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[何が起きているんだろうか。
そんな事を考えている間に、部屋に入ってくる自警団員。
立てずにいるランディの手助けを頼み、言われるままにそこから離れようとする]
……え? あの子……が?
[パトラッシュが狼だ、という言葉が聞こえて]
まさか……。
[ぽつり、と呟く。それは何か、奇妙に噛みあわないような気がして]
[呆けている間にも自警団が数人こちらに向かってきて。「捕まえろ!」「逃がすな!」の言葉が飛び交う]
ちょ、ちょっと待ってよ!
パトラッシュを捕まえるとかどういうこと!?
彼は何もしてないじゃないか!!
[自警団の前に立ちはだかるようにして声を荒げる。自分より一回りも二回りも大きい男達に少し怯みそうになるも、その行く手を阻もうと]
「あの犬が狼だという情報を得た。邪魔をするな!」
[男の一人が乱暴に腕を振るい、ディーノを押し退けた]
ぅあっ!
[壁に叩きつけられたディーノを尻目に、男達は逃げるパトラッシュを追いかける]
…ま、待って……パト、ラッシュは、違う…!!
[痛みに声を途切れさせながらも、壁を支えに立ち上がり、その後を追いかけた]
[自警団員に部屋から連れ出され]
[軽く頬を叩かれる]
え、あ。
[周囲の騒ぎに目を瞬く]
[まだ少し呆然としていると]
[簡単に説明された]
え、わんこが狼?
どうして?
「あの犬は喋るんだと!」
[その言葉に]
[思い出すのは先日のこと]
あ…。
[ぽつりと呟けば]
[即座に腕を掴まれた]
「何か知っているのか!?」
え、うん。
確かに喋ったような気はしたけど。
[本当かという詰問に]
[おどおどしながら頷いた]
「間違いないな!」
[部屋から離れると不安げな黒猫を抱え上げ、しばし、階段近くの壁に身を預ける。
聞こえてくる騒動は、どんどん大きくなるような気がした]
あの子が狼……誰が、最初に言いだしたんだろ……?
[確かに、不思議なところのある犬だけれど。
それが、狼としての異様さとは、どうにも思えなかった]
[突き放すように腕を解かれ]
[その場に座り込む]
「間違いないぞ!確実に捕えろ!!」
[走り去る自警団員]
[どうすればいいのか分からず]
[ただそれを見送った]
[恐怖と疑心暗鬼に駆られた群衆ほど、始末に負えない物は無い。
話には尾ひれが付き、恐怖は妄信を呼び、群集は盲目的に突き進む。]
…なぁ、マスター?
ほんとにあのワンコ…狼だとおもう?
[せめて気持ちを落ち着けようと飲み物を頼むついでに、リディアが人狼だったと報告し、
そういえばマスターも餌をやっていたなと思い出して問うてみる。
返ってきた言葉は、リディアがあの犬に食べ物を与えているのを見たと。]
…じゃ、やっぱり?
[だとすると、あの犬と仲良しだったディーノも…?
占い師が二人もいるなんておかしい。そんな考えも脳裏をよぎっていく。]
[狭い廊下を駆け抜ける。
端に積まれた空き箱を幾つか引っ繰り返し、その後どうなったかなんて知らずにただ先へ。がしゃん、という音、「痛ってぇ!」「愚図愚図するな!」「くそったれがッ」罵声、怒声、それに振り返る余裕もまるでない。
やっとのことで廊下の終わりのドアを見つける。
飛びつき、タックルするも、それは開かなかった。
いいから開けよっ!!
前足でノブを乱暴に回し、引き開け、外へ。]
[ふる、と首を振る。
思考がまとまらないのは、やはり、熱のせいか。
動き回ったせいで、少し熱が上がったかもしれない]
……ほんと、困るなぁ……こんな状態……じゃ。
また……あの時と同じ……
何もできないまま……関係ないひとが……。
[死んで行くのを視るだけになるかもしれないのに、と。
呟きながらも、意思に反して身体の方は休息を要求していて。
*壁に寄りかかったまま、ふわり、意識を手放した*]
[冷たい空気に息をつく間もなく、真横から、ぶんっ、と太い棒が振り下ろされる。
ぎりぎりでかわしちらっと見遣ると、そこにも何人か武装した男たちがぎらぎらとした目でこちらを睨んでいた。
そうだよな、出口固めずに逃亡阻止なんてするわきゃねぇや。
自嘲気味の笑みを浮かべる。
数日前に行われた逃亡劇が、再開されたかのような錯覚。
振り下ろされたままの棒を咥えて、遠くへ放り投げた。
あっ、と男が声をあげるのも待たずに背を翻して逃げる。
その後ろから、ダンダンダンッ、と鋭い音が響いた。
足元から土煙があがる。銃だ。]
はぁ…はぁ……っ!
