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おぅよ、落とさねぇようにな。
[荷物を担ぐような状態のライヒアルトにはそんな言葉を投げかける]
まーた煙草か?
神父目指してるって奴がそんなんで良いのかね。
ま、砕けてた方が俺らも接しやすくあるが。
[ウェンデルに示された包みに視線をやりつつ、やや呆れたような声。けれどそれも一転、軽いものへと変じる]
俺ぁ仕事の合間の一服さ。
客も一段落したんでな。
その子については良く分らん。
[顎で示されるそれには大仰に肩を竦めた]
―→雑貨屋―
こじんまりとしたおみせねぇ。
[雑貨屋のとびらをおしひらくなり、つぶやいたひとこと。
女物の服のすそが、ひらひらとゆれる]
でも、それはそれで趣があるわねぇん。
ね、店員さぁん。
このおみせ、なにかおもしろいもの扱ってるかしらぁ?
[抽象的な問いをなげつつ、みせのなかを見まわす。
彼女の手にしているものには、*気付かぬまま*]
拾った?
[ぱちと瞬く。
そのまま相手は去ってしまったので、疑問の目はフーゴーに向けられることとなった]
あぁ、大丈夫大丈夫。
神様ってのは寛大でねぇ、ちゃぁんと信じて祈り捧げてりゃぁ、細けぇことは見逃してくれんのよ。
……って、昔世話になった神父様が言ってたんでね。
[呆れた声にはひらひらと手を振る。
それが原因でいつまでも見習いなのはさておき]
へぇ。
……なんだ、おやっさんも知らんのか。
見ねぇ顔だよな。
[ライヒアルトと少女が去って行った方を見遣った]
― 自宅 ―
[一応はある客室のベッドの上に、少女の身体を横たえた。
妙に安らいだ顔を相手が見せているので、
少なくとも命に別状はないようだ――と、
動かぬ表情のした思う。]
……さて、どうしたものでしょうか。
[相手がいつ起きるか分からぬ以上、
昨夜作った煮込み料理を温めるのは後で良い。
そして、起きるのがいつか分からぬ以上、
この場から長く離れるわけにもいかない。]
[暫く考えた末、本でも読んで待つことに結論を持ってきた。
その本は、学生時代取材を受けたことのある作家のもの。
クロエの店でも扱っているので、新刊が出れば、
なんとなく買って読んでいるのだった。
静かな部屋に時折響く頁を捲る音。
小さなテーブルの上には、先程まで学者の胸元を飾っていた花が、
ちょこんと所在なく硝子コップに生けて在る。
少女が目覚めたなら、名と恨みの理由を問うだろうが、
思い出せないようであれば、少し考えた末、
思い出すまで此処にいたらどうか?と*提案をするか*]
拾ったのはライヒアルトだがライヒアルトも知らんようでな。
恨まれてるとか何とか言ってたかね。
実際のところの事情はさっぱりだ。
ああ、見たことねぇ顔だった。
[少女についての話には同意の頷きを見せ。神についての話にはげらげらと笑い声を上げる]
おめぇがんな考え方するのはその神父の仕業か。
昔見た奴の中にゃ狂信的なのも居たが、俺ぁおめぇみてぇな考え方の方が楽で良い。
教会っつーのは基本かたっ苦しくてしょうがねぇ。
恨む?
へぇ、あの学者先生が。
……想像もできねぇな、そりゃ。
[少し考えるような素振りをした後で、やはり首を傾げた]
だろ?
