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[自身を責める思考ともう嫌だと感じる心。
けれど、それを自覚するや否や、われるような頭痛。
少女は逃げるように縮こまるが、逃げられない頭痛。
激しい痛みは吐き気をもようし、噎せる。
それでも、少女は落ちるように、寝台から降りれば
片手を壁につけ、身体をささえながらふらふらと。]
[ゆるりと、視線を下へと向ける。
眼下に広がる廃墟の海に、一つの人影を見つけて。
すぅと、僅か翠を細めた。
見覚えのある、]
――…、フェイ。
[決して大きく無い筈の声が、静寂に響く。
地面までの階段の役目を果すように、組み上げられた瓦礫に
一歩、足を踏み出した。
微かに揺らぐ白金が、再び、小さく韻を残す。]
[痛みに引っ掻き回されながら、
少女はふらつく足でメディカルルームを後にして。]
[廊下を移動しつくのはモニタールーム]
これで分かったかしら?
アタシがアナタに入れ込む理由が!
[払いがかわされるのは予想の範疇。
彼が翼を持っていることも知っているから。
向かわせた影はすぐに捨てて、飛び立ったアーベルに向けてもう一本の刃を伸ばす]
影は無形。
それ故にどこまでも伸び、アナタを追いかける!
[影を伸ばしたと同時に急降下してくるアーベル。
その速さに、舌打ちをしながら腕を自分の頭の上へと振る。
それに呼応して足元から伸びてくる影。
影はルージュを覆うも硬質化が完全には間に合わず。
鋭い爪が影を突き抜け頭を庇っている左腕に食い込む]
くっ……さ、すが、と言ったところ、かしらね。
身体的な能力ではちょっと不利かしら。
[腕に爪が食い込んだままの状態で、残った1本の刃を更に繰り、アーベルの腹部を狙う]
[まっすぐに空を見上げる。
月光、星影───太陽の]
…日碧……?
[見間違えるはずもないし、聞き間違えるはずもない]
[彼が一歩一歩降りてくるのを少しだけ唖然としながら見守る。
耳の中、木の葉のざわめきと、神楽鈴の歌が、少しずつ強く強く響いて]
わかったけど、嬉しくねーのにはっ……。
[変わりねぇ、と、言うよりも早く、迫る影]
……ちっ!
[舌打ち一つ。素早く離れようとするが、爪が食い込んだのが裏目に出た。
横に滑るように動きつつ、後退しようとするも僅かにその動きは遅れ、影が脇腹を掠めた。
零れる、紅。それを抑えつつ]
……伊達にこちとら、ガキの頃から鍛えてないんでねっ!
[身体能力の話に軽口めいた口調で返しつつ、距離を開けたまま地に下りる。一つ、息を吸って、吐いて]
……はっ!
[低い気合と共に、態勢を低くしつつ走り出し。
ある程度の距離まで近づくといきなり手を地面に手をつき、そこを基点に一回転。
と同時に翼を銀の羽へと拡散して目くらましを仕掛けつつ、着地して足元へと蹴りを放つ。狙いは、体勢崩し]
[とん、と軽い音を鳴らして地面へと降り立つ。
自らを呼ぶ青年の声に、薄く口許に弧を浮かべながら。
一度、ゆるりと瞬いた。]
……その様子だと、知らないんだ?
[昨日の事。
ぽつりと呟いて、僅かに首を傾ぐ。
揺れる金の隙間から、相手へと翠を向けた。]
ねぇ、フェイ。――君はさ。
家族も同然だろう人が、誰かに傷つけられたら
…怒るんだろうね?
[投げられる問いは、唐突。
揺れる白金が、言葉の後ろで小さく響く。]
…知る?何を……。
[自分にとって昨日のことといえば巨大芋虫以外のなんでもなく。
こちらを見る翠の瞳、受け止める消炭に、かといって怯えはなく]
…どういうこと、だ。何が言いたい。
言いたいことあんなら、ちゃんと言えよ。
回りくどいのも、暈されんのも嫌いって知ってんだろ。
[目の前の相手が意図した理由とは若干違うけれど、確かに青少年は少しだけ不機嫌になる。
ざわめく鈴の音、ひどく頭が痛い]
[相手が刃を避けようとしたことで爪が腕から抜け。
例に漏れず腕から赤が零れ落ちる。
白いワイシャツの袖が紅く染まった]
子供の頃から、ね。
さぞかし可愛かったでしょうに!
[零れる赤もそのままに、防御に使った影を分割し、攻撃に備える。
体勢低くこちらへ向かってくるアーベルに対し、分割した影の一つを槍へと変える。
それを手に持ち相手の勢いに合わせて繰り出そうとする。
しかし繰り出した先にアーベルは居らず。
代わりに目の前に銀が舞った]
きゃあ!?
[銀の羽は月明かりを反射し煌く。
それも手伝い目は眩み、アーベルの姿を見失った。
そして感じる足への衝撃。蹴りはそのまま払いとなり、掬われた足は地を離れ身体は地面へと落ちる]
っ…!
