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─二階・フォルカーの部屋─
長の子……そうだね、次期村長、だもんね。
[それを口にした時の表情は、どこか寂しげなもの。離れて行ってしまうような、そんな感じがした]
ボクの、”絶対”…。
ありがとう、フォル。
そう思ってもらえるだけで、嬉しいよ。
[そう言って微笑む。握り返してくれる手が温かい。見つめてくれる意思の光を宿した瞳が愛おしい。けれど、見つめ返す縹色には僅かに悲しみが見え隠れした]
あ、クッキーなら少し持って来たけど……。
[変えられた話題に机に置いたトレイに視線を向けた。小皿に盛りつけたクッキーを持って来て、それを摘みながら再び紅茶を傾けたりした。足りないようならパンか何かを持って来て、それを食してからそれぞれ休息を取ることに。イレーネはティーセットを乗せたトレイを手に、隣の自室へと戻って*行った*]
[崖下を覗くとそこはテーブル状に張り出していて、その上に横たわるローザはもう動かない。
ローザを中心に朱が広がり彩られている]
死んだだろうな…さすがに…。
[罪悪感も何もなく、その場を*後にした*]
―朝・自室→台所―
[自然と目が覚める。静かな朝だった。
昨晩抱いた期待は、不安と共に裡に残ったまま。
髪をくしゃりと手櫛で整えながら階下へと向かう。
足は広間ではなくその向こうの台所へ]
おろ?ローザ?
[そこにいるかと思った人はいなくて、調子の外れた声がもれた。
足は台所の中を抜けて勝手口へ。
寒さにを震わせながら煙草に火を付けて当たりを見回す、が、人影はない]
……まさ、か?
[胸を過ぎる不安に顔をしかめた。
それをかき消すためにその場を歩いて探すことにした]
―勝手口から外―
[足跡が、ぽつぽつと集会所から西の渓谷へ向かっている。
昨晩は雪が降らなかったのか、それとも薄く積もって風で飛ばされたのか。
いずれにしても足跡に違和感を覚えて、それを辿った。
辿った足跡は渓谷の柵の際でぐちゃぐちゃに踏み荒らされている。
なにがあったんだ?と軽く柵から下を見下ろし―]
―っ!!
[絶句した。
柵の下、棚状に伸びた上に広がる朱色。
その真ん中には、見覚えのある、まさに自分が探していた人の、姿]
ロ、ローザ…、ローザ!!!!!
[名前を叫んだなら、そこから思考が真っ白になった。
ただ、彼女の胸刺さった短剣に―事故ではないことだけは理解していた]
―西側の渓谷―
俺が、俺が…。
[そばにいればよかった。もっと早く、受け入れていたならこんなことには―。
柵に手をかけて悔恨の念に潰されそうになる身体を支えた。
毎日人が殺されていく。今まではどこか他人事だったのかもしれない。
どうにもならない憤りも早く解決してしまえばなくなると、そう思っていた。
だが、護りたいと思っていた笑顔を奪われたとき、憤りは強い憎しみへと姿を変えた。
人狼さえ現れなかったら、不要な疑いをかけられたりしなければ…]
殺してやる。
[柵を強く握り締め、呟く声は低く、唸るようでもあり。
それからは何とかそこへ降りる方法はないかとそのあたりを探っているのだろう。
もう一人の犠牲者の存在は、まだ知る由も*なかった*]
―二階:個室―
[更けゆく夜は、少年にとっては安息の時ではない。
幼なじみに「お休み」と挨拶を言い別れた後にも、眠ることはなかった。さりとて周囲に意識を向けもしない。赤石を手に、願うのは唯一つだった]
……ん、
[朝が訪れて、少年は現に意識を呼び戻す。
ゆっくり拳を握ったり開いたりを繰り返してから、身支度を整え、廊下へと出た。
窓から外を見る。朝日が眩しい。
遠目ながら、まなこに映る色彩は、胸を騒がせるものだった]
―外―
[近づくにつれて色彩は鮮明になり、その場に佇む人物の姿も、地に転がるものの正体も知れた。隠されていても、誰かは容易に分かる。
作られたばかりの墓に目をやり、色の源に移した]