大概その堅苦しい部分ってのは、後で人間が作ったモンだし。
俺だってそんな風に聞いてなきゃぁ、今頃見習いなんてやってねぇさ。
[一般の聖職者が聞いたら怒りそうなことを言ってのけた]
……っと。
ガキ共に飯作んねぇと。
じゃ、またそのうち寄らしてもらうわ。
リッキーによろしくな。
[ぶち猫の頭を一度撫でてから、片手を上げて、その場を*後にした*]
まぁなりがあんな奴だ。
知らぬうちにもしかしたら、っつー話をしてたわけだ。
[無表情のことやその性格のことを言っているらしい]
俺としちゃ、それを聞いててもおめぇが見習いやってる方が不思議でぇ。
おぅ、たまにゃガキ共連れて来い。
おめぇが作れねぇ旨いもん食わせてやらぁ。
[笑いが残る中、去り行くウェンデルを見送って]
んじゃおめぇにはミルクでもくれてやっか。
ちぃと待っとけ。
[ぶち猫にそう声をかけると中で暇をしているリッキーを呼び。小皿に入れたミルクを持って来させる。それを飲み切るとぶち猫はまた散歩を再開すること*だろうか*]
8人目、船大工見習い カヤ がやってきました。
えー?何?だから、私に言っても駄目だってばー。
そういうのは親父…じゃなかった親方に言ってもらわないとさ。
…何?何よ。『やっぱり女にゃ無理なんだろ』って?さすがにちょっと不機嫌になるわよ?岩礁乗り上げて折れかかってる竜骨は確かに私じゃ直せないけど、アンタの船が直った後で海のど真ん中でいきなり沈む程度の細工ならできるわよー?
と・に・か・く!親方は今、親戚の祝い事に出席してて後三日は戻ってこないの。漁に出る用の船ならうちのドッグにある奴をとりあえずは貸し出すわよ。勝手は違うから面倒でしょーけど、どっちみち竜骨の交換修理なんて1ヶ月はかかるんだから我慢してよね。んじゃ私急ぐから!
[通りを道具箱を抱えて走っているところを呼び止められていたが一気にまくしたてて言いくるめ、その場を足早に立ち去ろうとする]
とと、今度は何?自警団じゃ船は使ってないでしょ?
最近、海が荒れ気味で仕事が増えてんのに、あのバカ親父…じゃなかったバカ親方がタダ酒飲みたさに大叔母さんの誕生祝いなんかに出かけちゃって…て、ん。ああ、なんだっけ?身上書の更新?親父は今居ないけど…ああ、とりあえず私の分だけでもいいわけね。はいはい。
[道具箱をガタリと脇に置くと渡された書類にペンを走らせる]
─────────────
■名前:カヤ=メーア(Kaya=Meer)
■年齢:19
■職業:船大工見習い
■経歴:父親が船大工。母はカヤを出産した際亡くなっている。父親は再婚はせず、その為跡取りとなる人物がカヤしか居ない。本人としては木をいじるのは嫌いでは無いのだが、出来れば木工職人になりたいと思っている。
現在は見習いの為、船の簡単な修繕が出来るのみ。
■希望縁故:生まれた時から島で生活しているので大概の人とは知り合いかと。縁故はなんでも歓迎です。
──────────────
[書き終えた書類をポイと自警団に押し付けて]
これでいーでしょ?今日は後、4件は回らないとなの。親方が帰ってきたら役所に顔出す用に言っとくよ。書類預かっててもいいんだけど、汚したり破っちゃいそうだから。
んじゃ、急ぐから。
[再び道具箱を担ぎあげると再び通りを走っていく]
9人目、刺繍工 ゲルダ がやってきました。
―自宅―
――ん……
[昼間から怠惰に寝ている女が一人。
刺繍糸や、綺麗なビーズ細工が散乱した机の側――というか机につっぷしている。
寝ていると言うよりは寝落ちていると言うのが正しいだろう。
その証拠に、中途半端に伸ばされた手の先には針を差したままの、差しかけの刺繍があった。]
[そして当然というかなんというか、無理な体勢で寝ていれば痺れも起こる。
無意識に体勢を変えようとして身じろぎをして――]
!!――ったぁ……っ
[ガタタッっとお約束のように椅子から転げ落ちてようやく覚醒をみたのであった。]
あー……寝ちゃったのか……
[まだどこか寝ぼけたままで顔を擦り、一度頭を振ってずれたスカーフを外す。
のそのそと机に手をついて立ち上がりながら凝り固まった身体をほぐした女は、欠を零しながら顔を洗うために洗面所へと向かった。
そしてそれなりに身支度を整えた時に来客を告げる呼鈴が聞こえる。]
10人目、放浪娘 レナーテ がやってきました。
―港へと―
[ぱらぱらと、本のページを捲る潮風。
膝の上に載せていた本が、最後のページまで辿り着いても、
女の手は、それを戻そうとはしない。]
っわ、
[突然の大きな揺れに、眠りから醒めると
床板をわざと大きく響かせながら、操縦室へ]
――ばか野郎!
