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濡らしたのは失敗だったな。
この状況で借りるというのも微妙だし。
[血と水を吸った上着を脱いだ。
シャツも当然染みてはいたが、びしょ濡れというほどではなかったから我慢することにする。
踏み入る前に置き去りにした鞄を回収しに脱衣場へと戻る。
亜佐美たちはもう移動してしまっただろうか。まずは探して報告するように]
涼さん、少しは落ち着いたかな。
蒼さんも、顔色悪いな。
気は休まらないだろうけど休んでいて下さい。
[奏もいればその様子も見て同じように声をかける。
本人の顔は少し赤かったかもしれない。
感情を押さえ込もうとすることで余計な力が入っていた]
俺は最初の部屋にいってきます。
[一緒に来るという話になれば拒絶はしないだろう。
そうでなければまた戻ると言ってそこを出て行った]
―ベット部屋―
[武器になる物は決まっていた。
30センチはある裁ちばさみ。
どうせ使うなら良いものをと、丈夫で刃先が鋭い、良い物を買い与えてくれていたそれ。買い与えたのは父親だったか。もうよく覚えていないし、どうでもよかった。
他にもいくつか選んで鞄に入れ軽くするために、中のものを一旦すべて出した。]
………ぁ。
[パンやペットボトル、バイト先からくすねたティーパック。
裁縫道具の入った箱、布。ノート、筆記用具。製図。
それらと共に転がり落ちた、一旦開かれた包み。
渡された時の生きた笑顔が、一瞬鮮やかに蘇る。
おもむろに中を開け、一気に全部口に入れて食べた。]
っつ!げほ!げほっ!!
[どれだけアタリが入っていたのか。
盛大に咽て、それでも吐き出すのは耐え。水で一気に流し込むと、また咽た。]
―― 回想 資材置き場 ――
[全てを拒絶するかのように、ぎゅっと身を抱きしめる七重姉に、
ぼくはそっと触れようとした手を軽く握り締め。
代わりに隣へと座った。
問いには辛うじて反応できる程度。
でも僕の言葉をも拒絶されるだろうかと思っていただけに、
今の、その反応だけで僕は少し安堵する。]
―回想―
[涼が少し落ち着いたのを見計らうと、少しだけその場を離れる。奏も居れば、その場を任せて。涼たちには、瑠衣の服を取りに行くとでも告げただろう。
シャワー室に戻る。未だ惨劇の痕は残るが、それでも水に流れて薄れてはいた。瑠衣のものらしき荷物を取りまとめると、携帯電話を取り出した。
一瞬、ためらうが。ぱたりと画面を開く。新たなメールが届いていた。中を読めば、ただ悲しげに目を瞑る]
[さて、これから如何しよう。画面を見つめながら考える。
誰か、味方が欲しい。そして、内容を伝えたい。誰に伝えるか。それが問題で]
候補は、ryouさんか、Wen.さんかな…
ryouさんは…あの状態ならば、彼女がときさんを殺したとも思えないし…Wen.さんはずっとあたしと一緒にいたし。それに…
[村での楽しい思い出が、頭をよぎる。そのことは、紛れもない事実で。ぶんぶんと頭を振って、余計な考えを追い出した]
ナタリーさんはやめた方がいいかもしれない…犯人側かもしれないし…そうでなかったら酷でしょうから…
[殺した相手が無実の人である。彼女には、その結果は告げたくはなかった。]
[再び、画面を見つめる。何かを決意するかのように。
程なくして涼の元に戻る。暫くすれば、*聖がやってくるだろう*]
―― 回想 資材置き場 ――
[アートさんは一度席を外し、
戻ってきては手にした白いシーツを手際よく広げ、
中務を包み込む。
布を扱うことに慣れたような手さばきは、
あっという間に僕たちの視界から中務を消し去ってしまうけれど。
零れ落ちていく命のかけらが、滲むように白を赤く染めていった。]
うん、判った。じゃぁお願い…
それと、――ごめん、ね?
