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……どっから、そーゆー発想が……。
[思わず、突っ込みが口をつく。
もっとも、この状況での『デート』が何を意味するのか、くらいは察しがついた。
むしろ、『そういう』経験の方が多いかも知れない]
……ま、好都合って言えば、好都合、かな。
殴る、って決めたんだし。
[物騒な決意を口にしつつ、ロザリオを軽く、握って。
ちら、とピアノを見やると窓を開けて翼を開き、自身も上へと舞い上がった]
こっちか、ねぇ。
[顔を上げれば、ゆっくりと足を動かす。
ポケットに手を突っ込みながら歩く様は、隙があるようにも見え、隙がないようにも見える。
最も、耳にある集音機は未だ生きているのだが。
何がおかしいのか、く、く、と小さく笑った]
─廃墟・中央近辺ビル屋上─
おーし。
エイキチ、おまんそのまんまで居れ。
落ちた時ゃあ頼むど。
[屋上へと舞い降りると小猿へとそう指示を出し、エリカが現れるのを待つ。やや後に翼にて現れたエリカを見やると、笑む気配を漂わせた]
応じてくれおうたか、あんがとさん。
口上やらなんやらは要らんじゃろ。
しばらくお付き合い願うけぇ。
[そう言って、男は自然体で立つ]
―廃墟―
[元住宅だった屋根を音も立てずに浮遊して、お目当てであろう。指し示す方向にいた『猟犬』を見つけて]
ふふ。あれですかね
[口の端を吊り上げながら言って。そして指を鳴らすと。
特に危険度も低ければ、殺気も闘気もない。あたっても単に地味に痛いだけであろう。金ダライがブラウンの頭上に現れ、落ちていった。
不意打ちっていうかまるっきり悪戯である]
そう、そのアレですよ、っと。
[す、と手を挙げ…]
[――ごぱぁん]
[金ダライはクリーンヒット。
綺麗に凹んで地面に落ちる。
…上げた手は集音機をオフにしていた]
――。
[そして、眼鏡を中指で直す]
―廃墟―
[路地の一つに足を向けたら背筋がゾクリとした。
何の気配も無い。だが今ここに踏み込むのは良くないと、本能的な何かが感じ取る]
…やめとこ。
[もう一度意識を澄ませる。
耳に届いたのは鍵盤の奏でる旋律]
んー、余裕あるんだなー。
[誰の手によるものかまでは分からない。
そちらに足を向け始めてすぐに]
にゃっ!?
[響いた別の音にぴくりと動きを止めた]
─廃墟・中央近辺ビル屋上─
[ふわ、と舞い降りた先。
飴色はやはり、一瞬だけ銀へと惹かれるが、すぐに狐へと向き直る]
……そーだねー、やること決まっちゃってる状態だし。
それより何より……。
[やや低くなる、声。
左手が、右手の銀の蔦をつい、と撫でる]
……殴る、って。決めたから。絶対、殴る。
……Sturm,Anfang!
[言葉と共に、銀の蔦は銀の戦輪へと形を変え、右の手に。
直後、低い体勢で駆け出して距離を詰め、横に構えた刃の輪を左から右へ向け横一文字に薙ぎ払った]
[屋根の上にいるため、見下ろす形で一部始終をみていたまま営業スマイルで]
こうして、面と向かって会うのは初めてでしょうかねぇ〜。ブラウンさんですよね。
私なりのおもてなしはいかがでしょうか〜?
[一切悪気はない笑みである]
嗚呼。噂には聞いていたがねぇ。
初めまして、と言うべきかな。
『ザ・フール』のマスター、ディーノ君?
[瘤が出来てそうな頭には触れずに]
こうしてみると、おじさんの方が『愚者』に見えるねぇ。
[く、く、と小さく笑う]
[銀狼は屋上の隅へと待機させ、『デュエル』の邪魔にならないようにする]
おっふぉ!?
なんぞ怒っちょおか!?