揺らすなよ。
せっかく、人が気持ちよく寝てるってのに…
[身なり、顔立ちからは想像できない罵声を吐く。
そして先ほどの場所へ、落とした本を拾い上げた。]
はいはーい、どなたですかー
えー……めんどう……はいはい、かけばいいんでしょー
[怠そうな声を掛けながら扉を開けば役場の人間がいた。
どうやら数年ごとにあるらしい現状調査の一環だとかという説明を半分聞き流した女は適当に提出書類に書き込み役人へと渡した。]
はい、それじゃお仕事お疲れ様、さっさとかえれ。
[書類を押し付けてバタンと扉をとじる。]
―――――――――――――――――――――――
■名前:ゲルダ・ハニッシュ Gerda Hanisch
■年齢:22
■職業:刺繍作家のようなもの
■経歴:島生まれの島育ち。親が手芸店のようなものを開いていた関係で幼い頃から刺繍に親しみ、長じて自らが考えた図案を差したハンカチや小物入れなどを作るようになった。
今も親は健在だが最近は島の外で仕入れに出たりしていてしばらく帰ってきていない。
■希望縁故:村の住人は大半が知り合い。
クロエの雑貨店に作品を置かせてもらっている。
―――――――――――――――――――――――
放浪娘 レナーテが村を出て行きました。
[部屋の中へと戻った女は途中のまま放り出されていた刺繍を仮止めしておいて、暫しの休息をとる。
日が落ちる前には部屋の外に出て行くつもりではあるが、寝起きで出かけるだけの体力はないのだった**]
───。
[ライヒアルトの自宅について、どのくらい時間が経ったろう。
少女は何やらひくひくと鼻を動かして、美味しそうな匂いを感じている]
───みゅう!
[突然、ガバッ!と起き上がり、傍らで本を読んでいるライヒアルトに目もくれずに一直線に美味しそうな匂いがする場所へとほとんど無意識のままで移動して、冷たいままの煮込み料理を近くにある箸なのやら、スプーンなのやらを不器用に使いながら、ガツガツと平らげた]
……ふう。死ぬかと思った。
[一通り自身の腹が膨れるまで食べつくすと、今更気づいたかのように周りを見渡した]
……どこだろ、ここ。
[少女の記憶の中には無い……と、思う。
なにしろ、記憶のほとんどが無い以上、それが本当かどうかも疑わしい。
だけど、自分が自分として気づいたときからの記憶の中では、間違いなく無かった]
なーんか、殺風景な家。
どんな人がここに住んでいるん……だ……ろ?
[きょろきょろと辺りを見渡していると、先程から少女を見つめている男の姿に気がついた]
……。
[何やら眉根を寄せた]
……。
[何やらハッと顔を上げた]
……。
[何やらまた眉根を寄せた]
……。
[何やら恐る恐るもう一度男を見た]
……なんで?