[ひょいと中務を担ぎ、短く行き先を告げる彼に、
僕は一つ頷いて返事として。
短く告げた謝罪は、
中務を運ぶアートさんへの手伝いをも出来ないことに対してと、
今はまだ、眠る中務におやすみも告げられないことと、
そして七重姉に対しても掛ける言葉が見つからないことなどの、
色々と入り混じった思い。]
―― 回想 資材置き場 ――
[アートさんの後姿を振り返り見送ると、人影。
話したことも殆どなければ、印象も薄いおんなのこ。
アートさんから状況の説明を求められたなら、
僕は短く簡潔に、でも七重姉のことについては、極力触れずに伝えた。
呆然と立ち尽くすように見えた彼女が一体、
どれ位僕の言葉を聴いているかは、怪しいところだけれども。]
―― 回想 資材置き場 ――
[ぽつぽつと、それでも恐怖からか、
震えながら語る七重姉の言葉を、僕は繰り返しながら
相槌を打ち、話に聞き入る。
責めることはなく、ただ、相手の言い分だけを口にして、
尋ね返すように。]
ねぇ、七重姉…
[どれくらい其処にいただろう?
紡がれる言葉に、終わりが見え始めた頃。
僕は前触れもなく、七重姉を静かに呼んで]
歩けるなら、ここから、移動しよう?
[少し前に命が奪われた場所とはいえ、
閉じ込められていることと、
綾野さんを殺した犯人がまだうろついている事は変わらない。
あまり同じ場所にずっと居続けるのもどうかと思い、
僕は移動を促した。]
PCのある部屋へ、行こうか。
七重姉、立てる? ゆっくりでいいから、ね?
[それから僕らは薄暗い道をなぞるように歩き始めた。
少しでも中務から気を逸らそうと、他愛のない話を振るけれど。
七重姉はただ震えるばかりで。
僕はしがみついてくるその手の力を総て受けとめ、
ぽんぽんと、やさしく二度、肩を叩いた。]
―― PCのある部屋 ――
[七重姉は入り口から遠い、刺激の少ない場所へと座らせた。
明かりはぼんやりと灯っている。
それとは別に、PCのディスプレイの煌々とした光が、
今は不気味に思える。]
ひと、いないね。みんなどこに行ったんだろう?
[首をかしげるも、向こうには聖がいるだろうから、
大丈夫だろうと踏んで。
それは単におんなのこだけの移動は危ないからと思うけれど、
でも僕を抜かして残す男は聖とアートさん。
聖は無条件で信頼しているからとして、
一緒に行動を共にしていたアートさんも、
なんとなくだけれども犯人には思えなくて。]
……、
[急に考えることが怖くなって、僕は無理やし思考を遮断させた。]
―― PCのある部屋 ――
[やがて姿を見せた聖に、僕は少し疲れた笑みで手を振り]
お帰り、センセー。
ん? こっちの状況?
[小声で尋ねられたことに内心感謝しつつ、
僕は手短に状況を伝えた。
聖からはどれ程離れていた時の状況を聞けただろうか。
ふと煌々と不気味に照らすPCに彼が近づく。
僕も倣うように改めて画面を覗き込む。]
センセー、シスメが…
[其処には更新されたシステムメッセージが、
やはり嘲笑うかのように映し出されていた。]
―回想 シャワー室〜隣の部屋―
[奏に話かけられるも泣きじゃくる様子は変わらず。
玲の死を聞かされたが、今はそれについて何も考える余裕はなかった。
亜佐美が奏に説明する様子もただ聞くだけに]
うう……。
[しばらくして泣くのが落ち着くころに亜佐美が瑠衣の服を取りにいくからと出て行くのを静かに頷くだけに答える。
目の周りは赤かったかもしれない]
[亜佐美がいなくなって目元をぬぐい、
すぐにその誰かが亜佐美だとわかる。]
ありがと……蒼……。
[一度そちらを見てからそう呟いて、
ふらふらと立ち上がる。]
ire-naさん……死んじゃった……の……?