[壁伝いに追いかけるも、先程のことで足を捻ったのかその歩みは遅く。廊下の向こうではパトラッシュが既に逃げた後]
違う…パトラッシュは違う…!
[うわ言のように繰り返し、障害物に阻まれている最後尾の男性に縋り付く]
パトラッシュが狼だなんて何かの間違いだ!
誰がそんな情報を…!
[ディーノに掴まれた男は、ちっ、と舌打ちをしてその手を振り払いながら]
「旅人らしき女だよ。全身、顔まで布で覆ってるな」
[振り払われたことで床に倒れ込み。その状態で言葉を聞いた]
…旅人…シャロン…?
[それを聞いて思い当たるのは1人だけ。何故。どうして彼女はそんなことを──。男達がパトラッシュを追う中、足の痛みと混乱で立ち上がることも出来ず、ただその場に座り込んで]
…エリィ?
[大人しいと思って振り向くと、丁度彼女の体が傾ぐところで。
慌てて駆け寄って抱きとめる。]
…やっぱ、熱あるんじゃねぇか……。
[小さく溜息を付くと、ひょいと抱き上げて二階へと運ぶ。
今はとにかく、変わり果てた姿になった兄貴分のことにばかり思考が沈みそうで、せめてほかの事を考えて紛らせたかった。]
…軽ぃな。ちゃんとメシ喰ってんのかよ…。
[小さく呟いて彼女を寝台へ横たえ、傍らの床に座り込む。
目覚めるまで傍に居てやるつもりが、*気がつけば自分も夢の中へと。*]
[廊下の入り口で]
[座り込んでいれば]
[主人に手を差し出され]
あ、うん。
[一度酒場へと]
[そこで水を一杯貰って]
何がどうなってるのか。
わからないよ。
わんこが喋ったと思ったのは本当。
でもだからって。
[難しい顔をしている主人]
[憔悴した様子のランディ]
[その隣で俯いて座っていた]
[「相手は人狼だッ、容赦すんな!!」再びの土煙と共に後方からの叫び声。
それでようやく事態を飲み込んだ。
昼間の村人たちの態度が脳裏に現れて消える。
宿の裏手、少し広めの空き地を抜ける。
ぴゅん、がつっ、と銃弾によって跳ねた小石が頬を掠める。
目指すのは民家群。家々が作り出す路地。
そこまで行ければ、なんとか。逃げ切れるだろう。]
[やがて主人に促され]
[鍵を受け取った]
そうだね。
戻るのは危険だよね。
[小さく頷いて]
[おやすみなさいと]
[階段を*上がっていった*]
[廊下に居た男達は全てパトラッシュを追い外へ出る。へたり込んでしまったディーノは、それをただ見つめることしか出来ず、追いかけることは出来なかった]
…パトラッシュ…。
[彼は無事逃げ遂せただろうか。捕まっていないだろうか。そんな考えだけがぐるぐると頭の中を回る。しばらくそのまま座り込んでいたが、ふと意識を戻すと壁に掴まりどうにか立ち上がる。捻った足を引き摺りながら、ひょこひょこと酒場の中へと戻って行く]
[酒場に戻ると自警団の人間もほとんど居らず、他のものも大抵居なくなった後で。主人がこちらを渋い顔で見ている。居た堪れず2階へ向かおうとすると、足を引き摺っているのを見止めた主人が湿布を1枚投げ渡す]
…あ…ありがとう…。
[掠れた声で礼と共に頭を下げ。手に持ったまま2階の自室へと向かう。中へ入るとベッドへと腰掛けて。捻った足首に湿布を貼る。冷やりとした感触が風呂上りの火照った身体に丁度良かったが、そんな感慨を受ける余裕は無く。窓の外に視線を向けた]
………。
[頭に浮かぶのはパトラッシュのこと。無事を願って止まない。しばらくの間、じっと窓の外を眺めているが、そのうち疲れと睡魔に負けてベッドへと倒れ込む*だろう*]
[食堂の片隅で、頬杖をついていて、どんな風に収縮するのか見ていたが、程なくして騒ぎは収まった。
パトラッシュが捕まったのか、逃げ切ったのかは知らないが、それでも、充分な種はまいただろう]
・・・。
[更に少し、様子を見ていると、疲れ果てたディーノの姿が目に入った。
ディーノは、こちらのことなど目にも入らない様子で、マスターから何かを受け取ってゆっくりと2階へと上っていった]
―――貴方の言う通り、狂人が一人なら、貴方。
そして、他に潜んでいる人狼は、あの犬。
さて、答えは合っていたかしらね?うふふ。
[ふ、と不意に目が覚める。時間は昼。陽がまだ高く上がりきる前。身体を起こして部屋をゆるりと見回す。パトラッシュの姿は、無い]
………。
[パトラッシュの安否と何故どうしてと言う考えだけが頭を支配する。彼を助ける術は無いのか。そう考えて、ハッと気付く]
そうだ…僕が人狼を見つけ出せばきっと…!