[最後に分かるような分からないような、意味としては色々と解釈が出来そうな言葉をライヒアルトへと投げかけた]
─雑貨屋─
はぁい、いらっしゃいま……。
[ドアベルの鳴る音に振り返る。
何か、気圧されるものでもあったのか。
振り返ったままの姿勢でしばし固まったが]
……し。
[それでも、それは言い切った。
見慣れない姿。黒の瞳がぱちくり、と瞬く]
あ、えっと。
見ない顔、だけど、別荘地に来てるひと、かい?
面白いもの、かぁ……家で扱ってんのは、暮らしの品だからなぁ。
[それでも、我に返るのは、早かった。
持っていた本を棚に並べ、視線を向けるのは色とりどりの刺繍のなされた小物の棚]
こんなのはどーかな。
かわいいだろ、ウチの幼馴染の作品なんよ。
[そんな説明をしつつ。
カウンターの奥、厳重に鍵のかかったガラス戸の奥のティアラの事を問われたなら]
ああ……ごめんねぇ、あれは売り物じゃないんだ。
真珠の細工が欲しいなら、知り合いの工房紹介してあげられるけど、あれを譲るのはカンベンねぇ。
[苦笑しながらこう言って。
やり取りの末、客が帰って行ったなら]
……色んなのがいてるわ、ホント。
[こんな呟きをぽつり、と漏らしていたとか]
─広場─
[その一方で。
宿の主人からミルクを振る舞われたぶち猫は、礼を言うよに擦り寄った後、再び散歩へと。
首につけた銀の鈴が、歩くのに合わせてちりり、と小さく音を立てる]
10人目、測量士 アーベル がやってきました。
やれやれ。
[別荘から離れた所で足を止める。
革の小袋を軽く放り投げ、キャッチした。
チャリンと響く音は軽くない]
確かにこれだけあれば、親父さんの所に泊まってても釣りがくるだろうけどさ。
ま、仕方ないか。
[水平線へ向けていた顔を戻し、村に向かった]
― 自宅 ―
[本を開いてから、どれほどの時が経ったのか。
不意に猫のような声が聞こえて、本より視線を上げた。]
嗚呼、起きたのか。
[生物学者の声には反応せず、
一目散に台所へと向かう少女の後ろ姿に、
爪の先程の幅、碧の眸を見開く。
そして、微かに持ち上がる両肩。
本を、硝子コップに飾った花の傍に置くと、
急ぐでもなく少女の後を追った。]
……温めなくてよかったのか?
[良い食べっぷりを静かに見つめていれば、
ようやっと我に返ったらしい少女と視線が合う。
掛ける言葉は、どこかずれていて、
その言葉に対してではないのだろう、
百面相をする少女を無表情で見つめる。]
此処は、私――ライヒアルト=クラインベックの家だ。
[そして「なんで?」という言葉に対し、
まず「此処はどこか?」という疑問におもむろに返す。]
君は、私に恨みがあると云った。
次に、腹が減っていると云った後、倒れた。
故に、私は此処に君を運んだ。
[続いてまるで三段論法のように、此処に至るまでの事情を説明し]
さて、君は誰で、私になんの恨みがあるのだろうか?
[最終的には疑問を返し、口を一度閉ざした。]
―港―
……ということで、次ので帰ることになったから。
雌鹿亭の女将にこれ届けて欲しいんだ。
笑うなよ。そも運び屋は本職じゃないんだからな。
[まだ笑っている連絡船の船長に手紙を押し付けた]
頼んだよ。それじゃ。
[荷物を背に掛け、船から離れる。
宿に向かおうと広場を横切ってゆく]
─宿屋前─
[礼を言うようにすり寄って来るぶち猫。その頭を一撫でして散歩へ戻る様子を見やる]
……んっとに平和だな、ここは。
時折の嵐は起きるが、んなもんは船を走らせてた時もあった。
転覆の恐れがねぇだけ良い方だわな、ここはよ。
[パイプを片手に視線を港へと向けた。そこにはお気に入りの船も置いている。その内また走らせに行くかと思いながら、パイプを咥え煙を吐き出した]
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