[亜佐美と奏に確認するようにそう尋ねかける]
―ベット部屋―
[シーツを一枚細く長く切り血を拭い、包帯代わりに両腕から手の平にかけて巻き、傷を覆う。
きつく何重か巻けば、外側に血が染み出る事は今の所無いようだった。
荷物の半分は隅に置いたが、鞄の形が崩れないよう、空のペットボトルと、空の裁縫箱を布に巻き適当につめた。
肩にかけると、前よりぐんと軽くなっていた。
長く息を吐いて、出来うる限り気を落ち着ける。]
…行くか。
[何時もの口調で呟いて。
部屋を出ようとして、一旦振り返る。]
………また、な。
[どうせすぐ会えるかもしれないしとは、思っても口にはしなかった。]
─PCのある部屋─
[部屋の片隅で身を固くする。
玲を手に掛けてしまった罪悪感、それを信じられないと思う自分。
何故そうなったのかをはっきりと覚えていないために、何故、どうして、と思考が巡る。
傍に居てくれた晴美が責めずに居てくれたのはとてもありがたかった。
もし責められて居たのなら、パニックを起こしていたことだろう]
…………。
[部屋に戻ってきて少し後、聖が部屋へと戻って来る。
気配に一瞬、おどおどとした視線を向けた後に、直ぐに視線は床へと向いた。
晴美と何か話していたようだが、ここまで声は届かない]
―― PCのある部屋 ――
[画面を眺めていた時間はどれ位だろう?
長いようにも思えるし、短いようにも思えた。
ふと視線を外し、七重姉を見る。
結果論だけで言えば、七重姉も立派な殺人者と、
人の目には映るだろう。
だけど僕は知り合いである中務の命を奪った七重姉を、
どうしても責めることは出来なかった。
知る深さは違えど認識有るもの同士が加害者となり、
被害者となったのにもかかわらず。]
……っ、
[行き場のない感情が、こみ上げてくる。
それはこんな状況に導いた犯人への怒りだろうか。
それとも悲しみたくても悲しめないもどかしさだろうか。]
ねぇ、センセー?
[僕は目許を擦って、聖に話しかける。
七重姉の前で泣くなんて失礼だと思うから。]
出来るだけみんなで生きて、此処から出ようね?
[それだけ告げて、力なく微笑んだ。]
―PC部屋―
[ゆっくりと中に入ると、中には数人がいた。
無言のまま、PC画面を覗き込む者らの近くに寄り、間から同じものを見る。]
………ふん。
水無瀬はやっぱり人狼に、かよ。
[そこにある、見慣れた文章に反吐が出そうになった。]
―PC部屋―
[暫く何かを考えるように押し黙っていたが。]
…駄目だ、ヤニ切れ。
Wen.氏、タバコくんない?
[もう気にする相手も居ない為、堂々とそう頼む。
痛む胸は、今は気にしないように抑える。
そして聖に少し近づき、小声で囁くようにして。]
それから…さっきの、水無瀬が殺された時の話で気になった所があんだけど。
こないだの所で話さないか?
[そう聖を、休憩所へと誘った。]
―― PCのある部屋 ――
そろそろ情報が欲しくても…、
トキちゃんみたいに殺されてしまったらあれだし、ね。
[ゲームの編成を思い出すとそれ以上は求められないから。
手探りで犯人を探すしかないのかな? やっぱり。
でも…、また七重姉みたいな人を出すのも嫌だし、
何かいい案がないかと考え倦ねていると、人の気配。
振り返るとアートさんの姿。
システムメッセージを見たらしく、
吐き出される言葉に棘が宿る。]
お帰りなさい。それと、ありがとう。
[七重姉に気を使って、あえて"誰を"や"何を"をつけずに、
お礼だけを告げた。意味は、通じただろうか。]
─PCのある部屋─
[ぎゅ、と膝を抱えた状態で腕を掴む手に力を込める]
ぃっ……。
[不意に鈍い痛みが左腕を走った。
軽く表情を歪める。
袖を捲るとそこにはいくつかの痣が出来ていた。
何をしたのだったか、と考え、思い出す記憶。
惨劇が蘇り、蒼白になった]
………っ。
[記憶を振り払うように首を横に振る。
一つに結わえた髪が左右に揺れた。
部屋の扉が開く音がすると、びくりと身体を震わせる。
入って来た裕樹に怯える瞳を向け、直ぐに膝に顔を埋めた]
[晴美に声をかけられると、やや青いままの顔を向け。
おそらく玲の事だろう礼に「いい、気にするな」と告げる代わりに首を振った。
少し離れた場所にいた七重には、責める感情もない、無機な視線を少し投げただけだった。]
―PC部屋―
ああ、いいよ。
火は持ってるのか?