せんせい、が―――――
[声は、オトフリートへと視線を向けたことで、止まる。その目に宿る光を見たがゆえに]
……。
ごめんなさい。
僕は、……護、らなかった。
[少年の呟きは薄く積もった雪に吸い込まれる。
口にした途端に覚えた息苦しさを、唾液を嚥下してやり過ごす。
上着を脱ぐと、オトフリートに押し付けた。少年の背丈には大きいカーディガンは、多少なりとも彼の体温を守る助けになるだろう]
体、冷やすと、……叱られます。
でも、せんせいは、ここに。
[一方的に言って、踵を返す。
集会所の方角に戻り、己の見たことを報せようと、人を探す。
自衛団が巡回にやって来るのは、*もう少し先の事だろう*]
―自室―
[静かな音を発しながら一つ一つナイフが突き立てられる。
突き立てられているのは机の上の紙。縦線が数本と横線が二本入っただけの紙。
見たところで何かはわからぬだろうが、それは集会所の個々の部屋割り]
…ま、ここは確定だよな
[静かに、また一つナイフを突き立てる。
既に刺さっている場所は一つは奥の右側。一つは手前左側。
新たに突きたてたのは手前より一つ奥の左側。
それからゆるりと指をくるくると回し考えるように首をかしげつつ、あたりをつけるのは三箇所にナイフは自分の納まる地を探すように宙を動き、新たにナイフを刺した場所と向かいの場所に突き立てる]
双花は散り、お話は次の段階へ………ぁァッ
[いらついたようにザクリザクリを一つ二つ三つと更に突きたてていき。いくつかの突き立たずに済む場所を置いて、最後に自分の部屋の位置に突き立てて終わる]
[荒く息を吐き終えると、自嘲的な笑みを浮かべ、ナイフを抜き、紙を破り捨てて暖炉へとほうり捨てる]
…降りるか。
今日はオト兄の飯は食えないんだろうなぁ
[ダーヴがあれだけ痣のことをいったのだから既に誰がどうなったのかわかってしまう。
昨日食べておいてよかったと思いながら廊下に出て、響かぬ感覚に確かめることさえせず一階まで降りた]
ん?フォルカー早起きだな。ってかまた寒い格好して
[カーディガンをオトフリートに渡したなど知らぬ...はそんな感想を漏らしながら、フォルカーが見聞きしたことを耳にして]
そっか…ヘル姉が…ちょっと、いってくる
[雰囲気が変わったフォルカーを問うことはせずに、外へと向かった]
―外―
[真新しい足跡を辿るように向かえば、見たかろうが見たくなかろうが視界に勝手に入ってくる。
質素に作られたエルザの墓。お供え物は既に新しい雪に埋まったのか見えない。主を心配するように傍にいるユエ。
フォルカーのカーディガンを上に羽織っているオトフリート。
そして見たくなくて事実から逸らす様にしても目立って見えるヘルミーナの遺体]
……ヘル姉…
[生前と変わらぬように呼びかけながら静かに空を仰いだ。こんな空のように、ヘル姉に宿った花も蒼かったのだろうか]
─翌日/二階・自室─
[ティーセットのトレイが置かれたままの部屋。窓辺に立ち、外を眺める]
…ごめんなさい、ごめんなさい───。
[口を突いて出る謝罪。カーテンの端を両手で握り締める。泣きそうに表情を歪めるが、涙は出て来てくれない]
人が、親しい人が、どんどん死んで行く…。
───ボクは、何を憎めばいいの───?
[自分を、誰かを、この状況そのものを。表層へ現れた意識は嘆き、深層に隠れた意識は嘲笑う]
こんなことならいっそ───っつ…!
[言いかけた言葉は胸の痛みに遮られる。余計なことは考えるなと言わんばかりの痛み。考えるのを止めると、徐々に痛みは引いて行く]
[悲しさがあるかないかと聞かれればあるのだろう。
だが哀しむのは目の前の男がしてくれる。
だからただ静かに黙祷する。
なんていわれてるかといわれれば、耳は傾けたくはない気がするけれど]
ねぇ…オト兄…オト兄は
[こんなときだからこそ集会場に入れというべきか言わぬべきかわからない]
ヘル姉のこと好きだった?