[急に距離を詰められたことよりも、殴ると言われたことにわざとらしく驚きの色を出す。そんなことをしながらも、足元の影がせり上がり両腕へと纏わりついて。現れる幅広の刃を備えた男の得物、トンファーブレード。己が右から迫る戦輪に対し右の得物を持ち上げ打ち合わせるようにし。次いで左の得物の鋭い先端を、脇の位置からエリカの腹部目掛けて突き出した]
おやおや、噂になるようなことをした覚えはなかったのですがね〜。
[笑みを浮かべるそれはむしろ白々しさほど感じるだろうか]
ですがしってらっしゃるなら光栄といったとことでしょうかねぇ〜…ま、普段とは違って、今はなんの不思議でもないでしょうけど
いえいえ、あなたは愚者ではございませんよ〜。あなたは…人の負の部分をたくさん浴びて生きていながらも良くも悪くも人間的に見えますしねぇ〜。
私の適当さには到底及びませんよ〜
[と、くく、と小さく笑うブラウンへやんわりと否定の言葉を投げて]
では、お互い目的も同じことでしょうし、やりましょうか
[屋根の上。そこより更にゆらりと浮き上がり。片手の中にある銀縁のトランプを十五枚。
それをブラウンの体中に特にこだわるほどの狙いもなく一斉に放つ]
そうかい?
"此処"でなくても、裏でお前さんの名前を聞いたんだがねぇ。
[良い意味か、悪い意味でか。
それは言わずに奇術師を見上げる]
テキトーに見えて、ソレが適当って事もあるモンだ。
クソ真面目に生きたって、たった一つの"破滅"でどう転ぶか分からない。
なら…お前さんのような生き方が一番"賢い"のかも知れん。
[否定の言葉には疑問の言葉を投げかける。
答えを期待しているわけではないのは、右手をポケットから出して『ジ・タワー』のカードを軽く見せたので分かるだろうか]
だろうねぇ。
ま。俺程度の"障害"で、そう簡単に崩れてくれるなよ?
[かぁん。
金タライを蹴り上げると左手でキャッチ。ソレを盾にディーノとの距離を縮めようと前屈みで走る]
[横薙ぎの一閃は受け止められ、動きの勢いが削がれる。
急制動にバランスを崩しつつ、後ろに飛びずさる事で突きの一撃は避けた]
怒るもなにもっ!
乙女の純真、惑わした罪は、重いっ!
[翼の生み出す揚力で体勢を整え、手にした輪をびし!と突きつけながらきっぱりと言い切る。
きっちりしっかり、目はマジだった]
さって、と。
近接戦のレンジは、同じくらいかな……Sturm,Teilung!
[銀を二つに分けながら宙へと舞い。
左手の一本は残したまま、右手の一本を、勢いをつけて投げつける。
念の込められた輪の軌道は、直線ではなくジグザグ不規則。それが狙うのは、狐の右の肩]
あー、びっくりしたー。
[金属製の何かが落ちた音らしいと遅れて認識する。
音の跡を追おうとしてたせいで酷く大きく聞こえたようだ]
向こうの音も消えちゃった。
でもってこの気配は、動き始めたってことかなー。
[近くのビルに空色を向け、外壁をひょいひょいと駆け上る]
あの翼は雷鳴のおねーさんだね。
でもって今の音は、手品師さんたちか。
[少し離れた場所と、すぐ先で始まった戦闘を交互に見た]
さてさて、何が賢いか。何が賢くないかは。各々の判断するところでしょうねぇ〜
いえいえ、人間なんて塔でなくても石ころでもつまずく生き物ですよ〜
[暢気な口調でありながらも、目は猟犬より離さないで]
そんな使いかたしますかぁ〜。まいっちゃいますねぇ〜
[タライを盾に前進されたことで的を失い突き立つカード。それを見もせず、両手を前に突き出し力なく垂れさげると、鈍く輝くトランプが滝のように落ちて一つの形…針山の壁を形成する]
手品にはこれはつき物ですよねぇ〜
[暢気にいいながら、その壁をは向かってくるブラウンへとのしかかるように傾いて倒れこむ]
はっは、参るのはこっちだと思うがねぇ。
頭に瘤は出来るし…
[針山の壁を見やれば小さく笑い]
カードを使わされるんだからねぇ。
――『破滅の塔』!!
[倒れてくる壁よりもカードが光を放つ方が早いか。
男の足下から針山の壁よりも高い塔がそびえ立つ。
そして、頂上に立つ男は小さく笑った]
ほれ。追いついたぜ。
[とん、と塔から屋根へと飛ぶと同時に、左手の甲から銃身が出てきて。
特にねらい打つわけでもなく、ディーノに向かって乱射した]
そげなこと言われてものぅ。
ワシゃあ事実も言うとるんじゃがの。
[そう言う問題でも無い。相手の体勢は崩せたが、追撃は見事に躱され。離れた相手から戦輪を突き付けられ、得物の握りで後頭部をぼりぼりと掻いた]
ま、理由はどうあれ、やることにゃ変わりはなかね…と!
