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[森の出口まで来て、そのまま診療所に帰るミリィを見送り。
自分は今一度森の中へと引き返す。
先程蔦を見た場所とは、また違う方向へ。
やがて森の音に混じり、微かに聞こえて来る歌声。
何処かにあるという不思議な森の詩を。
気分転換の為で他人に聴かせる気はないから、誰かの姿を見たなら即座に止めるだろうけれど**]
ええと、大丈夫ですよぉ?
[送る、という言葉にきょと、とするものの。
強く断る理由もないので、森の外までは一緒に歩く。
その間も、白い鳥はどことなく落ち着きなかった]
ほんとに、どうしたんでしょう、リーリエ。
[なだめるように撫でつつ呟き。
森と村の境界線でユリアンと別れると、真っ直ぐ診療所へと向かう]
―診療所―
ただいまですよぉ、ブルーメ。
[門をくぐり、箒に声をかける。
こちらも、鳥と同様落ち着かない様子]
あららぁ、ブルーメもそわそわしてますねぇ……。
んん、これはちゃんと調査しないと……あら?
……今の?
[外見的には、小さな子供だったけど。
それにしては、動きが機敏だったような。
ついでに、何か違和感も感じていたり]
……ほんとに、何が起きてるんでしょう。
悪いことじゃなきゃ良いのですけど……。
[小さな声の呟きに、鳥はくるると鳴き、箒は一回転して同意を示す。
ともあれ、庭に突っ立っていても仕方ない、と*診療所の中へ*]
性根が悪くても良いよ。
[ヨハナの家を出るときは、ちゃんと挨拶をした。
[だけれど、このときばかりは機嫌のよくない声。]
エーリ君はどじっこじゃないか。
……ばーか。
[小さな声で悪態付いて、いつもよりもゆっくりと行く後を追う。]
[と、唐突に放り投げられたものを、慌てて両手でキャッチ。]
[うまくキャッチできずに、あわあわと手の上で遊ぶその袋。]
――え?
[掴んだそれ、聞こえた声。]
[扉の中に消えた彼を追うことなく、手の中の袋を開ける。]
……エーリ君のばか。そんなことするから、居心地いいなって思っちゃうんじゃないか。
[あんなにダメといったのに、小さな石がてっぺんについた、気に入ったペンがその手の中に。]
[小屋の扉を開けて、エーリッヒの姿をまず探す。]
エーリ君!
ありがとう!
[言わなきゃいけない言葉はそんなくらいで、感謝の気持ちに抱きついてしまえと。]
[それからまずは部屋に戻り、袋にたくさん入ったピアスをふたつ選んで、耳につける。]
……ん、これでまたふたつ。
ペンはダメ。
[今度はペンをやるものかと決めて、台所へ。]
[置かれた食材に手を合わせてから、やがてシチューの香りが家の中に広がった**]
―自宅―
よし、と。
[お茶とお菓子にお腹は満たされた。
両親が家に戻る迄は、まだ時間もあるだろう。
スコーンと魔法瓶の入ったリュックサックを背負い、勢い良く立ち上がる。]
いってきまーす!
[誰もいない家に声をかけて家を出た。
目指すは、崖崩れの現場。]
[大人達に見とがめられないように、街道は通らず森を抜ける。
昼間の太陽でも渇かせなかった湿気が足を湿した。
ぶるり、身を震わせて空を仰ぐ。]
んー、もう少し道の方へ寄るかな。
[地図に視線を落とし、思案顔で呟いた。]
んと、太陽があっちの方で、山があっちだから………。
[柔らかく湿った土を踏み、道なき道をふらふらと進む。
慣れない場所に不安はあったけれど、それよりも好奇心の方が大きかった。]
あ、なんだろ、この茸。食べれるかな。
[街で育った少女には森の全てが珍しく、辺りをきょろきょろと見回しながらの道はなかなか進まない。]
誰かが植えたのかな。
変なの。茸が輪になって生えるなんて……。
[秋になったとはいえ未だ青の残る草の上、薄茶の茸が円をつくり並んでいる。
小さなその輪を見つけると近寄ってぐるりと見回った。]
円の中だけ、草が枯れてるんだ……。
[昔話に詳しくない少女には、それが妖精の輪と呼ばれるものであることが分からない。]
―森―
[店に戻るべく出口を目指す。
幼い頃から慣れているとはいえ、流石に暗くなると拙い。
仕事を抱える身のこと、尚更迷っている場合ではなかった。
というわけで、順調に道を進んでいた…のは良かったのだが]
[何だかずんぐりむっくりした影が横切って行ったような。
細かい作業の多い仕事柄、視力は然程良いわけでもない。
故に瞬いた間にいなくなったそれは見間違いとも取れたが、幻覚にしては色々と濃い。
辺りを見回すも、とうにその影はない。
目には未だ釈然としない色が*残っていた*]
しかしまァ、賑やかだったねェ。
お前にゃ災難だったが…おや、眠ってるのかいツィムト?