[仕事道具の中から石の入ったジャグリングボールを取り出す。両手でそれを持ち集中しようとしたが、一度手を止め]
……可能性は低いけど…まずは…。
[苦い表情を浮かべながら、調べる対象をの顔を思い浮かべ、集中を*始めた*]
[茂みの中、息を殺して一晩中動かずにいた。
あの後、なんとか追っ手を撒いて辿り着いたのは鉱山付近。
村入り口の修復作業にほぼ全員の鉱夫が大わらわになっている現状、ここは敵のテリトリー内でありながら一番見つかりにくい穴場だった。
とはいっても、崖の工事に参加せずに自分を探して動いている自警団もどきの鉱夫たちは、矢張り通りがかるわけで。
誰かの足音が近くで聞こえる度に全身を硬くさせながら、気がつけば日が昇っていた。
走り回る自警団が叫ぶ、連絡事項の断片を聞いて判ったのは。
自分が喋れるということが何故かバレていること。それを発端として、人狼容疑をかけられていること。
バラしたのは誰だ?
考えるまでもなく。心当たりは、昨夜の冷たい目の持ち主しかいなかった。あの時はディーノに危険が迫っているかと思っていたが、……実際、ターゲットにされたのは自分だったらしい。]
〔自警団員の力を借りて立ち上がる。何とか酒場の定位置へ辿着くが、呆然とする場所が変っただけだった…〕
〔酒場にいる人間がランディだけになった時、冷たい水と鍵が目の前に置かれる〕
〔閉店の合図だ〕
〔それを一気に飲み干すと、ふらふらと立ち上がる〕
…仕事、あるから、家、帰る、わ…。
〔やっとの事でそれだけを言うと、宿を後にした〕
[しかし、昨日は必死で逃げていたから、そんなことを考える暇も無かったけれど。
…ディーノはどうしているだろう。
置いてきてしまった。人狼という敵が残る場所に。独りで。
――何なんだよ。
ぎり、と歯噛みする。
これじゃこの間と同じじゃねぇか。]
―自宅 朝―
〔殆ど眠る事が出来無いままの身体を引き摺る様にして工房へと移動する〕
〔工具を手に取り、木材を杭に加工する作業に没頭した〕
〔全ての木材が杭になった時、タイミング良く見回りの自警団員が工房を訪れる〕
…ちょうど良い。こいつら持ってってくれ。
…大型犬?…ああ、パトラッシュの事か。いや?家には来てない。
…は?奴が、人狼?
人の姿をした狼だから人狼っちゅうんだろ?
奴が人狼なら、あっという間に駆逐されそうなんだが…。
〔作業に没頭したお陰で、思考はすっかりクリアになっていた〕
〔パトラッシュが人狼と言い張る自警団員に訝しげな表情を寄越す。そんな表情を向けられた団員が、思い出したように付け加える〕
…リディアが、人狼?
それは誰が…。レッグが?
霊能者って奴まで現れたのか…。
―宿屋・朝―
[目を覚ます]
[眠りはどこまでも浅かった]
[目を擦りながら階下に降りる]
ん、おはよう。
そっか、まだ見つかってないんだ。
どうなっちゃうんだろうね。
[主人は頭を振る]
[疑惑があるのなら]
[取るべき手段は一つだと]
……。
店に、戻るね。
[沈黙]
[短く言って店に戻った]
―雑貨屋・昼―
[鉱夫たちが来る]
[湿布を作り、渡し]
[それを繰り返す]
何?
ああ、その話。
絶対だなんて言ってない。
一緒に居たディーノは何も言わなかったし。
「どうしたの?」って聞かれたくらいだよ。
[それを聞かれたのかと問われ]
[素直に頷く]
[聞いた男は何かを考え込んだ]
はい、これで足りるかな。
今日はずっと作ってるからさ。
必要になったら取りに来てよ。
[男は顔を上げて]
[分かったと答え]
[出て行った]
なんだろ、今の。
何が引っかかって…。
[そこで言葉が止まる]
…ディーノは知っていた?
知っていたのに誤魔化した…?
[薬を掬う手も止まった]
いや、だって。
それじゃディーノは。
でも人狼かどうか分かるって。
…シャロンも言ってるんだっけ。
[また一人客が来る]
[どうしたと問われて]
いやその。
占い師の真実ってどうすれば分かるのかな。
…ごめん、何でもない。
すぐ作る。
[首を振って]
[作業を再開する]
[頭の中は渦巻いたままに]
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