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─広場・噴水傍─
[手巻きタバコを一本、吸いきるまでそこで休息を取る]
[頭の疲れと身体のだるさ]
[休息によりそれらはだいぶ楽になってきた]
…そろそろ行くか。
ったく、制約やら疲労やら、代償がでかいもん寄越しやがってあの婆。
[短くなった手巻きタバコを弾き燃やし尽くしながら舌打ちをした]
[尤も、その代償の分の能力を有しているのもまた事実である]
[新たな手巻きタバコを作って咥え、火を灯し]
[徐に立ち上がると両手をジーンズのポケットへと捻じ込み]
[ゆっくりとした足取りで広場を出て行く]
[向かう先は、自衛団詰所]
─ →自衛団詰所─
[一応二度のノックの後に詰所の扉を開け]
[中に居た団員に隻眸を投げる]
……団長は居るか?
[ぴり、とした空気にいつもの挨拶もせず本題を切り出した]
[返ってきたのは否定]
[ある時を境に誰も見ていない、と]
……嫌な予感ほど的中すると言うが。
なぁ、誰か目撃者とか居ねぇのか?
[動揺の走る詰所の中]
[一人冷静に情報を集めようと]
[詰所に居る団員に*訊ねかけて行く*]
―どこかの屋根の上―
[落ち着かない風の感触。
それが掻き立てる不安は、じっとしている事を良しとせず]
……爺様んとこ、行ってみるか。
何か起きてるなら、あそこに流れてるはず。
[口にした当人に異変が起きているとも知らず。
花弁舞い散る風の中、最短ルートで詰所へと走り出した]
― →自衛団詰所―
[屋根の上を身軽に駆け、目的地の屋根もわずかに踏んづけてから、路上へ飛び降りる。
一歩遅れて、ついて来た隼が肩に舞い降りた。
どこか慌ただしい雰囲気の詰所、その扉を開いて]
爺様、いるかっ!?
[開口一番、問いを投げかける。
返されるのは、否定。
逆に、団長を見かけなかったか、と問われ、困惑する]
え? 見かけなかったか、って、見かけてたらここに会いに来るかよ!
……なんか、あったの?
[問いに答え、更に問いを重ねる。
答えとしてなされた説明に。
蒼に浮かぶは、*不安と困惑*]
─自衛団詰所─
[居る団員から粗方の話を聞き]
[少し整理すると言って椅子を一つ借り腰を下ろす]
(…俺が最後に視たオッサンの記憶はなんだった?)
(視たのは事件絡みのものだけ)
(オッサンが誰かに聞き回ってる記憶──)
[術で垣間見た記憶を思い出す]
[そう言えば、最後に視たのは単なる見回りの記憶ではなかったか──?]
[思い当った違和に再度頭の中の記憶を整理する]
[見回りの最中、驚きの声と表情]
[その直後にぶつりと記憶は途絶える]
[垣間見えたそれに、まさか、と小さく呟いた]
……浚われた可能性は高い、か。
[もう一人、詰所へと駆け込んで来る人物の応対をしている団員の中]
[その呟きは周囲にも聞こえただろうか]
[呟きの後、団員の説明を受けている青年へと視線を向ける]
(このタイミングでオッサンが浚われる理由)
(嗅ぎまわるのを邪魔に思われたか、何かを目撃したか)
(どちらにせよ、俺に矛先が向くのも時間の問題かも知れん)
[裏の人間を始め]
[いくつか会話を交わした者には己が事件を調べていると言うのが知れている]
[その中に犯人が居るのなら、いつ手が伸びてきてもおかしくはない]
[そんなことを考えながら、隻眸は青年を見つめ続け]
[今までの彼の言動を思い返す]
[記憶の限りの言動で、不審な部分は無かったかどうかを見極めるように]
―???→―
[少女はベランダや屋根を直走り、自宅へと戻る。
首から提げた財布はぴたりとした服の中、揺れ音を鳴らすことも無い。
小柄な少女は誰にも見つかる事無くことを終えて。
養父の帰らない自宅、自分の屋根裏部屋へと戻った。]
[自警団長が姿を消したのは、仲間とのパトロールが終わって詰所へ戻る途中。
仲間からは、パトロール最中の健在と、報告に戻る筈が未だである事が聞けるだろう。
彼が何処に消えたのか、彼がパトロールの路を外れて何処に向かったのか。
残念ながら目撃者はまったく居ないし証拠も綺麗に消えているのだ。
まるで魔法でも使ったかのように。]
[彼女は、養父が戻らぬ家の屋根裏部屋。
キラキラと光る硝子細工の沢山並んだ部屋で
大分長い時間、ひとりで 過ごしたのだった*]
