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ここ……じゃないな。
ここ…でもない。
[プレートの有無に関わらず部屋の扉の前で注意深く匂いを嗅ぎ、血腥さを色濃く漂わせる場所を探す。
何度かそれを繰り返した後、扉の隙間から漂う匂いに僕はピタリと足を止めた]
………ここだ、間違いない。
[足を止めた部屋の扉にはプレートが掛かっていた。
誰かが使っていると言う証明。
有事を考えて、ベルトに差した短剣の柄を握り、左手で扉をノックする。
返事は無い。
この扉の先に広がるものの想像をして、僕の心臓ははち切れんばかりに拍動した。
一度だけ深呼吸し、意を決してドアノブを掴み、扉を開ける]
───── っ!!
[それは直ぐに右目に飛び込んできた。
喉を水平に真っ直ぐ掻き切られ、祈りの象徴を胸に刻まれ空洞を作った女性の骸が床に転がっている。
それがリディヤであることは、瞠目していた瞳が顔の位置に視線を向けたことでようやく知れた]
……『鬼』、だよな。
真紅の薔薇───確か、アナスタシアさんのところにも、あった。
[紅の中に放り込まれた紅。
今はリディヤの胸の上に、弔いのように置かれている。
抜き取られた心臓の代わりのようにも見えた]
ああくそ。
『鬼』、見つけたんじゃなかったのかよ。
[怒りの矛先はジラントへ。
あの後直ぐに向かったものだと思っていたから、また『鬼』の被害が出たことに苛立ちを覚えた。
けれど同時に、オリガじゃなくて良かったと安堵する気持ちも浮かぶ]
ええと……どうすりゃ良いのかな。
現場保持?
[微妙にズレたことを言いながら、僅かに首を傾ぐ。
最初のように慌てふためくことがなくなったのは、もう感覚が麻痺しているせいだろう。
しばらく考え込んでいたけれど、最終的には扉は開いたままにオリガの無事を確認することを優先する。
その前に誰か来るようなら、発見した状況について一応の説明をする*つもりだ*]
─ 二階/客室 ─
[部屋に戻り籠を寝台近くの床に置いた。
籠の中には布と、丈夫な手袋しか入っていない。
腰に下げたナイフを見ぬままそろと撫でる。
父から譲り受けたお守りのような存在だったから
触れると心が落ち着くのを感じた]
お父さん――…
心配、してるかしら。
[帰る予定の時間は既に過ぎているはずで
一人娘を案じる父の姿が浮かんでしまう]
ごめんなさい。
[届かぬ言葉を父に宛てる]
[野草を摘みに入る森はオリガにとっては庭のようなもの。
だからいつも普段着の軽装備で森に入っては父に嗜められた]
森は危険だから――、甘くみてはダメ。
[そんな事を言われても大げさだと思っていた。
庭で怪我なんてしないから、と笑っていた娘は
父の忠告を素直にきけなかったことを後悔している。
寝台の縁に座ればやわく弾む身体。
ふわりスカートが揺れる感覚。
オリガはそれが好きで森に入るのにもいつもスカートのまま]
大丈夫と、思ってた。
[消え入りそうな呟きが小さな唇から零れる]
[必要なだけ野草を摘んだら帰る心算だった。
けれどいつもならあるはずの場所に目当ての野草はなく
奥へ奥へと進むうち、滅多に入り込まぬ場所まで来ていて
其処に沢山の野草があったから夢中で摘むうちに夕暮れが迫っていた。
歯車の微妙な狂いが今の状況をつくりだしたのか
それが運命であったのかはわからない]
帰りたい。
[父の顔がみたいと思う。
体格もよくはないからその望みが叶う可能性は薄いとも
何処かで思っていたから響きは切なるものとなる]
『鬼』はだぁれ?
次は、誰が――…
[殺される事と殺す事。
どちらかかどちらもか、いずれ訪れるだろう未来に思える]
― 地下/武器庫 ―
[ジラントを折れさせる程のサーシャの姿勢には、自分にないような強さを感じた気もして。
「物分りがいい」なんて言葉>>25には、ほんの小さく視線を伏せたりもした。
こうして、告げられた答え>>26は――。]
鬼を、見つけ、た?
[この時、メーフィエははっきりと目を丸くしていた。
とくりと胸が鳴るのが、自分でも判った。
けれども、一先ず平静を保った、それでも緊張も表れた面持ちで、ジラントの方を見た。]
……一人で行く心算、なら。止めませんけど。
無茶だけはしないで、下さい、ね。
[邪魔されれば如何するか、その仕草は目の当たりにしていたから。
立ち去って行く彼>>28をすぐに追うことはしなかった。
無論、剣を振るうことも無く。]
[手にした剣は決して軽くは無い。
それでも幾らかの長さのあるそれを、誰も居ないその場で一振りして、前へと突き出して。
その感触を、手に、身に覚えさせた。]
―――――…、
[幾らかしてから、剣を鞘に納め、武器庫を後にした。
何処に向かうべきかと、地上へ向かう階段を見上げて――。
静かに、一階まで上り切る。**]
しっかし、よくあの時殺られなかったよなぁ。
[激痛に襲われ、無防備な状態。
その気になれば首を絞めて殺す事も容易だったろうと、背中がぞわり。]
……ま、ごちゃごちゃ考えたってしょうがねぇか。
無茶だろうがなんだろうが。
狩らなきゃ、狩られる。
そんだけの話。
[ともあれ、鬼の殺り方でも見ておこうと、三階の書斎を目指す、男の口元は愉しげ。]
刃物でえぐったか、それとも……。
……ま、いいや。
バケモン相手と思っとけば間違いないだろ。
[嗤う男は、青を求めて書斎を*出てく。*]
─ 二階/リディヤの部屋前 ─
あ、オリガ。
[聞こえた声>>50は僕を十分に安堵させるもの。
声だけでなく表情にも安堵の色は含まれていた]
リディヤさんが、『鬼』に。
[オリガの無事を確認したことによる安堵の色も、問いに答える時にはなりを潜めて。
僕は見返していたオリガの瞳から片目を部屋の中へと向ける]
ここのご主人さんと同じようなやられ方だよ。
あの時と同じように、薔薇も置かれてた。
…ああ、あんまり見ない方が良いよ。
[部屋の中を覗き込もうとするのには制止をかけるけれど、強いものではないからオリガが見ようと思うのなら見ることが出来るはず]
『鬼』、誰なのかな。
[ジラントの話を聞いてから、僕は無差別から『鬼』に狙いを定めるようになった。
尤も、知る術を僕は持たないから、結局無差別と変わらないのかも*しれないけれど*]
─ 二階/リディヤの部屋前 ─
[サーシャ>>60から感じるのは安堵。
『ゲーム』が始まって《ルール》が刻み込まれて
それでもなお向けられる優しさは同じに思えて
隻眼へと向けた眸が揺れる]
――…リディアさんが 、
[熱さましの薬を持ってきてくれた際、
彼女が言っていた言葉>>1:149が呼び起される。
『苦しいのは嫌で、苦しんでいる人を見るのも嫌だから。』
そんな他人の痛みを知る彼女の命が『鬼』に散らされたと聞き]
同じような、――…
それなら、やはり『ゲーム』は続くんですね。
[続く事を知っていてそれを確認したかのような口振りで
沈痛な面持ちがやや下を向く]
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