みが叶ったとも言いがたいのでしょうか?
もしも必要でしたら、どうぞおっしゃってください。
[さすがに僅かな沈黙の後、申し出だけはした。]
―― 食堂 ――
[精神竜に声をかけられて、立ち上がる。すたすたとダーヴの傍に歩み寄ると、生身の右手で、いきなりスッパーン!と頭をはたいた]
落ち込んでる場合じゃないだろ!?
早くエルザさんを出してあげたいなら、結界をどうにか出来る相手をとっとと見つけないと!
…?
[地竜の耳元から身体を離した仔は、漸くにして心竜殿に気付いたようであった。
視線を向けられていると判ればその意図は知らねど、幼子は何処か楽しげに小袋を握った左腕を心竜殿に向かって小さく振る。
しかし僅かに首が傾いだのは、その向こうに様子の可笑しい機鋼竜殿と焔竜殿が見えた為か。
その間に漸く仔の足元へと辿り着けば、
私は仔の足を伝って小さな身体へと身を巻きつけた。]
―東殿・廊下―
うはは、おいさん偉いわけじゃないからなぁ?
んー、どうだろうなぁ…中で王らと繋がってれば期待できるんだが。
[繋がってない事を知りながら言う。
そしてブリジットの、ある意味究極の選択に通じるモノには、ちょっと本気で悩んだ。
結局。]
………濡れないよりはマシか?
えーと、そいじゃオネガイシマス。
[冷たいほうを選ぶ事に。
雨避けコートを取りにいけばいいわけだが。
部屋にはなかったし、借りてくるには時間がかかる為。]
冗談だ。
[ 表情は変えずに言う。]
あれの願いもお前と似たよなものだろ。
叶う事態になれば唯では済まぬが。
それも一つの結末よな。
―東殿/食堂―
[視界の端に若焔の情け無い顔が見えたが、青年は常より淡い笑みを浮かべていた。胸の内を全て吐き出せばいいと許すように独白に口を挟む事もない。
そして機鋼の仔竜の一撃が入れば、もう大丈夫だろうとばかりに静かに足を進めた。ニ竜から離れ、視線を向ける仔竜に指先を一、二度振り返す]
…ってぇ………
ぁにすんだよっ!!!
[まともに肩打ったらしく、さすりつつ飛び起きた。]
んなもん、言われなくてもわぁってるっての!!
[幾つもの焔を展開。潮の香りの煙が上がると同時に、灯火は深い青へと染まる。]
あなたは――叶うも叶わぬも、関係ない。
そういう、ことなのでしょうか?
[ノーラに問いかける。]
――でも先の願いは、本気だと思いました**
…そっか。
[再度制止を掛けられては、仔も渋々ながら納得せざるを得ぬ。
僅かながら名残惜しそうには見えども、幼子は了承の意か小さく頷く。
それでも尚真似たいと言い出せば如何すべきかと悩む事になったに相違ない。
重ね重ね、地竜殿には感謝すべきであった。]
…? もってない、の?
[一寸の沈黙の後、告げられた言葉に仔は囁き声も忘れ瞬いた。
不思議と言わんばかりに仔の視線は腰へと巻きついた私へと注がれる。
それから仔の表情には僅かに翳りが差したのは、幼心に大きな期待を抱いていたに違いなかろう。]
おじいちゃんが、もってるって。きいたの。
…でも、ととさま、だしてあげられない?
[流水のへと向かった焔は、2周回る前にくすぶって燃え尽きる。]
…こっちでも、ないか…。
じゃ、誰が…
[存在として怪しいのはクレメンス辺りだろうかと失礼な事を思いつつも、揺らぐ足取りで歩き出す。]
―東殿・廊下―
そう、願っておきたいものだけれど。
陽光帝も、仔と会いたいでしょうからね。
[少しだけ、胸元に手を当てて、そうであるように願いながら呟いて。
片言な言葉での返答には、にこりと笑みを作って]
賢明ね?
[微笑んだ]
―東殿→西殿・結界前―
[東殿を出る際に、軽く息を整える。何か小声で呟いたと思えば、
ブリジットの中心から、とても薄い白紫のオーラが広がっていく。
オーラのような結界に触れた雨は瞬時に、真白い雪となる]
あ、寒かったら、ごめんなさいね。
[言うのが少し遅かった気もした。
オーラは円状に、そう離れていない命竜をも包み込む。
地面のぬかるみも凍て付き、所々には霜柱も生えたりしているだろう]
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