[片付け終えて皆を見送り、揺り椅子で腰を伸ばす。足元の寝床に丸まった薄茶猫は、去るティルを一睨みした後は眠ったようだった。飼い主の声にも耳を動かさない猫に静かに笑って椅子を揺らす]
さァて明日は表から来てもらう為にも裏口は閉めとくかねェ。
菓子作ってる最中に泥だらけにされたり箒振り回されちゃ堪らない。まァたお仕置きしなきゃ行けなくなるさね。
[言葉の割りに婆は楽しげに明日の手順を脳裏に浮かべる。
いつも開けてある窓から辺りに夕食の匂いが漂い始める頃、ようやく腰を上げた。
裏口にしっかりと鍵をかけてから、一人と一匹分の夕食を用意]
起きたらお食べ、ツィムト。
あたしゃ先に食べて寝るから、夜の番はよろしく頼むよ。
[ツィムトの分以外は片付けて、眠る準備の仕上げは一皿のミルク。いつも鍵を開けてある窓の外に皿を置いて、妖精へ短く感謝する]
妖精さん、いつもありがとねェ。
それじゃァ、ツィムト。おやすみ。
[のそりと動き出した薄茶猫に声を掛けて灯りを消し、二階の寝室へ上がる。月と星の光だけが照らす窓辺にずんぐりむっくりした影が過ぎり、皿のミルクを一気飲みして去っていく姿を見ていたのはツィムトだけだった*]
―森の中―
[ぐるりぐるり。茸の周りを廻ってみても答えは出ない。
気がつけば、空の端が淡い紫に燃えていて。
少女はあわてて村への道を辿り*始めた*。]
―― 早朝/森 ――
[青年の朝は早い。夜も明け切らぬ頃に目を覚まし、木々の合間に覗く深い青紫と鮮やかな橙の入り混じる空を仰ぐのが常だった。
森に住まう小動物の多くも、まだ寝床で夢に浸る時刻。
鳥の囀りも疎らで、木の葉のさやめきばかりが聞こえる。
朝露が地面に落ちる音すら響く気がした]
……さて、と。
[ぐるり、右肩を回す。腕に痛みはないものの、若干の熱は残っていた。
どうにも、魔法との相性は悪い。
その事実を知っているのは、ほんの一握りの者だけれど]
[……耳に届く音は静かなのに、森がざわめいている。
そんな奇妙な感じを覚えたのは歩み始めて少ししてからの事。
森の出口、村の外へと近付くにつれて、それは強まっていく。
首筋に手をやり頭を僅か左に傾けた。
眉根を寄せた表情には、困惑と、それより強い不快の色が窺える]
……。
[そっと近付いてみるも、音の原因となったものはもう通り過ぎてしまったらしく、何もいなかった。
小動物にしては大きな揺れと音。人だとしたら、大人にしては素早い。子供だとしたら、こんな朝早くにというのは少々不可思議で。
得体の知れない存在に、厭な予感が胸中を過ぎった。
そして恐らく、それは間違っていない]
─診療所・自室─
ふわ……。
[思いっきり、眠たげな声と共に目を覚ます]
うう……おかしな夢を見たのですよぉ……。
[ため息混じりに呟いて、ベッドから起き出した。
小さく欠伸を漏らしつつ、身支度開始。
しばらくお待ちください]
[丁寧に髪を編み、いつものように黒を基調とした装いを整える]
……さすがに、御師匠様も戻られてませんねぇ。
[帰ってきていたらそれこそ何者なのか、と突っ込む者はなく。
ともあれ自分と、鳥の分の食事を用意して済ませ、庭へと出る]
ブルーメ、何か、変わった事はありましたかぁ?