[静かに呟くように問いかけた]
─二階・自室→一階・廊下─
[ふるりと首を振ってから、ティーセットを片付けようとトレイを手に部屋を出る。階段を下り、台所へ向かう廊下の途中でフォルカーに会った]
おはよ。
……ぇ、ミーネさん、が。
[挨拶もそこそこにヘルミーネのことを聞かされた。縹色が、揺れる。驚いた風な、そうじゃないよな様子は、フォルカーにどのように見られたか]
オトさんが見つけて……そう……。
[状況を伝える幼馴染の顔を見ていられなくて、視線が落ちた]
……これ、先に片付けて来るね。
[泣きたいのに、涙は出ない。泣く資格さえ無いのだと、そう思った。トレイをフォルカーに示し言葉を向けると、足早に台所へと向かった]
─台所─
[使ったカップとティーポットを、ぼうとしながら洗う。考えれば考えるほど追いつめられるような気がして、今の間は考えることを放棄する。のろのろとした動きで食器を洗い続けていた]
[返ってくる言葉は意外に冷静な言葉であるか。
別に無視されても咎めることはせず、オトフリートが集会場に入るまで*傍にいることだろう*]
―回想・広間―
いえ、僕のほうが後から来ましたし、
寒いのは一緒ですから。
[ほんの少し暖かさに痺れてきたような指先を見てから、エーリッヒに言った。
まさか怖がられているなんて思いもしない。
だって、覗いたのはダーヴィッドだから。
見たくてとか言い出した彼を、やっぱり睨み続けていた。
ヘルムートの反応はどうだったろうか。
とりあえず、少年は自分の感情に素直に従って、つめたーい目のままだったりした]
へんたい。
[も一つおまけに追加した言葉。
狙ったわけではない問いには素直に言葉が返りかけて]
――あ。
[まぁ当然だよなという顔をして、心配などしなかった]
―自室―
[その日は部屋に戻った後も眠れず、ベッドに横になったまま自分の手を見た。
ローザをナイフで刺した自分の右手を]
別に恨んでくれてもなんでも、構わないさ。
[呟く声、微かに胸が痛むようなそんな感じがする。
外が騒がしくなりはじめて]
見つかったか?隠しても無駄だろうな。
[ナイフは刺したままになっていたし、それが自分のものだとすぐにばれるだろう。
起き上がり、部屋を出た。
その足は、ローザを殺した崖のある場所の方へと]
―西側の渓谷―
[そこにはハインリヒの姿があり、自衛団員はまだ着てないようだった。
よぉと手を上げて挨拶、そちらには距離を置いて近寄り。
がけ下の様子を見る、昨晩とさほど変わりのない光景]
あれはさすがに、死んでる…か…。
[呟く声、どこか上の空に近い感じの印象あたえたかもしれない]
下の降り方探してるのか?
自衛団員に聞いてみたらどうだ?奴らの方が詳しいだろう。
[その様子にそう声を*かけた*]
―回想・広間→個室―
[温まり始めたのは遅かったから、体が温まるのも少し遅い。
部屋に戻っていく人を見送って、おやすみなさいと言葉を投げる。
ヘルムートには甲斐甲斐しく世話をやいたりしたかもしれなかった。
2階の部屋に戻る頃には、体も温まっている。
そのまま、本を取り出した。
何冊も、何冊も。
神の教えを説いた本の後ろのページを探す]
――あった。
[索引から見つけた言葉は、人狼。
ページを捲った先に書かれていたことを、しっかりと刻み付けた。
「神に背く者」「赦されざる者」「殺害する事」
同時に記載された聖なる者については、今は見なかった。
そして、他の本を探す。
死者の弔いを詳しく知る為に]
―外・エルザの墓近辺―
[その場に佇む時間の長さはどれほどだったか。
少年の声に、翠が緩く、動く]
……フォルくん……。
護……らなかった……?
[雪に消える呟き。
意を問う暇もなく、フォルカーは上着を押しつけて去って行く]
護る……。
[引っ掛かる、記憶の片隅。
自衛団長が死んだ日、台所で少年が呟いた言葉は]
……護り手……?
[呟きは風に溶ける]
[少年と入れ替わるようにやって来た青年。
投げかけられた問いに、口元が歪む。
どこか、皮肉っぽい、笑み]
……本人にも、言わなかった事を。
何で、君に言えますか。
[返した言葉は、如何様に伝わるか。
しかし、今はそれよりも。
確かめねばならない事がある]
それはそれとして……ユリくん。
エーリッヒさんの部屋……って。
どこでしたっけ?