―広場・露店―
[良音とは言い難い鈴の音]
[止まる足は好奇からのものが多いだろう]
そろそろ片付けようか。
[声を掛けた頃も広場は未だ賑やか]
[ただ祭りの時期にしては少し人の減りが早かったかもしれない]
[一番新しい噂までは届いていなくても]
ここから宿までなら大丈夫かな。
用事が出来たから先に戻っていてくれるかい。
[朝と同じだけの荷物を持って]
[向かったのは一軒の工房を兼ねた家]
はい、随分とご無沙汰しました。
[突然の来訪に驚いている女性に謝る]
忙しい時期だとは分かっていますが、こちらも祭りが終わって離れる前に欲しいものがありまして。俺は楽器のことは門外漢だから信頼できる人に頼みたかったんです。
お願いできませんか、モニカ。
[宿に戻る頃にはすっかり暗くなってしまう*かもしれない*]
……視るまでもねぇな。
余程の演技者じゃねぇ限りは。
[ふ、と短く紫煙混じりの息を吐いた]
[先日の自衛団長とのやり取り][去り際に聞こえた言葉]
[青年が犯人ならば、あのような言葉は出て来ないことだろう]
[今のところ青年を疑う必要はない]
[しばらく探し回っても見つからないのであればあるいは、と言う判断を下した]
…おい小僧、良く聞け。
自衛団長は失踪事件の犯人に浚われた可能性が高い。
俺が団長から聞いた話を教えてやる。
[相手の反応もお構いなしに自衛団長から聞いた情報を青年へと伝える]
[犯人の人数、街の有力者が関わっている可能性]
[それを己に伝えた後に姿を消したこと]
[途中から詰所へと戻ってきた団員から、パトロールの間は一緒に居たことも伝えられるだろうか]
…一人になった隙を狙われたか、もしくは誘き出されたか。
どちらにせよ、団長の存在が疎ましくなった線が濃いな。
さて小僧。
団長まで掻っ攫った犯人探し……やるか?
やるなら、手ぇ貸してやらんでもねぇぜ。
[隻眸を青年へと向け、そう申し出る]
[青年の感情を利用し、あわよくば矛先のスケープゴートにしようとしている部分は*あるかもしれない*]
―孤児院―
[教会での食事の時間の後。
土産を手にはしゃぐ子供たちを孤児院へと送り届ける。
応対に出て来た職員に、彼は他に聞こえないくらいの声で問い掛けた]
それで、この間の件ですが。
そうですか。
彼らの仕業ではなさそうですね。
…とすれば。
[万華鏡のようなものは見つからなかったし、子供たちが何かを隠している様子もなかった。
子供の扱いに長けている筈の職員の返答に、彼は考え込むように俯く。
そうして暫く後、頭を下げて教会へと戻って行った。
自警団長の失踪の話は、未だここまでは*届かない*]
─自衛団詰め所─
[団員から受ける説明。
戻るはずが戻っていない、という言葉は、容易に一年前を思い出させ、内心の不安を煽る。
そこに聞こえた、声。
それで彼がそこにいると気づいた事もあるが。
向けられた言葉は、意外なもので、やや戸惑った]
爺様が……攫われた?
聞いた話、って……。
[語られる、団長が掴んでいたという情報。その内容に、眉が寄った]
……そりゃ、そんだけ掴めば、邪魔にもなるよな……。
[ぽつり、呟き。
その後の申し出には、蒼の瞳を瞬いた]
……犯人捜し、やるよ。
俺は、最初からそのつもり。
[『護れなかった』と、気づいた時から、それはずっと秘めていたこと]
あんたが、何のつもりで俺にそう言ってるのかは、わかんないけど。
俺には、走り回る以外に捜す方法はないから……手は、借りたい。
[ここで、一度言葉を切って。
一つ、息を吐く]
なんにもしないで、諦めるのは……もう、やだ、から。
『護れなかった』事を後悔だけするのも、もう、やだ、から。
[続いた言葉に込められた意は、他者には届かずとも。
それは、自分の中では何より大事な決意の表れ]
―早朝―
[バタン!と派手な音を立てて、少女は自宅を飛び出した。
そのまま、翠のマフラーをはためかせて走る。
知り合いは目を丸くして、彼女を見るかもしれない。]
…――爺っちゃん、居るッ?!
[少女が駈けこんだのは、自警団の詰め所。
顔馴染みが、驚いて少女を見た。]
…え、此処にも戻ってないのか?!
[少女は翠の眼を目いっぱいに開き、聞いた言葉を繰り返した。]
起きてもいねーから、驚いてさ…
帰ってねぇって、なんで…っ?!
