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[書を持っていようがなかろうが。
その力があろうがなかろうが。
命の、今はここにない竜のことなど、苗床には関係ない。
かの女に対してしたことは、それなど関係することでないのだから。]
[精霊たちの言葉に、一つ、息を吐いて]
さて、どう言えばいいのやら。
ま、何を言えども、言い訳と捉えられるのを覚悟で、言えるだけを話すのみ、か。
遺跡にいたのは、予兆を感じたからだ。
鍵の書を抱える、封護結界のざわめき。
破られずにすむのであれば、そのまま見守り。
破られたなら、追う。
それがあの場にいた理由。
そして、結界は破られ、書がそこから離れた。
だから、それを追わせた。
[もっとも、それは打ち消されたが、と呟いて]
……己が視点で物を言うのは、当然の事か。
それを責めるのは愚かだな。
どう言ったとて、皆が俺を信じきれるとは思わない。
だが。
俺は、何者の喪失も望まない。
そのための行動を起こす意思など、持ってはいない。
それだけは、はっきりと言える。
−Kirschbaum・一階−
[しばらくして、ベアトリーチェはもぞもぞと起き出して、大きく延びをしました。外の騒ぎなど知らずに暢気なものだ、と思えたでしょうか。けれども辺りをきょろきょろと見回して、こてんと首をかしげます。]
……誰か、居なくなった?
[そう声をかけられたハーヴェイは、少し愕いたかもしれません。ベアトリーチェは、ただのこどもの筈だったのですから。それからほんのわずか、天聖の力とは違うようなものが混じっていたのにも、気附いたかもしれません。]
[ごめんね、と小さく呟いてナターリエの傍を離れる。
そのままミハエルに近づいて]
ね、ミハエルさんも落ち着いて。
昨日はミハエルさんが私にそう言ってくれたんだよ。
言い争ってる場合じゃないよ。
それでも書の力が使われていることは間違いないんだから。
それを早くなんとかしないと!
[ミハエルの傍に寄って必死に言い募る。
許されるのならその手に触れようとしながら]
[ティルの言葉に、僅か、表情は和らいだようにも見えただろうか。
それから、一つ、息を吐き]
……俺は、この世界を失いたくない。
損ないたくもない。
あるもの、あるがままに全て。
定められし輪転の刻が来るまで、見守りたい。
ただの虚。虚無を詰め込んだだけのモノに。
経験という、何にも変え難い宝を与えてくれた、始まりの世界……だから……。
[言葉の途中で、その身がゆらり、傾いで。
意識が途切れる。
周囲で、言葉が飛び交っているのをぼんやりと聞きつつ。
*暗転*]
お前は、底が知れん。
解っているのだろう、自分でも。
[目はオトフリートを見据えていて
体は手の先まで、触れれば熱いと感じる程に冷えて居た。
触れられても、それに気付くことが無い程に。
欠けたバランスの所為もあるのだろう。怒りの所為もあるのだろう。]
お前が虚無を望むことは無いと、思っていた。これまでは。
[落ち着けと言われて
首を振った。
目を閉じ、息を吐く。]
……自分の言った事へ自分が従えて居ないとは。
[アマンダは、ミハエルとオトフリートを見つめる。
交わされる真剣な言葉に、嘘などない…ように見える。
けれど、けれど――それならどうして]
どうして…ハインも…イレーネも……
[「…ここに、いない?」
その言葉は、口の中だけで。音にならず、消える]
[今にも荒れ狂おうとする、己の中の力を押さえつける。
吐息は熱く、胸の中の憤りは鎮まらず。
倒れる同族に、声をかけようとしてとどまる。
手も出せない。
触れるもの全てを焼き尽くしてしまいそうな己の力が怖い。]
[倒れたオトフリートを、支えるでもなく見やる]
どなたか、宿に運んであげてください。
私に触れられたのでは安心できないでしょうから。
[時の竜の倒れるのを見て、
一つ、ふたつ、瞬きを。
近づくその手はかれに触れようか。]
考える時をたがえば、すべては狂ってゆくだろて。
落ち着け、氷の精。
[それはながき時を生きた故の、どこか諦念を含むもの。]
オトフリートさん!
[倒れた彼は酷く消耗した様子で。
先程の一連の力の行使がかなりの負担になっているのだと知る。
それでも冷たい手をしたミハエルから離れることも出来ず。
その手を握りながら周囲を探れば、消耗している者も多いようで]
い、一度戻ろう?Kirschbaumに。
[そうは言ったものの、どうしたらいいだろうかと悩んでいた]
[ふと、ダーヴィットの様子がおかしい事に気がつく]
ダーヴィットさん、どうしたの?大丈夫?