[問いかけは何気ない、けれど。
翠に宿るのは、冥く、静かな光**]
―朝・個室―
[今日は静かだった。
着替え、髪を整え、本を整理する。
机に向かって、手紙を書く。
書きたいときに書くのが、姉弟の決まりだった。
今日は、誰が、死んだのだろう。
明日は、誰が、死ぬのだろう。
誰を殺せば、良いのだろう]
ビー、会いたいなぁ。
[小さく、書き上げた手紙をしまいながら呟いて、部屋から出ていく。
もし今日何もなかったら、きっと自衛団員の人に渡せるだろうと、白い手紙を三通持って。
しかしそれは再び床に落ちることになる。
――フォルカーから、話を聞いて、ただ呆然と玄関を*見つめた*]
―西側の渓谷―
[向こうに下に行けそうな箇所を見つけたところでエーリッヒがやってきた。
手をあげた彼を煙草をくわえたまま無言で見る。
苛々した気配は隠すつもりもなかった]
あ?
[ローザの亡骸を見下ろして言う言葉は聞こえたか聞こえなかったか。
しかし、驚きもしない様子に露骨な違和感を覚えた]
なんだか、彼女がそこにいるのを知ってるような言い方じゃねえか。
[疑るような視線をむけて、問うのは低い声。
自衛団員にと聞けば奴らに用はないと思えども、知らせるべきかと思い直し周囲を見回す。
巡回の自衛団員の姿を見れば]
おい!こっちだ!
[そう言って呼び寄せたか]
[やってきた自衛団員に遺体は自分が運ぶと告げ、頑として譲ろうとはせず。
同行だけは認めて共に亡骸の傍へ降りていく]
…すまん。俺のせいだ…。もっと傍にいればよかったんだ…。
[言いながら冷たくなったローザの顔にかかった砂を手で払い、頬に触れる。
胸に刺さったままのナイフは抜こうとしても抜けず、諦めてそのままにして、
硬くなってしまった身体を抱き上げれば、凍らぬ血液を纏った髪が腕に絡み付いた]
…何ジロジロ見てるんだ。早く、行け。
[自衛団員を急かして上に戻ったなら、亡骸を抱えて黙って歩き出す。
行く先は、エルザが葬られたと聞く場所へ。問われれば短く答える筈。
エーリッヒが共に来るなら拒みはしなかったが、ローザに触れることだけは許さなかった。
オトフリートとユリアンはまだそこでヘルミーネの埋葬をしていただろうか。
誰を埋めているのかを知れば一瞬驚き目を見開くが、すぐに歯痒そうに奥歯を噛み締める。
それから彼等に無言のまま視線で隣を空けろと示し、黙々と穴を*掘るのだろう*]
―一階:廊下―
[誰に告げるときにも、少年に表情はなかった。
揺らぎもしない眼差しは、話した相手の様子を窺うようでもある。
外に行くというユリアンを見送り、片付けてくるというイレーネに頷いて、冷えた廊下に佇む。
何のせいかも分からない胸の痛みを覚え、薬を飲み忘れていたことを思い出した。叱られる、なんて遠く思う]
――……ハシェさん。
[神学生の彼に伝えるときには、胸に当てていた手は下ろした。
彼の手元から落ちていく封筒を視線で追って、屈んで拾い上げる]
落ちましたよ。
ご家族の方に、ですか。
[目に入った宛名からの推測で、問う]
うん…それもそうだね。
さっき聞いたことは忘れてくれ。俺も自分の感情を整理できないかって思っただけだから
[皮肉げな笑みを浮かべていうオトフリートに答え、一度エルザの墓を見て]
エリ兄の部屋?
いや、俺の部屋より奥から出てきたのしか知らないからわかんないけど…それじゃわからんよな。俺の部屋一番手前だし、ごめん
[名が名だったので知っているのに知らぬように答え申し訳なさそうに謝る]
ってかこんなときにエリ兄がどうしたの?
何か…あったの?
[もしかしてというような硬い表情でオトフリートに聞く]
……ここにずっといると、冷えてしまう。
僕は、一度、広間に向かいますが。
ヘルミーネさんの元に、行かれますか。
[静かな声で問うて、広間の方へと*目を向けた*]
[そんなこんなで変態が部屋に帰りついたころには夜もいい時間になっていた。
広間で話をしていた時は忘れていられるが、一人でベットに横になると否応なしに人狼について考えさせられる。人狼は、一体誰なのかと。
とはいえ考えてても見当はさっぱりつかない。
疑う事なら、いくらでもだれでも出来そうだったが。
そうして気付けば朝になり、普段の時間に体は起きた。]
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