[玄関横で、普通の箒のふりをしている箒に小声で話しかけ。
返るのは、やはり、違和感を感じる、との返事。
むぅ、と言いつつ眉を寄せ、しばしその場に立ち尽くす]
……とりあえず、一巡りしてみましょうかぁ。
御師匠様の代わりに、往診もしないとならないですし。
[小さな声で呟くと、箒を軽く撫で、白い鳥と共に門を潜る]
あ、でも。
先に、色々と確かめた方がいいのかしらぁ?
[門を潜った所で立ち止まり、困ったように首傾げ。
とりあえず、村の中央にある広場へと足を向けた]
[先の茂みを過ぎると、音の原因と思われるものは見当たらなかったが、代わりのように、少し開けた場所に円を描いて生える茸があった。
ほんの数日前にはなかったはずのそれの正体を、青年は知っている。
宴の跡との説の根強い、妖精の作った環。
枯れた茸の作る円の内部は、秋になったというのに、外部よりも青さを増した草が茂っている。
妖精の祭りの後と考えれば、それらはなんら、不思議に思うこともないのだが]
─広場─
[行き交う人たちと挨拶を交わしつつ、やって来た広場。
祭りの名残は既になく、あるのはいつもの……よりは、どこか不安げなざわめきで]
おはようございまぁす。
[そんな中でも常と変わらぬ暢気な口調で立ち話をしている主婦たちに声をかけ。
けが人や病人の話はないかとか、その他色々情報収集開始]
[時間をかけて、色々と話を聞いたものの、今自分が聞きたい手合いの話は聞けず。まぁ、病人やけが人がいる、という話がなかったのは幸いだが。
それらが一段落した所で、またも始まるのは、一人で大丈夫なのかコール]
……本当に、大丈夫ですってばぁ……。
ボクだって、子供じゃないんですよぉ?
[そう言ってむくれる様子が子供っぽい、という自覚はないようです]
―店―
[早朝。
短い仮眠から目を覚ました。
簡単な食事を済ませて、他に作業のあるらしい家人への挨拶もそこそこに、昨晩の作業の続きに取り掛かる。
丸から輪の形へと変貌を遂げた薄青の石は、渡された時よりも光沢を増していく。
完成するまではそう遠くないだろう。
真剣にただ作業を続ける姿は、昨日見たものなど忘れたかのよう*]
んん……それにしても。
[主婦軍団のお喋りからどうにか離脱し、広場の隅で軽く腕組み]
この違和感は、他の方は感じていないのかしらぁ……?
確かに、そんなに強いものではないけれど……。
[ぶつぶつと呟き、紅の瞳を空へと向ける]
んんん、朝だね。
エーリ君、朝ごはん食べたかな。
昨日のシチューはおばちゃんには好評だったけど。
[伸びをして、活動開始。]
そういえば、昨日……あれって、なんだったんだろう。
へんな子っていうより、変な……妖精なのかな。
わかんなかったけど。
[窓の外を見るけれど、そこにその影はない。]
ま、いっか。
ちゃんと食べてから、今日の食材を確保しないと。
―朝/マッキンリー家の食堂―
ん、分かってるってば。
今日はちゃんと暗くなる前に家に帰るし、手伝いだってするよ。
[バターをたっぷり乗せたパンを口に詰め込みながらうんうんと頷く。
日の落ちた後に帰宅して、たっぷりとしかられたのは昨日のこと。]
べ、勉強もね。分かった。
[デザートのプディングを飲み込むと、延々と続きそうな母の言葉を遮るように立ち上がる。]
じゃ、取りあえず行って来ます!
これ、ウェーバーさんちに届ければ良いんだよね?
[食卓の脇に置かれた卵の籠を手に取ると、逃げ出すように家を出た。]
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