[放った蹴りが足を払うのに成功したのを見るや、獣の気配は息を潜め]
Reine Luft……Anfang!
Ein Faden geworden die Klinge!
[眠れる糸が再び目覚め、息づく。
その身を刃と変えた糸は、右手を振り上げる動作に従って上へと舞い。
続く振り下ろしに、倒れ掛かる所に追い討ちをかけるよに切り下ろされる]
何をって、…本当に、知らないんだ?
[僅かに、驚愕に似た色を浮かべて翠を瞬いた。
尤も、あの子には――見られては困る事を知られてしまったのだし
其の件で言うならば、都合は良いけれど。]
――別に、暈したつもりは無かったんだけれどなぁ。
あの子の事、「妹みたいなもの」だって、言ってたから。
君は、怒るのかと思ってさ。
[腕の包帯までは服で隠せても、掌は覆えない。
紐を持つ手とは逆の、白の見える右手を涼しげに軽く振る。]
…知ってたら、聞かねえだろ普通。
[僅かに、視線がきつくなる。
ヒップバックの重みを、いやだと思いながら確認している自分がいる。
少しだけ、続いた言葉に動揺があっただろうか]
……!
………李雪に、なんかしたのか。
[白い右手の残像に表情を硬くして。
彼の前で、こんなに怒りを顕にするのは初めてかもしれない]
[仰向けで倒れたが故に相手の次なる行動が目に入り]
この程度でやられるほど…軟じゃ無くってよ!
[倒れる中、少しだけ身体を捻り、右手で地面を叩く。
瞬間、ルージュの周囲の地面から影がせり上がり、倒れ込むルージュを包み込む。
それにより迫り来る刃を弾こうと。
刃が影に打ち込まれると、反撃するかのように鋭く尖った影の先がアーベルへと向かう]
ったぁ…。
ホント身体能力じゃ敵わないわね。
けど。
特殊能力で負けるつもりは無いわ!
[影で刃を防いだ状態のまま、己を包んでいる側面の影をすり抜け横に転がる。
すぐに身体を起こし、膝をついた状態でアーベルに相対した]
…それも、そうですね。
[向けられる、強くなった視線には動じないまま、
ゆるりと翠を伏せたまま。薄ら笑みを浮かべて。]
…嗚呼、やっぱり。怒るんだ。
――どうだと思います?
[何処までもはぐらかす様な、言葉。]
……これで終わるようなら、こんなとこにはいねぇんじゃねぇのっ!?
[弾かれた糸を引き戻し、こちらも迫る影を打ち払う]
……そりゃ、こっちの台詞……ってな!
[ふ、と浮かべる孤狼の笑み。
光を受けて煌めく糸に、念を凝らして]
……Schneiden Sie es, und werden Sie die scharfe Klinge!
……日碧、お前…!!
[拳が強く握られる。
グローブが擦れて、ぎりという音がした]
…どうだ、どうじゃない以前の問題だ。
[ぎしり、と皮が音を立てて擦れた]
言わせるまで、だ───
[散らした影を全て手元へと集めて]
全くだわ!
[アーベルの言葉にクス、と笑いを漏らし。
集めた影は細かく分散し、回転する刃を作り出す]
-Schattenschneesturm!
[パチン、と響いたのはスナップの音。
手にするは赤く煌く拳銃。
ホルスターから抜いたかと思えば、そのままの流れ、撃鉄があがり、照準を合わせることすらなくまずはその鉛弾は彼から少し離れた古い瓦礫に軽い雪崩を起こさせる。
そしてその流れそのまま二撃目、距離を近づけるために懐へと飛び込むために走る。
その最中も銃口は確実に日碧を狙おうと向けられるだろう]
[念を込めた糸の刃は光受け、舞う。
影より生まれし刃、それを打ち消さんとするかの如く。
力の干渉が意識を振るわせ、集中に干渉する。
交差しているものたちは、似て非なる物なのかと。
ふと、そんな事を考えつつ──]
……Schneiden Sie es!
[再度、声をあげ、命ずる]
……俺の道……それを、阻むもの、全て……ぶち抜け!
[念を込めた声は糸の鋭さを増し、それは影の刃をも絡めとるよに舞いつつ。
その、刃を生み出した者へと向かい、舞う。
紅呼び起こす、銀煌乱舞]
ご希望ならば、何でも。
あなたの意に沿うままの言葉を差し上げますよ?
――贋物で宜しければ。
[相手を、真直ぐに見据える。
浮かべた笑みは、何処か、作られた]
…嗚呼、やっぱり。
[向けられる銃口に、笑みを浮べたまま。
ぽつりと、呟いて。――続く筈の言葉は、消えた。]
[崩落から距離を取ろうと、逆サイドへと走ると同時に
服の下から、地面へと刃が滑り落とす。
突き刺さる白銀の数、5本。]
――、『舞え』。
[――シャン、 と。
静かに言の葉を紡ぐと共に、高く響く神楽の合図。
呼応する様に、銀が空へと浮かんで。
相手へと向けて突き出した左腕へと従うように、
薄い刃が、二本。青年へと向かって奔る。
向けられる銃口と、続くもう一本は相手の首筋へ向かって。]
[無数の刃でアーベルを刻むべく影を繰る。
しかし]
……──っ!?