[青ざめた顔で、カタカタと小さく震える。
団員のおじさんの腕をぎゅ、と掴んでふるふると頭を振った。]
[パトロールに行って、戻って居ない。
一緒に行った仲間は、戻って居る。
別れてからの目撃者は、居ない。
それだけ聞くと、少女は弾かれたように顔を上げ、
詰め所を飛び出した。]
俺、目撃者捜してくるよ!
聞いてねぇ人だっているだろ?
[帽子を目深に被り、走り出す。
その表情は、口元まで引き上げたマフラーとそれに隠されて、団員からは、見えない。]
―翌日:大通り―
[家を出たのは朝早い。
相変わらず洒落っけのない格好。やけに瞼が重そうにしている]
……、眠。
[欠伸を噛み殺す。
僅かに滲んだ涙を拭い取った。
祭り前の街は今日も朝から賑やかではあるが、街の人間はあまり出歩いていないと気づくのは、昔から住んでいるからこそだった]
―大通り―
[すたたた、と、両手を下げて少女は走る。
路の端を走っていると、蒼い髪を見かけ。
キキ、と音がするほど踵でブレーキをかけ止まった。]
あ、おはよう!
[眠そうにする女性に、手を振って駈け寄る。
その表情に笑みは、浮かばない。]
―大通り―
[翌朝。
朝の祈りや朝食を終え、彼は教会を後にする。
少女の自宅へと向かう細い路地の手前で一度立ち止まり、少し悩んでから、そちらには曲がらずに自衛団詰め所のほうへと足を向けた。
街のあちらこちらで囁かれるようになった噂話を、彼は未だ耳にしていない]
あら、カヤちゃん。
[欠伸を抑えるために持ち上げかけた手が止まる。
覇気の欠ける少女に緩やかに首を傾げた]
……何かあった?
[零れる疑問は、自衛団長の失踪を知らぬことを示す]
爺っちゃんが、いないんだ。
[エルザに、縋るように手を伸ばす。
ふるふると頭を振る顔は必死に見えるだろうか?]
昨日、帰って来なくて。
詰め所で聞いたら、昨日パトロールから戻ってねぇって。
─自衛団詰め所/前日─
[宣言に、返された言葉は如何様か。
何れにせよ、蒼に宿るは揺らがぬ決意。
若さ故の先走りも感じさせるそれは、見る者に何事か思わせるやも知れぬけれど]
……とりあえず、俺、一度戻るよ。
何かあったら、風に乗せて『呼んで』。
なるべく聞き取れるように、今の内はおっさんに波長合わせとく。
[軽い口調で告げた言葉は、当人以外には今ひとつ不可解なもの。
理由を問われたなら、後で教える、と受け流して練習所へ]
[練習所に戻るなり、向けられたのは先の事への謝罪。
一瞬、きょとりとするものの]
……ああ。
俺も、悪かった。
[こちらも短い謝罪を返して。
その後は特に騒ぎもなく、練習を終え。
宿に情報集めに行きたくもあったが、あちこちから色々といわれているためか、その日は大人しく帰途についた。
それでも、やはりと言うか。
詰め所で聞いた事、知った事を周囲に話すのは躊躇われ。
食事が済むと、早々と自室に引っ込んでしまったのだけれど]
[部屋に引っ込んだ後、色々と考えすぎていたせいか中々寝付かれず。
朝、目覚めた時には、家に人の気配はなかった]
あー……もう、出たのか、な?
俺も、行かないと……。
[行く先は、練習所……とは、言い切れないのだが。
ともあれ、食事を済ませると、いつものよに飛来した隼とともに、大通りへ]
─ →大通り─
[翠眼が、ゆっくりと見開かれる]
――自衛団長さんが?
[伸ばされた手をしっかと取る。
眉間に皺を刻み、優しく引き寄せた]
昨日から、……そうなの。
お仕事で忙しい、というわけじゃないのね?
[柔らかな声音。
空いた片手が少女の背に回る]
[話し声を耳にし、顔を上げた。
そこに蒼い髪の楽師と、探していた少女の姿を見留める]
ああ、丁度よかっ…
[楽師のほうにも人形師とのことを伝えておくべきだろう。
それぞれに用件のある2人に対して上げかけた声は、だが耳に届いた必死な声に止まった]
…団長?
[楽師の視線がこちらを見たのを彼も見て、頭を下げた。
足を進め、2人との距離を縮める]
何かあったのですか。
[いつになく険しい顔をして、彼は問う]
うん、だって忙しい時は忙しいって、黒板に書いてくれるから。
詰め所も、誘拐だとか、騒いでて、だからオレ、目撃者捜そうと思って、
[背に回された片手が、やけに暖かく感じて、
少女はう、と喉を詰まらせた。
柔らかな声音が優しくて、肩を少し震わせた。]
…何か、知らない?
[エルザの腕を掴んだ侭、顔を上げた。]
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