お腹でも空いた?僕、チョコレート持ってるよ。
[尋常じゃない気配に、笑わせようといつもどおりの軽口を叩き、そっと近づこうとする。ふわり、無意識に風をまとい]
自らのみが苦しむものと思うでないよ。
バランス狂えばここの地は、影の王の支配がありきこの地は。
とてもすみにくく変わるだろう。
多くの属性をここまでそろえられるのはかれの力がゆえに。
……あぁ、僕が運ぼうか。蔦なら力はあるだろう。
[ゆる、と背から再び蔦が。
右の手の変わりになるように、倒れた身体を抱き上げる。]
[オトフリートの身体がゆっくりと、倒れていく。
アマンダはそれを、黙って見つめている。
硬い墓石並ぶ地でも、大地はその身を傷つけることなく受け止めるだろう]
…。
[ティルの言葉に、深く細く息を吐いた。]
[消耗したオトフリートの姿に、歯を噛み締めて逡巡し]
[徐々に冷気がひいてゆく]
[ようやく握られた手に気付いて、それを払おうとした]
…近寄るな。
[風の少年を見返す瞳は、縦に切れた爬虫類の眼。]
静めてこないと、何もかも壊してしまいそうだ。
[背を向けて、歩き出す。
暖められた大気が、向こうの景色を僅かにゆらめかせた。]
[ほんの一瞬だけ合った視線は、直にアマンダによって逸らされる。
けれど、対の疾風が歌うように囁く言の葉は、確かに届いていた]
…そう。それも、知ったのだね…
[ティルと手を繋いでいた姿を思い出し、小さく息を吐く。
きっと、アマンダが理不尽な態度だった事も全て知っただろうと]
そうか。
また、今度。
[心の魔に目をやって、苗床はそう言う。
同時にそっと、かれへ、口だけで囁いた。]
『どうしてこうなってしまったのだろうね、君も僕も。人の世界で何をやっているのだろうね。』
[訝しげに、クレメンスの背を見送った。
オトフリートへ言い募った時の物とはまた、違った猜疑を持った目で。ティルに運ばれる彼を見る目は戸惑い]
[そのどちらもから目を逸らして、ブリジットと目が合った。
彼女の手を指差し]
…。人の器は冷気に弱いものだ。
[立ち去るクレメンスを複雑そうな表情で見送る。
彼がオトフリートに投げた言葉。
それを否定するだけの論理的根拠は彼女の中に無く。
その言葉で皆が一気に揺らされてしまっていて]
どうして。
[悪くなってきた状況に軽く唇を噛んだ]
[ゆると持ち上げる蔦の力。
ひきずらぬように気をつけながら、蔦がかれを持ち上げる。
時の竜はそんな乱暴な扱いにも目覚めぬか。]
僕は、ゆくよ。
先に影の王の元へ。
かれを休ませてやらないと。
ここまで消耗しているのは、僕の責でもあるのだから。
えっ?
[指差されて自分の手を見る。
赤くなったそこは少しだけチリチリとした感覚を返してきて]
あれ?
[指先の感覚が消えていることにきょとんとした]
[倒れたオトフリート。
炎が揺らいで見えそうなダーヴィッド。
そして火傷しそうに凍りついたミハエル――と、その手を握っていたブリジットに、ようやく気付く]
ああ…いけない。
安定を、支えを。私はその為の存在(もの)なのだから…
[静かに呟いて、へたり込んだまま前屈みに大地に手の平を当てる]
さあ、永久の眠りを…邪魔しては、いけない。
それに…彼女の血も、還して…あげないと……
[茶色の目を閉じれば、ゆっくりと大地の力が伝わっていく。
砕かれた墓石と、流された生命の血を、大地へと還していく]
[ダーヴィットの視線をうけて、条件反射的に固まる。
が、すぐにいつもの様子に戻り]
あ、忘れていた。ダーヴィットさんは火の竜だっだね。
今の状態からすると、僕の存在は危険だね。
小さな火でも、風で大きな火事になっちゃうから。
まあ、これでも食べて元気出すといいよ。
[ひゅんと、ダーヴィットに向かって手に持っていたものを投げた。こつんとその頭に、シガーレットチョコが当たるかもしれない]
[墓場に満たされる大地の兆しに、...は体を震わす。
安定を嫌う自由の性質が静かに反発する]
ごめんね。僕、アマンダさんのこと知ってたんだ。
ティルに教えてもらって。
僕の存在自体がアマンダさんを傷つけているんだよね。
[ふわっと風が吹く。自身ではコントロールできない力。
ただ彼女の仕事を遠くから眺めることしかできない]
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