[舞う糸が舞う刃を絡め取って行く。
まるで光が影を打ち消して行くかのように]
まさか…そんな…!
光の前では影は無力だとでも言うのか!
[その叫びはいつものルージュの口調とは僅かに異なり。
迫る光に目を見開く。
身を護るにしても己の影は全て刃と変えてしまっていて。
為す術無く煌きの中へと包まれる]
うあああああああ!!
[乱舞した糸は全身を切り刻む。
身に纏う服は切り裂かれ。
周囲に鮮やかな紅を散らす。
白のワイシャツは紅く染まり、ワインレッドのベストやパンツは更に赤黒く染まる]
[煌きが収まり。
一拍の後に膝から崩れ落ち、うつ伏せに地面へと倒れ込んだ]
ふざけんな!誰が贋物よこせっつった!!
[いつだって欲しいのは真実。
銃口狙う刃は赤い煌きそのもので跳ね返せても首筋狙う刃は薄くその皮膚を削いで、ゆえに青少年の表情は僅かに歪む。
よけた弾み足元が僅かに揺らいだがその反動で体が水平方向に1/4回転]
…忘れんなよ。
最初に嘘こいたのは、お前だぜ。
[きり、と唇僅かに噛めば悔しさゆえに鮮やかな血の珠が小さく浮かび。
それでも足は休むことなく、日碧の足元を狙う、二発。
既に、赤い煌きに残された弾は1つ。
空いている手で青い輝きのホルスターのスナップを強引に開けて、重みのあるもう一丁を取り出し、取出しが完了した時点で残り一発の実弾は日碧の頬の高さ狙って]
……さぁ、ね……?
俺は、光じゃねぇから、わからねぇよ……。
[紅に染まり、倒れ伏す様子を見つつ、掠れた声で呟く]
俺は、光でも闇でもない。
ただの、俺。
あんたの影をぶち抜いたのは、俺の『意思』だけだ。
先に進む……っていう、な。
[意思を力として受け止める糸、『ラインルフト』。
その名の通り、純粋であるが故にか。
それは、ただ、使い手の念を、意思を──想いを映すのだと。
いつか、兄に聞いた言葉]
……勝負あり……俺の、勝ち、だな。
…――さて。
いつ。俺が、嘘をついたっけな?
[ゆるりと、首を傾ぐ。金の合間から微かに笑みが零れた。
リンッ、と。高く弾き奏でる韻に応じて。
地へと突き刺さったままの内、二本が銀の軌跡を残して奔る。
足元を襲う鉛を弾こうとするも、速さと威力の勝る銃弾は逸らしきれずに、
軌道の逸れた一つが右の脚を掠める。]
……っ、
[小さく舌打ちを零すも
目の端で、再び向けられる銃口に気付けば
避けるように自らの身体を捻りながら、再び神楽の韻を鳴らした。
対峙する相手の首元に紅を残した白銀が、青年の背後で急転回する。
そのまま、背後から腹部へと向かって]
[うつ伏せの状態から両腕にあるだけの力を込めて。
傷が痛むのも構わないで仰向けへと転がる]
ふ、ふふふ……。
そう、言う、想いが…アタシには、眩しすぎるわ…。
[己の紅で染まった顔で笑う。
反撃する力はもう残っていない]
ア、ナタに、負け、るなら、本望かも、ね。
アタシ、は、いつ、負け、ようが、関係、なかった、もの。
『遊戯』が、盛り上がれ、ば。
あのお、方、が、楽し、んで、くれれ、ば。
それ、で、良いんだ、もの。
[体力の消費と痛みで言葉は途切れ途切れ。
それでも浮かぶ笑みはどこか狂気染みていたか]
そんなもん、かね。
自分の意思がなきゃ、この世界じゃ生きられない。
自分の意思がなきゃ、自分の未来は見つからない。
……押し付けがいらないなら、自分でやんなきゃならねぇ。
俺に取っちゃ当たり前……なんでもねぇ事だぜ?
[眩しい、という言葉に。
糸を手元に返しつつ、呆れたように呟いて]
……あのお方……。
そいつは、つまり……『遊戯』の仕掛け人、か?
[狂気を思わせる笑みに、蒼を険しくしつつ、問う。
答えがあると、期待はしていない、けれど]
アタシ、と、アナタと、では、生きてきた、環、境が、違う、もの。
アナタが、当たり前と、思っ、て、いるように、アタシ、も、今の環境、が、当たり前だと、思って、るわ。
だ、から、眩し、く、見える、の。
[徐々に発される声が弱くなっていく。
紅が流れ出たこともあり、血の気が引き、意識が遠退いていく。
アーベルの問いにはにっこりと笑みを向けて]
こ、の、『遊戯』、を、楽し、む人、なんて、限られ、て、──。
[いるでしょ?
最後の言葉は意識の途切れによって口から出ることは無く。
瞼が真紅の瞳を*覆った*]
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