[箱だけはすぐにも渡そうとして。
小声での誘いには少し悩む。
この時点で二人になるのは危険が少なくない]
……分かった。
京、俺も気分入れ換えて来る。
[結局そう答えることになった]
もう、大丈夫だから…
[そこにはお嬢様の仮面をかぶったいつもの姿はなく、
ふらふらとそのまま隣の部屋からでていく]
遠くにはいかないから……少しだけ一人にさせて…。
[暗い口調でそうとだけつげて一人で廊下にでていく]
―― PCのある部屋 ――
[僕は聖の言葉に再びにっこりしながら頷いて、
髪を乱す指に心地よさそうに目を細めた。
『やっぱりどんなことがあっても、センセーは信じたい。
七重姉も』。
胸に湧き上がる決意を再確認し、
隠れた場所で僕は手を握り締めた。]
[アートさんが聖に小声で何か話しかけている。
だからと言って聞き耳を立てるのは趣味じゃない。
手がかりを探しに、弔いをしに部屋を出ようかと考えるけど、
誰か入ってくる度に脅える七重姉を、
そのまま放っておくことも出来ず。
かつ、あの場所に居なかった人たちに、憶測によって、
七重姉を傷つけられるかとも思うと、なかなか動けない。]
それに…もし僕が犯人だったとして。
七重姉の行動を耳にしたならば。
罪を擦り付けるのにはちょうど良い存在だって、
思えるんじゃ…ないか、な?
[あくまで憶測でしかないことだけれども。
有り得ないわけじゃない。
思う考えが自然と小さな独り言となって、表に飛び出す。
根本的な加害者は、混乱の最中でも冷静さを失わない。
加えておんなのひとが多い。
誰かの一言が引鉄になって。中務の二の舞にもなりかねない。]
―PC部屋―
悪いな。
[助かると、告げる言葉や調子に瑠衣が死ぬ前と変化はない。
ただ変化が無い事が少しおかししと、聖は気づくだろうか。
聖と共に行こうとし部屋を出て、少し進んだ所で足を止めた。]
っと。
水一本取ってくるわ。すぐ戻る。
[そう言い、一人だけ一旦部屋に戻り。
入り口付近に置かれた水入りのペットボトルを一本取り、鞄に入れながら足早に晴美へと近づいた。]
[廊下を少しいったところであたりにだれもいないことを確認する。
倉庫からくすねていた黒いマジックを取り出し少し迷った後に、
壁に書いてあった文字を思い出しながら]
『 Sapphire は 人狼 』
[壁に書いてある字を真似て書いた。
マジックを懐に大事にしまい少したってから。
先ほどいた部屋に戻る、奏と亜佐美のいる部屋に、
俯いたままに]
ねぇ…、どういうこと…蒼………
蒼…狼なの……?
[唐突にかけた言葉に亜佐美の反応はどうだっただろうか?]
―― PCの部屋 ――
[二言三言言葉を交わした聖とアートさんは、
この部屋から出て行くらしい。
短く告げられた不在に、ぼくは二人ならと思いつつも、
心細い気持ちは隠しきれずに]
うん、わかった。ふたりとも、気をつけて。
僕は七重姉が心配だから、ここに居る。
["殺される"心配と、"自ら命を絶つ"心配。
多分後者は有り得ないと思うけれど。
過剰なほど僕も、彼女に対しては神経を張り詰めている。]
悪いけど、預かっといてくれ。
[渡したのは、自分のスタンダード型の携帯。
短く告げると、そのまま何も言わずに再び外に出た。
ボタンを押さなければ暗いままの画面。
だが少しでも何か押し、明かりが灯れば、そこには
『お嬢様 涼 は 人間 のようだ。』
そう書かれたメールが照らされるだろう。]
―― PCのある部屋 ――
え? うん、いいけど…。
でもこれって…って行っちゃった。
普通、大事なものじゃないの? これ。
[手渡されたのは、ごく普通の携帯電話。
確かに電波の届かない場所では不要なものに近しいけれど、
それにしては…]
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