[零した直後に向かい来る二つの戦輪。不規則なそれを完全に避けるのは難しく、狙われた右肩を戦輪がざくりと駆け抜けて行く。右の得物が手から離れ、地面へと落ちた]
全く以てじーちゃん譲りじゃのぅ!
[毛皮を紅に染めながらも声は楽しげに紡がれる。空となった右手を下から大きく振り上げると、取り落とした得物が影へと戻り、槍状となって宙へ舞うエリカへと迫った]
おや、これはびっくり
[言葉通り聳え立つ高い塔に虚をつかれたため、飛び降りてくる様子には反応が少し遅れる。
銃による乱射を避けるため、左へと浮遊しつつトランプを扇状にして防ぎ。そらし。全て防げるはずもない。いくつも体を掠め。左足を撃ち抜かれる]
…っ…いったいですねぇ〜
[それでも間合いをすばやく離しながらも痛みに目を細めつつ。両腕を振るうと。そこより発射された十枚のトランプが剣へと変わり。旋回しながらブラウンへと迫る]
そういう問題じゃないっ!
[やっぱり突っ込んだ。
ターゲットを捉え、軌道を捻じ曲げた輪を文字通り呼び戻し、再び一つの輪へ戻す。
そこに聞こえた、楽しげな声]
……んな事、言われたってわかんないやいっ!
[平静を装おうと試みつつも、やや、揺らぎを帯びた声。
その揺らぎは影の槍への対処を遅らせ、穂先が右の腕をかする]
いった……もー、ボク、自分治せないのにっ!
傷残ったら、どーしてくれんのっ!
[場違いな文句を言いつつ、一度、地上に降りて。
距離と、仕掛けるタイミングとを計る]
煙と何とやらは高いところが好き、ってねぇ。
[そんな事を言いながら屋根へと降り立つ]
…足を封じても、距離を縮められるワケじゃないのがキツイねぇ。
[痛い、と言う奇術師に、小さく笑いつつ。
飛来する剣に、ち、と舌打ち一つ]
物騒なモン飛ばしてくるねぇ…全く!
[先ほどの金タライは針山の壁に飲み込まれている…
左腕を大きくテイクバック、そして]
高速射出槌《パイルバンカー》。
[左腕の内部にある大きな釘。
腕から生えれば釘もまた大きく引かれて。
左腕を前に出すと同時に、釘もまた前へと射出される。
釘が飛ぶ事はないが、其の腕の速度は目で追うには厳しい。
その速度が生む結果は…一つの剣をはじき返し、他の剣をも巻き込んだ。
しかし、巻き込まれなかった剣…ど真ん中よりも大きく外れた剣は飛来する]
っつー…たく。
[大きく体を刻む事はないモノノ、剣は其の身体に鋭い傷を付ける。
…鋼鉄で出来た左腕以外。
服もズタボロにされ、男は悪態をついた]
傷ば気ぃするんじゃったらそん稼業ば止めぇ!
そん程度の覚悟でこん場所ば立たれとぉ方が迷惑じゃ。
[場違いな文句にはいつになく厳しめの言葉。相手の腕を掠めた影槍は役目を終えると霧散し、再び男の足元へと現れる]
ちなみんワシも治療ば出来ん!
[要らんこと言った]
[床へと降りた相手を見、影を再び右腕へと纏わせ。得物を握ると、床を蹴りタイミングを計っているらしい相手へと迫る。懐目掛け飛び込んだなら、左右の得物にて斬り上げの連撃を放とうと腕を振るった]
向こうまで移動するのは、ちょっと難しそだな。
[途中にある通りの上を無防備に跳ぶのは躊躇われた。
それならと、近い方の戦場を空色に映す]
うーわ。威力高そー。
あのカードもどれだけあるんだろ。
[こくりと息を飲みながら戦局の流転を見つめていた]
あなたこそ。なかなか物騒な腕をお持ちですよ
[笑みを浮かべつつもそれは嘲笑ではなく賛辞の意を持つ
ゆらりと中空を浮かびながらも、弾き返されてこちらへと来る剣を手で翳すとなんなくトランプへと戻り主の手中へと戻って]
では私も、カードを使ったあなたに礼を尽くして。使いましょうか
[ぴっと人差し指と中指の間に現れるは、己の最もお気に入りの『愚者』のカード]
さぁ。いきましょうか。私の大一番の手品をね
[薄く光りだす『愚者』のカードを手に客に対するような営業スマイルをブラウンへと向けたところで、最初に放ったトランプ。倒れこんだ針山の壁。弾かれた剣。はては金ダライまでが元のトランプへと戻り。自分と、ブラウンとの間で徐々に一つの形へとなる]
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